睡眠薬通販・販売|エスゾピクロン・バスパー・眠剤の個人輸入

睡眠薬の種類・強さ・副作用・分類とその特徴・効果・口コミ

睡眠

さまざまな睡眠障害とその解消法2

投稿日:

さまざまな睡眠障害とその解消法

過眠症 ナルコレプシー

時と場所を選ばない強烈な睡魔
ここまでは眠りを阻害する障害について見てきましたが、睡眠障害には眠くて困るという疾患もあります。最近、注目されるようになってきた過眠症です。過眠症の代表的なものとしては、ナルコレプシーという病気が知られています。
過度の眠気が繰り返して起こり、ガマンできずに眠る。ふつうなら眠ってしまうことなど考えられないような状況、たとえば試験中、会議中、商談中、運転中、自分から話している最中などでも睡眠発作が起こります。そのため社会生活上の問題が生じるのです。
睡眠発作に先立って、疲労感、四肢の重い感じ、目の焦点が定まらない、目を開けていられない、首の筋緊張が消失し、頭がガクンとなるなどの予兆が見られます。ときには幻覚が起こることもあります。
睡眠発作の多くは、比較的ゆっくりはじまります。したがって、患者さんは運転中でも安全なところへ移動し、車を道端に停めて大事にいたらないようにすることが可能です。
この発作は、振動がある電車、暖かい部屋、単調な講義など、一般の人でも眠くなるような状況で起こりやすくなるものです。しかし、眠ってはいけない場面で、本人の緊張にも関わらず強い眠気に襲われて眠り込んでしまうことも少なくありません。
試験中だというのに眠気に打ち勝てず眠ってしまったり、楽しいデート中に不覚にも眠り込んだり、仕事中に眠気に襲われ上司の言葉さえ憶えていないということもあるのです。電話中に眠くなって、自分が何を話したのかわからず困ったという話も聞いたことがあります。社会生活上、非常にやっかいな病気なのです。
この睡魔は10〜15分ほど眠れば一応すっきりするのですが、眠くなったら耐えられないところが一般の居眠りとは異なるところです。からだの力が急に抜けてしまうナルコレプシーの人は、感情的な高ぶりによって、突然からだの力が抜けてしまうことがあります。
これを「情動性脱力発作」といいます。この発作は急に感情を高ぶらせることが刺激となって、全身の筋肉の緊張が消失するのです。その際、意識は保たれており、記憶の障害も見られません。
たとえば、母親がかんしやくを起こして子供のお尻を叩こうとしたところ、突然ひざがガクンとなるということもあります。とくに大笑いしたり、得意になるというプラスの感情が強く起こったときに出現します。たとえば、テレビでお笑い番組を見て笑いころげたところ、顔面表情筋のしまりが悪くなる、釣りの最中に当たりが来たとき、興奮のあまり手の力が抜けて竿をとられてしまう、麻雀で大きな手ができたときに、興奮して首の筋肉が脱力し、頭がガクンと垂れさがってしまう。さらに困ったことに、自分でおかしいことを考えただけでからだの力が抜けてしまう、という人さえいるのです。
脱力発作を起こしているときに、ポリソムノグラフが記録できた例があります。
それによると、筋肉放電が消失し、そのままレム睡眠に移行するパターンが見られます。つまり、情動性脱力発作は、覚醒時に急なレム睡眠が起こるものと考えられるのですが詳しいことはまだわかっていません。
エチラーム(デパスのジェネリック)など睡眠薬通販は、こちら→お薬館
悪夢のような幻覚、幻聴を体験
入眠時にいろいろな幻覚が起こります。寝入りばなにうつらうつらしながら、鮮明な実在感のある夢を見る、というような体験です。
入眠時の幻覚は幻視が多く、ほかに幻触、幻聴も現れます。これらはナルコレプシー患者さんの30%に見られるといわれます。
ある二一歳の女性患者さんは、次のように述べています。
「ここ一年はよく金縛りにあい、手が出てきては首を絞められたり、耳の穴に指を入れられたり、からだを触られたり、頭を足で踏まれたりします」
ほかにも、寝室に掃除のおじさんが入ってくるのが見えるとか、周囲の暗闇から自い手がニューツと出てきてふとんを引っ張るとか、自分をつかもうとするなどの恐ろしい内容が多いのです。
この状態は数秒続きますが、その多くは「金縛り」をともないます。つまり、患者さんの主観では、「ふとんの上から人間だか動物だかわからないような怖い顔がのしかかって、のぞき込んでいるのに身動きできず、絶体絶命状況で悲鳴をあげる」という恐怖体験になるのです。
ナルコレプシーの症状には、入眠時幻覚のほかにも、夜半、目は覚めているのにからだが動かないという、いわゆる金縛り、専門用語では「睡眠麻痺」の状態が見られます。続いて金縛りの正体についてふれます。
金縛りはレム睡眠から起こる
金縛り(睡眠麻痺)とは、寝入りばなや眠りから目覚めたとき、全身が脱力状態となり身動きできなくなってしまう状態を表します。そのとき具合が悪いことに、幻覚をともなうことが少なくありません。目覚めたら胸の上に恐ろしい顔をしたものが乗りかかっている、患者さんは恐怖感のあまり飛び起きようとする、ところがからだは金縛り、助けを求めようとしても声にならない。想像するだけでも恐ろしい体験ではありませんか。もっとも、この状態は数秒から数分も続けば、徐々に、または突然に回復します。そばで声をかけたり、軽くからだにふれてあげるだけで金縛りは中断され、ホツとして我に返ることもあるようです。
金縛りは睡眠開始時によく見られる現象で、まだ意識のあるうちに呼吸筋と眼筋を除く筋肉が麻痺するのです。金縛りはナルコレプシーの患者さんの25%に見られ、週に1〜2回くらいの割合で起こるといわれます。
身体の昼と夜のリズムが入り交じる
ナルコレプシーは、日中はしっかり目覚め、夜はぐっすり眠るという二相性の睡眠覚醒リズムが障害された状態で、24時間の中に睡眠と覚醒が何度も繰り返すものと考えられます。つまり、多相化したリズム異常が、日中の眠気や居眠りの発作として現れるのです。睡眠発作の一部は、おそらく日中に起こるレム睡眠によるものでしょう。
さらに、睡眠中のノンレム・レム睡眠リズムも乱れています。健常者では眠ってから90分後に出現するレム睡眠が、ナルコレプシーの患者さんでは入眠直後に出現してしまうのです。
すでにお話ししたように、レム睡眠の特徴はからだの筋緊張低下と夢見です。
脱力発作は、日中にいきなりレム睡眠が出現するため(レム睡眠発現様式の異常)、からだの力が抜けるのです。金縛りと入眠時の幻覚は、レム睡眠時期の夢を幻覚として体験し、しかも筋緊張低下をともなうため麻庫したように感じてしまうのです。以上から、情動性脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺の3つの状態を合わせて「レム睡眠
関連症状」といいます。
入眠直後に異常出現するレム睡眠は、それ以後のレム睡眠よりもさらに筋抑制が強いので、睡眠麻痺を起こしやすいようです。入眠直後のレム睡眠は、通常のレム睡眠より意識水準が高く、覚醒状態に近いのです。したがって健常な人のレム睡眠では気づかないような身体の変化を、ナルコレプシーの人は金縛り症状と感じ、健常者が夢として体験する精神活動を、入眠時幻覚として体験してしまうのです。
血液検査でもわかる
診断基準には次のようなものがあります。
⑴日中の反復する居眠りがほとんど毎日、少なくとも3ヵ月間にわたって見られる。
⑵強い情動にともなって起こる、筋肉の緊張低下があること。
⑶睡眠ポリグラフで、入眠直後にレム睡眠が出現したり、レム睡眠の出現時刻が早いなど
の特徴が確認でき、血液検査でHLA型判定(組織適合性抗原による判定)を行ったと
きにHLA・DR2とDQB1が陽性と確認できること。
ナルコレプシーがわかってきた
ナルコレプシーの有病率は正確にはわかっていません。推定では、0・02〜0・16パーセントといわれています。
最近の研究結果から、ナルコレプシーの患者さんは、白血球のHLA(組織適合性抗原)クラスHに分類されるDR2/DQB1という血清型が、ほとんどの場合、陽性であることがわかりました。
このことは、ナルコレプシーの罹病性遺伝子が、HLAと関連をもつことを示唆しているといえるでしょう。ただこの所見は健常者でも30%が陽性に出るので、特異性の点ではまだ決定的ではありません。
HLA陽性はナルコレプシー診断の十分条件(有病率90パーセント以上)ですが、必要条件ではないようです。しかし、HLAに対応するDNA(核酸)が確認されたことから、ナルコレプシーには共通した遺伝的素因があることを示しています。
最新の動物実験によると、ナルコレプシーの発症は、神経ペプタイド(ヒポクレチン)という物質の神経伝達障害の結果であることがわかりました。ナルコレプシーの患者さんでも、脊髄液内のヒポクレチン濃度が正常より著しく減少していることが確認されています。ヒポクレチンはナルコレプシーに対する診断特異性が高く、診断に有効な生物学的マーカーであることがわかったのです。
これからは、血液のHLAと脊髄液のヒポクレチン測定という組み合わせで、正しい診断ができるようになることでしょう。ナルコレプシーの治療や病気の経過にも大きく役立つことを期待したいところです。
日中の眠気対策
繰り返して起こる日中の眠気に対しては、まず、次のことを心がけましょう。
⑴夜間睡眠の量と質を、ともによくするように心がける。規則的な就眠・覚醒時刻を守り、寝室の条件を整える。
⑵規則的、計画的に、日中の仮眠をとるようにする。
毎日決まった時刻に、15〜30分くらい昼寝をすると、眠気を覚ますのに役立ちます。とりわけ正午から午後2時ごろの間に仮眠をとるようにすると、午後の眠気の発作はかなり軽減させることができるようです。

