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睡眠

デキる男の睡眠法

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睡眠法

現代社会では、ふつうの7〜8時間まとめて眠る単相性睡眠をつねにとれるとはかぎらない。
短い睡眠を小きざみにとる多相性睡眠を余儀なくされることも、まれではない。不眠不休の緊急事態などでは、適切な睡眠管理がとくに重要となってきており、効果的な睡眠法として、①単相性短縮睡眠、②係留睡眠、③多相性短縮睡眠(超短縮睡眠)などが開発されている。日中の仮眠計画では、睡眠慣性(目ざめた後に眠気が残ること)をどのように制御するかがとくに重要である。深い睡眠から急に覚醒させると睡眠慣性の影響でなかなか目がさめず、事故を誘発しやすい。仮眠時間が30分を超えると深睡眠がはじまり、睡眠慣性が強くなるので、仮眠時間は30分以下にすることが推奨される。
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現代社会では、眠れない人や忙しくて眠る間も惜しい人がいる。このような人々によって構成される24時間都市では、日勤、夜勤、半夜勤などさまざまな勤務形態がとられており、成人の3人に1人が不眠を訴えているといわれている。そこで、これらの睡眠不足と睡眠不満を克服するための睡眠法について述べる。

睡眠はどこまで切りつめられるか

偉大な発明や発見をした人には、睡眠嫌いの人が多かったといわれる。かれらは、文字どおり眠る間も惜しんで仕事や研究に没頭したようである。
発明王エジソンは、「4時間以上の睡眠はまったく必要でなく、怠惰以外の何物でもない。
4時間以上眠るとかえって気分が悪くなる」と言いきっている。エジソンのライバルだったテスラも睡眠嫌いで、こちらはエジソンよりさらに短く、1日に2時間の睡眠で十分と豪語していた。テスラはモーターの発明で有名であり、ラジオやテレビの基礎を築いた人であるが、日本ではエジソンにくらべて影がうすい。直流方式をえらんだエジソンと交流方式をえらんだテスラは、ことごとに対立したようである。
2人に共通することは夜の睡眠が短いことであるが、じつはどちらも2〜3時間の昼寝を2回ぐらいとっていた。だから、結局は2人ともふつうなみの7〜8時間の睡眠をとっていたというのがほんとうのところのようだ。
忙しそうに働くことを美徳とする人たちは、とかく自分好みの神話をつくる傾向があり、カリスマ性を高める一つの手段として、超人的短眠者をつくりだしていたようである。それでは、ナポレオンの3時間睡眠もたんなる伝説にすぎないのかというと、じつはそうではない。
じっさいに実験室に来てもらって睡眠ポリグラフ法による記録をとった例としては、1968年に報告された2人の3時間睡眠者の例がある。この2人がもっとも短い睡眠でふつうに暮らしていた人たちである。一週間の平均睡眠時間は2時間47分と2時間43分だった。この2人は「健康な不眠症者」と命名されている。
2人はもともと平均的な8時間睡眠者であったが、思うところあって眠らないことにしたら、そのようになったという。このような人々にとっては、睡眠時間はライフスタイルでどのようにでもなるということのようであるが、やはりまれなケースとみなすべきで、睡眠短縮の目標を3時間に設定するのは、あまり現実的ではない。
成人の平均睡眠時間は国により7〜8時間に分布している。睡眠時間が9時間以上の人を長眠型、6時間未満を短眠型とよぶ。短眠型の睡眠は、長眠型にくらべて短い睡眠時間に深い睡眠が効率よくとられており、むだのない睡眠である。この短時間睡眠は生まれつきのものか、それとも短い睡眠を習慣的にとっていると、ふつうの睡眠が効率的な短時間睡眠に変わるのか、ということが問題となる。マラニィらの実験では、6ヵ月かけてすこしずつ睡眠時間を短縮していくと、平均的な睡眠時間の大人でも、5・5時間以下の短眠型に変えることができるという。しかし、1年後に追跡調査をしてみると、平均6時間の睡眠をとっており、ふつうの人が短縮できる限界は6時聞か妥当なところだろうということに落ちついている。
分割睡眠の可能性
まとめて6時間も眠るのはむずかしいという人々のために、マイナーズらは分割睡眠の可能性を検討している。そして、ふだん8時間寝ている人の場合を例にとると、4時間ずつに分割し、午前1〜5時の4時間睡眠を規則的にとっていれば、残りの4時間分はどの時刻でとってもかまわないという結論を出している。
一方を決まった時間にとれば、生物リズムがずれたり歪んだりすることがないことから、この睡眠を係留睡眠とよんでいる。このモデルでは、夜勤の人にはぐあいが悪い。検討の結果、夜勤モデルでは、朝の8時から12時までの4時間に係留睡眠を固定するといいと結論づけている。
睡眠の分割数をさらに増やしていくと、多相性睡眠とよばれるものになる。イヌやネコに見られる睡眠で、まとめて眠らず、すこしずつ分散して眠るやりかたである。ヒトでは乳幼児に見られるが、児童期になると短い昼寝をするだけで夜間にまとめて眠るようになる。
伝説によると、レオナルド・ダ・ビンチはこの分散型の多相性睡眠をとっていたといわれている。ダ・ピンチは無眠者であったとする説もあるようだが、4時間ごとに15分の睡眠をとっていたとする説が有力である。これが正しいとすると、1日に15分の睡眠を4時間ごとに6回とるので、1日の睡眠時間は90分ということになる。睡眠時間を1.5時間とすると、残る22・5時間は起きていたことになる。彼の生涯を67歳とすると覚醒時間は約55万時間となり、これをふつうの人の日中覚醒時間(16時間)の1年分で割ると、95になる。つまり、ダ・ピンチはふつうの人の95年分を生きたことになる。
ダ・ビンチ式睡眠で寝ぼけずにがんばることができたなら、たいへん効率のいい人生が送れる計算になる。1950年代の末、イタリアのスブラジアは、ダ・ビンチの創造性はこの短時間睡眠法に秘密があると確信して、自分もやってみることにした。彼は当時30歳そこそこで、劇作家、俳優、演出家、音楽家として舞台やテレビで活躍していた。このことが話題になり、新聞にも記事が載るようになった。はじめは眠くてずいぶん苦労したようであるが、1か月もすると慣れてきて、芸能活動にもほとんど支障は見られなくなったという。ところが、彼は6ヵ月たったところでこの生活をやめてしまう。その理由として、①短時間睡眠法は実行可能であること、②その証明には6ヵ月で十分であろうと判断したこと、③期待した創造性の向上がまったく見られないことなどであった。そしてもっとも大きな理由は、風変わりな生活スケジュールを実行したために、家族から浮いてしまい、とくに子どもに無視されるのがつらく、継続を断念したという。
この古い新聞記事を続んだスタンピのグループは、不眠不休の連続作業における作業-休憩計画に有効なものと判断し、本格的に取り組むことにした。

超短縮睡眠法の開発

スタンピらが、新聞広告でダ・ピンチ型の超短時間睡眠法の被験者を募集したところ、27歳のグラフィック・アーティストが応募し、19日間の実験が実施された。被験者の努力にもかかわらず、15分では目がさめず、平均すると1回あたりの睡眠時間は27分ていどになってしまった。
実験は失敗に終わったが、目標をすこし下げ、30分睡眠を6回、合計3時間睡眠とすれば、1968年の実験の「健康な不眠症者」の3時間睡眠にならぶと考えられる。そこで翌年、30分睡眠で48日間の実験を実施した。実験は1日8時間の単相性睡眠からはじめて、分割睡眠に移り80分ずつ6等分する。それぞれの分割睡眠を短縮していき、10日目に目標の30分に到達する。ここで睡眠時間を固定し、以降48日までつづけ、終了後の2日間は好きなだけ眠る自由睡眠を記録して、実験を終了している。

