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睡眠リズムの乱れを治す

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睡眠リズムの乱れを治す

午前4時におこったスリーマイル島原発事故
眠気のリズムは3つあり、1つめは2時間周期のウルトラディアンリズム、2つめはこ1時間周期のサーカセミディアンリズム、そして3つめが24時間周期のサーカディアンリズムである。
眠気のていどは2時間リズム、12時間リズム、24時間リズムと強くなり、眠気のピークは早朝の4〜6時がもっとも強く、つぎに午後の2〜4時が眠い。居眠りはこの眠気のリズムに沿って発生する。ところが、夜中の眠気は、ピークに達する前に居眠りがはじまってしまうので、たいていの事故はピークよりも1、2時間早くおこっている。
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居眠りが原因でおこった典型的な大事故は、アメリカ・スリーマイル島原発の事故である。
それは1979年3月28日の午前4時におこった。
まず、原子炉を冷却する水が不足しているという信号が出た。ところが、オペレーターは強い眠気に圧倒されていた。起きてはいたが、注意力も判断力も奪われた状態だった。水不足の信号にたいしては、すぐに給水系統をたしかめ、給水ポンプの弁を開くとか補助ポンプを作動させるなどの必要な操作をすればいいわけで、この時点ではとくに緊急事態が発生したわけではなかった。昼間であればわけなく対処し、原子炉は正常に運転をつづけていたはずだった。
ところが、この軽微な異常がもっとも眠い時間に重なったため、ほとんど何の処置もとられないまま時間が過ぎてしまった。やがて、炉心が過熱して危機的な状態になってからはじめて、オペレーターはただならぬ事態に直面していることに気がついた。数千個におよぶ計器、レバー、スイッチがぎっしり並んだパネル面では、100種類以上の警報ランプがいっせいに点滅し、まさにパニック状態を呈していた。
さらにぐあいの悪いことに、給水バルブの「開」と「閉」の表示は、オペレーターの位置からはパネルの裏側で、まさに死角にあった。彼のとった操作はかえって事態を悪化させてしまった。やがて炉心が空焚き状態になり、高熱によるメルトダウン(炉心融解)という最悪の事態を招いてしまった。ようやく彼がレバーを「開」にしたとき、事態はすでに手遅れだった。この事故は給水系統の自動化が不十分であったからか、それともオペレーターのミスが招いたことか、あるいは表示システムの配列ミスであったのか、さまざまな議論があり、これを教訓として、安全管理システムの見直しと新たな取り組みがはじまった。危機管理計画に、耐えがたい眠気や居眠りによるヒューマンエラーが、重要項目としてとりいれられたことはいうまでもない。
大事故は夜中の2〜4時におこる居眠り事故がおこる時刻は、とくにあるのだろうか。科学警察研究所交通安全研究室の西田楽室長がまとめた、居眠り事故と時刻の関係をしめした図がある(図4・1)。このデータは、科学技術振興調整費による「日常生活における快適な睡眠の確保に関する総合研究」の一環として、1997年中のデータを解析したものである。
交通事故が原因の人身事故で、死者の出る割合(死亡事故率)は1・2%である。ところが居眠り事故にかぎってしらべなおすと、この数値は5・9%にはねあがる。居眠り事故は、ブレーキを踏むなどの回避動作がほとんどないままに発生するので、いったん発生するとひじょうに悲惨な結果となることが多い。

図4.1 時間帯による事故発生状況

図4.1 時間帯による事故発生状況


図4・1上のグラフは、人身事故全体(78万399件)の発生率(点線)と、居眠りが原因で発生した人身事故の発生率(実線)を、1時間ごとにプロットしたものである。人身事故は日中に多く、とくに朝夕のピーク時に突出して増加する。居眠り運転による事故の発生率は、夜間と日中の2〜4時に高いことがわかる。これは眠気のリズムとよく一致しており、交通事故の背後に生物リズムが深くかかわっていることをしめしている。
ところで、人身事故の分布は図のように時間帯がかたよっている。そこで各時間の人身事故(全体)の発生数で居眠り事故の発生数を割って、分布のかたよりをならしてみる。すると、破線でしめしたように、人身事故に占める居眠り事故の割合(居眠り事故率)は、早朝4時をピークに0〜6時に分布していることがわかる。一方、日中にも居眠り事故は午後3時をピークに発生率が高くなるが、居眠り以外の理由でおこる人身事故の件数が急増するので、居眠り事故率は相対的に低い水準を推移することになる。
居眠り運転は、交通環境が比較的よく整備されたところでおこりやすい。高速道路やバイパスなどを利用する高速輸送システムは、夜間も体まず活動をつづける。交通量が下がり整備された道路状況にもかかわらず、悲惨な交通事故があとを絶たない。それは、眠気のリズムが行動を支配する最悪の条件が、この時間帯に集中しているからである。
図4・1下のグラフは、死亡事故(9220件)と居眠り運転の関係をしらべたものである。
死亡事故の発生率(点線)は夕方にやや高くなるが、一日をつうじて一定の水準を推移しているように見える。居眠りが原因と考えられる死亡居眠り運転事故(実線)は、夜中の2時と4時にピークが、日中は午後3時にピークが見られる。死亡事故全体の時刻推移にはあまり大きな変動はないので、各時間の死亡事故の発生数で死亡居眠り事故の発生数を割って、全体の時間ゆらぎをならしても、結果はほとんど同様(破線)で、早朝4時と午後3時にピークがみとめられる。この2つの時間は、眠気の24時間のリズムと12時間のリズムが支配するピーク時刻とほとんど同じであり、ここでおこった居眠りは人の命を奪う危険がもっとも高い。
事故をおこした人の80%が、事故のおこる前に何度か睡魔におそわれ、しばしば「カクンと意識を失う」という状態を体験している。これを交通関係者は「カックン現象」とよぶそうだが、マイクロスリープ(微少睡眠)による意識の瞬断をよくいいあらわしている。もうこの時点で居眠り運転ははじまっているのだが、目的地までもうすこしだから、あるいは、まさか眠ることはあるまいなどと考え、そのまま運転をつづけ、事故にいたっている。同じ眠気でも魔の時間帯では、大事故の前触れと受けとめ、本気で安全策を講じなくてはならない。