ナルコレプシーの薬物療法について

①日中の眠気
日中の眠気には、朝から昼までの間に中枢神経刺激剤ペモリン(ベタナミン)、塩酸メチルフェニデート(リタリン)など)を使います。この薬は服用すると眠気が少なくなりますので、大切な会議などの前に飲んでおくと居眠りを防げます。ただし夕方以降に飲むと、夜の睡眠に影響しますから注意を要します。実際に、刺激剤をうまく使って、ふつうに仕事をしている患者さんも多いのです。
②レム睡眠関連症状
脱力発作、金縛り、入眠時幻覚などのレム睡眠関連症状の治療にはレム睡眠を減らす薬を使います。うつ病の薬である3環系抗うつ薬の塩酸クロミプラミンなどが効果的でしょう。この薬は就眠時に1〜2錠飲むだけでも、上記の3症状にかなりの効果をもたらします。
しかし、飲み続けた場合、急激に中止すると情動性脱力発作が悪化したり、ひんぱんに起こったりすることがあります。その点を十分に注意してください。
周囲の理解が必要
正しい診断がつくまでは、ほとんどのナルコレプシー患者さんは「怠けもの」扱いされて非常につらい思いをしています。
もしナルコレプシーであることがわかれば、周囲の人は患者さんを理解するよう努めましょう。たとえば職場では、薬を飲むことが治療と予防を兼ねることを頭に入れて、大事な会合などがあるときには、前もって眠気覚ましの薬を飲んでおくよう気を配ってあげるといいでしょう。
その反面、本人が周囲への迷惑を気にしすぎ、精神刺激剤を勝手に増量するなどして、健常者以上にがんばって働こうとしないように注意することも大切です。もちろん、職業的な運転や高所作業のような危険な作業は外すようにします。多少は自分で仕事の時間配分ができるようにしてあげるのもよいでしょう。
学校でも、なるべくからだを動かすように指導してください。ふつうの運動なら支障はありません。また、日常生活でとくに制限する事柄もありません。
それでも患者さんは、居眠りをすることで罪悪感や劣等感をもつことが多く、家庭内でも問題を生じる傾向があります。その場合も病気との関係をよく理解し、周囲が根気よく支えてあげる姿勢がたいせつです。
【症状】大学入試で眠ってしまた (20歳女性)
Eさんは高校のころから、毎日、日中の眠気が強く、ガマンできずに居眠りを繰り返していました。
授業中はそっと眠ったりしていましたが、ついに試験でも居眠りをしてしまうようになりました。そしてなんと、大学の入試でも眠ってしまい、受験に失敗してしまったの
です。
眠いばかりではありません。人と話をしていて大笑いすると、下のあごがダランと下がってしまいます。そのため口を隠すようにして笑うクセがついてしまいました。
しかも、寝入りばなには人の声が聞こえます。テープを速送りするような声です。部屋に人が入ってくるような気配を感じ、実際に人が見えたこともありました。夜中に目覚めると身動きできず同時に怖いものが胸にのしかかってくるのです。
そのような恐ろしい体験がガマンできず、ようやく睡眠外来を訪ねてきたのです。
症状と各検査から、Eさんはナルコレプシーと診断されました。
まず本人および周囲の人に、病気についての理解をしてもらいました。次に薬剤を投与し、経過を見ることにしました。午前中や日中(遅い午後は避ける)には中枢神経刺
激剤を使い、眠る前には3環系抗うつ薬を飲んでもらいます。
その結果、症状はおおむねコントロールされるようになりました。しかし、家庭内でも気を許すとつい眠ってしまうEさんに対する周囲の人の不満もあり、理解を得るにはまだ時間がかかりそうです。
その他の過眠症
ナルコレプシーのほかにも眠くて困る病気があります。
「反復性過眠症」または「周期性傾眠症」と呼ばれてきたもので、一週間前後持続する過眠を繰り返す病気です。10代の男子に多く見られるもので、平均すると年2回くらいは起こるようです。なかには1年に12回も起きたという報告も出ています。この症状が出ているときには、数日から数週間にわたってぼんやりとした傾眠状態が1日15時間以上続きます。強い刺激を与えると目覚め、排尿行為などは自発的に行います。その間、人によっては過食や性欲尤進を示すこともあります。それ以外の時期には異常は見られません。予後はよく、大人になると自然に治ります。
どうして起こるのかは不明で、治療法はまだ確立されていません。
また、「特発性過眠症」という慢性の過眠症もあります。
初発年齢は10〜20代です。眠気はナルコレプシーほど強くないものの、いったん眠ってしまうと、昼でも1〜2時間以上の睡眠をとってしまいます。
睡眠を制限しようとして無理に起こそうとしても、目覚めさせることは難しく、起こしても寝ぼけており、ひどいときには錯乱状態となってしまいます。しかも居眠りの後でも爽快感はありません。夜間睡眠については正常か、時間の延長が見られる程度です。
この病気と診断する根拠には、次のようなことがあげられます。
⑴ほとんど毎日、日中に一時間以上の睡魔に襲われる。
⑵日中の睡眠から目覚めてもすっきりしない。
⑶それが6ヵ月以上続いている。
⑷夜の睡眠はふつうか、少し延長する程度。
⑸25歳前から起こっている。
なおこの病気の治療薬としては、中枢神経刺激剤(メチルフエニデート)が効果があるといわれますが、残念ながらすべての患者さんに効くというわけではありません。