図5.1 超短縮睡眠実験中の課題成績

図5.1 超短縮睡眠実験中の課題成績


図5・1は、実験期間中におこなった心理テストの成績をしめしたものである。短時間睡眠に到達するまでの2週間は成績が下がっていき、睡眠短縮の悪影響がみとめられる。ところが目標到達後、この睡眠スケジュールに慣れてくると、成績は向上しはじめ、実験前の水準かそれ以上の成績になる。
まとめて眠ろうと意図しているときに、中途覚醒で睡眠が分割されると、睡眠感が損なわれ、日中の作業成績が下がるなどの障害があらわれてくる。ところがこの実験のような意図的な分割睡眠では、1日あたりの睡眠時間を短縮しているのにもかかわらず作業成績が向上し、日常体験と逆になっている。ところで、被験者は実験終了後の自由睡眠で9時間36分も眠りつづけている。多相性の短縮睡眠は通常の単相性睡眠より効率的であるが、自発的につづけたくなるようなスケジュール
ではないことをしめしている。山火事の消防隊や大災害の救援隊など、せいぜい1、2カ月の短期出動時には威力を発揮するであろうが、ライフスタイルの中に組みこむにはまだ洗練化の努力が必要であろう。
ヨットマンの睡眠
これまでに睡眠研究のデータがしっかりしているヨットレースは3つあり、OSTAR(Observer Single.handed Transatlantic Race:3000マイル)、RBR(Round Britain Race:1900マイル)、MT(Mini‐Transat :4300マイル)である。OSTARとRBRはT人乗りの外洋ヨットレースで、少なくとも2週間はかかる。MTは2人乗りだが距離が長い。眠らずには航海をつづけられないが、眠れば船足が落ち、コースもはずしやすい。外洋レースのヨットマンには、睡眠のジレンマがつねにつきまとう。
表5.1 ヨットマンの4つの睡眠法

表5.1 ヨットマンの4つの睡眠法


のべ54艇、99人の参加者のレース中の睡眠日誌を分析したところ、表5・1のように20分から120分の短時間睡眠を小きざみにとり、1日の合計睡眠時間が4〜5時間という人が圧倒的に多い。つぎに4時間眠って8時間作業する海軍式睡眠が多い・これはすでに述べた係留睡眠に相当する・寝だめや、ふだんどおりの単相性睡眠をとる人は8%にすぎない。
順位と平均速度を比較すると、1回あたりの睡眠時間が短いと速く、長いと遅い。また、1日の睡眠時間は4〜5時間に切りつめたときがもっとも速度が遠く、順位も高い。上位入賞艇のほとんどが、20分からせいぜい1時間ていどの小きざみな睡眠を日に4時間ぐらいとるだけで、正確な判断と機敏な動作を維持している。多相性の分割睡眠はここでも効果的に機能していることがわかる。しかし、この人々も日常生活では平凡な7〜8時間の単相性睡眠をとっており、必要にせまられてとる眠りと、楽しむ眠りの差が大きいことを示唆している。

自己覚醒法

あらかじめ何時に起きようと決めて眠ると、分単位の誤差で正確に目ざめることができることは、古くから注目されてきた。これは、睡眠中にもかなり正確な時間判断や評価が可能であることをしめすもので、このような目ざまし時計によらない目ざめを、自己覚醒という。欧米では頭時計とよばれ、この時計によって目ざめようと意図して眠ることを、注意睡眠という。
これまでの研究で、つぎの3点はほぼすべての研究者がみとめている。
①個人差はあるが、習慣的な起床時刻以外にも、あらかじめ決めた時刻に目ざめることが可能であり、決めた時刻よりすこし早めに目ざめることが多い。
②この目ざめは外の明るさや騒音など、時間手がかりとなるものとは完全に無関係である。
③目ざめは夜半では失敗することが多く、早朝のほうが成功しやすい。
毎朝、目ざまし時計の音に驚かされながら目ざめるよりも、目ざまし音が鳴るすこし前に目をさまして、目ざましのセ。トを解除するほうが気分はずっと快適である。
それでは、だれでも起きようと決心すれば、望みの時刻に正確に目ざめることができるものなのだろうか。また、起きる時刻が気になって、寝つきが悪くなったり、睡眠が浅くなったりしないものであろうか。せっかく目ざまし時計なしに目ざめることができても、睡眠が歪んでしまっては意味がない。
ここではラビエらの研究を紹介しよう。
自己覚醒ができると答えた男女7人を被験者として、4日間実験室で眠ってもらい、睡眠ポリグラフ法で記録しながら、じっさいに起きようと思う時刻に目ざめることができるものかを確かめている。
はじめて実験室で眠る人は、測定用の電極をつけられたり、自分の睡眠が記録されるというものものしい雰囲気に、軽い緊張と不安を感じるものである。これは実験室効果とよばれる現象であるが、一晩でかんたんに順応して消失するので、第一夜効果ともよばれている。そこで、第一夜は順応夜として、分析からはずすのがふつうである。この実験でも、自己覚醒を意図しないふだんの睡眠経過の記録(基準夜)は、第二夜のものを用いている。
第3、第4夜(実験夜)で起床時刻を決めて眠りに入り、じっさいどれくらいの正確さで覚醒できるかをしらべている。いずれの夜も午前0時に就床し、翌朝6時に起床することとして、目ざめるべき所定時刻を3時30分と5時30分とした。この時刻の一方を第3夜に、他方を第4夜に割りつけている。なお、動機づけのために、所定の時刻と覚醒した時刻の差を測って、所定の時刻から前後10分以内、20分以内、30分以内、40分以内の4段階で報酬を支払っている。寝室内には時計などの時刻を知る手がかりはいっさいおいていない。被験者は所定の時刻で目ざめたと判断したときには、そのことを実験者にインターフォンで伝えた。
さて、自己覚醒の成功率であるが、7人の計14回の実験夜のうちで、所定の時刻に目ざめたという報告は12回で、成功率は86%である。いずれも睡眠中に急に覚醒しており、中途覚醒に偶然重なったものではなく、意図的におこなわれた自己覚醒であることをしめしている。
その正確さは、所定時刻の前後10分以内が5回(36%)、20分以内が3回(21%)、30分以内が1回(7%)、40分以内が3回(21%)だった。
どの睡眠段階から目ざめたかをみると、12回の目ざめのうち8回(67%)はレム睡眠から目ざめており、段階2から3回(25%)、深い眠りの段階4からは1回(8%)で、他の段階にくらべて、レム睡眠から目ざめる割合がきわだって高い。
入眠潜時をくらべると、実験夜の入眠潜時は平均25・4分で、これは基準夜の13・6分にくらべて二倍ほど長い。実験夜で個人差が大きくなったために、統計的な有意差はみとめられていないが、自己覚醒を意図した注意睡眠では、寝つきがやや悪くなる傾向があるようである。
この第一実験でもっとも正確な自己覚醒をしめした2人の被験者を選びだし、覚醒時刻をさらに7つに増やして成功率と正確さをしらべている。自己覚醒は一夜につき1回として、7夜にわたって検討している。設定時刻は1時から6時までのあいだでランダムに決められ、所定時刻の前後20分以内に目ざめたときにのみ報酬が支払われた。
この二つめの実験でも、2人の被験者はほぼ所定の時刻に目をさまし、成功率は100%であった。しかし、その正確度は、はじめの実験にくらべてかなり低く、所定の時刻から前後10分以内に目ざめたのは1回(7%)で、20分以内も1回(7%)にすぎない。報酬が得られたのは、14回の試行でたった2回であった。30分以内が3回(21%)、40分以内が1回(7%)、40分以上が8回(57%)であった。
また目ざめた睡眠段階を見ると、レム睡眠が7回(50%)、段階2が5回(36%)、段階4から2回(14%)で、第二実験でもレム睡眠から目ざめる割合がひじょうに高いというのが特徴である。入眠潜時は、こんども基準夜の5・5分にくらべて、実験夜では17・1分でおよそ3倍になっている。
以上の結果から、所定の時刻にわずかな誤差でしっかりと目をさますことができる人がいるということが明らかになった。第二実験で正確度が下がったのは、報酬基準が20分以内ときびしすぎたために、報酬がもらえない試行が多くなって、動機づけが下がってしまったためであろうと結論づけている。段階4などは通常の刺激覚醒実験でもなかなか目をさますことができないので、動機づけが低いと目ざめにくいことは十分に理解できる。
レム睡眠から目をさましやすいということは、これまでの研究で早朝のほうが成功しやすいということと対応しているように思われる。朝方になるとレム睡眠の持続時間が長くなるので、早朝のほうがより正確な自己覚醒に成功しやすいということになる。自己覚醒研究の古典であるフロベニウスの論文(1927年)には、自己覚醒した被験者の報告に、夢の中で「時間です。さあ起きなさい」という言葉をかけられたというものがあったと記されている。レム睡眠が発見される30年ほど前のことである。かれはすでに、レム睡眠が自己覚醒を促進するように関与していることを見抜いていたようである。
さて、任意の時刻に目をさますことができるかという点では、できたほうが便利であるが、あるていど習慣化するほうが成功率は高くなる。このことは経験的によくいわれることで、電車のなかで二駅分くらい眠っていた人が、目的の駅に着く直前に目をさまして、サッと降りていくのを見かけることがある。たぶんいつも乗りつけている人であろう。このような自己覚醒の達人は、研究者が推定する成人の30〜40%よりももっと多いのかもしれない。
最近、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌が、自己覚醒するときと目ざまし時計によって目をさますときとでは異なることがわかり、注目を集めている。ACTHは脳下垂体前葉から分泌されるホルモンで、副腎皮質を刺激して副腎皮質ホルモンの分泌をうながす。ストレス事態で活発にはたらくのでストレスマーカーとして用いられるが、体のすみずみまで活性化して適応性を高めるはたらきがある。睡眠の前半では分泌がおさえられているが、睡眠後半から朝方に向けて増加し、覚醒直後にピークに速すると、その後急速に減少する。起床時の覚醒水準や活動性の変化はひじょうに急激で、振幅も大きい。このようなはげしい変化点を乗りきるためには、全身を活性化させるホルモンの分泌が一過性に高くなることは、適応戦略にかなったことである。

