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睡眠の不快症状と治療法

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睡眠の不快症状と治療法

なぜ人は眠るのか? 眠たいから眠ることには間違いはないのですが、つきつめて考えれば、朝起きてから日中活動して蓄積された疲労を、心身共に回復するために眠るのです。で
あるならば、眠りは快適なものでなければなりません。
ところが眠りのなかには「不快な眠り」というのも存在します。なぜ眠りに。快適と不快があるのでしょうか? また、最近では「眠り」にかかわるいろいろな疾患も注目されるようになってきました。眠れない、あるいは眠気が取れないといったものから、眠っている間に、本人の預かり知らぬ病気の前兆をあらわしているケースもあります。
そこでこのページでは、「眠り」に関するさまざまな病気や不快な症状を洗い出し、それが病気であれば、どうすれば克服・予防ができ、快適な眠りを取り戻すことができるのかを見ていくことにします。
また病気とはいえないまでも、「金縛り」「寝冷え」「イビキ」など、「眠り」の周辺で起きるさまざまな現象についても考えていきます。
あなたももしかしたら睡眠障害にかかっているかもしれません。じっくり読んで勉強してください。
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Q13 睡眠のことで医療機関を受診するには何科がいいのですか?
不眠で悩む人が医療機関にかかるとき、どの診療科目にかかればいいのか悩むことがあると思います。「不眠外来」「睡眠障害外来」のように専門性を打ち出している病院やクリニッ
クならそのまま受診すればいいのですが、そうではないところでは、ちょっと迷うかもしれません。
「精神的な問題だから精神科かな?」と思う人もいることでしょう。たしかに精神科領域の疾患が原因で眠れなくなることも少なくないので、それも間違いではありません。しかし私
は、最初は内科の受診をお勤めします。それはなにも私が内科医だからそう言うのではなく、順序としては内科でまず全身状態の把握をしておくほうが、その後の治療がスムーズに
行くという理由によるものなのです。
これはぜひ覚えておいていただきたいのですが、「初診は内科」というのは不眠症に限ったことではありません。もちろん、骨が折れたとか、花粉症のような場合は、最初から整形外科なり耳鼻咽喉科なりを受診して問題はありませんが、いずれ外科の領域になることが予想される病気であっても、あるいは内臓疾患や循環器系のいわゆる生活習慣病などでも、最初は内科からスタートするほうが効率的な治療を受けやすくなるのです。
一般の人にはなかなか理解されにくいのですが、初診というのは、医療提供側からいわせていただくと「今ある症状」から考えられるさまざまな原因を予測し、そのなかから正解を類推し、これからの治療方針を立てていかなければならないので、かなり高度な知識と判断力を必要とするものなのです。したがって、どこの病院でも初診を担当する内科医
は、経験豊富な医師が担当します。最近では、初診を専門にする診療科目を「総合内科」等の名称を掲げて、「一般内科」とは区分けしている病院もあります。内科で基礎疾患の有無を検査して、必要であれば「精神・神経科」、あるいは「心療内科」などの専門性の高い診療科に紹介されていくほうが、患者さんだけでなく医師にとっても、総合的な判断ができるので治療がしやすいのです。ぜひ覚えておいてください。
Q14 眠りの病気にはどのようなものがあるのでしょう?
人の眠りに間する病気には「不眠症」「過眠症」「睡眠時無呼吸症候群」などがあります。睡眠時無呼吸症候群については、あとで詳しく述べますが、不眠症とは「眠りたいのに眠れ
ない症状」、過眠症とはその逆に「眠りたくはないのに眠ってしまう症状」をさしています。
不眠症の代表例としては、精神的な疾患による不眠症(統合失調症やうつ病が原因のもの)と、反応性不眠症(心配事で眠れないI病気ではない)などがあります。一方の過眠症には、痴呆によるものと、原因はわからないけれど眠くて仕方ないという本態性過眠症、それに感情が昂ぶった瞬間に突然、睡眠に落ちてしまう「ナルコレプシー」という病気などがあります。
いずれも本人にはつらい症状ではあるのですが、すぐに生命の危機に直結する病気はあまりありません。しかしだからといって、放置しておいていいというものでもありません。うつ病などは、放っておけば自殺に至る危険性も否定できませんから。
うつ病になると、初期の段階で「眠れない」「食べられない」という症状が出ます。とくに「眠れない」というのは深刻で、実際にはちょっと眠るのですが、脳が興奮しているのですぐに起きてしまい、いろいろと思い悩んでは寝つけずに苦しむという堂々巡りの状態になってしまいます。
これが進行すると「罪責念慮」といって、眠れないのは自分が悪いから、世の中がおかしいのも自分のせいだ、と思い詰めたあげく、最悪の場合は自殺してしまうことにもなりかねないのです。こうなると、単に不眠症だからといっておろそかにはできない問題になってきます。
一方、うつの反対の「躁(そう)病」の人も一種の不眠になりますが、これは「眠れない」のではなくて「眠らない」という性格の不眠です。とにかくバイタリティに溢れて、夜中だろうと仕事や遊びに精を出したり、別に今やらなくてもいいことまでもガンガンとやってしまったりするものです。これなども、ある種の睡眠障害といえるのかもしれません。
また、睡眠時無呼吸症候群などは、外科的手術による処置もありますが、基本的には内科か精神神経科領域の疾患です。ライフサイクルに原因があることも少なくないので、そうした生活環境の改善をしながら、長い時間をかけて、徐々に治療していくという点では共通しています。
Q15 眠れないのも、反対に眠くて仕方がないのも病気なのですか?
私は内科医なので、内科医としての診療をしていて思うことを述べたいと思います。それは「眠れない」という症状の重要性についてです。
日常の診察のなかで「眠れない」と訴える患者さんは数知れません。無数にいると言っていいでしょう。もちろん、不眠が主訴ではなくても、いろいろと話を間いていくと「夜、眠れなくて困っている」というケースも含まれますが、どちらにしても、「眠れない」という症状が内科を受診する患者さんのなかのかなりのウェイトを占めていることは間違いありません。
一方「眠くて仕方がない」という症状を訴える患者さんはめったにいません。本来ならもっといてもおかしくないはずなのですが、不眠を訴える人の数に比べれば圧倒的に少ないの
が現状です。これは私の思うところ、薬の存在が背景にあると思います。
つまり「不眠」という症状には、昔から睡眠薬という医薬品が用意されていて、医師に訴えれば薬で対処してもらえるという知識が根づいていることから、「不眠→お医者さんへ」
という図式がイメージしやすいのでしょう。反対に「眠い」というのは不眠の反対だから、むしろ健康的と捉えることもできなくはないので、医療行為に結びつけて考えることは少ないようです。
「不眠」という症状から考えられる原因疾患にはほかにもあります。私の専門でもあり、この本でも再三出てくる睡眠時無呼吸症候群などもその一つですが、いわゆる精神疾患、とくにうつ病や統合失調症などにも不眠は関係してきます。
ただし同じ不眠でも、それぞれ疾患によって特徴が異なります。睡眠時無呼吸症候群とうつ病が原因の不眠は、睡眠が浅いのが特徴で、夜、布団に入ればうつらうつらして眠り
には入るものの、すぐに起きてしまうといったことを繰り返します。一方の統合失調症は、常に興奮状態にあるため眠りに入ることができないのです。
「眠れない」ということでは同じでも、原因疾患はさまざまです。もちろん何の病気でもないことも多いので、最初から必要以上に気をもむことはありませんが、自分の不眠がどのようなタイプなのかは知っておくべきでしょう。