概日リズム睡眠障害

時差症候群(時差ぼけ)
急増中の現代病
私たちは二つの時計のなかで生活しています。一つは体内時計、もう一つは生活時計です。
体内時計の一日は、生活時計の24時間より少し長い周期ですが、私たちはそれを24時間にうまく合わせ、調整しながら毎日を送っています。体内時計は、体内のリズムを生活時間に合わせる機能をもっているからです。体内時計は、外界の光や社会生活などの刺激を利用して、生活時間に合わせているのです。この刺激を「同調因子」といいます。ところが、体内時計が同調因子の手がかりを失うような状態になると、時計は勝手に動き出し、二つの時計の間で大きなズレが生じるのです。
このズレが修復できないと、体内時計は睡眠のタイミングがわからなくなってしまいます。それまでの規則正しい睡眠時間帯は失われ、日常生活の中で社会的に望ましいとされる時間帯に眠れない、または起きられないという障害が起こるのです。
このように、日常生活と自分の体内リズムが合わなくなる状態が、「概日リズム睡眠障害」と呼ばれるものです。
こうした睡眠障害は、現代の社会生活形態の変化を反映し、急増しています。
概日リズム睡眠障害には、いくつかのパターンがあります。
外界の時間と体内時計が急激にズレるもの、ズレ幅は少なくても長い期間持続するもの、時差ぼけや交代制勤務による睡眠障害、環境の不規則さが誘因となって起こる睡眠相後退症候群、それに非24時間睡眠覚醒症候群などです。
概日リズム睡眠障害は誰にでも起こりうるものです。その典型的な例として、ここではまず特別に、時差ぼけについて説明をしてみたいと思います。
ふだん、私たちが体内時間と生活時間が「ズレて」いるといちばん実感するのは、時差ぼけのときではないでしょうか。外国での夜、どうにも眠れない体験をし、また日中は集中力低下や強烈な眠気が起こり、会議中でも居眠りをしそうになります。
現地では朝なのに、いつものように排便がなかったり、夜の食事をしようとしてもまったく食欲がわかないこともあるでしょう。こんなとき私たちは体内時計があるということを実感するのです。
日本では、一年間の海外渡航者数が2000万人にものぼる勢いです。時差ぼけに対する知識や正しい対処法を知っておくことは有意義だといえます。
リズム障害による睡眠障害を理解するための、これ以上ない適切なモデルとして、ここでは「時差ぼけ」について詳しく考えてみたいと思います。
5時間以上の時差で睡眠障害
特徴的な時差症状とは、5時間以上の時差のある地域を旅行した後に、
⑴現地での夜間の不眠
⑵日中の眠気
⑶精神作業能力低下
⑷その他の身体症状(疲労感、食欲低下、ぼんやりする、頭重感、胃腸障害、目の疲れなど)などが起こることです。

航空乗務員における時差症候群の発生状況

航空乗務員における時差症候群の発生状況


↑の図は、257名の航空乗務員を対象として、時差症状について調査した結果です。一位の睡眠障害と二位の日中の眠気とを合わせた「睡眠覚醒障害」は216名。時差症状の84%を占めていることがわかります。
飛行の方向で変わる時差ぼけのタイプ
時差症状は、フライトの方向によって異なりますが、とくに、東方飛行(日本から米国)の場合にはっきり現れます。
時差による睡眠構造の変化(東西飛行の差)

時差による睡眠構造の変化(東西飛行の差)


↑の図は、同じ人が、成田からサンフランシスコ方向の東へ飛行した場合と、成田からコペンハーゲン方向の西へ飛行した場合の、到着地での夜の睡眠を示したものです。これらは滞在地のホテルで脳波計によってそれぞれ記録しました。
各睡眠パターンの上には、日本時刻(TYO)と各滞在先の時刻が示されています。上中央は日本での基準夜睡眠、左下はコペンハーゲン(CPH)での第1夜と第2夜の睡眠、右下はサンフランシスコ(SFO)での第1・第2夜の睡眠です。
日本より東に向かう場合、到着地夜の睡眠は日本の基準夜に比べて、第1夜は途中に目覚めて眠れなくなり、睡眠が分断されたことがわかります。また、第2夜は早朝に目覚め、総睡眠時間が減っています。レム睡眠も減っています。これらの所見は、われわれが通常サンフランシスコで経験する、「寝つきが悪い」という主観的睡眠評価(実感)と一致しています。
日本より西へ向かう場合には、日本と比べてもそんなに著しい変化はありません。中途覚醒もなく、早朝覚醒も見られません。また、レム睡眠の出現率は多少増加し、出現時間も早くなっています。とくに睡眠前半のレム睡眠では、その持続時間が長くなる傾向があります。しかし、東方飛行の際に見られるような、睡眠時間の短縮や周期性の乱れはありません。
図にはありませんが、日本との時差が3時間以内というニュージーランド(サマータイム時は4時間)では、睡眠は日本とほぼ同様に保たれ、睡眠内周期も規則的であり、睡眠障害は認められませんでした。
東西の飛行でこのような差が出るのはなぜでしょう。
理論的には、一日が短くなってしまう(サンフランシスコの夜の睡眠は日本の午後からの睡眠に相当する)東方飛行の場合、リズムを前進させて現地に同調することが要求されるためと考えられます。つまり24時間より長くなりがちな生体リズム周期を、短くさせることで現地に同調しなければならないため、身体に混乱が生じるのです。
さらに、時差によって体内時計が時間の手がかりを失ってしまうような状況では、生体リズムが位相後退を起こしているため、その力に逆らって位相を前進させなければならないという困難が加わるものと考えられます。

時差ぼけとメラトニン

時差ぼけはどのようにして回復するのでしょう。それを知るために、まずは時差ぼけの内容を詳しく測定してみました。
東京から時差7時間のロサンゼルスヘ飛行すると、生活時間は体内時計より7時間も「前」にズレてしまいます。取り残された体内時計のリズムは、前進することで現地の生
活時間に同調しようとします。そのスピードは、時差一時間について一日といわれていたのですが、客観的なデータはありませんでした。
科学技術庁(現・文部科学省)の科学技術振興調整費を受け、現段階で最も信頼できる体内リズムの測定方法を用い、時差からの回復メカニズムについて調査するため、睡眠と睡眠障害を対象とした本邦初の大型プロジェクトである「日常生活における快適な睡眠の確保に関する総合研究」班を組織しました。従来の時差研究では、睡眠構造の変化や体温リズムの研究が主でしたが、私たちは、体内リズムの中で最も信頼がおけるホルモンであるメラトニンのリズムを新しい指標として、時差変化に体内リズムがいかに適応していくのかを調べました。この研究でもメラトニンについて刺激的な結果を得ることができたのです。
メラトニンは脳の松果体から分泌されるホルモンで、体内時計のリズムに合わせて分泌される「時計ホルモン」。体内時計が昼なら分泌はストップし、夜なら大量に分泌されます。つまり、メラトニン血中濃度を小刻みに測定することで、体内時計の変化を知ることができるのです。
メラトニン濃度は、「ラジオイムノアッセイ法」という測定法により、少量の血液からも確実に測定できるようになっています。2時間おきに24時間、連続して採血し、リズムの全体像を把握するのです。
実験では、健康な成人男性6人に、時差8時間(現地は夏時間採用のため一時間延長される)のロサンゼルスヘ飛行してもらいました。
まず出発一週間前に、東京で24時間採血。これによって基準夜のデータをとるのです。そして一週間後、ロサンゼルスヘ飛行し、そこに7日間滞在。検査日には24時間で、90分ごとに合計17回採血しました。
採血した200本以上の血液は、その場で遠心分離機にかけ、血清を分離し、液体窒素で凍結のうえ、フリーザーで冷凍保存。帰国時には、ドライアイス入り保冷バッグに入れて日本に持ち帰りました。
また、メラトニンの分泌は光の影響を受けやすいので、実験は300ルクス以下の部屋で行いました。被験者が寝ている間はさらに照明を落とし、フットライトによる照明で10ルクス以下になるようにコントロール。
採血日以外の日は、ふつうに行動し、なるべく自然の光に当たるようにして現地の生活時間に同調するようにしてもらいました。また、日中の仮眠を禁止するため、一人にならないようにお願いしました。
さらに、被験者は、出発前の4〜5日とロサンゼルス滞在中、毎日の睡眠覚醒リズムを記録表に記入。客観的な睡眠時刻の評価は、活動計アクチグラフ(米国AMI社製)を使い、時計のように手首に巻いてモニターしました。
メラトニンリズムは↓に示したとおりです。