図5.2 睡眠中と起床時の血しょうACTH値の変化

図5.2 睡眠中と起床時の血しょうACTH値の変化


図5・2は、睡眠中と起床時の血しょうACTH値の変化を、成人15人の平均でしめしたものである。被験者はあらかじめ、自己覚醒能力が高い人が選ばれている。
朝の6時に目をさますように指示すると、正確に6時に覚醒できている。ここで注目したいのは、ACTHの上昇は目をさますおよそ1時間前にはじまっていることである。目をさました時点ではピーク値のすぐ近くまで到速しており、覚醒直前と直後にそれほど差がない。
別の日に「今日は9時に起きてください」といって、長時間睡眠を指示すると、血しょう中のACTH濃度は長眠型とそっくりのゆるい勾配で高くなりながら、寝つづけることができる。
そして、9時きっかりに目をさましており、6時間のときほどメリハリはよくないが、覚醒に先行して予期的な上昇がおこっている。
さらに別の日に「今日も9時に起きてください」と自己覚醒を指示して寝かせ、6時になったら「システムにトラブルがおきたので起きてください」といって起こしてしまう。実験者たちはこれを「ビックリ条件」と名づけているが、ACTH値は目をさますとともに9時間睡眠のゆるい上昇勾配から急激に上昇し、覚屋後30分以内にピーク値に達する。覚醒後の減衰曲線は、自己覚醒もビックリ覚醒もほとんど変わらないが、覚醒直前のACTH値には大きな差があり、覚醒準備がないと起床時に大きな負担が集中してかかることがわかる。
前のラビエらの実験では、自己覚醒を意図すると入眠潜時がのびるなど、注意睡眠のストレス効果がうかがわれたが、この研究ではとくに睡眠妨害効果は指摘
されていない。
表5.2 6時間睡眠の睡眠段階構成比

表5.2 6時間睡眠の睡眠段階構成比


表5・2は、6時の自己覚醒条件と6時のビックリ覚醒条件の6時間睡眠の構造を比較したものである。どちらも6時と9時に目をさますことを意図した自己覚醒条件下であるから、自己覚醒による睡眠妨害効果の検定にはなっていないのであるが、短縮睡眠(6時の自己覚醒)条件のほうが睡眠を歪めそうに想像されるが、そのような影響はほとんど出ていない。
自己覚醒は、好きな時間に起きてみせるという得意技として腕を磨くことも楽しいことであるが、規則正しい生活習慣のなかに組みこんで起床時の負担を軽減し、睡眠を自己管理する手段として洗練化させることも大切である。自己覚醒の脳内メカニズムはまだほとんどわかっていないが、目をさますべき時刻が接近すると、内分泌系は目をさます準備に入り、睡眠から覚醒への移行をスムーズにおこなえるように調整がすすむ。目ざまし時計の大きな音でビックリして覚醒し、大急ぎで全身を活性化させるのにくらべると、無理のないスマートな覚醒といえる。目ざまし時計のない時代には、人はいまより早起きで、さわやかな朝を迎えていた。この覚醒技法はもっと真剣に研究されていいだろう。

シエスタ(昼寝)は自然?

日中の眠気は、前の晩に十分に睡眠をとっていてもおこる。たいくつな環境下では、前日の24時間中にふだんの倍の28時間眠っていても、日中に1〜2時間の昼寝がおこる。恒常環境下で、自由に生活させたばあいの睡眠の発現分布を見ると、二つのピークをもっている(図6・1)。

図6.1 恒常環境下に出現した昼寝と夜間睡眠

図6.1 恒常環境下に出現した昼寝と夜間睡眠


 
一つは最低体温期のすこし前でおこり、もう一つは最高体温期のすこし前でおこっている。前者は夜間の主睡眠の時間帯に、後者は昼寝の時間帯にあたる。昼寝は体温リズムと関連し、エネルギー戦略に組みこまれたごく自然な休止相であり、ヒトはもともと昼寝をするようにできていることをしめしている。
地中海沿岸にシエスタとよぶ昼寝の習慣があることは、よく知られている。東南アジアや南中国、中南米地域でも同じような習慣がある。それらは14〜16時にかけてとられており、眠気のピーク時刻や昼寝の時間帯に一致している。
昼寝の習慣は熱帯から亜熱帯にかけて分布するため、高温環境にたいする対処行動と考えられてきた。ところが、昼寝の習慣がある地域を地図にプロットしてみると、赤道をはさんで緯度にして南北45度のはんいに分布していることがわかる。このはんいには北海道まで含まれるので、日本にもシエスタに相当する昼寝の習慣があってもよさそうだが、少なくとも現代社会にかぎれば、ほとんどないといっていい。一方、地中海沿岸地方も冬は気温が10度以下になり、1年をつうじてとられるシエスタが、対暑戦略として機能していると考えるのにも無理がある。
たまたまこれらの国では昼寝が許容され、そうでない国ではタブー視されたという文化差と考えるほうが妥当だろう。
とくに北半球高緯度に分布する、先進国とよばれる国々では、昼寝はタブー視され、昼寝の弊害が指摘されてきた。その主なものは、①生物リズムが乱れる、②夜間の主睡眠に悪影響が出る、③昼寝直後に睡眠慣性が残り、事故や作業成績の低下を招くというものである・睡眠慣性とはヽ眠気の残留、つまり起きてからしばらく頭がボーッとしてはたらかない状態がつづくことをいう。
シエスタは2時間くらい眠るので、夕食も遅くなり、就床も遅くなりやすい。その結果、夜間睡眠が6時間、昼寝が2時間、あわせて8時間という分割睡眠になることが多い。しかし、これがとくに睡眠障害を生んでいるという指摘も見あたらない。
たしかに、生産システムを日中2時間も止めておくことは、効率から考えるとぐあいの悪いことが多い。とくに重工業では、熱効率から考えても受け入れることは困難だろう。昼寝が本来生理的な現象としても、シエスタの時間とタイミングがいまのままでいいかどうかは、あらためて検討する必要がある。