不眠症の原因

Q16 不眠症の原因は何ですか?また、どうやって治すのですか?
一口に「不眠症」といっても、その症状・原因・基礎疾患などによって、対応は多岐にわたります。ですから、まず最初に共通して考えることは、不眠症の原因を特定して統合失調
症などの器質性精神疾患がないことを確認するということが求められます。不眠の原因には、不安からくるものが多いので、その不安の原因を解消し、そのうえで不安を和らげるよ
うな睡眠導入剤、あるいは眠りの質を深める睡眠薬を用いて経過を観察していくというのが一般的なアプローチといえます。
ただ、正直言って、不眠症の治療というのはとても難しいのです。以前、私が診たある60歳代の女性の患者さんを例に解説していきましょう。
その女性は同じく60歳代のご主人と二人で外来を訪れました。そもそもご主人が睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるというのが心配だったそうなのですが、奥さんも昼間眠くて仕方がないというのです。そこでご主人が、奥さんも同じ病気なのではないかと思って一緒に来院したとのことでした。そこでお一人のお話をよくよく聞いてみると、おおまかに次のような事情があることがわかってきたのです。そのご夫婦には娘さんが一人いて、すでに嫁いだ先に男の子が生まれました。つまりご夫婦にとってたった一人の孫ということになります。ところがその子供が成長するにしたがい「引きこもり」になって、学校を休みがちになってしまったというのです。どうやら奥さんの「昼間眠い」という訴えは、睡眠時無呼吸症候群によるものではなく、孫の登校拒否が心配なあまりに眠れなくなっていたということらしいのです。
この奥さん、カウンセリングの最初の頃はとつとつと「近頃何に対しても興味を持つことができなくなった」と話していたので、私はうつ病を疑ったのですが、その後、孫の話になった途端、克明な描写を交えて語り始めたのです。つまり彼女は、可愛い孫が学校に行けない状態にあることに心を痛め、それでいて自分は何もしてあげられない無力感がもどかしく、人知れず悩み苦しんでいたのです。
彼女の場合もそうでしたが、自分一人ではどうすることもできない大きな悩みや不安などが、本人も気づかないうちにその人の気持ちを支配してしまい、その結果、眠れなくなって
いく–というのが不眠症のなかでも圧倒的に多いパターンです。
こうした症状の人は、どうすれば再び安らかな眠りを確保することができるのでしょうか。たとえば、直面する問題に正面から取り組むのも一つの手でしょう。逆に問題からいっ
たん目を離して、一時的にせよ逃避してしまうという考えもあります。したがって「こんなときにはこうする!」という決まった手立てはありません。その人の置かれた立場や状況、また本人を取り囲む家庭環境などについても総合的に検証して、手を打っていく必要があるのです。
そして戦うべきと判断すれば、協力者はいるのか、勝算はあるのか、精神的な支援(カウンセリングなど)の準備–などを検討します。反対に一時的な現実逃避をするのであれ
ば、ゆっくり休養できるための安定剤などを用いて、休と心がリラックスできるようにしていくことになります。ただ、これは原因が判明している理解できる不眠症であるだけま
だマシということができます。
不眠の原因が、うつ病が基礎疾患になっているときの不眠症治療は、一層困難を極めることになります。うつ病の患者の特徴的症状は、
(1)一日中だるくて仕方がない
(2)食欲がない
(3)動く気力がない
(4)眠りに入ることはできるけれどすぐに起きてしまい、再び眠りに入ることができなくなる
というものです。こうなると、薬(抗うつ薬)を使った精神・神経科領域の専門的な治療が必要となってきます。
うつ病の不眠の特徴は(4)の「眠りに入ることはできるけれどすぐに起きる」というものですが、さらに進んで「興奮して眠れない」という状態が続く場合は、統合失調症の前兆
としての不眠である可能性もあります。
統合失調症は、本人の興奮は著しく、周囲を巻き込んで迷惑をかける場合もあります。もちろん、幻覚、幻聴、妄想などが現れるようになれば周囲もそれとわかるので、精神科によ
る専門治療を受けるようになりますが、その前段階として「不眠」があることは、知識として知っておいたほうがいいかもしれません。
ただ、不眠を訴えるほとんどの人は、ここまではいっていないはずです。ハープの香りが漂う部屋でヒーリング音楽を聴いていれば、なんとなく眠ることができる–という程度の不眠であれば、深刻に考える必要はありません。それでも心配だというのであれば、疲れの原因を調べるのが先決になりますから、最初から精神科に行くのではなく、やはりまずは内科を受診することをお勤めします。

寝冷えの原因

Q17 睡眠中の寝冷えの原因と注意すべきことは何ですか?
寝ているときにおなかが冷えて痛くなったり、その結果、風邪をひいたりするのが「寝冷え」です。誰しも一度や二度は経験したことがあるのではないでしょうか? じつはこれ、
人間が寝ているときと起きているときの体温に差があることに原因があるのです。
人間の体はノンレム睡眠のとき、起きているときに比べて体温は約0・5度くらい下がります。レム睡眠ではさらに下がる場合や逆に上昇する場合などがあって一定せず、体温のコントロールはできません。基本的には「睡眠中は起床時より体温が低い」ということはたしかです。ただ、普通の人は、睡眠中に低下していた体温が、起きたときに回復するものなのですが、何らかの理由で回復できないことがあります。これが「寝冷え」なのです。子供の急性死の原因の一つに、睡眠中の体温コントロールができなくなって死に至るという病気があります。これも、大きな分類で見れば「寝冷え」の一種と考えられなくもないのかもしれませんが、そうなると「たかが寝冷え」などとおろそかにはできなくなってきます。
冬場はもちろんですが、蒸し暑い夏の夜でも、寝ている間に体温は下がるんだということを認識して、クーラーを使うときはタオルケットの一枚も掛けて、冷たい風が直接体に当たらないようにしましょう。そこで、「おばあちゃんの知恵」が登場します。それは腹巻です。腹巻を使うことで体温の低下を防ぐことができ、睡眠中は不安定になりやすい体温を調整する働きがあります。
通常、布団に包まって寝ているときの寝床の温度は30度以上で、ほぼ体温と等しい状態が保たれています。ところが寝相の悪い人は無意識に布団を剥いでしまうので、体表の温度は室内の温度と等しい状態まで下がってしまいます。これが「寝冷え」を招くことになるわけですが、この状態で眠りつづけると、さらに体内の熱が奪われることになり、血管が収縮して血流が悪くなっていきます。
そして血流不全をきたしたときに、体内で一番困る臓器は腸です。腸という臓器は、つねに大量の血液が流れていますが、ひとたび血流不全になると、そう簡単には回復できない臓器でもあるのです。これが手足の血流不全なら、ちょっとした運動やストレッチで改善をはかることができます。肩凝りも叩いたり揉んだり、あるいはお風呂で温めれば凝りはほぐれていきます。
ところがおなかの血流はそう簡単には回復しないので、寝相の悪い人は、たとえ布団を剥いでしまっても、おなかだけはつねにお風呂に入っているような状態を保ち続けることが必
要で、そのためにも腹巻はとても有効な手段なのです。
どうも腹巻というと、映画「男はつらいよ』の寅さんや、「天才バカボン」に出てくるパパなど、キャラクター的にはオシャレとは正反対のイメージがあり、また海外では、腹巻の
ような保温性に優れた衣服が見当たらないことも、腹巻に人気が出ない理由の一つになっているような気もします。しかし腹巻は、医学的に見ればじつに理にかなった保温アイテムなので、本来、もっと奨励されて、これが日本特有の文化であれば、海外にもっと広める努力をしてもいいくらいです。国内で需要が伸びないときには海外に目を向ける–これは商売の鉄則。イチロー選手が寝るときに腹巻を使っているコマーシャルを全米で流せば、アメリカの子供たちはこぞって腹巻をすることでしょう。
その結果、アメリカの子供の寝冷えが減り、小児科の受診率が低下すれば、腹巻の有効性が国際的に立証されたも同然です。当然、その頃には日本でも腹巻ブームが巻き起こって、停滞していた腹巻業界は空前の活況を呈すことになるでしょう。全日本腹巻製造組合(そんな団体があるのかどうか知りませんが)あたりでは、真剣に考えてみてもいいのではないでしょうか?

なぜイビキをかく?

Q18 「イビキ」はどうしてかくのですか?
効果的な治療法はありますか?
鼻と口から肺に続く「気道」と呼ばれる空気の通り道が、呼吸によって振動を起こし、それが口腔内で共鳴して音になるのがイビキの実態です。音の発信源は、鼻が詰まっていれば鼻の奥、のどが詰まっていれぱのどの奥となります。イビキをかく人とかかない人の割合といった統計学的なデータはないのですが、日本人は元来あごが小さいので、イビキをかきやすい国民といわれています。
ところで、のどの構造がイビキをかきやすい形態の人でも、眠ってさえいなければ、たとえ横になっていてもイビキはかきません。きちんと睡眠状態にならなければイビキはかかないのです。だからこそ本人は、自分がイビキをかくことに気づかないのですが、そもそもイビキというものは、眠ってしまうことで意識がなくなり、のどの奥の筋肉の状態に変化が生
じて空気の流れが不自然になることによって起きるものです。
ただ、限っていなくても呼吸と共に音がする人がいるのも事実。これは、何らかの原因で扁桃腺が腫れてしまい、そのためのどが狭くなって空気の流れが塞がれたために起きる音で
す。正確にはイビキとは違うもので、しいて言うなら「荒い呼吸音」ということになりますが、この症状も決していい状態とはいえません。しかし、あごの構造上の問題で音が出てい
るわけではないので、イビキを改善するためのマウスピースはこういう人には効果はありません。扁桃腺の摘出手術をして空気の流れを改善する治療が望ましいと思います。