メラトニンリズムの再同調過程 東京一ロサンゼルス

メラトニンリズムの再同調過程 東京一ロサンゼルス


血液メラトニンリズムが現地(ロサンゼルス)時間に同調していく過程をみたもの。6名のデータから2名を抜き出してある。まず、メラトニン(ー)というリズムを表す太い線は、時差調整剤は飲んでいない時である。上段の被験者(IT)はロサンゼルスの第1夜、第5夜で順行性に同調している。下段の被験者(TA〉はロサンゼルス5夜では同調の方向が逆向きの変化を示した。これを逆行性同調という。このような同調をする人は少ないが時差症状はひどく、時差回復に時間がかかる。メラトニン(十)という細い線)は、1年後に同じ実験をして、そのときには現地で時差調整剤といわれるメラトニン製剤を服用してリズムを測定したものである。その結果、前回は逆行性それも完全にロサンゼルスの夜に同調した。
この実験は、メラトニンリズムを時計の針と見て、その動きを調べたわけですが、結果には意外な発見がありました。
先に見たように、東行飛行では生体リズムを早めて現地に同調させることが必要です。
これを「順行性同調」とよびます。
ところがメラトニンリズムの位相を調べたこの実験では、現地5日目に測定したところ、4人は順行性同調を示していたのに、残りの二人は違っていたのです。一人は5日目
でも、まだ日本時間と同じ位相のままで、変化していません。残る一人は位相が前進せず、なんと後退しながら同調しようとしていたのです。順行性と反対の「逆行性同調」でした。
これはまったく新しい発見でした。時差症状に個人差があることは知られていましたが、それは性格や年齢などによるものと説明されていたのです。
しかし、時差症状の重い人のなかには、リズム同調の方向が飛行方向とは逆に向かい、時間をかけて適応する逆行性同調という生体リズムをとる人がいる、ということが実
証されたのです。この現象がどうして起こるのかはよくわかりませんが、時差が大きくなると起こりやすいといわれています。
では、さらに時差の大きいニューヨークに飛行した場合、生体はどんな同調をするのでしょうか。
このことを確認するために、私たちは時差11時間(サマータイム)のニューヨークでも同じ実験をしました。被験者になってくれたのはハ人で、そのうちの6人は前回のロサンゼルス実験と同じメンバーです。
時差による睡眠時間のずれ

時差による睡眠時間のずれ


驚いたことに、図16のように滞在5日目のメラトニンリズム測定では、被験者ハ人中7人は、メラトニン分泌のリズムが「後ろ」に同調していたのです。「前」へ同調する傾向を見せたのは万人だけでした。時差8時間のロサンゼルスでは、飛行の方向といっしょにリズムも動いて同調したのですが、時差11時間のニューヨークでは、飛行方向と反対の方向へ向かって体内時計が同調しようとしていたのです。
私たちは、時差が大きくなると、体内リズムは再同調の方向が変わるということを世界で初めて実証することができました。まだ検証の余地はありますが、時差が11時間ともなると、体内時計は時間の手がかりを完全に失い、本来の自由継続に戻り、時計の針を後退させようとするのではないでしょうか。
ニューヨークの午前中は、日本の夜に当たります。血中に分泌されているメラトニンは、空港の明るい光のために抑制されて、位相が後退するのかもしれません。
ただし、不思議なことに、メラトニンリズムはロサンゼルスでは前進して同調し、ニューヨークでは後退して同調するのに、睡眠リズムは一貫して前進し、現地に同調しようとするのです。これは、メラトニンリズムが強い時計に支配され、外界の影響を受けるのに対し、睡眠リズムは弱い時計に支配され、社会的同調因子の影響を受けやすいためと考えられます。
時差に関する国際共同研究
時差に関する国際共同研究は、一980年代初頭から準備、開始されました。
参加した国の研究施設は、米国のスタンフォード(SF)大学とNASA、英国の空軍(RAF)研究所、ドイツの宇宙航空研究所(DFVLR)、それに東京慈恵会医科大学です。協力した航空会社はパンアメリカン航空、英国航空、ルフトハンザ航空、日本航空、打ち合わせはスタンフォード大学とその南にあるNASA研究所で行われ、データはSF大学の睡眠研究センターで記録・解析されました。
被験者は4つの航空会社の運航乗務員56名で、各国の航空会社の実験ルートは、下の図のとおりです。
実験ルート

実験ルート


英・独・日の3社は、フライト後はSF大学睡眠研究センターヘ直行してそこに二泊してもらい、夜間睡眠ポリグラフを記録します。日中は自由行動ですが、2時間おきに、脳波で眠気を測定する睡眠潜時反復検査(MSLT)を実施しました。また現地発となるパンアメリカン航空は、成田とロンドンで測定しました。
このルート設定は、英・独航空乗務員は西行き飛行をし、日・米航空乗務員は車行き飛行をし、その差を検討するために都合がよかったのです。
航空会社乗務員の睡眠覚醒パターンの記録

航空会社乗務員の睡眠覚醒パターンの記録


航空会社乗務員の睡眠覚醒パターンの記録

航空会社乗務員の睡眠覚醒パターンの記録


そして↑の図のような結果が得られたのです。4社の乗務員の睡眠覚醒パターンが、時差によってどのように変わったかを見たものです。黒い横棒は、実際の睡眠の連続を、その中の白い部分は覚醒していることを、それぞれ示しています。西行飛行した英・独の乗務員は、時差に関係なくよく眠っていることがおわかりでしょう。一方、車行飛行した日・米の乗務員は、眠りが分断、短縮、不規則となり、日中の眠気も強くなっています。
やはり時差の影響は車行きのほうが西行きより強く、睡眠障害の程度もひどいことが確認されたのです。
日光と仮眠を上手に使い分ける
時差ぼけによる睡眠障害の解消法について考えてみましょう。

自然の光を有効に使う

①車行飛行の場合(成田から米国西海岸へ)
午前中に仮眠、正午には起きて午後は光をたっぷり浴びる
東京→サンフランシスコ間は時差8時間です。現在の航空機の空港規制とスケジュールでは、多くの便は成田を夕方に出発することが多いのですが、その場合、到着するのは現地時間の朝です。朝8時に到着したとすれば、その時刻は慣れ親しんだ日本製の体内時計では、なんと午前零時です。まばゆい朝の光のなかで、何ともいえないけだるさを体験された方も多いことでしょう。からだはこれから寝ようとする時刻なのに、外の環境は活動がはじまる時間帯です。このときほど、生活時間と体内リズムのズレを実感することはないでしょう。
その対策として、サンフランシスコ到着第1日は、午前中ホテルの部屋でカーテンを引いて2時間くらい仮眠し、機内での寝不足解消に努めます。しかし、現地の正午には無理してでも起き、戸外で高照度光(自然光)に当たるようにします。この時間帯は、日本での早朝にあたり、生物時計の位相前進相に相当します。この時間帯に高照度光に当たると、睡眠時間帯は前進し、現地に適応しやすくなるのです。
もしも昼ごろに起きられず、そのままホテルで眠ってしまえば、その夜はまったく眠れなくなってしまいます。できれば海岸やプールサイドで、降り注ぐ陽を浴びるといいでしょう。散歩、ショッピング、スポーツ(速歩、水泳、テニス、ゴルフなど)もおすすめです。
このようにして体内時計の針を前進させながら、同時に日中の活動性を高め、適度の疲労感とともに、現地の夜に合わせて眠れるようにします。この自然光が睡眠以外の生体リズムの位相も前進させ、リズムの同調を早くし、その夜眠りやすくしてくれるのです。
翌日もなるべく朝には起きるようにして、午後に高照度光に当たるようにします。その結果、睡眠位相は前進し、現地への同調も早まり、東行きの時差ぼけ解消を早めることができるのです。
②日本から米国東海岸へ(成田からニューヨークヘ)
夕方までホテルで休み、ゆっくりと慣らしてゆく同じ東行きでも、時差11時間というニューヨークではどうでしょう。
この場合には、生活時間が日本に比べてほとんど昼夜逆転してしまいます。現地に午前11時ごろ到着した場合、体内時計は日本での午前零時に当たります。
この時間帯に光を浴びると、体内リズムは後退し、入眠時刻も遅くなる可能性があります。到着後はあまり強い光を浴びないようにしてホテルで休み、体内時計の朝に相当する現地の夕方になったら外出し、光に当たるようにします。
翌日からも同じような行動パターンを続けるように心がけ、ゆっくりと現地の生活時間に同調できるよう、余裕をもったスケジュールを組むようにしましょう。
③西行飛行の場合(成田からロンドンヘ)
時差8時間の成田↓ロンドンの場合を考えてみましょう。
たとえば成田を正午に出発し、12時間のフライトでロンドンヘは現地時間の夕方6時ごろホテルに到着したとします。その際、日本時間は午前2時です。早めにベッドに入れ
ば、日本の早朝から午前中にかけての眠りとなり、日本で夜更かししたような状況と同じになるわけです。
睡眠時間は短縮されますが、比較的よく眠れることでしょう。長い一日に、リズムがうまく適応していくことがわかると思います。
リズムの立場からいえば、到着する現地時間の午後の時間帯は、日本時間の生体時計にとっては主観的な夜に相当します。つまり光が生体リズムの位相前進相に当たらないため、位相後退は順調に行われるのです。つまり、西行飛行では生体リズム位相を後退させて同調していくことになるため、再同調しやすいのです。
それでも実際に現地の時間に適応するまでには、8時間の時差があるロンドンでは一週間は必要です。