長さは20分が最適

睡眠不足の翌日には、昼寝をして不足分をおぎないたいと思うことがある。このような目的でとる昼寝を補償仮眠という。現在のところ不足状態ではないのだが、これからの夜勤にそなえてあらかじめ寝ておこうというのが予防仮眠である。とくに不足もなく何かにそなえるというわけではなく、楽しむためにとる昼寝を付加仮眠という。
補償仮眠や予防仮眠では比較的長い時間が好まれ、付加仮眠では短い時間が好まれる。昼寝の長さを決めるばあいに、睡眠慣性の大きさを考えておく必要がある。睡眠慣性が大きいときは眠いだけでなく、ごく短時間のうちに再入眠しやすく、居眠り事故を誘発するので危険なのである。

図6.2 仮眠の長さと睡眠慣性(課題成績は仮眠20分前の成績を1としたときの相対値

図6.2 仮眠の長さと睡眠慣性(課題成績は仮眠20分前の成績を1としたときの相対値


図6・2は、仮眠の長さと睡眠慣性の大きさとの関係をしめしたものである。被験者には、目がさめたらただちに引き算の暗算課題をはじめてもらい、計算速度と正確さをしらべる。仮眠をしない対照条件での成績を1.0として、成績を比にとると、1.0以下は昼寝をしたためにおきた成績低下ということになる。この数値が低いほど睡眠慣性が大きいことをあらわしている。その後20分、54分、80分経過したところで同様にして測定し、回復過程を見ている。 仮眠の長さと睡眠慣性の大きさとの関係を、目ざめた直後(0分)の成績でくらべてみると、50分仮眠のはあいがもっとも悪く、つぎに80分、20分の順に低下が小さくなっている。このことから、仮眠時間と睡眠慣性の関係は一様でないことがわかる。
回復過程も、20分仮眠では覚醒後20分で対照条件の水準に復帰しているが、80分と50分では回復が十分ではなく、さらに回復時間を要しているのがわかる。
ここで注意しておかなければならないのは、睡眠慣性の大きさや持続に、昼寝の長さが直接関係しているのではなく、直前の睡眠状態によって規定されているということである。
図6.3覚醒直前の睡眠段階と課題成績(成績は仮眠前の対照値との相対値)

図6.3覚醒直前の睡眠段階と課題成績(成績は仮眠前の対照値との相対値)


 
図6・3は、覚醒直前の睡眠段階と覚醒後の課題成績をしめしたちのである。徐波睡眠(段階3+4)の直後がもっとも成績が悪い。段階I、2とレム睡眠はわずかに差はあるものの、徐波睡眠にくらべるとずっと成績がいい。このことと先に述べた仮眠時間の長さを組み合わせて考えると、仮眠時間20分ではまだ徐波睡眠は出ていないか、出ていたとしてもごくわずかであり、段階1か2で目をさますことになる。50分ではちょうど徐波睡眠の最中に目をさますことになる。80分では、眠りのサイクルが一つ過ぎて、徐波睡眠から段階1、2またはレム睡眠に移ったところで目をさますことになる。20分と80分は似たような睡眠段階から目をさますことになる。80分のほうがやや睡眠慣性が大きいのは、睡眠時間が長くなると睡眠過程が本格的に進行する態勢に入るため、睡眠を中断することがむずかしくなることをしめしている。
結局、仮眠の長さは徐波睡眠から目ざめることのないように工夫すればいい。このように考えると、とくに徐波睡眠の補充が必要でないときは20分を選び、睡眠負債が大きく徐波睡眠の補充が必要なときには80分を選べばいいことになる。
2時間仮眠のタイミングは
東京都神経科学総合研究所の宮下彰夫氏らは、2時間の仮眠をそれぞれ9時、14時、19時にとり、そのことによっておこる夜間睡眠への影響を比較している。
それによると、午前中の仮眠ではほとんど変化は見られないが、14時と19時の仮眠ではいずれも、夜間睡眠の徐波睡眠量を減少させることがわかる。基準夜にくらべると、9時の仮眠では110%でほとんど変わらない。ところが14時の仮眠では70%になりヽ19時では 1666%まで減少する。この徐波睡眠の減少は、睡眠前半にはっきりとあらわれる。平均7・5時間の睡眠時間を3等分してくらべると、はじめの2・5時間にかぎってみとめられる。午後に2時間の仮眠をとることは、夜間睡眠の構造をゆがめてしまい、有害であるといえる。
ファインバーグらも、11時と15時にとった2時間の仮眠が、その日の夜間睡眠(23時30分〜7時)のδ(デルタ)帯域活動(徐波睡眠)におよぼす影響をしらべている。
どちらの時間に仮眠をとっても、その形容は、基準夜にくらべて入眠潜時が数分長くなるていどで、全睡眠時間には差は見られない。ところが、第一周期についてみると、ノンレム睡眠の長さが11時の仮眠では79%に、15時の仮眠ではさらに64%まで短くなる。この短縮の影響を受けて、レム睡眠の出現が早められている。
脳波のδ帯域活動の積分値を比較すると、第一周期の減少は、11時の仮眠では基準夜の75%に、15時の仮眠では59%にもなる。つまり、仮眠は第一周期のδ帯域活動を弱めてしまい、その結果、ノンレム睡眠時間の短縮とレム睡眠潜時の短縮かおこっていることをしめしている。その影響は、15時の仮眠のばあいにはっきりとあらわれた。これらの研究をまとめると、2時間仮眠では、仮眠から夜間睡眠までの時間が短くなるほど夜間の徐波睡眠が減少し、とくに14時以降の仮眠は深刻な睡眠妨害効果を引きおこすことが指摘できる。