パートナーの気になるイビキについてのアンケート

パートナーの気になるイビキについてのアンケート


 
扁桃腺の摘出手術というと、ほとんどの方が恐がって尻込みをします。たしかに術後しばらくは強い痛みが残るので、決してラクな手術とはいえません。この手術、じつは子供には比較的簡単にできるのですが、大人になると難しくなるという特徴があります。それは、血が止まりにくくなるからです。ですから、日帰り手術で扁桃腺を摘出するというのは、あまりお勤めできません。きちんと入院して全身麻酔下で丁寧な手術をしてもらい、完全な止血を確認してから日常生活に戻るまでは、最低でも5日間の安静が必要と考えるからです。しかも、この5日間で食事が完全に摂れるようになる人はまずいません。
多くの場合は、退院したあともさらに5日同程度は食事のたびに激痛に悩まされなければならなくなるというのが実情です。医師によっては10日から2週間の入院を勧めるケースもありますが、これは悪徳なのではなく、患者の苦しみを理解している医師だといえるでし忙しいサラリーマンなどが「5日で退院」の部分だけに気を取られて、その直後に接待やら宴会やらの予定を入れてしまうと、あとあと大変な思いをすることになるでしょう。ちなみに扁桃腺摘出手術のために5日間入院したとして、気になる治療費は手術代込みで約7万円。安いと思いますか? 高いと思いますか?
パートナーの気になるイビキについてのアンケート

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歯ぎしりを治す

Q19「歯ぎしり」を治すにはどうしたらよいのでしょうか?
夫婦の間ばかりでなく、社員旅行や出張先の相部屋などで、他人の歯ぎしりがうるさくて眠れなかったことを経験したことがあると思います。正常な人でも歯ぎしりをすることがあるようですが、日常的にしかも30分以上に渡って歯ぎしりをするようであれば、専門医の治療が必要になります。というのも歯ぎしりは、歯の摩耗・破折を引き起こすばかりでなく、歯
周病やあごの関節部の痛みなどの原因になるからです。
歯ぎしりは、あごの筋肉の緊張のアンバランスによって起きる現象です。痛む歯がある場合や高さが不適合な金属冠、歯の抜きっぱなしなどによる噛み合わせの狂いが生じた場合などに歯ぎしりをしやすいのです。本人はほとんど気がついていないのですが、かなり大きな騒音を出していて、一緒に寝ているパートナーには多大な迷惑をかけていることになります。
歯ぎしりを治したいと思ったら、まず最初に行くのは歯医者さんか口腔外科で、ここで専用のマウスピースを作ってもらうことになります(この治療には健康保険が適用されます)。
このマウスピースを使うことで、歯のエナメル質の磨耗を止めることができ、寝ている間の歯を保護します。
ただし、それだけでは根本的な解決にはなりません。というのも、大人の歯ぎしりの大部分は、憂昏惑や不安などのストレスで誘発されるからです。言い換えれば、歯ぎしりをすることによって、精神的なストレスを発散させているともいえるのです。
しかも、これは子供の歯ぎしりにもいえることで、思い当たる場合は、歯科、矯正歯科と並行して、メンタル面からの改善も図っていくことが必要です。場合によっては精神・神経科や心療内科をあわせて受診することも必要でしょう。
【コラム】
どんなに大きなイピキや歯ぎしりでも本人だけは夢のなか!?
睡眠中に大きな物音や話し声が耳から入れば、誰だって目が覚めるもの。「騒音」という意味ではイビキや歯ぎしりだって立派な騒音。同じ寝室で寝ているパートナーのイビキ・歯
ぎしりの騒音があまりにも大きいために、睡眠不足や、ひどいケースではノイローゼになってしまったという話は、決して珍しいものではありません。
しかし、歯ぎしりやイピキをかいている当の本人は、自分がどんなに大きな騒音を撒き散らしていようとも、目が覚めるどころかいつまでも気持ちよさそうに眠りこけているものです。また不思議なもので、大きなイピキをかきながら眠っている人というのは、周囲から見るととても気持ちよさそうに眠っているように見えるもので、それが周囲の怒りを一層助長させる働きを持っているものなのです。
それにしても、本来であれば騒音の真っ只中、というより音の発信源でもあるのだから、真っ先に目が覚めてもいいはずなのに、なぜ起きないのでしょう。不思議といえば不思議だし、迷惑を被っている周囲の人たちにとっては、不思議を通り越して不条理とさえ感じられるのではないでしょうか。
じつはこれ、睡眠に入ることにより、感覚器の伝達経路が遮断されてしまっているためなのです。起きているときは筋肉から脊髄を通じて脳へと通じる神経回路が、眠ってしまうと
脊髄で回路が絶たれてしまうのです。大きな騒音を伴う歯ぎしりなどは、あごから顔の骨を通じて、脳に響いているはずです。ですから、これが起きているときであれば絶対に気づ
く、というよりうるさくてとても眠れる状況ではなくなるはずなのですが、ひとたび眠りに入ってしまうと、聴覚刺激回路が遮断されてしまうため、脳では直下のあごで発生している
騒音を感じることができなくなってしまうのです。そのため、周囲の人たちが眠れなくて困っているというのに、当の本人だけは気持ちよさそうに深い眠りに浸っていられるというわけです。
もちろん、なかには「自分のイビキがあまりにも大きいのでびっくりして目が覚めた」という人がいるのも事実です。しかし、これは睡眠そのものが非常に浅くなっている状態か、非常に特殊な状況での睡眠状態でのことであって、ぐっすり眠っているときには、たとえ家屋を揺るがすような大音響のイピキであっても、本人だけは眠り続けることになるわけです。
しかし、周囲にどれだけ迷惑をかけていても、我慢せずとぐっすり眠り続けられるというのは、考えようによっては幸せなことなのかもしれないな、なんて睡眠障害の患者さんを診
察する私が考えてしまうのは申し訳ないことなのかもしれません……。あ、そうでした。イビキをかくということは、睡眠時無呼吸症候群の危険性が高かったのでしたね。イビキや歯ぎしりは立派な睡眠障害の症状です。放置しておいていいはずはありません。
もしご家族に大きなイピキをかく人がいるために眠れないという人はその人を連れて、あるいは「自分のイビキがうるさくて起きてしまう」という人が万一いらっしゃれば、その場合
は自分自身で勇気を出して、睡眠障害の治療をしている医療機関を受診することをお勤めします。

眠り病

Q20 「眠り病」という病気があると聞きました。どんな病気ですか?
アフリカ中南部の風土病でツェツェ蝿という蝿を介して伝染する病気があり、これがいわゆる「眠り病」といわれています。トリパノゾーマという寄生虫に感染すると、眠り続けるだけでなく、おなかがどんどん張っていき、最後は肝臓機能の低下を招いて死んでしまいます。寄生虫が中枢神経や臓器を破壊していくこの病気、最近では新薬による治療に期待がか
かっていますが、難病には違いありません。
これとは違って「過眠症」という病気もあります。脳波の検査をしてみると、睡眠中の呼吸障害もなく脳波のパターンも正常なのに、昼間眠くて仕方ないという病気です。原因はよ
くわかっていませんが、「つねに眠い」という訴えの患者の一割ぐらいがこの疾患といわれています。ちなみに私のクリニックでは、これまで「昼間眠くて仕方ない」という人を90
0人ほど診てきましたが、このうち過眠症と診断されたのは15人。統計学的データよりかなり少ないのが現実です。
原因がわからないだけに、この病気に間しては治療法も確立されていません。コーヒーなどにも含まれるカフェインなどの興奮剤を使って脳を刺激し、眠気を覚ますことになります。といってもここで使われるカフェインはあくまで医薬品ですから、コーヒーに含まれる量とはケタが違います。ですからコーヒーを飲んで凌ごうとしても、あまり大きな効果は期待できません。効果が出るほどの量を飲むと、逆に胃炎などの悪影響が出てしまいます。
ちなみに医薬品レベルのカフェインになると、胃が荒れる程度ではすまされない副作用があります。血管の収縮、頭痛を主訴とする禁断症状、4肢のしびれ、悪心や嘔吐など、なかには重篤な症状もあるので、医師の指示に従って服用しなければなりません。
また、前にも触れましたが、昼間眠い症状の原因として圧倒的に多いのは睡眠時無呼吸症候群です。これは高血圧症を誘発し、最終的には脳梗塞や心筋梗塞などの重大疾患に結びつくケースも少なくないので、「夜ぐっすり寝ているのに、昼間眠くて仕方ない」という人は、一度医師の診察を受けることをお勤めします。