睡眠薬の助けを借りる

時差症状が強く、現地での仕事や生活に支障をきたすような場合には、現地時間の夜、就眠前に短時間作用型の睡眠薬を飲むのもよいでしょう。
夜、無理にでも眠ることで、現地での睡眠リズムの同調を早めます。夜間睡眠がとれるようになれば、翌日の眠気も軽減し、社会的な活動もしやすくなります。旅行前に病院に行って、時差対策に超短時間・短時間作用の睡眠薬(マイスリー、ハルシオン、アモバン、レンドルミン、ロラメットなど)を処方してもらっておくのも時差ぼけ対策の有効な方法といえるでしょう。

メラトニン製剤を試みる

催眠作用があり、体内リズムの調整作用もあるということで、最近、時差解消薬として注目されるようになったものにメラトニン製剤があります。
リズムの調整作用とは、服用するタイミングによって体内時計を早めたり遅くしたりする作用です。夕方から夜にかけてメラトニン製剤を服用すると、早く眠れるようになり、朝から正午にかけて服用すると、遅く眠れるようになります。これは光の作用と反対になります。
この性質を利用し、実際に時差症状に使用して、症状が軽減したという報告もあります。
平成10年にロサンゼルスで、実際の飛行条件のもと、メラトニン製剤の効果を調べてみたことがあります。このときの被験者6人は、丁年前にロサンゼルスで時差によるリズムの変化を調査したメンバーです。そのときには、4人は順行性に再同調しましたが、あとの1人は同調が大幅に遅れており、もうT人は飛行方向とは逆の方向へ動く逆行性同調を示していました。
その6人に、現地時間の就寝時に、3ミリグラムのメラトニンを服用してもらい、前年のデータと比較することにしたのです。

メラトニンリズムの再同調過程 東京一ロサンゼルス

メラトニンリズムの再同調過程 東京一ロサンゼルス


図のように5日目、かつて順行性同調を示した4人は、昨年に比べて同調速度が平均15分/日早くなっていました。
また、かつては同調が遅れたり、逆行性同調になっていた二人は、メラトニンの服用で再同調が順行性に転じ、時差ぼけの症状も軽くなりました。
以上の結果から、米国西海岸にフライトしたときは、眠る前にメラトニン3〜5ミリグラムを服用しても、それほど同調を促すとはいえないものの、時差症状のきつい人には順行性への同調を促す、ということがわかりました。その意味ではおすすめできる方法だといえるでしょう。
ただし、東海岸のニューヨークでは、メラトニンを飲むタイミングは就眠時刻より早い、午後8時ごろがよいでしょう。メラトニン製剤は米国では健康増進補助食品として販売されていますが、日本では販売が認可されていません。米国で買うかお土産で手に入れるかのどちらかしかないでしょう。なお使用する場合には自分に合った最小量を用い、決して朝方には飲まないようにしましょう。人によっては日中の眠気が残ることもあり、夜間服用の場合でも、翌日の運転には十分注意してください。

夜眠れない、朝起きられない(睡眠相後退症候群)

寝る時間帯がズレている
社会的に望ましいとされる時間に眠れない、起きられないという障害です。そのため、朝は仕事や学校に遅刻する、などの不都合が生じます。
夜眠れない、朝起きられない? それなら自分と同じだと考えられる方も多いことでしょう。しかし通常の人に比べ、就眠時刻と覚醒時刻が著しく遅れるという点に特徴があります。つまり、午前二〜3時ごろから朝6時の間にようやく入眠し、目が覚めるのは正午から午後3時くらいとなってしまうのです。
もっとも、この病気は睡眠をとる働きは損なわれていないので、いったん眠ると途中で目覚めることなく、まとまった眠りをとることができるようです。それでも眠る時間帯がふつうとは違うので、どうしても眠りの質は損なわれてしまいます。
この時間帯での生活は1カ月以上も続きます。したがって、通常どおりの睡眠時間帯に眠ろうとすると不眠症となり、朝は起きられず、仕事や学業に差し支えることも少なくありません。ふつうの時間に合わせようと必死の努力をするのですが、目覚めてみれば昼近く、会社への電話も入れにくいまま休んでしまうということになるのです。遅刻常習犯になってしまえば言い訳も立ちません。やっとの思いで起きて会社に行けたとしても、眠くて仕事はうわの空で手につきません。これはもう、自分の力ではどうにもならなくなってしまうのです。
仕事ばかりではありません。たとえば釣りの仲間と朝約束してもすっぽかすことが多く、やがて相手にされなくなり、社会的にも孤独になってしまいます。当然ながら気分も冴えず、ますます家に閉じこもるということになりかねないのです。
不規則な生活がきっかけ
年動的には高校生から20代後半くらい、男性に目立つ傾向があります。多くの人は、10代の終わりころから発症し、20代初めに病院を受診します。高校生の場合には、親元から離れて予備校へ通うなど、本人の睡眠習慣が乱れ、睡眠衛生上、単に不健康な生活が睡眠リズム障害を招くことが多いようです。
原因はまだわかっていませんが、睡眠覚醒リズムを支配している体内(生物)時計の変調といえるでしょう。
私たちは通常、身体が自然にもっている約25時間の睡眠覚醒リズムを、24時間という生活時間にリセットして暮らしています。リセットするためには、朝目覚めたときの明るさ(光)や、会社に行くという動機づけ、誰かが起こしてくれる、朝食をとるなどのきっかけ(社会的同調因子)が必要です。
患者さんはたいてい、光に対する反応が鈍くなっています。そのためリズム位相前進が起こりにくいと考えられています。しかも目覚める時間が遅いため、目覚めた後で光に当たる機会が少なくなり、睡眠リズムはさらに後退しやすくなってしまうのです。
なかには、幼児のころから遅くまで起きていたという睡眠習慣があったという人や親の睡眠習慣、あるいは遺伝の影響などを指摘する報告も出ています。
二週間も続くようなら病気を疑ってみる
次のような条件に当てはまれば、睡眠相後退症候群と診断されます。
⑴望ましいとされる時間に眠れない、1人で起きられない、日中に眠気がある。
⑵本人の睡眠時間帯が、社会的に望ましいとされる時間帯より著しく後退している。
⑶症状が1カ月以上続いている。
⑷社会規制をせず好きなように生活させると、時間帯は遅れても、ふつうに続く睡眠が習慣的にとれる。一人で目を覚ますことができる。
⑸睡眠時間帯は後退しているが、24時間周期の睡眠覚醒リズムは持続している。
⑹毎日の睡眠時間を記録すると、習慣的な睡眠時間帯の後退が二週間以上持続している。なお睡眠相後退症候群の人は、睡眠障害患者の数パーセントに過ぎません。しかし、この状態が病気であるという周囲の理解がないと、登校拒否や怠け者と誤解されがちです。なるべく早めに睡眠の専門家に相談するとよいでしょう。