睡眠不足への効果

24時間眠らずにすごした翌日、その眠気と、15時と19時にとった2時間仮眠の効果を超短縮睡眠‐覚醒スケジュールでしらべた研究がある。
超短縮睡眠‐覚醒スケジュールとは、すでに2章で述べたように、7分間の睡眠期と13分間の覚醒期をセ。トにしてくりかえし測定し、睡眠期にあらわれた睡眠時間の推移から、いろいろな時間帯の睡眠の発生確率をしらべる方法である。眠いときには、睡眠期の大部分を睡眠が占める。眠くないときは、ほとんど眠ることはない。断眠で睡眠圧が高まっているので、この実験では7分間ベッドに横になるが、眠らないように指示される覚醒維持法が用いられている。
仮眠の効率は、15時のほうが、断眠時間の長い19時よりも高く、睡眠慣性も弱い。15時は眠気の第ニゲートに相当し、日中でもっとも眠い時間帯である。一方、19時からおよそ2時間は睡眠禁止帯とよばれ、もっとも眠りにくい時間帯である。超短縮睡眠‐覚醒スケジュールでしらべると、この時間帯は7分の睡眠期でほとんど眠ることはなく、眠ってもごくわずかで目がさめてしまう。断眠後の仮眠でも、眠りやすい時間帯にとるほうが効果的であることがわかる。
15時の仮眠では、17時に目がさめると睡眠禁止帯が接近しているので、脳は覚醒水準を高める準備状態に入っている。一方、19時の仮眠ではちょうど睡眠禁止帯の終わるころに目ざめ、眠気の第一ゲートが開く直前にあたる。1日でもっとも強い眠気がはじまるのは22時ごろからである。そこでこの時刻に眠気の第一ゲートが開き、夜間睡眠の態勢がととのうと考えられている。
目ざめたときの潜在的な睡眠傾向が、睡眠慣性を左右している。その点からいえば、15時の仮眠は、眠りやすく目ざめやすい時間帯にとっており、効率的であり、効果も高い。一方、19時の仮眠は眠りにくく目ざめにくい時間帯にとっており、効率も悪く効果も低い。ところで、極端な睡眠不足の状態では、2時間の仮眠で回復できる効果と持続には限界があり、およそ5時間である。15時の仮眠も23時には効果が弱まり、眠気が急に強くなる。一方、19時の仮眠では仮眠直後の眠気をとりのぞく効果は弱かったが、23時以降の5時間でくらべると、15時の仮眠のときよりも睡眠の発生率がおさえられている。効率は悪くても、仮眠は眠気のピークを後退させる効果をもっていることがわかる。夜勤明けの昼寝であれば15時から2時間寝ても、いつもの時間に寝つくのに支障はない。これにたいして、19時の仮眠は眠気の除去効果に乏しいし、そのわりに夜間睡眠の寝つきを妨害する可能性があり、すすめられない。
これまでの研究では、仮眠は2時間と比較的長い時間がとられているが、ギルバーグらは30分という短時間の仮眠で、その効果を検討している。まず、夜間睡眠を4時間(0〜4時)に制限して眠気を強めておき、翌日の日中8時間(8〜16時)の眠気を、30分(10時45分〜11時15分)の仮眠でどのていどおさえられるかをしらべている。
視覚ビジランス課題の成績は、睡眠時間が4時間に制限されると、ふだんの75%ていどに低下する。仮眠後には成績が向上し、基準値と同じレベルに改善する。ところがこの効果はあまり長もちはせず、15時の測定では成績が下がりはじめている。仮眠の効果はせいぜい4時間が限度と考えられる。30秒ごとに脳波活動(a‐θ波%)とゆっくりとした眼球運動(SEM%)をしらべて生理的な眠気得点を計算すると、眠気得点は短縮睡眠でふだんの7倍に上昇する。仮眠をとると、これがほぼ半減する。主観的な眠気も短縮睡眠で丁7倍になるが、仮眠をとるとふだんの水準に復帰する。個人差があり、明らかな差をしめすにはいたっていない指標も多いが、30分の仮眠にかなりの回復力があることがわかる。
30分仮眠ではほとんどが睡眠段階1と2で占められ、徐波睡眠(段階3十4)は平均3・7分にすぎない。したがって、この仮眠には徐波睡眠を補充するはたらきはないと考えていい。4時間ていどの睡眠不足でおこる日中の眠気は、浅いノンレム睡眠で十分に対処できる。従来、夜間の仮眠では1時間以上の長さがないと、作業成績や眠気に改善効果がないといわれてきた。
しかし、このことは低体温期の仮眠に特有のことで、日中の仮眠(昼寝)は30分で効果があらわれるので、昼寝と夜間の仮眠は区別して考えることが大切なようである。

短時間仮眠の効果

短時間仮眠法は、徐波睡眠を含まない仮眠のほうが睡眠慣性をおさえることができるという点に着目したものである。
入眠してから徐波睡眠が出現するまでの時間は、年齢によって異なる。青年期から若年成人では15〜20分で徐波睡眠があらわれるが、中高年では30分ていどに長くなる。したがって、仮眠の長さは、個人により、また年齢により調節するのが正しいといえる。目ざめたときにひどく眠気が残るようであれば、徐波睡眠段階から目ざめている可能性が高いので、仮眠時間を短くすればいい。15〜30分のはんいで、起きぬけにさわやかな印象がえられれば、ちょうどいい長さと考えていい。いつとるかというタイミングの問題は、眠いときに寝るのであれば14時であり、14時の眠気を予防しようというのであれば2時間周期の眠気のリズムを
利用して、10時か12時を選択することになる。
これまでの研究では、睡眠不足の状態を前提に実験が組まれていた。ところが、日中の眠気はとくに睡眠不足でなくても発生する。そこで、ふつうに生活している人が体験する日中の眠気や居眠りを、短時間仮眠でおさえたり予防するための研究が必要になる。
私の研究室の林光緒助教授らは、ふつうに眠った翌日の日中ハ時間(10〜一8時)について、20分ごとに眠気をくりかえし測定し、14時にとった昼寝の効果をしらべている。眠気の測定と認知機能の測定には、論理課題、英数字検出課題、加算課題、聴覚ビジランス課題の4つが用いられた。

表6.1 午後2時にとった昼寝の内容

表6.1 午後2時にとった昼寝の内容


表6・1は昼寝の内容をしめしたものである。徐波睡眠はあらわれず、覚醒直前の睡眠段階はいずれも段階2だった。
図6.4 午後2時の昼寝・休憩効果

図6.4 午後2時の昼寝・休憩効果


 
図6・4は、測定した指標のうちで変化がいちじるしかった眠気、閉眼安静時脳波、聴覚ビジランスの成績をしめしたものである。条件間の比較をわかりやすくするために、休憩・昼寝前の平均を基準として、相対変化量でしめしている。
眠気の強さは、昼寝後にはっきりと減少し、その効果は少なくとも2時間維持されていることがわかる。つぎのグラフは、閉眼安静時の脳波であるα帯域活動(8〜13ヘルツ)の振幅値の変化をしめしたものである。目をあけるとα帯域活動は減衰する。この減衰率は高覚醒であるほどいちじるしく、覚醒が低下すると減衰せず、α帯域活動の振幅値は高い状態にとどまる。昼寝をするとα帯域活動は減衰しており、覚醒低下がおさえられていることをしめしている。聴覚ビジランスのグラフは、正答率の推移をしめしたものである。休憩条件では15時以降で成績が下がってしまうが、昼寝をするとその後2時間は成績が向上する。以上の結果から、14時の昼寝は、眠気の除去、生理的覚醒水準と行動的覚醒水準の維持と改善に効果があることをしめしている。
12時の昼寝つぎに、予防仮眠としてこ1時に昼寝をしたら、どのような効果が期待できるだろうか。
ロフテー快眠スタジオの前田素子氏らは、昼休憩にとった15分仮眠(12時30分〜45分)が、14時の眠気をおさえ、視覚ビジランス課題の成績を向上させることをたしかめている。また、私の研究室の林助教授らは、14時の昼寝とまったく同様の方法で12時20分から20分間とった昼寝の効果をしらべている。
表6.2 12時にとった昼寝の内容