睡眠薬の作用

Q21 睡眠薬を飲むとどうして眠くなるのでしょう?
胃の薬なら、胃酸の分泌を抑えるとか過剰な胃酸から胃の粘膜を保護するとか、効き目の説明が言葉になりやすいのですが、睡眠薬の場合、どこにどういう具合に効いているのかイメージを持ちにくいですね。
また、太宰治は心中未遂のたびにラボナとかイソミタールを使ったらしく、睡眠薬は自殺のための薬という悪い心証が広まったこともありました。そこでまず、現在一般に睡眠薬と
して用いられている、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の安全性を強調しておきたいと思います。
ラボナに代表されるバルビツール酸系睡眠薬は20世紀のはじめ頃から開発されました。
ふらつきなどの副作用が強く、作用量と呼吸抑制を引き起こしてしまう致死量とが近接しているため危険な薬の代表でした。これに対して新しく開発されたベンゾジアゼピン系の
睡眠薬は、薬理量と致死量がかけはなれているため安全な薬です。ただし、ベンゾジアゼピン系のトリアゾラム(商品名‥ハルシオン)は、アルコールと併用すると幻覚作用が出るので、本来とは異なった使用目的のために違法に取り扱われているくらいなので、注意が必要です。
睡眠薬はその用途から、睡眠導入薬と睡眠持続薬とに区別されることを知っておくと便利です。睡眠導入薬は薬剤の吸収や代謝が速やかで、効果発現までの時間が短く、作用時間も比較的短いので、寝つきの悪いタイプの不眠症に適しています。睡眠持続薬は吸収・代謝が遅く、効果発現まで時間がかかり、作用時間が比較的長いものです。睡眠の中途覚醒があったり、明け方目が覚めて熟眠できないタイプの不眠症に適しています。
睡眠作用、呼吸抑制、幻覚……なんとなく脳に働いているというイメージはおわかりいただけると思いますが、実際にどう働いているかというと、薬と脳細胞の相互作用が解明されるところまではきたのですが、具体的に「かくかくしかじかのため」と説明できるところまではきていません。
ベンゾジアゼピン系薬剤は、脳細胞のGABA(ギャバ)、A受容体のオメガ、サブユニット(1・2・3と3種類あります)に結合して受容体の機能を変化させ、脳細胞の興奮状態を変化させることにより不安感を除去したり、入眠作用を強めたり、睡眠を深くしたりという薬理作用を実現することになっています。
神経細胞は、外側に「プラス」、内側に「マイナス」の微小なイオンチャージ(電位差)を持っていて、興奮するとこのイオンチャージが逆転します。細胞の電位差が逆転することが「興奮している状態」あるいは「抑制を受けている状態」ということができるでしょう。
睡眠薬を飲むと、特殊な睡眠中枢にある神経細胞に睡眠薬の有効成分が付着して、その機能を変えます。脳の生理機能を考えるには、単独の細胞の興奮状態から出発して脳全体のこ
とを考えなくてはなりません。睡眠中枢細胞が「興奮した」という情報は、GABAやセロトニンという名前の神経伝達物質をシナプス(神経細胞同士の接合部位)間でやり取りする
ことによって、隣接した細胞に伝えられます。情報を受けた次の細胞は、それを受けることで自分も興奮し、また次の細胞に同様の情報伝達を行うという連動が起こります。こういう
一連の状態の変化の結果、薬が効いて眠りに落ちていくのです。
1960年代には脳幹網様体が睡眠に重要な働きをしているということが確認されました。現在は、どの細胞とどの細胞がどのように結びついてどんな情報交換をしているのかという、詳細な研究が進んでいるところです。
なにしろ脳研究の最先端の課題なので、興味のある方はこれから発表されることに注目していてください。
Q22 睡眠薬を処方されましたが、
副作用にはどのようなものがありますか?
睡眠薬の副作用としては、アレルギー、精神機能低下、知覚異常、識妄、運動失調、ヘマトポルフェリン尿症(血液の破壊)、たんぱく尿、巨赤芽急性貧血(赤血球の成熟の過程で
ビタミン』の吸収障害が起きて赤血球が巨大化する病気)、出血傾向、呼吸抑制、食欲不振などがあります。どうです、眠くなってきましたか?
また、どの睡眠薬にも多かれ少なかれ常習性があり、睡眠薬の禁断症状としては、不安、不眠、幻覚、痙撃、錯乱などがあげられます。こんなことを聞かされたら眠れなくなってしまうかもしれませんね。つまり、不眠を治すために服用する睡眠薬も、使い方次第ではさらに不眠を助長させるなど、重篤な症状を引き起こす危険性を孕んでいるのです。
スターリン政権下の旧ソ遠の精神科病棟では、政治的収容犯に睡眠薬と向精神薬を大量投与し、人格崩壊させていたという記録もあります。これなどは、睡眠薬の副作用を利用した犯罪的行為ということができるでしょう。
睡眠薬に限らず、どんな薬にも副作用はあり、取り扱いには十分な注意が必要なことには変わりありませんが、とくに睡眠薬は生命に直結する危険性があるだけでなく、種類によって強弱はあるものの常習性がつきものなので、服用に関しては医師・薬剤師の指示を厳守し、厳重な管理の下で保管することが求められるのです。
ちなみに、睡眠薬のなかには睡眠時無呼吸症候群の患者に使ってはいけないものがあります。それは、睡眠薬の作用によってのどの筋肉や神経が弛緩するため、舌根が沈下してのどを塞いでしまい、ただでさえ気道が狭い人の症状を悪化させることになりかねないからです。このように使い方次第では、眠るための薬で逆に眠りを妨げる危険性もあるので、十分に注意しましょう。
Q23 睡眠中に脳梗塞に襲われると聞きましたが本当ですか?
脳梗塞とは、脳の血管が何らかの理由で詰まってしまい、脳への血液供給が絶たれる疾患です。脳梗塞には脳の動脈硬化が進展して起きる「脳血栓」と、心臓などにできた血栓が血管内を流れてきて脳で詰まる「脳塞栓」がありますが、いずれも生命に直結するのはもちろん、たとえ一命は取り留めたとしても、血液が届かなかった部分の脳は次第に壊死が進んでいくので、身体麻痺や言語障害などの深刻な後遺症が残ることも珍しくありません。
そんな恐ろしい疾患である脳梗塞は、睡眠中に発作に見舞われることがあります。治療開始には一刻を争うだけに、動脈硬化症や一過性虚血発作を繰り返すなど、家族に脳梗塞のリスクを持っている人がいる場合は、万一睡眠中に発作を起こしたとしたらどのような症状を見せるのかを知っておく必要があるでしょう。
脳梗塞を起こした直後は、まさに苦悶の形相で7転ハ倒してもがき苦しみます。この状況を見れば誰でも心配になり、救急車を呼ぶでしょうが、問題なのは不幸にもその期間を過ぎてしまった場合なのです。
発作から数時間過ぎると、一見、普通に眠っているような状態になります。ただ一つ違うのは、呼吸です。大きく吸って大きく吐く–極端に大袈裟に深呼吸をするような、およそ通常では考えられない大きな呼吸をするようになります。これを医学用語で「クスマウル大呼吸」と呼ぶのですが、これは脳梗塞の特徴的な症状といえるものです。
もちろん大急ぎで救急車を呼ばなければなりませんが、実際にはこのクスマウル大呼吸が始まるということは、発作からかなりの時間が経過していることを示しているので、予後の
経過は深刻なものとならざるを得ません。
脳梗塞の危険性がある家族がいる場合はできるだけ一人で眠らせないで、それが無理なら、せめて最初の発作時の異変を家族が気づけるような部屋で寝かせてあげるようにしていただきたいものです。

睡眠薬を大量に飲むと死ぬの?

Q24 睡眠薬を大量に飲むと死んでしまうのはなぜですか?
以前は小説やテレピドラマなどで、飲み物などに睡眠薬を入れられていることを知らずに飲んで死んでしまったり、あるいは自殺目的で(これはきれいな女優さんが死ぬときに多かったような気がしますが)大量に服用して死んでしまうというケースがよく見られました。
眠っているうちに死んでしまえるなら、こんなラクな死に方はないと思うかもしれませんが、でも実際にはそんなことはありません。
睡眠薬を大量に飲むとなぜ死んでしまうのか? その答えは「呼吸抑制が起きるから」ということになります。そもそも睡眠薬は眠りにくい人を眠らせるための薬ですから、適量であれば睡眠中枢の神経細胞の興奮だけを抑える作用として働きます。しかし、大量に睡眠薬を服用すると、ほかの神経細胞にも作用することになり、なかでも呼吸中枢の細胞に働きかけてしまうと、呼吸ができなくなってしまうのです。
呼吸ができずに死んでいく–死に方にもいろいろありますが、こんな苦しい死に方はほかにないのではないでしょうか。テレビドラマのように美しくなんて絶対に死ねませんか
ら、みなさんはくれぐれも真似をしないように。
もちろん睡眠薬が抑制するのは呼吸中枢だけではありません。循環中枢や心臓の動きまで止めてしまうことにもなりかねないので重篤な状況に陥ります。心臓が動かなければ体温は低下し、そのまま回復しなければそちらのほうからも死に至ることになります。
最近では、誤飲や自殺防止の観点から、大量摂取でも生命に影響のない睡眠薬の開発が研究されています。とはいえ、いずれにしても薬である以上、十分に注意して、医師や薬剤師の指導を守った服用を心がけてください。
「コラム」
「サリドマイド」はもともと睡眠薬だった
眠れないときに用いられるのが睡眠薬。現在でも、医療機関では治療目的で睡眠薬を処方することがあります。
本文でも触れましたが、何か心配事があって眠れない状態を反応性不眠症と呼んでいます。これは現代においては、仕事での失敗やリストラの恐怖、育児不安や老後の不安などさまざまですが、戦時下においては国民全員が等しく生命の危機的状況に置かれるため、多くの人が反応性不眠症に陥ります。そのため、戦争中や終戦直後(とくに敗戦時)には、睡眠薬の需要が高まるといわれています。
形態異常のある子供が生まれることから「悪魔の薬」と呼ぱれたサリドマイドという薬があります。じつはこれも、そうした社会背景から開発された睡眠薬なのです。第二次世界大戦で敗れたドイツで、誘眠効果の高い新しい睡眠薬として売り出されたサリドマイドは、反応性不眠症に悩んでいた多くの国民に支持されました。そしてそのなかには妊婦も大勢いたのです。ところがサリドマイドには、妊婦が服用した場合、胎児にさまざまな形態異常を生じる危険性があったのでした。今となってはこの副作用だけが知れわたり、本来の効能に目を向ける人は少なくなりましたが、最近では「サリドマイドにがんを小さくする効果がある」との報告もあり、新たな用途で再び脚光を浴びる可能性が出てきました。
睡眠薬から悪魔の薬、そしてがんの特効薬と、変遷を遂げるサリドマイド。薬にも数奇な運命があるのですね。