光を浴びる治療(光照射療法)が効果的

現在のところ、遅れたリズムを調整するには「高照度光照射」が有効です。
高照度光、つまり明るい光が網膜から入ると、網膜視床下都路を通じて視交叉上核の生物時計に伝達され、体内時計を進ませたり遅らせたりすることができるのです。睡眠障害のほかにこれという心身の問題がなければ、目覚めたときに3000ルクス以上の高照度光に40分ほど当たります。
この治療には、携帯型の照射装置を使います。
これは蛍光灯を並べたもので、合計で3000ルクス以上の照度が得られるように設計されています。朝目が覚めたら、この前に座って一分間に数回は蛍光灯を見るようにします。その前で食事をし、新聞を読んでもいいでしょう。光源をジーッと見つめてはいけません。光を浴びるという感覚でよいのです。
睡眠相後退症候群の人には、起きられる時刻の二〜3時間くらい前に、無理してでも起きてこの光を浴びてもらいます。眠る時間が前進したらそれに合わせて光を当てる時刻もズラしていき、やがて望ましい時刻に睡眠がとれるようになったら、同じ時刻に固定します。それを毎日、日課のように繰り返すのです。
光と健康
光は体内時計調整に重要な役割をしています。光は目から入り、直接的には脳を刺激し覚醒させる働きがあり、間接的には生体リズムを変化させる作用があります。生体リズム(体温、ホルモン)や睡眠に対する光の影響の仕方には特徴があります。体温が最低となる明け方に光に当たると体内時計の時刻が前進し、夜に光が当たると後退します。朝、あふれる日差しのなかで目覚め、身支度を整え、食事をすると、その夜は早く眠くなります。つまり早寝早起きになるのです。その際、当たる光の明るさは3000ルクス以上が必要です。
健康に役立つ高照度光利用法はブライトケアと呼ばれ、体内時計が狂いがちな現代社会で私たちの体内リズムリセットに使われ、高齢者では、生体リズムが不規則になるための睡眠不足を調整することに役立っています。最近のトピックスとして、光環境の重要さが考えなおされ、医療分野や生命と生活の質(QOL)向上に必須の条件であることが確認されています。
【症例】真面目な社員が遅刻常習者に (21歳女性)
Fさんは希望した会社に採用され、独身寮に入って元気に働いていました。
ところが丁年ほど前から仕事が忙しくなり、残業が続くようになりました。終電で帰るか、電車がないときはタクシー帰宅。寝るのは朝方になることも珍しくありません。週末は平日の睡眠不足を補うため、終日寝ていることも多く、疲れもかなり蓄積されていたようです。それでも何とか朝8時ごろには起きて出社していました。
しかし、ここ数カ月は、朝起きられない状態が続き、会社を休むことが多くなってしまったのです。
ふだんは真面目な人だけに、会社も心配して様子を見に寮を訪れ、ボーツとしている本人を職場へ連れてきたこともありました。出社さえすれば、ふつうに働いて残業もこ
なします。これなら大丈夫と思い、「明日はきちんと出てきて」と念を押すと、「はい」とよい返事が返ってきます。でも翌朝はまた出てこない。こんなことがたびたび続き、当初は面倒を見ていた上司や同僚も、あきれて放置するようになってしまいました。
一方、彼女のほうは大変です。どういうわけか、夜中はどうしても眠くありません。気持ちはあせり、ようやく寝つくのは朝方近い時刻です。それでも8時には起きようと
目覚ましを3つもかけ、ときには実家の母にモーニングコールを頼みます。
しかし、目覚ましは鳴っても止めてしまう。電話には生返事で切ってしまう。けっきょく眠り続けて、気がつけば昼すぎという状態です。何とか仕事に出ようと、徹夜して出社したこともありましたが、そんな日は日中眠くて仕事になりません。
それはもう、どうしようもなかったのです。
午後目覚めてから会社に電話するのもつらく、出て行くのはきまりが悪く、自分が情
けなく、気持ちも沈みがちになり、部屋に閉じこもったままの日が続きました。
幸いにも、彼女の几帳面で真面目な性格から、どうも怠けているだけではない、と彼女の上司も気がつき、病院に連れてくることができたというわけです。
内科診察の結果、からだには異常がありません。精神科的にも問題はありません。職場の人間関係も、本人は温和でこれという問題はなく、上司との間もうまくいっていました。家庭的にも、他の社会生活上にも大きなストレスはないようです。
そこでリズム障害を疑い、入院してもらいました。まず仕事がない病棟で好きな時間に寝て起きるという生活をし、睡眠日誌、活動計、睡眠ポリグラフなどを記録しました。すると、彼女の睡眠時間帯は朝の3時ごろから眠りに入り、起きるのは午後2時ごろとなっていました。睡眠の時間帯が遅れていることが判明したのです。いったん寝ると睡眠そのものはそれほど問題ありませんでした。
入院二週目の午前6時から2時間、5000ルクスの高照度光を照射しました。光の効果はてきめんで体内時計は3〜4時間前進しました。さらに入院4週目から光感受性を高めるといわれるビタミンB12を一日3錠(3ミリグラム)、3回に分けて服用してもらいました。その結果、中途覚醒も少なくなり熟眠感も出て、睡眠時間帯も安定したので6週目に退院しました。その後はなんとか時間内に会社に出られ、遅刻や欠勤もなく働いています。