表6.2 12時にとった昼寝の内容


 
表6・2は昼寝の内容である。
徐波睡眠はあらわれず、覚醒直前の睡眠段階も14時条件と同様に段階2だった。
2015年12月12日13時38分37秒.pdf033
図6・5は、昼寝と休憩の条件差がはっきりしていた3つの指標の結果をしめしたものである。眠気は13時と14時で平均水準より下がっており、休憩よりも眠気の予防効果があることがよくわかる。
眠気が強まると、仕事の成果を過小に評価する傾向があらわれる。昼寝は、眠気を軽減するとともに、この過小評価の傾向も解消するはたらきをしている。昼休みの昼寝では、じっさいの作業成績を向上させるほどには強い効果はあらわれない。つまり、成績は休憩条件とほとんど変わらない。ところが、二股目の自己評価のグラフを見ると、休憩条件のほうが成績を低く評価している。眠気が強まると、仕事の成果を過小に評価する傾向があらわれ、同じていどの成績にもかかわらず、昼寝をしたときにくらべ、達成感がおびやかされるなど心理的負担が大きいことをしめしている。
3段目は、脳波のα帯域活動の振幅値の変化をくらべたものである。14〜16時のもっとも眠い時間帯では差が見られないが、その両端では差が見られる。生理的覚醒を引き上げる効果はあるが、それが比較的弱いので、15時の落ちこみを引き上げるまでにはいかなかったようである。あるいは、昼休みにしっかりと休憩することは、昼寝をするのに近い回復効果をもっているのかもしれない。
以上の結果からいえることは、12時の昼寝は14時の昼寝にくらべると、行動的な覚醒やじっさいの作業成績にはあまりはっきりした改善効果は見られない。しかし、眠気が軽減され、気持ちのいい午後の活動が期待できることは、評価していい。

高齢者の昼寝は禁止すべきか

高齢者の生活指導で、とくに睡眠問題をかかえているばあいは、昼寝の禁止と日中生活の充実が強調されてきた。ところが、健康な老人ほど短い昼寝を習慣的にとっていることがわかり、高齢者の昼寝についてはあらためて見直しがせまられている。
私の研究室の田中らは、高齢者用の社会的自信度と情緒的適応性の得点から意欲度を測定し、ライフスタイルが意欲的であることと睡眠生活習慣のあいだに関係があるかどうかをしらべている。昼寝に関する項目をひろってみると、意欲的な高齢者には昼寝の習慣をもつ人が多く(43%)、昼寝をとる時刻分布のピークは14時30分だった。一方、あまり意欲的でない高齢者は、昼寝の習慣をもつ人が少なく(29%)、ピーク時刻はこ1時30分で、約2時間前になっていることがわかった。
昼寝の長さは両グループに差はなく、平均するとおよそ30分だった。ところが、夜間睡眠の長さには差が見られ、高意欲グループでは平均7時間であるのにたいし、低意欲グループでは6・5時間と短い。日中の眠気を感じる時間も、高意欲グループで65分であるのにたいし、低意欲グループでは92分とかなり長い。
高意欲グループの昼寝は睡眠不足をおぎなう補償仮眠ではなく、付加仮眠とみなすことができる。一方、低意欲グループの昼寝の時間を夜間睡眠時間に加えると、ちょうど高意欲グループの平均時間に近い値をとる。眠気の時間が長いことも夜間睡眠の効率が下がっていることをあらわしており、睡眠不足をおぎなう補償仮眠として昼寝がとられていることをしめしている。
また昼寝の時刻が低意欲グループで2時間早いことは、夜間睡眠の不足から日中の睡眠圧が上がり、その結果、位相前進がおこったものと考えられている。
これらの調査結果から考えると、14時に積極的に昼寝をとる高齢者のほうが、日中の眠気を短時間で切りぬけ、午後の覚醒水準を高く保ち、快適な生活を送っているとみなすことができる。
アルツハイマー病の予防因子?
国立精神・神経センターの高橋清久氏らは、記憶障害を中心とする痴呆症状で外来受診した370人の患者と、対照群として患者の家族から283人を選び、アルツハイマー病の危険因子をライフスタイルとの関係から検索している(表6・3)。

表6.3 アルツハイマー病の危険因子と昼寝

表6.3 アルツハイマー病の危険因子と昼寝


表のいちばん下を見ると、習慣的に30分以下の昼寝をとる人は、これ以上の昼寝をとる人や昼寝をしない人にくらべてアルツハイマー病にかかる危険性が0・3倍であるということがわかる。このことは、短時間仮眠の習慣は、アルツハイマー病にかかる危険性を3分の1に引き下げるということであり、危険因子ではなく予防因子として見直すことができる。
表のほかの部分の見方について説明しておこう。年齢が10歳上がるごとにアルツハイマー病に3・3倍かかりやすくなり、家族にアルツハイマー病患者のいる人は、いない人の2・4倍かかりやすくなる。配偶者と死別して5年以内の人は、それ以外の人の2・9倍かかりやすい。それらにくらべて、出産時の母親の年齢については、1才上がるごとにわずかずつ危険度が上がるていどである。
さらに、昼寝の長さで整理して検討すると、1時間以上の昼寝の習慣をもつ人は、それより短い昼寝の人にくらべてアルツハイマー病にかかりやすくなることが明らかになった。このことと、意欲的なライフスタイルの高齢者に、短時間の昼寝を習慣的にとる人が多いこととあわせて考えると、適切な長さの昼寝をいいタイミングでとることは、身体面のみならず精神面でも老化の進行を遅らせる可能性を示唆している。

位相のずれと昼寝

私の研究室の城田らは、アクチグラム(活動計)を用いて活動量を10日間連続測定し、高意欲グループと低意欲グループの高齢者で、睡眠?覚醒リズムと活動リズムをくらべている。
活動リズムの分析から、どちらのグループにも、24時間周期のサーカディアンリズムと12時間周期のサーカセミディアンリズムがみとめられた。そのうち12時間周期のリズムは昼寝の時刻と、24時間周期のリズムは夜間睡眠期とそれぞれ頂点位相が対応していた。グループ間でそれぞれのリズムの位相をくらべると、24時間リズムでは低意欲グループは高意欲グループより位相が約2時間前になっており、12時間リズムでも同様に低意欲グループが44分前になっているのがたしかめられた。

図6.6 高齢者の昼寝と活動リズム

図6.6 高齢者の昼寝と活動リズム


この位相前進と昼寝の関係をしらべると、図6・6のようになる。
低意欲グループでは、活動リズムが前にずれるため、活動性が低下するほうが早く、昼寝(灰色部)がはじまるころには活動性が回復する位相になり、昼寝をとるには不利な時間関係になっている。一方、高意欲グループでは、活動リズムが低下すると最低値(頂点位相:太い縦線)よりも前に昼寝がはじまり、頂点位相を過ぎるとまもなく覚醒している。昼寝と活動低下がいい重なりを見せており、昼寝をとるのに有利な時間関係となっている。
低意欲の高齢者は眠気が強まり、活動性が低下してから寝はじめるので、眠るタイミングが後ろにずれている。眠くなってから眠るという消極的なライフスタイル
があらわれている。一方、高意欲グループでは活動低下が極端にすすむ前に昼寝をはじめており、眠くなったら眠るというよりも、習慣的に昼寝をしているために、リズムにすこし先行する形で昼寝をとっているのがわかる。
ここからも、意欲的な高齢者は習慣的に付加仮眠をとり、低意欲の高齢者では眠気に耐えられずにとる補償仮眠であることがわかる。
覚醒維持と血圧低下
私の研究室の玉木らは、林助教授らの実験方法を高齢者用に改定して、13時にとった昼寝の効果をしらべている。週3回以上昼寝をしている人を対象として、10〜16時の眠気、課題成績、脳波活動を30分ごとに測定した。途中13時から1時間の休み時間を設け、昼寝条件では30分間の昼寝をとり、休憩条件では眠らずにリクライニングシートでビデオを観ながら休憩した。
図6.7 高齢者における30分仮眠の効果