睡眠時無呼吸症候群

近年、一躍知名度をあげた睡眠障害の代表格である「睡眠時無呼吸症候群」。その名のとおり、眠っている間に呼吸が停止してしまい、脳や体中の臓器にダメージを及ぼす恐ろしい病気です。
しかも、この病気の恐いところは、眠っている本人が自分に症状が出ていることに気がつきにくいという点。自覚症状がないだけに、たとえ人から忠告されても、にわかには信じることができず、また起きているときには普通に生活しているので、なかなか医療機関を受診しようという気になりにくいという問題が挙げられます。
しかし、睡眠時無呼吸症候群は、決して安心できる病気ではありません。時に重篤な症状を引き起こしたり、循環器や脳血管に基礎疾患がある人などは、突然死を引き起こす危険性さえも孕んでいるからです。
そもそも私は、この睡眠時無呼吸症候群を専門分野とし、自分のクリニックに「グッドスリープ」などと名づけてしまうほど、この分野にのめりこんでいる医者です。この本においてもぜひ私の専門分野について書かせていただきたいと考えたわけです。
具体的なケーススタディも交えてわかりやすく解説しますので、ぜひ読んでいただき、この睡眠時無呼吸症候群という病気を知っていただきたい–。そしてあなたの周囲の方々へも、この病気の恐ろしさを伝えていただきたいと思います。
Q25 最近よく聞く「睡眠時無呼吸症候群」ってどのような病気ですか?
睡眠時無呼吸症候群(SAS-Sleep Apnea Syndrome)は、気道の閉塞などが原因で、睡眠中に何回も呼吸が止まる病気です。症状としては、イピキや起床時の頭痛、日中の睡眠
や倦怠感などがあります。また、高血圧や脳卒中などの合併症を引き起こす危険があり、そのうえ日中の眠気のために、交通事故や工場で重機に手をはさまれるなどの産業事故などを
引き起こす可能性もあります。ですから、患者さんに合わせた適切な検査と治療が必要になります。
メカニズムとしては、睡眠中にのどの奥の「舌根」とよばれる部分が沈下して、咽頭部を塞いでしまい、空気の通りが悪くなって呼吸ができにくくなります。この病気の恐いところは、息ができなくて苦しいというだけでなく(実際には本人は眠ってしまっているので、苦しいことにも気づいていませんが・・・)、呼吸が止まることによって胸腔内圧が上昇したり、血液中の酸素飽和度が下がってしまうということです。これによって脳は興奮状態に陥り、「呼吸をしろ!」という命令を繰り返します。
そして呼吸を再開しますが、そのたびに塞がっているのどで無理に呼吸をするため、大きなイビキをかくことになるのです。睡眠中にこうした障害が発生すると、通常のレム睡眠とノンレム睡眠の波が壊れてしまい、眠りそのものが全体的に浅くなり、最終的にはレム睡眠が消失してしまいます。
無呼吸状態というのは、最低で10秒以上にわたって呼吸をしない状態をさします。

睡眠時無呼吸症候群の原因

睡眠時無呼吸症候群の原因


睡眠時無呼吸症候群は、舌が気道(空気の通り道)をふさぐなどの原因により気道が閉塞し、無呼吸になる症状です。
50秒くらいの無呼吸は珍しいことではありません。一回当たり、30秒前後の無呼吸状態を繰り返しているケースが多いようです。
ただし、呼吸が止まったまま窒息死するということはまずありません。無呼吸も限界に近づけば眠りから覚めますし、呼吸が長時間停止すると筋肉が硬直してのどの筋肉も縮んでいくので、自然に気道が開いて呼吸が再開するようになっているのです。
また、この病気は肥満の人がなるものと思われがちですが、一概にはそうとも限りせん。
もちろん太っている人は、それだけのどの肥満が進んでいるわけですから気道が狭くなっているのは事実ですが、あごが小さい人や舌が大きい人なども、たとえ肥満でなくても睡眠時無呼吸症候群にかかるリスクを持っているので注意が必要です。
■睡眠時無呼吸症候群の合併症
高血圧:健康な人と比べて約3倍かかる可能性がある。
心疾患:狭心症や心筋梗塞にかかる可能性が1.2〜6.9倍。
糖尿病:重症の睡眠時無呼吸の人は、肥満であっても、肥満でなくても糖尿病を合併する可能性がある。
脳卒中:脳血管障害のリスクを高めると言われ、10.8倍も危険性が増すと言われている。
Q26 睡眠時無呼吸症候群の診断と具体的な治療法はどうするのですか?
睡眠時無呼吸症候群は、昔からある古い病気です。ただ、最近になって治療法が増えてきたことから、脚光を浴びるようになってきたのです。適切な治療を行えば、日中の眠気や倦怠感などの症状がなくなるだけでなく、合併症を予防したり、改善することができます。軽症の方は、減量や飲酒を控えるなど、生活習慣の改善により症状が軽減したり、無くなることもあります。
診断方法は医療機関ごとに若干の違いがあると思いますが、ここでは一般的なクリニックの診断方法について説明していくことにします。睡眠時無呼吸症候群の原因や重症度を調べたり、治療方法などを決定するためには十分な検査が必要です。睡眠ポリグラフィー検査は、睡眠の状態を全体的に調べる検査です。まず、初診は外来で問診を行います。問診票に症状を記入していき、その結果から追検査の有無を判断します。
問診票

問診票


問診票2

問診票2


検査が必要と判断されれば、後日、クリニック内の病室に一泊入院して「終夜睡眠ポリグラフィー検査」を受けます。これは脳波や心電図、胸部の動き、血中の酸素量などの検査端子を体に取りつけて一晩、睡眠時の様子を観察する検査で、痛みはまったくありません。
検査は夜7時頃までに来院して再度、問診・検査説明を受けてもらい、その後、食事をしてきてもらいます。検査の前にお酒まで召し上がって帰ってくる患者さんもいらっしゃるのですが、これには困ってしまいます。というのも、アルコールが入ると血行が活発化してのどや鼻の粘膜が腫れてしまい、症状が一気に重症化してしまうのです。そのため、せっかく一泊していただいても、正確な診断ができなくなってしまうことになるからです。
検査着に着替えて、午後9時半頃からお休みになっていただきます。一般的にはまだ早い時間ですし、検査となると緊張してしまい、なかなか寝つけない方もいらっしゃいます。どうしても眠れない方には睡眠導入剤を処方することもあります。
睡眠中は当直の医師が、検査中の患者さんの脳波や心電図、胸部の動き、血中酸素飽和度、呼吸の停止状況などをつねに画像でチェックし、データを記録していきます。そして翌朝6時半に起床。シャワーも完備していますので身支度を整えて準備のできた方から、今後の治療の要・不要など、検査結果の説明を順に行います。8時には退院できるので、都内にお勤めの方なら、そのまま会社に出勤されていくことが多いようです。
なお、検査の結果、CPAP(シーパップ)による治療が必要と診断された場合はさらに一晩入院して、CPAPを装着しての追検査を受けることになります。このほかには外科的手術でのどの奥を切り開いて気道を広げる方法や、寝るときに専用マウスピースなどの呼吸補助器を装着して、無呼吸になるのを防ぐ方法などが一般的です。
気になる検査費用は、健康保険が適用されるので、社会保険本人で2割(平成15年4月から3割)負担の場合、8千円から一万二千円程度です。睡眠障害に不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群で窒息死することはないにしろ、無呼吸状態を繰り返すというのは、決して体にとって好ましい状態ではありません。全身の動脈硬化を促進させることになるので、心臓や脳に疾患を持っている人は、睡眠時の無呼吸が引き金となって「突然死」を引き起こす危険性も指摘されています。
肥満気味で、日常的に大きなイビキが気になるようであれば、早い段階で専門医を受診すべきでしょう。
CPAP療法の仕組み