睡眠時随伴症

眠っていてもトラブルがいっぱい
男の子に多い夢遊症
私たちが眠っている間は、静かに行儀よく眠っているわけではありません。
いびきをかき、寝言をいい、寝返りをうち、ベッドの上で一回転し、なかにはベッドから落ちてもなお眠っているという人もいます。
丑3つ時に悪夢にうなされるかと思えば、急にゲラゲラと笑い出すこともあるでしょう。ときには眠ったままむっくりと起き上がり、動きまわるということさえ起こるのです。
睡眠中、または睡眠と覚醒の移行時に起こる、いわば問題行動とでもいうべきものを「睡眠時随伴症」といいます。よく見られるものとしては、夢遊症、夜驚症(やきょうしょう)、いびき、歯ぎしり、さらに最近注目されているレム睡眠から起こる異常行動などがあります。
眠っていたはずの人がむっくり起き上がる。表情は虚ろで、目は開けているが視線は定かでない。数秒経ってからまたベッドに倒れ込む……。
このような寝ぼけは珍しいことではありません。しかし、動作がベッド上にとどまる寝ぼけに対し、ベッドから出て歩きまわり、それが10分以上も続くものがあります。
それが「夢遊症」です。
起き上がって服を着たり、戸を開けて外へ出て行ったり、引き出しを開けたり閉めたり、毛布を取り出したり、ごそごそと単純な動作を繰り返します。何か聞いても答えることはまずないのですが、ときには口の中でぷつぶついうこともあります。
子どもが夜間、突然むっくり起き上がり、かけぶとんを抱え込み、大きな声で「おふとんを干すよ!」といい、ベランダヘ出て行こうとする。びっくりした母親がそれを止めて、子どもをベッドに寝かせる。翌朝になって「ゆうべはどうしたの?」と間いても、何も憶えてない。そんなこともあるのです。
なかには家族ぐるみで夢遊状態になったという話もあります。米国デトロイトでの出来事です。夜勤を終え、午前2時に帰宅したお父さんは、そこで信じられない光景を見ました。なんと、食堂で妻と3人の子供が朝食を食べていたのです。わが目を疑ったお父さんは、「なんでこんな時刻に朝食をとっているの?」と聞きましたが、家族は父親を無視したように食べ続け、そのうちに立ち上がったかと思うと、ぎこちない動作でベツドに潜り込んだというのです。
夢遊症の人が、人に迷惑をかけたり、暴力をふるったりすることはまずありません。動きまわってもぶつかりそうなものは避けて通るし、不思議なことにははしごを昇ったり、屋根に上がったり、交通の激しい往来をケガもなく渡ったりすることもあるようです。とはいっても、ときにはドアに頭をぶつけたり、手をはさんだり、転んで骨折するなど、思いがけない事故を起こすこともないとはいえません。
眠っている間に「歩きまわる」など、覚醒時の行動が出現する夢遊症は、人口のおよそ1〜15%に見られるといわれています。発症は4〜10歳ごろ、男の子に多いのですが、まれに大人になって初めて出現する例もあります。
近年の研究によると、夢遊症は眠りの深い部分から突然起こることがわかっています。
夢遊歩行中の脳波を見ると、眠っている脳波と覚醒している脳波が交互に出現します。子どもがこんな症状になったのでは、まずお母さんのほうがびっくり仰天してしまいますが、夢遊症自体はそれほど心配なものではなく、ほとんどの場合は成長とともに消失してしまいます。
ただ、激しく勤きまわることで思わぬケガをすることや、ごくまれとはいえ他人に迷惑をかける恐れも無視できません。早めに専門家に相談したほうがいいでしょう。
夢遊症は、熱や寝不足が原因となっていることもあります。また、安定剤などの薬によって引き起こされることもあります。ときには夢遊症だと思っていたものが、実は夜間に起きるてんかんの発作ということもあるのです。これらの場合には、鑑別のために脳波検査も必要となるでしょう。
夜驚症は深い眠りで起こる
夜驚症は、子どもが眠って一時間も経たないうちにはじまります。
突然起き上がり、耳をつんざくような悲鳴や泣き声をあげます。恐怖に脅えて混乱した表情、目は見開き、顔は紅潮し、息苦しそうで身体をこわばらせています。呆然として周囲への関心はなく、問いかけにも反応しません。何に脅えているのか、本人はいうことができません。やっとのことで「幽霊」「怪物」「お化け」などと答えることもありますが、後で聞いても、そのときのことは憶えていません。
夜驚症は深い眠り(ノンレム睡眠)で起こりますが、なぜ夜驚が起こるのかについてはまだよくわかっていません。
こうしたパニック状態は、ときに10〜20分くらい続き、脈拍は倍増します。夜驚症は4〜12歳の子どもの1〜3%に見られますが、夢遊症と同様に成長とともに自然に回復してしまいます。
子どもはよく悪夢を見る
悪夢とは、夢を見て起こる不安発作です。
眠って一時間以上経ち、怖い夢に脅えて目が覚めます。悪夢は夜驚症と違い、はっきり目が覚めるのが特徴です。その夢の内容も鮮明に憶えています。目覚めた後はどきどきしますが、夜驚症ほどはひどくありません。
これは7〜10歳の子どもによく起こります。夜驚症はノンレム睡眠から起こりますが、悪夢はレム睡眠から起こります。怖がりますが、ベッドで静かにしているので、落ち着いてから寝かせるようにします。

レム睡眠時の異常行動

夢を見ているときには、筋肉の活動は抑えられています。そのおかげで私たちはふとんにくるまったまま、夢の中で逃げたり、ものすごいスピードで飛んだり、落ちたり、泳いだりすることができるのです。
しかし、もし筋肉の力が抜けてなかったら、どんなことになるでしょう。
夢の内容そのままに、激しく活発な言動が現れるのです。隣に寝ている人をいきなりぽかぽか殴ったり蹴飛ばしたり。攻撃を受けた人は仰天して飛び起き、ケンカになってしまうかもしれません。ガラスに突進し、大ケガをすることもあります。
そんなときは、大声で名前を呼び、からだをゆすって起こしてあげましょう。すぐに目が覚め、異常行動は中断します。それからいままで見ていた夢を思い出せます。
この異常行動は、老年者に多く見られます。原因としては、脳幹部の病気、アルコール依存、薬物を連用していた人が急に服用を中断した直後など、いずれもレム睡眠の出現が異常に増加している状況で起こります。治療は専門家に相談し、クロナゼパムという薬を服用するとよいでしょう。
いびきを防ぐには
いびきとは、気流によって上気道のやわらかな組織(軟口蓋)が摩擦を起こし、その振動が上気道、鼻腔、口腔にわたって共鳴し、音を出すものです。
眠ればからだの筋肉はゆるみ、上気道も狭くなります。
その状態で息を吸えば、気道の内側の軟部組織が、内側に引っ張られては元へ戻るということを何度も繰り返します。そのため旗が強い風にあおられるように、内部組織が振動し、さまざまな音を発生します。それがいびきです。
ちょうど、バリトンサックスが鳴るしくみと似ています。上気道が狭窄を起こす原因は、扁桃腺やアデノイドが大きい、鼻中隔が曲がっている、ポリープができている、アレルギーで粘膜が厚くなるなどがあります。このような状態にある人は、いびきもひどくなるので注意が必要です。
振動音が35フォン以上のものを「ふつうのいびき」、50フォン以上になると「大いびき」とランクされます。空気の通りが悪くなるので、当然ながら息苦しくなり、呼吸をするのによけいな力が必要になってしまいます。寝ていても人の4倍以上の力が必要になるわけですから、もはや運動しながら寝ているようなものです。
いびきは、浅い眠り(睡眠段階二)のなかで多く見られますが、眠りのどの段階でも起こります。眠りの浅いときのいびきなら、横から声をかければぴたっと止むこともあります。
いびきは歳とともにひどくなります。とくに仰向けで口を開いて眠っているときは最悪です。いびきで眠りが浅くなり、深く眠れないこともあるでしょう。ときには自分のいびきで驚いて目が覚め、あたりをきょろきょろ見まわすような例もあります。
いびきの種類もいろいろです。
いびき博士として知られる耳鼻科池松クリニックの池松武之亮先生によると、いびきには30種類もの型があるそうです。風流なスズムシ型やマツムシ型、うす気味悪い忍び笑い型、すさまじい機関銃型、爆音型、猛獣型、さらにごぼごぼというマンホール型、ガックーンというエンスト型などです。思わず笑ってしまうようなネーミングですが、いびきを聞かされるほうはたまったものではありません。
いびきは、はた迷惑というだけではありません。実はいびきをかいている本人も眠っていないことが多く、眠れたとしても深い睡眠にはなっていない場合が少なくありません。
これは睡眠脳波を検査することで確認されています。
しかし、さらに注意すべきことがあります。
いびきをかく人のなかには、夜間に呼吸が止まり、苦しくなっては再開するという「睡眠時無呼吸」の人が多いという事実です。ひどいいびきは、夜間における呼吸停止の疑いもあり危険信号です。太った人が、あまりにも苦しそうないびきをかくようなら、専門家に相談してみるべきでしょう。
では、有効ないびき対策はあるのでしょうか。
まず体重を減らすことです。太っていることは、気道を狭める大きな原因となっています。次に禁煙、禁酒。酒やタバコは粘膜の炎症を起こしやすく、炎症によって粘膜が腫張すれば、いびきを起こしやすくなるのです。病院ではせめて2〜3ヵ月は止めるように指導します。
また、扁桃腺やアデノイドなどのある人は、耳鼻咽喉科で相談するといいでしょう。
アレルギーの管理も大事です。眠る環境としては、部屋の湿度を上げておくようにします。空気が乾くと、腫張した粘膜が気流の通過を妨げ、いびきになりやすいのです。寝方も工夫してください。仰向けはいびきになりやすいので横向きに眠るようにします。枕などを背中に入れるか、パジャマの背中に柔らかいテニスボールを縫い込むなどの方法があります。こうすれば仰向けになるとごろごろするので、つい横向きになるというわけです。
人のいびきで眠れないという人の自衛策としては、耳栓をしていびき人間より先に眠ることです。遅れをとって物凄いいびきに巻き込まれたら、扇風機か何かで冷たい風を送ってみてください。意外な効果があります。
歯ぎしりの悩み
「キリ、キリキリ……」
夜中の歯ぎしりは気になるものです。周囲に迷惑をかけるだけではありません。歯ぎしりで歯が摩滅すれば、噛み合わせが悪くなって歯ぐきの損傷を起こします。
歯ぎしりは、眠っている間に、顎を動かす咀嚼(そしゃく)筋が活発に活動するために起こります。
通常は、深い眠りから浅い眠りに移行した後に起こるようです。眠りが浅くなると、無意識に顎を動かす神経系と、それを抑える神経系が同時に活動をはじめます。しかし、抑える神経系の活動が出遅れると歯ぎしりになってしまうのです。
歯ぎしりは健康な人にも見られますが、歯の噛み合わせが悪い人や精神的ストレスが強い人によく起こるようです。
残念ながら歯ぎしりには、決め手になる治療法はありません。ひどい場合は、歯科医に相談し、歯を保護するゴムかプラスチックの装置を作ってもらいましょう。寝る前に歯に被せて眠れば、歯を磨滅させることだけは予防できます。ストレスの強いときに起こりますから、眠る前に抗不安薬を飲むのも効果があります。