図6.7 高齢者における30分仮眠の効果


昼寝をとると、午後の眠気がはっきりと軽減された(図6・7上)。
視覚ビジランス課題で呈示する刺激は数字だけにし、「3」が出たら反応するという単純課題に変更してある。高齢者では、正答率が90%以下になるとテスト不安が増大し、中途挫折することが多いため、平均正答率を95%以上に設定している。図6・7中はその結果をしめしたものである。ほとんど満点に近いという歪みは出ているが、14時30分にいちじるしい差が見られる。昼寝をすると成績は午前中の水準を維持できるが、休憩だけでは14〜15時の成績低下をくいとめることはできない。
また、脳波のθ(シータ)帯域活動は、目をつむっているときに眠気が強まると振幅が高くなる。休憩だけでは振幅がしだいに増加していくが、昼寝をするとこの振幅増加がおさえられており、いちじるしい覚醒維持効果がみとめられる(図6・7下)。
昼寝は、このような覚醒調整効果をしめすばかりでなく、血圧を下げるはたらきがある。玉木らは休憩の前後で血圧を測定し、30分間の昼寝と休憩をくらべている。それによると、昼寝をすると拡張期血圧で平均8・6ミリ陶収縮期血圧では平均15・6ミリ恥の血圧降下がみとめられた。休憩だけではこのような現象はみられず、昼寝に特有の現象と考えられる。血圧降下は生活習慣病の予防としても効果が期待され、この点からも昼寝をダメとする生活指導には見直しが必要といえよう。

おやつは眠気ざまし

伝統的な作業・休憩計画では、8時の始業、10時のお茶、12時の昼食、2時のおやつ、5時の終業が基本であり、これまでに述べてきた眠気のウルトラディアンリズムのピーク時刻に、休憩がしっかりと組みこまれているのがわかる。いまでも土木、建築業や造園業などの人たちには根強い支持を受け、午前と午後に2回休憩をとる習慣はわずかながら残っている。その一方で、オフィス街では1965年ごろから徐々に影をひそめ、最近では10時と2時にお茶を飲む習慣はほとんど消滅した。
昔の時刻のよび名は、現在の10時が巳の刻で4つ時、午後2時が未の刻で8つ時である。おやつは、午後2時(8っ時)に休憩をとった習慣の名残で、そのときに眠気ざましにとった茶菓をさしている。お4つもあってよさそうだが、こちらはしらべてもさっぱり見あたらない。
昔の人も2時の眠気には手を焼いたのであろう。みっともない居眠りをするくらいなら、茶うけに菓子や漬け物を出して楽しく談笑し、眠気のピークをやりすごすことにしたようだ。休み時間は15分からせいぜい30分で、ほんの一息入れるというものであった。
昔の時刻は2時間きざみであり、未の刻は午後2〜4時(または午後1〜3時)で、2時になると鐘などで時報をだしていた。だから、おやつは午後2時ごろにとったと考えるのが自然である。ところが、おやつは3時という認識がはるかにいきわたっている。『広辞苑』にも「お3時」という言葉が採録されており、3時のほうが市民権をえているのかもしれない。だが、眠気のピークはその1時間前の2時にきているので、3時のおやつでは居眠り事故の防止にはまにあわないのである。
一般庶民が午後2時の眠気を乗りきるのにヽ番茶などの緑茶を使うようになったのは、おそらくだいぶ時代が下ってからではないかと思われる。歯ごたえのある漬け物をバリバリ食べたのは、眠気対処として理にかなったことである。ガムをかむのも同じ原理で、あごを動かし奥
歯をかみしめると、頭蓋内圧と血流の変化を引きおこし、これが刺激となって脳の覚醒を高める。あくびも大口を開けるからといって、べつに脳が酸欠になっているわけではない。覚醒を維持しようとすると、脳の覚醒維持システムがあくびを発令する。脳顔面頭蓋反応といって、顔中の筋肉をこわばらせ、とりわけあごの筋肉に力を入れて口を大きく開閉させる。漬け物を食べるときよりも力が入っており、脳を覚醒させる効果はずっと強い。1人で黙っているよりも、話し相手がいるほうが眠気がまぎれる。家族ドライブで運転者以外はみんな寝てしまうというようなときには、居眠りがおこりやすい。ラジオのディスクジョッキーがよびかけてくれると、仮想体験とわかっていても目がさめる。座談の達人と同席すると、楽しく時をすごして睡魔の襲撃をかわすことができる。
カフェインの入った茶を飲み、歯ざわりのいいクッキーを食べ、心がなごむおだやかな会話を楽しむ。これは単なる眠気対処ではなく、磨きのかかったおやつ文化といっていい。職場の休憩や休日の家族だんらんに、おやつ休憩は重要な位置を占め、生活の質を高める役割を担っていた。
イギリスのお茶の時間では、緑茶が紅茶に置きかわっている。ヨーロッパにひろがるコーヒー休みも、緑茶がコーヒーに置きかわっていることをのぞけば、時刻も長さも日本とほとんど変わらない。午後2時の眠気は、世の古今東西を問わずひとしくつらかったので、優雅な時間と空間を磨きあげてきたのである。昼寝が好きな人は昼寝を選び、おやつが好きな人はおやつを選ぶ、そのような自由が許されてこそ、多様なライフスタイルを許容する成熟社会といえるだろう。