CPAP療法の仕組み


CPAPはマスクを介して、一定陽圧の空気を送り込み、上気道を広げます。広げるための圧力は患者さん個々に異なります。
Q27 睡眠時無呼吸症候群の人が「怠け病」と呼ばれるのはなぜですか?
やる気がないわけでも怠けているわけでもないのに、睡眠時無呼吸症候群の人は会議中に眠たくなってどうしようもないことが多いようです。場合によっては本当に眠ってしまって、上司や同僚から「何だ、あいつは!」と非難されることも少なくありません。
ほかの場面では覚醒中枢が興奮して起きていることができるのに、退屈な会議で刺激がなくなってくると、スイッチが睡眠中枢に切り替わってしまうのではないかと考えられていま
す。この覚醒中枢と睡眠中枢は、つねに両方とも作動していて、健常な人であればうまい具合にバランスがとれているのですが、睡眠時無呼吸症候群の人はこのON・OFFがうまく
切り替わらないというわけです。そのため、ちょっと睡眠中枢にウエイトがかかっただけで、一気に眠りに入ってしまうことになるのです。
そもそも退屈な会議というのは、電車のなかと基本的には同じような睡眠環境が整っているのではないでしょうか。たとえばその会議で自分が発言することになっている、あるいは
議事進行を任せられているという場合は、会議そのものが退屈なテーマであったとしても、本人は緊張するので眠くはなりません。
しかし、発言の必要性もなく、内容にも興味がないような立場の人にとっては、緊張感も薄れ、適度な室温・湿度が確保され、自分には直接関係のない会話が子守唄となって耳に入ってくるのですから、眠くならないわけがありません。そんなときには、意識的に脳の動きを活発にして身体に刺激を与えなければ、人眠するのは時間の問題です。では、どうすれば衆人環視の場で脳の動きを活発にできるのでしょうか? 本当ならフィットネスクラブでトレーニングをしながら会議ができれば身体的刺激は満ち溢れますから、眠気の問題についてはとりあえずクリアできますが、集中力や思考力は落ちるでしょうし、なによりそんな会社にあなたは入りますか?
たとえば、誰でもいいから人物の動きをじっと見つめるのもいいでしょう。その人のペンの動きから書いている文字を想像したり、あるいは出席者全員のネクタイの柄などを比較して、そこに出席している人だけの範囲での流行分析などしてみてはどうでしょう。
また、たとえ会議の内容とは問係のないことでも、今朝、新聞で読んだ記事を頭のなかで整理し直して理解を深めたり、あるいは自分の趣味や家族のことなど、ある程度集中でき
ることについて考えをめぐらせることも効果的です。
本当なら、何か言葉を発するのが直接的な手段ではあります。テレビで国会中継なんかを見ていると、いつも大きな声でヤジを飛ばしている議員が、たまにおとなしくしていると思
うと、ぐっすり眠り込んでいる姿が画面に映し出されたりします。きっとその議員は、眠くなるのを防ぐ意味もあって大きな声でヤジっていたのでしょう。
日本の会社や役所の会議は、基本的にコンセンサスを得ることが目的で開催されていることが多いので、そこに出てじっと座っていて眠くならないほうがおかしいのです。しかし、
だからといって堂々と眠ってしまうのはやはり問題があるでしょうから、いろいろなことを考えて眠気に打ち克つ努力をしましょう。それが回りまわって日本経済を支えることになるのですから!(ホントかな?)

睡眠時無呼吸症候群の症例

Q28 睡眠時無呼吸症候群の典型的なケースを教えてください?

ケーススタディ1

●秋田文雄さん(仮名=34歳・エンジニア)
横浜市に住む秋田さんのお仕事は自動車整備のエンジニアです。睡眠時間は約7時間と、たっぷりとっているのに、仕事中に耐えがたい眠気に襲われるようになり、数年前から悩んでいました。そのうちに、眠気のために事故につながりかねない危険な体験を何度か繰り返したことから、治療の必要性を感じ、当クリニックを受診されました。
以前から家族にィビキを指摘されており、自分でも息苦しさで目が覚めることもあったといいます。全身状態をチェックしたところ、血圧は104/60ミリメートル水銀柱(mmHg。以下同)で低血圧であることがわかりました。また、扁桃腺が肥大していて、頚部のリンパ節が腫れているのが見てとれました。既往歴、家族歴で特記すべきことはなく、入院して「終夜睡眠ポリグラフィー検査」を受けていただくことになりました。
検査の所見は次のようなものです。寝入りばなから朝起きるまでの間、断続的に呼吸障害が多発していました。この呼吸障害の回数は一時間あたり、じつに61・6回に及ぶという著しいものだったのです。ただ、体位を変えて右側面を下にして寝ると、イビキがなくなって呼吸障害も消えるという特徴もありました。また、一晩(7時間)の睡眠で20分ほどですが、酸素飽和濃度が危険値とされる「90パーセント以下」(正常植は97パーセント)に落ちる時間が認められました。
睡眠中の脳波は、興奮状態を示す兆候が多数見られました。睡眠のパターンが壊れていて、レム睡眠の時間が短縮していることがわかりました。つまり、深い睡眠が得られていないということです。
この結果から、秋田さんの場合はまずCPAPによる治療を試みることになりました。すると即日のうちにてきめんの効果が得られました。一時間あたりの呼吸障害は一回弱。一晩で20分あった「90パーセント以下」の低酸素状態も「○」となり、睡眠にリズムが現れて、深い眠りからレム睡眠を繰り返す健康的な睡眠パターンを獲得することができました。
これにより、当初の秋田さんの訴えは解消したことになります。どころが、CPAPを装着して眠ることの鬱陶(うっとう)しさを嫌う秋田さんは、肥大している扁桃腺を除去して、根本的に治してしまいたいとおっしゃいました。というのも、扁桃腺が肥大していると、扁桃腺が邪魔をして口が閉じにくくなってしまうのです。CPAPをしているときに口が開くと、鼻から入った空気が口から出てしまい、苦しい思いをすることになるのです。
そこで、ご自宅の近くにある総合病院の耳鼻咽喉科に紹介状を書き、扁桃腺の摘出手術を受けていただくことになりました。手術は全身麻酔下で行われます。程度にもよりますが、平均すると二時間程度はかかる耳鼻科領域の手術としてはかなり大掛かりなものといえるでしょう。
術後はかなりの痛みを伴うため、10日から二週間程度の入院を必要とします。最近ではレーザーによる日帰り手術を行うところもあるようですが、安全性を考えるなら、私はきちんと入院して受ける手術をお勤めします。というのも、イビキをなくす目的で行われる口蓋垂(のどちんこ)の切除形成術程度ならレーザーでも大丈夫ですが、扁桃腺の切除となると大出血を招く危険性があるからです。
手術中やクリニックのなかにいるときの大出血ならすぐに対応もできますが、何時間、あるいは何日か経ってから大出血を起こすと生命の危険さえあるので、安全性の面からはとてもお勤めできません。
また、扁桃腺の切除は術後の痛みも強いため、通常の食事は不可能となります。入院していれば、食事で栄養を取れない分を点滴で補うこともできますが、自宅に帰ってしまうと、どんなに痛くても食事をとらなければならなくなるわけで、傷口にもよくはありません。この秋田さんも、退院してからしばらくはおかゆくらいしか食べられなかったと言っていました。
まあ、それはともかく、手術は無事に成功し、退院後は仕事に復帰された秋田さんですが、術後の状態を調べるために、再度当クリニックで検査を行いました。すると、低酸素状態は「○」、呼吸障害も一時間に0・4回と、CPAPをつけて寝たのと同じ効果を得ることができたのです。その日をもって治療は終了し、治療期間ニカ月弱という短いおつき合いで、めでたく「全快」となったのでした。
これは、比較的若い人に見られる扁桃腺肥大による睡眠障害で、15歳以下の子どもではよくあるケースです。睡眠時の呼吸障害は成長を阻害することもあるのですが、手術で扁桃腺を摘出してしまうと、うそのように症状が消えてしまうという典型的な例といえます。大人になってからの場合は、肥満が関係していることが多いのですが、秋田さんは身長173センチ、体重68キロと、決して肥満というほどの体型ではありません。
扁桃腺は免疫組織で、3歳くらいまでは他の臓器に替えがたい重要な役割を果たしているのですが、その後は徐々に存在価値が低下していき、通常は10歳くらいから縮小していくのが普通です。ところがなかには、大人になっても小さくならない人もいて、秋田さんはまさにそのケースだったのです。
今回、秋田さんは扁桃腺を取ってしまったので、その点では再発の恐れはないのですが、これからは肥満にならないための注意が必要です。今度、肥満で呼吸障害が再発しても、切る扁桃腺はもうないのですから。食事に気をつけ、また日常生活に運動を取り入れるようにして、体型の維持に力を入れていただきたいところです。