なぜ「金縛り」になるのか

夜半や朝方、夢うつつで目が覚めると「からだがしびれたように動かない」という恐ろしい経験はありませんか? これは昔からいわれている「金縛り」という現象です。
辞典によれば、「強い力で体が縛られて身動きができない状態」とあります。古くは仏教用語で、「不動明王の力により悪魔が鎖で縛られたようになって身動きができない状態になること」という記載も見られます。
しかし、現代の私たちがいう「金縛り」とは、一般的に睡眠中に目が覚めてからだが動かない状態を表します。専門的には「睡眠麻庫」といわれています。
健康な人でも、夜中に夢うつつで目が覚めたとき、身動きできないことを経験することがあります。誰かを呼ぼうとしても声が出せず、何が起こったのかわからずに不安で汗びっしょり。手足がまったく動かず、呼吸も浅くなり、死にそうな恐怖感や息苦しさを味わいます。
夢か現実かもわからないまま、追いかけられたり、戦ったりするという体験をすることもあります。そればかりか、はっきりとした幻覚を見ることもあるようです。怖い顔や、白黒やカラーの動物など、そこにいるはずのない魔物たちです。ときには音楽や脅迫する声、不快な悪口などが聞こえることもあります。幻聴です。
しかし、この状態は、数秒から数分も続くと徐々に、または突然に回復します。あるいは人が声をかけたり、軽くからだにふれてあげるだけでも中断され、我に返ることができます。
眠れる森の美女が王子様のキスを受けて、100年の眠りから目が覚めたのもこのような感じなのかもしれません。
実際に金縛りにあったという人の体験談でもっとも多いのは、胸苦しくて目が覚めたものの身動きできず、ふとんの上に何かが乗っているような感じがして、恐ろしい顔(人間なのか動物なのかはっきりしない)が見える、というものです。
また、手が出てきて首を絞めたり、からだを触ったり、頭を足で踏まれたり、耳の穴に指を入れられたりしたという体験もあるようです。
ひどいものでは、部屋のすみから白い手が出てふとんを引っぱったというものや、枕から手が出て首を絞めた、などという話もあります。人が寝室に入ってくるように見えるものもあるようです。
金縛りは心配なものでしょうか?
金縛りそのものは、基本的には生理的な現象と考えてまちがいありません。発生頻度など詳しいことはまだ明らかにされていませんが、欧米では健康な成人にも2・7〜6・1パーセントの人には生じるといわれています。
しかし、最近のわが国での調査では、正常な人でも40〜50パーセントくらいには、一生のうちに単発型の金縛りが一回は起こると報告されています。起こる年齢は幅広く、子供から中年まで誰にでも起こり、成人、青年期はとくに多く見られます。男女差はありませんが、家族性のものは女性に多いといわれています。健康な人に起こる金縛りは朝方に多く、夜の入眠時はまれです。
注意すべき点としては、前にも述べたように、金縛りはナルコレプシーという病気の一症状でもあるということです。ナルコレプシーの場合は、健康な人に比べて出現頻度も多く、出現する時間も入眠時から朝方まで時刻を選びません。
では、どうして金縛りになるのでしょう?
金縛りはレム睡眠と関連して起こります。多くはレム睡眠から目が覚めた後に金縛りにあうようです。その理由は次のように考えられます。
ご存じのようにレム睡眠の特徴の一つは、からだを支えている筋肉の緊張低下があげられます。からだの力が抜け、ぐったりしてしまうのです。そのためレム睡眠から突然目が覚めると、意識はあっても、レム睡眠中に緊張低下してしまった筋肉のほうがまだ回復していないことがあります。そのうえレム睡眠に特徴的な夢体験がまだ残っていて、その半分目が覚めたような状態を幻覚のように感じてしまうのです。
また、寝入りばなに起こるのは、覚醒状態からいきなり筋緊張が低下しているレム睡眠へ移行するために、動けなくなってしまうものと考えられます。
金縛りを起こす素因としては、次のようなことがあげられます。
⑴不規則な睡眠習慣の人
⑵よく徹夜をする人
⑶睡眠覚醒リズム障害のある人
⑷一過性のものとしては、シフト勤務や時差ぼけの際に起こりやすい
⑸人によっては心理的ストレス、過労、仰向けに寝ると金縛りを誘発することがある
金縛りの対策としては、まず自分の眠りが、最近不規則になっていないかどうかをチェックすることです。とくに寝不足になっていないかどうか、もし睡眠不足であれば解消するように努めてください。交代勤務の人や、時差ぼけの状態でもなりやすいので注意しましょう。ストレスでも誘発されますから、ストレスを減らすように心がけます。
実際的な対策としては、金縛りにあったときはいっしょに寝ている人に声をかけてもらうとか、からだにさわってもらえばたちどころに解けますが、これは現実的ではありません。たまたま隣に寝ている人の様子がおかしいと気づけばいいのですが、これは慣れないと無理でしょう。
可能性のある方法としては、レム睡眠を減らす薬を服用することです。これは専門家に相談する必要があります。
エチラーム(デパスのジェネリック)など睡眠薬通販は、こちら→お薬館

-睡眠
-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

睡眠薬・睡眠導入剤とは?

目次1 睡眠導入剤とは?種類・強さ2 睡眠薬の作用メカニズムから2つに分類3 脳の機能を低下させる睡眠薬4 自然な眠気を強める睡眠薬5 睡眠薬の作用時間の違い6 睡眠薬の強さの違い7 睡眠薬以外の不眠 …

睡眠の質が良くなるコツ

目次1 はじめに2 90分周期で繰り返される「浅い眠り=レム睡眠」と「深い眠り=ノンレム睡眠」3 睡眠・覚醒と、深〜い関係がある体温の上がり下がりやホルモン分泌の増減4 眠れないことは共通しているが、 …

体外にある不眠や過眠の原因

目次1 外在因性睡眠障害2 不適切な睡眠衛生ー日常の行動習慣が原因3 環境に原因のある睡眠障害がある4 睡眠不足の常習者はさまざまな症候を示す5 食物のせいで不眠がおきる6 皮肉にも睡眠薬が睡眠障害を …

睡眠薬Q&A

目次1 睡眠薬が効かない時2 睡眠薬(ドリエル)とは?3 メラトニンについて詳しく教えてください4 止めると出てくる症状(反陰性不眠や離脱症候など)は?5 アルコール(飲酒)と睡眠薬の相互作用6 疼痛 …

睡眠薬の通販・個人輸入代行

目次1 睡眠障害を評価する検査には主にどんなものがありますか?2 日中の眠気の検査とはどのようなものがありますか?3 うつ病と睡眠障害4 躁鬱(そううつ)病5 心不全と不眠6 甲状腺と不眠7 肺気腫と …