表6.4 各種飲料のカフェインとタンニンの含有量

表6.4 各種飲料のカフェインとタンニンの含有量


表6・4は、おやつのさいによく飲まれる飲み物の、カフェインとタンニンの含有量をしめしたものである。カフェインの含有量は、コーヒーがもっとも少ないが、カップー杯分を浸出させるのに使う量はせん茶や紅茶の3倍ほどになるので、同量でくらべると、カフェインの量はコーヒーが一番多いことになる。この表のコーヒーは、日本人好みのエチオピア原産のアラビカ種もので、1.2〜1.3%と低い値になっている。アフリカ原産のロブスタ種は2・8%と二倍以上の含有率であり、カフェインが多いだけに覚醒作用も強い。インスタントコーヒーに含まれるカフェインは、アラビカ種をドリップしたばあいの60〜80%ていどである。
緑茶のばあいは、紅茶よりも早めに浸出を止めるので、表にある3・5グラムの茶葉に含まれるカフェインは804であるが、カップー杯あたりのカフェインは40〜60『とみていいだろう。ほうじ茶では、67「の含有量で6割の浸出とすれば、40「である。ウーロン茶は844で同様に6割とすれば、50「になる。紅茶は100「で、茶の仲間ではもっともカフェインの量が多く、6割の浸出としても604になるが、比較的長く浸出させることが多いので、60〜80「と考えるほうが妥当であるという意見もある。
コーヒーはアラビカ種で130呵ロブスタ種で280「とかなり高い値になる。入れ方に
よって変わるのは、茶葉のときと同じであり、アラビカ種で80〜120mgロブスタ種で160〜220mgである。コーヒー一杯が茶の二杯分くらいに相当する。おかわりをすれば、その分摂取するカフェイン量は上がるので、ほうじ茶が一番少ないからといってガブガブ飲めば、かえってコーヒーよりも強い覚醒作用があらわれる。インスタントコーヒーはカップー杯あたり60mg前後であり、ドリップしたものよりカフェインは少ない。しかし手軽に飲めるので、何杯も飲めば知らないうちに思わぬ量のカフェインを摂取していることになる。
ついでながら、カフェインだけを見ていると、茶は無難な飲み物のように見えるが、タンニンが胃壁を刺激して、吐き気をおこすことがある。紅茶のばあいはミルクを入れると、ミルクに含まれるカゼインとタンニンが結合し、タンニンが無毒化される。濃い紅茶にミルクを入れる習慣は、生活の知恵である。日本茶のばあいにはミルクを入れるわけにはいかないので、胃の弱い人はタンニンを多く出さないように茶葉を早く引きあげるか、タンニンの少ないほうじ茶を楽しむことをすすめたい。
これまで、カフェインはおよそ2時間で消失・半減し、排泄されるといわれてきたが、摂取した量や飲んだ人の分解能力によって変わるので、最近は若い人でも3〜4時間はかかると長めに修正されている。高齢者を対象に書かれたものでは、作用が消えるのに6時間かかることもあると明示して、注意をよびかけている。2時のおやつにコーヒーを1、2杯飲んだばあいには、最大で夜の8時まで覚醒作用がつづくということになる。高齢者は、午後3時以降はカフェイン飲料はあまり飲まないほうが、夜の睡眠にはいいといえる。
おやつにココアを飲む人もいる。ココアはチョコレートを湯に溶かしてつくった飲み物である。チョコレートの原料であるカカオ豆には、カフェインが含まれている。さらに、ティオブロミンというカフェインによく似た性質をもつ物質もほぼ同量含まれている。マグカップー杯のココアでカフェインにして40m一くらいである。これでけっこう眠気が飛ぶ。
受験生が夜飲むと、目がさめて勉強がはかどるが、そこから4〜5時間はカフェインが体の中にいすわっているので、眠りが浅くなることはまちがいない。おやつの眠気ざましを、そのまま夜中の間食に使いまわしすることはできない。
固形のチョコレートでは、100グラムあたりカフェインは70〜80mg含まれているので、同量のティオブロミンを加えると140〜160mgのカフェインに相当する。濃いコーヒーを一杯飲んだくらいの覚醒作用をもっている。一度に100グラムも食べてしまう人はいないかもしれないが、クッキーやケーキに入っていたりするので、思わぬ量をとっていることもある。
紅茶にチョコレートをあわせて楽しむと、それぞれはわずかでも、合計すればかなりのカフェインを摂取することになる。おやつに出てくる飲み物や菓子はいずれも、眠気を退治するための工夫がこらされていることがわかる。

新シエスタのすすめ

土木、建築、造園などの現場では、昼食後に1時間近い昼寝をとる習慣があることは前にも述べた。西日本の農村の一部では、暑い季節には、農作業のあいまをみて木陰に入り、昼食をとったら、みんなで寝てしまう習慣がある。地方によってよび名は変わるが、赤ん坊も専用の籐のかごに入れられて畑にきており、家族全員が食後に昼寝をしているのである。沖縄県にもかなり公認された昼寝習慣が残っている。
大阪には「昼寝屋」というビジネスが繁盛しているそうである。そこの経営者から、研究に役立つならいつでも協力するという、あたたかいよびかけをいただき、思わず感激してしまった。コーヒー一杯分の料金で、30分の昼寝を楽しむ会社員が多いそうである。
読売新聞の連載コラムに、午後の仮眠がとりあげられた。東京にある大手建設会社の設計部門では、ソファーとテレビが置かれたリフレッシュコーナーが各階にニカ所あり、昼食後に仮眠する社員があちこちに見られる。研究職や設計事務部門の中堅が活用しており、昼寝をすると頭がすっきりし、創造力がましてくるという。
工務店や土木工事店に引きつがれている昼寝は、首都圏の高層ビル街にも引きつがれていたのである。ゼネコンといわれる大手の建設業では、伝統的に昼寝を意味あるものとして認めながらも、世間体も考え、ひっそりとつづけてきたようである。工事現場ではかならず昼寝をする。そうしないとミスがおき、事故につながるといいきる。昼寝が許容されることは、現場の安全管理をひたすら考える企業姿勢に関係したものであろう。
このような仮眠室を用意するという考え方は徐々にひろがりつつあるようで、官庁街でも、昼休みには、使っていない会議室や談話室を仮眠休憩室として開放するところも増えてきているようだ。ところが、この不景気に昼寝をしているというと、いかにも怠けているように受けとめられかねない。たしかに私自身が、「このたいへんなときに昼寝の研究とは、ほのぼのしていていいですね」などと、少々トゲのある声をかけられる。企業イメージを大事にするところは、たいへん神経質になっており、どのくらいの企業が昼寝を実行し、それによって損失をどれくらい防ぐことができたかを数値で明示できないところが残念である。さて、ここで「新シエスタ」を提案したい。
午後2時におやつ休憩が30分とれたとする。このときには、まずおやつをとろう。おやつを食べてもカフェインやティオブロミンが効いてくるのは30分後である。そこで、昼寝が好きな人はおやつを10分ていどで切りあげて、仮眠スペースで昼寝をしよう。ソファーに横になれれば横になるのが一番いい。机にうつぶせになるのでも、背もたれにもたれかかるのでもいい。20分間昼寝をする。習慣化してくると、20分ピアタリで自己覚醒できる。腕時計の小さなアラームでしっかり
目ざめるが、たいていはその直前に止めることができるので、まだ寝ている同僚を起こす心配はない。目がさめると、コーヒーや緑茶、紅茶、チョコレートの効果がちょうどあらわれてくるので、寝ぼけ顔でデスクにもどることはない。
昼寝のリフレッシュ効果とおやつの回復効果の時間差をうまく組みあわせると、30分の「新シエスタ」で、午後の生活と仕事の質を飛躍的に向上させることができる。
このやりかたは、イギリスの交通安全研究チームが、トラックの居眠り運転防止に応用しようと、シミュレーション実験をすすめている。私たちの研究室では、比較的単調な制御室や情報管理部門を前提に、この昼寝とおやつのコンビネーション計画を実用化に向けて開発中である。実験段階であるが、昼寝単独のばあいにおこる再入眠や、ひどい眠気でまったく仕事にならないという睡眠酩酊は一度もおきておらず、なかなか好成績を上げている。
昼寝は好きではないという人もいる。昼寝が公認される人間的な社会では、逆に昼寝を強制するようなこともあってはならない。静かに談笑したい人は、30分そのまま談話室で楽しくすごすことである。休み時間が終わったころに、おやつの覚醒作用が効いてくる。これで、午後の仕事は気分一新、バリバリこなせること請けあいである。2時に仕事の手を止めるということは、国家レベルで普及をはかるとなると、ていねいにシミュレーションを重ねないと、実現が危うい。可能性としては、昼休みの時間を現在より20分くらい延長して、昼食時間とおやつ休憩を昼休みに組みこんでしまうことである。本家のシエスタは2時から4時まで2時間完全に休んでしまうが、もちろんこれは日本の実情からあまりにも隔たりがありすぎて、採用できそうにない。
日本の伝統的な昼寝は、2時にとられるよりも、それよりすこし前の昼食後にとられている。
これは午後2時の眠気を、一つ前の眠気のピーク時に仮眠をとって押さえこもうという、予防仮眠の様式になっている。このことに着目すると、日本式の「新シエスタ」は設定時刻を12時台にくりあげ、休憩時間を最大30分として、20分の仮眠時間を組みこむことで実現できる。このやりかたは、すでに述べたように、いくつかの事業所が経験的につくりあげてきた、休憩・仮眠システムであり、仮眠産業の営業システムである。予防仮眠のいい点は、眠気とたたかうことなく、眠い時間を乗りきることができるということである。
このシステムがじっさいに動きだすと、すべての人々から不愉快な眠気と、眠気からくる不安をとりのぞき、うっかりミスによる事故を防ぎ、安全で快適な社会が実現できるはずである。
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