ケーススタディ2

●福田美枝さん(仮名=65歳・主婦)
千葉県に住む福田さんは、一緒に住むお孫さんに「おばあちゃんはイビキがうるさい」と言われ、嬢さんに相談したところ、やはりかなり大きなイビキをかいているとのこと。それだけでなく、眠っているあいだに呼吸が止まっているようだ–と言われて、治療を受けることを決心した方です。ちょうどその頃に、当クリニックを紹介する記事が雑誌に載ったのをご覧になり、少し遠いにもかかわらずお越しくださったということです。
福田さんのESS(眠気のチェックリスト)の結果は「9点」と正常範囲内でしたが、それでもご本人の要望もあったので、検査をしてみることになりました。身体所見としては、血圧が140/60mmHgで、女性としてはほぼ正常値を示しました。身長は152センチで体重は50キロとやや小柄ですが、とくに肥満などの問題はありませんでした。
「終夜睡眠ポリグラフィー検査」の結果は、一時間に16回の割合で呼吸障害が認められました。ちなみにこの数値は「5〜20未満」が軽症、「20〜30未満」が中等度症、「30以上」が重症と分類されます。
これにより、本人の自覚症状はないながらも、睡眠時無呼吸症候群の「軽症ではあるが比較的中等度に近い部類」という診断が下されました。福田さんの特筆すべき所見としては、イビキが起きているところと無呼吸が起きているところが同一ではないという点にありました。というのも、福田さんは寝入りばなにイビキが強かったのですが、この時点では無呼吸はなかったのです。
ところが、睡眠の中盤から後半に至ってイビキが軽減される半面、無呼吸が多発するようになったのです。このとき、酸素飽和度は瞬間的に「70パーセント」まで低下するなど、無呼吸状態はかなり深刻な様相を呈していました。

眠気のチェックリスト(ESS=エップワース・スリーピネス・スコア)

眠気のチェックリスト(ESS=エップワース・スリーピネス・スコア)


福田さんはCPAPによる治療ができませんでした。というのも、現在の日本では、一時間に20回以上の呼吸障害が確認されないとCPAP治療に健康保険が適用されないのです。一方、アメリカでは、2002年から適応基準が拡大され、一時間あたり5回以上の呼吸障害が確認され、かつ睡眠障害の症状が明らかな場合に保険が適用されるようになりました。福田さんは本当に気の毒だったのですが、日本では仕方がありませんでした。
そこで福田さんには「スリープスプリント」というマウスピースによる治療を行うことになりました。といっても、このマウスピースも保険はききません。ただ平均して5万5000円ほどの実費を支払ってマウスピースを作れば、5年くらいは使い続けることができます。CPAPの適用から外れた患者さんの多くは、このマウスピースを選択することになるというのが現状なのですが、なかには、口の中に異物を入れたまま眠ることに拒絶反応を示す人も多いものです。そういうことからも、このマウスピースによる対症療法は、誰にでも適用できるというものではないようです。
さて福田さんには、日本橋の歯科医院をご紹介したのですが、この歯医者さんが非常に腕のいい先生で、見事なマウスピースを作ってくださいました。マウスピースを作るには、まず歯形をとって、それに合わせた上下別々のマウスピースを作ります。それを患者さんの骨格に配慮しながら、上下の歯型を微妙に合わせるのですが、これが非常にむずかしい作業なのです。マウスピースによる治療が進んでいるアメリカではこんな逸話もあります。ハワイ大学のスリープ研究所では、「アメリカ人の作ったマウスピーースでは効果が期待できない。精密さに長けた東洋人の作ったものなら安心して使うことができる」と言われているそうです。もちろん冗談でしょうが、それほどまでに細かな作業を必要とするものであることには違いないようです。
マウスピースの製作についてはこんな注意点もあります。それは、患者さんに虫歯があると、歯型そのものを作ることができないということです。つまり、先に虫歯の治療をしてからでないとマウスピースは作れないのです。幸いなことに福田さんの場合は、虫歯が一本もなかったために、スムーズにマウスピースを作ることができました。やっぱり歯は大切にしなければなりませんね。
さて、おかげさまで、福田さんのマウスピースはドンピシャでした。このマウスピースを使ったところ、一時間に16回あった呼吸障害が3・2回まで激減したのです。これにはさすがに私も驚きました。呼吸障害だけでなく、イビキも酸素飽和度もまったく問題ないレベルにまで改善され、それまでさまざまな障害で分断されて浅くなりがちだった眠りも、深くしっかりしたものに変わっていったのです。「こんな簡単な道具で、これほどまでによくなるなんて考えてもいませんでした」とは福田さんの弁です。その効果にすっかり満足して治療は終了しました。とりあえずはハッピーな結末でしたが、マウスピースの場合、しばらくすると面倒になって装着するのをやめてしまう人がかなりいるのも事実です。
また、あくまで対症療法であって、原因はそのまま残っているのですから、この結果だけをもって万歳三唱するわけにもいきません。まあ一年くらい様子を見て、もう一度検査をしてみる必要はあるかもしれません。

ケーススタディ3

●下山二郎さん(仮名=38歳・会社員)
都内にお住まいの下山さんは、大手広告代理店のプランナーです。ところが数年前から昼食後に強い眠気を感じるようになり、パソコン操作や外部との打ち合わせなどでミスを頻発するようになりました。集中力が著しく欠如して、とにかく眠くて眠くて、お客さんの前でも居眠りをしてしまいそうになるという状態でした。
血圧は132/80mmHgで正常債の範囲、身長は178センチで体重は81キロです。学生時代はアイスホッケーの選手で筋骨隆々だったそうですが、サラリーマンになってからは運動不足がたたり、30代後半になってからは肥満傾向が進んでいるそうです。
「終夜睡眠ポリグラフィー検査」の結果は、一時間に84回の呼吸障害を示しました。これを詳しく見てみると、一晩の間に完全な無呼吸は7回だけ(一番長い無呼吸は35秒間)でしたが、呼吸不全だけで見れば504回も起きていました。また、酸素飽和度が「90パーセント以下」に落ちていた時間が6時間の睡眠中、二時間にも及んでおり、さらに覚醒指数(スローウェーブ状態のなかに現れる覚醒期。通常は一時間に10回くらい現れる)は「79・6回」と正常植の8倍の高さを示しました。
このことからもわかるように、眠りの状態が非常に悪いということがうかがえます。それを裏付けるように、6時間の睡眠中、レム睡眠はただの一回もありませんでした。この結果
から、下山さんは重度の睡眠時無呼吸症候群と診断されることになったのでした。治療法は、まずはCPAPが第一選択です。前に紹介した福田さんと違って、保険適用基準を大幅に上回る下山さんは、正々堂々とCPAPが使えます(別に正々堂々としなくても構いませんが・・)。CPAPはそれなりに効果をもたらしたのですが、下山さんの偉いと
ころは、CPAPに頼り切るのではなく、自分でも睡眠障害からの脱却をめざして努力を始めたという点です。自分からの意志で始めた取り組み、すなわちそれはダイエットです。
元はといえば運動不足が招いた今回の事態。下山さんはボクシングジムに通い始め、4カ月で約5キロ、7ヵ月で約10キロの減量に成功したのでした。しかし、この減量には、下山さんの強い意志もさることながら、じつはCPAPも大きく関係していると見ることができるのです。というのも、CPAPを使うことにより睡眠が深くなるため、減量という取り組みに意欲が湧いてくるのです。
これが浅い眠りのままでいくらトレーニングに励んでも、ここまでの効果を得ることは難しいし、それ以上にやる気が続かないというのが実情でしょう。CPAPの効果と下山さんの強い意志が相乗効果をもたらして、睡眠障害を克服したということができるのです。
さて、肝心の呼吸障害はどうなったのでしょう。それは、CPAPが出す空気の圧力の量で効果を見ることができます。CPAPでは「4・0〜20・0」(単位は「センチメートル水柱」)の圧力設定が可能です。この数値を高くすればするほど、高い圧力の空気をのどに送り込んでいることになります。つまり、この数値が低くなるにしたがって、症状も改善しているということができるわけです。
治療開始当時の下山さんは「8・6」の圧力を必要としていたのですが、約一年の治療とトレーニングにより、「6・0」まで下げることができました。
現在、下山さんは「学生時代の体型に戻すんだ!」と張り切っていますし、それは呼吸障害を克服するうえでも大変結構なことです。あと一年もジム通いとCPAPを続ければ、か
なりの改善が期待できますし、ぜひとも頑張っていただきたいところです。

ケーススタディ4

●玉置 明さん(仮名=45歳・自営業)
埼玉県にお住まいの玉置さんはスポーツ用品店を経営されています。最近はスポーツ用品屋さんといっても、商店街でお店を構えているだけではお客さんが来ないので、企業や官公庁などに営業をかけて大口の注文をとってくるほうに力を入れているのだそうです。そのためご自宅からはずいぶん遠いにもかかわらず、得意先があるため当クリニックの近辺を車で走ることが多く、看板をご覧になって受診されたのがちょうど一年前のことでした。
玉置さんの症状は「寝起きがつらい」「昼間も眠い」というもので、じつは玉置さん、以前はある大手スポーツ用品メーカーに勤務していらっしやったのですが、職場内の人事トラ
ブルに巻き込まれ、うつ病になってしまったそうです。その後、社内での乳棒に嫌気がさして退職。一念発起して、現在のご商売を始められたそうです。トラブルに巻き込まれていた
当初から、神経科で抗うつ剤を処方され、以来、ずっと服用を続けてきました。
「終夜睡眠ポリグラフィー検査」の結果、一時間あたりの無呼吸は25・2回だったので、玉置さんの場合は睡眠時無呼吸症候群の「中等度症」と診断されました。20回を超えているので、CPAPの保険適用が認められます。加えて酸素飽和度「90パーセント以下」の状態が、6時間の睡眠中、50分を示しています。そこで早速CPAPを試してみたところ、低酸素状態はきれいになくなりました。
CPAP処方直後は「腰が痛い」と訴えていましたが、これは顔に装着した装置が気になって、寝返りを打ちづらくなったためでしょう。こうした訴えはときどきあるのですが、慣
れれば寝返りも打てるようになります。実際、玉置さんも、翌月受診されたときには腰の痛みについては一言も触れず、「以前は薬を飲んでもなかなか眠れなかったのに、CPAPを
使い始めてからは8時間も眠れるようになった」というのです。
聞いたところによると、並行して通院している神経科でも、うつ病に改善の兆しが見られるとのことで、抗うつ剤の処方量が減らされたとのことです。その後も、うつ状態の回復は
進み、CPAP開始から4ヵ月で「抗うつ剤はいらない」と神経科の先生からお墨つきをもらうまでに回復しました。
ちなみに当クリニックを初めて受診されたときの玉置さんは、身長167センチに対して体重73キロとやや太めでした。しかし、CPAPを使い始めてからは体重も減少し、4カ月後には67キロまで減量することができました。というのも、うつ病の回復に伴って気力が充実してきたせいか、食欲が出てきて、体を動かすことも嫌でなくなり、以前は自宅から店舗までの約ニキロの道のりを車で通っていたのを、自転車で往復するようになったのだそうです。
それ以外にも、お酒の量が半減し、奥さんと二人で週に3回、フィットネスクラブに通うようになったとか。何にしても結構なお話です。初めてお目にかかった頃と比べれば明らかに顔色もよく、声の張りも違います。
おそらくは、睡眠時無呼吸症候群のために昼間でも眠気が強く、それが精神的に抑圧作用をもたらしていたところに、折からの人事トラブルでうつ病を発症したのでしょう。たとえ
職場を変えたとしても、睡眠時無呼吸症候群がある限り、根本的な治療にはならなかったのですが、cPAP療法で深い睡眠が確保されたことにより、うつ病も軽快していったという推測は立てられます。一年ほどCPAPを使いつづけていた玉置さんは、先ごろマウスピースを作りました。そのマウスピースをつけて再度「終夜睡眠ポリグラフィー検査」を受けてもらったところ、一時間あたりの無呼吸出現回数が二・5回まで下がったのです。これにより、玉置さんはめでたく当クリニックを卒業されました。
もちろんマウスピース療法は一時的に症状を和らげる対症療法なので、根本的な治療というわけではありませんが、玉置さんのように肉体的な元気と精神的な明るさを取り戻した方は、生活そのものが充実していきます。それに伴って体調もいいほうに向かっていくので、もしかしたらさらに減量が進んで、近い将来、マウスピースもいらなくなる日がくるのかも
しれません。
こうして見ると、睡眠時無呼吸症候群という病気は、単に快適な睡眠を妨げるだけでなく、人の精神状態にまでダメージを及ぼす恐ろしい病気だということがわかっていただけるでしょう。とくにストレスに悩む現代のサラリーマン世代にとっては、本人が気づかない間に徐々に体を蝕んでいく、がんや動脈硬化などの生活習慣病と同じように、睡眠中の障害にも目を向ける必要があるということを物語っているといえるのではないでしょうか。

ケーススタディ5

●石川明子さん(仮名=28歳・会社員)
最後にご紹介するケースは、睡眠時無呼吸症候群だと思っていたにもかかわらず、調べてみたらそうではなかったという例です。都内に住む石川さんの仕事は、大手電子部品メーカ
ーの役員秘書です。ご多分に漏れず、仕事中に眠くて仕方ないとの訴えで来院されました。
石川さんはこれまでに見てきた患者さんと違い、当クリニックに来られる前に大学病院を受診していました。そこで簡易測定装置で計ってみたところ、一時間あたりの無呼吸発現が
15回ほど見られたため、精密検査のために当クリニックを受診されたということです。
じつは石川さん、昼間の眠気は最近始まったことではなく、中学生の頃には強い睡魔に襲われるようになっていたとのことですが、ィビキについては人から注意されることもなかっ
たため、あまり気にしたことはありませんでした。ところが最近の眠気の強さは尋常ではないので、どうしたものかと悩んでいたそうです。
そんなときにテレビで睡眠時無呼吸症候群のことを知った石川さんは、自分の自覚症状とすべて一致することから、この病気であると確信して受診したのでした。睡眠時無呼吸症候
群は簡単に治せるとテレビで報道していたし、石川さんとしてはこのつらい睡魔から解放されるなら手術だって厭わない–という意気込みで来院されたのでした。ところが一晩入院
して「終夜ポリグラフィー検査」をしたところ、まったく呼吸障害の所見が見られないのです。脳波も正常で睡眠パターンもきれい。覚醒指数にも異常はなく、イピキもほとんど記録
されていませんでした。つまり、睡眠時無呼吸症候群ではなかったのです。
結局、石川さんの病気は「本態性過眠症」と呼ばれるものでした。どんな病気でもそうですが、病名に「本態性」とついていたら、原因がわからない病気だと思っていただいて間違
いありません。この本態性過眠症もまさにそれで、原因はわからないけれど眠くて仕方なくなる病気–ということしか言えないのです。
わかっていることは石川さんのように、多くは中学生の頃から発症する傾向があり、男女の性差はさほどないのですが、皆さんがご存知ないだけで意外に多い病気なのです。睡眠時
無呼吸症候群が人口の2パーセント程度の発症率といわれていますが、本態性過眠症は0・1パーセントくらいの割合で発症するとされています。ちなみに当クリニックでは、これま
で1000人の検査をしたうち20人が本態性過眠症と診断されました。
この病気の眠さはハンパなものではなく、ESS(眠気のチェックリスト)で調べると20点を軽く超えてしまう要注意レベルの眠さに襲われます。それでいてナルコレプシーのように睡眠がレム睡眠で始まったり、突然の脱力発作や夢と現実の混同といった劇的な症状もありません。ただただ、原因不明の睡魔に悩まされ続ける厄介な病気なのです。
こうなると、もはや内科領域で対処することはむずかしいので、石川さんには詳しい説明をしたうえで、ある病院の専門外来を紹介しました。ここは都内でも珍しい「過眠症外来」
を設置している神経科の病院で、症状に応じて向精神薬を使った治療が行われています。私は内科医なので、向精神薬を使った薬物治療は専門ではありません。もちろん医者であ
る以上はどんな病気にもアプローチすべきだという考え方もあるし、事実本態性過眠症の治療を行っている内科医もいます。しかし、私は石川さんの例を見ても、やっぱり専門の先生
に紹介するほうがお互いのためだと考えます。
幸いなことにこの病院に移ってからの石川さんは、薬物治療が効を奏して、一年が過ぎた今も、通院中ながら順調な経過を辿っているとのことです。

メラトニンが効く人・効かない人

メラトニンとは、日本では販売が許可されていない誘眠目的のサプリメントです。最近では、アメリカ旅行をする人に「メラトニンを買ってきて」と頼む人が多いようです。たしかにアメリカの大都市に行けば、日本人旅行者向けに「メラトニンあります」などと日本語で書かれた看板を掲げたドラッグストアを目にすることがあります。
しかし、メラトニンで効果的な睡眠を得るには、ちょっとしたテクニックが必要です。というのも、メラトニンは睡眠薬と違って、飲んだらバタンキューと眠れるというものではないからです。たとえばニューヨークに行くのであれば、現地に到着して夜眠る予定の時間に飲むことを想定し、3日前から飲む習慣をつけなければなりません。つまり、日本にいるう
ちからニューヨーク時間に合わせてメラトニンを飲まなければならないということです。
もちろん「私はメラトニンを飲んだから一発で効いてぐっすり眠れた」という人もいるでしょうが、この手のものは効き方に個人差がありますし、多分にプラセボ効果(薬理的な作用よりも精神的な要因で効果が出ること)によるところが大きいような気がします。
そもそもメラトニンとは、脳の松果体というところにある物質で、光のセンサーのような働きをしています。そこでこのメラトニンを経口摂取することで、そのセンサーの量に変化
を生じさせ、体内的な昼夜の感覚を変えてしまう–つまり脳のリズムを変えようとしているものなのです。脳の感覚を麻痺させて眠りに誘う睡眠薬とは、その作用の成り立ちが根本
的に異なるものなのです。
そんなこととは知らずに、眠れないときにはメラトニンを飲んで眠っていた方には申し訳ありませんが、やはり体に何らかの副作用を及ぼすものなので、正しい知識をもって正しく使っていただきたいと思います。
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