時差ぼけ

人の24時間リズム(サーカディアンリズム)は、その人が住む環境の明暗周期や生活様式などの環境サイクルに同調している。ジェット機で時差の大きい地域間を移動すると、生活サイクルと環境サイクルがずれて、いわゆる時差症状(ジェット・ラグ症候群)がおこる。

表4.1 航空乗務員(257人)における時差症状の発生状況

表4.1 航空乗務員(257人)における時差症状の発生状況


 
表4・1は、国際線の航空乗務員257人を対象に、時差症状を調査した結果である。
上位3位は、睡眠障害、眠気、精神作業能力の低下である。一般に時差ぼけというのは、この精神作業能力の低下のことをさす。かんたんな足し算や引き算ができない、暗算ができない、できても答えに自信がない、単語や数列のど忘れがはげしい、電話をかけようとしてダイヤルするが、途中で何度もやりなおす、などがその現象である。
マジカルナンバー7といわれる現象があって、ふつうの人は数字でも文字でも一度に覚えられる数は7プラスマイナス2にかぎられている。このように一度で記憶できる範囲を記憶範囲というが、7桁くらいの電話番号はこの範囲にあるので、ふつうであれば一度で覚えられる。
ところが、時差症状にかかると記憶範囲がせまくなるので、5桁かそれ以下になることもある。
こうなると、途中でメモを見ないと満足に電話もかけられないということになる。ようやく電話の用事も終わり、歩きだしてからこんどは荷物を忘れているのに気がつく。忘れ物の大半はうっかりした置き忘れであるが、残念なことにどこで忘れたのかさっぱり思い出せない。英数字などの文字や記号の行列から特定の文字などを検出する作業は、検出時間が遅くなったり、見落としや見まちがいが多くなる。
ずいぶん前になるが、1983年9月に、国際線の旅客機がコースを大きくそれて、ミサイル試射区域に侵入してしまい、撃墜されるという事件があった。その原因として、スパイ飛行か操縦士の時差ぼけかがとりざたされた。
現在の国際線は、離着陸をのぞけば、ほとんどが自動制御で運航されている。出発地の飛行場の座標番号と記号を入力し、到着地までのコースに指定された座標を入力すると、衛星システムの支援を受けて正確に航路を保つことができるようになっている。まちがえてコースをはずれたり、高度をとりちがえることはない。
あるとすれば、離陸準備のときにおこなう座標入力のミスか、システムの誤作動である。たいていの制御信号は無味乾燥な英数字が使われる。混同を避けるためには、このやりかたがいちばんいいと考えられているが、ここに時差症状がしのびこむすきまができる。正副両操縦士がどのていどの時差症状にかかっていたのか、航空士の状態はどうであったのか、ほとんど謎のままであり、正確な情報は発表されていない。
うっかりミスは、ときとして重大な事件を引きおこすので、やっかいである。国際試合に参加するスポーツ選手、重要な外交交渉や商談にのぞむ外交官や商社具にとって、時差ぼけ対策はとくに重要である。

時差ぼけ対策

時差症状はその人の24時間リズム(サーカディアンリズム)が現地の昼夜のリズムとずれることでおこるので、できるだけ早く現地の時刻に生物リズムの時刻をあわせればいい。このような2つのリズムの時刻あわせを、位相同調という。
ふつうは、生物リズムと環境ー生活サイクルは、24時間周期でピタリと重なっている。この状態を同調という。成田からロサンゼルスに飛ぶと、日付変更線をまたぐことを無視していえば、時差はおよそ7時間である。時計は7時間すすみ、日本が0時のときに現地は朝の7時になっている。時間がすすむ方向に時差がかかるので、生物リズムを現地の時刻に同調させるためには、リズムの位相を前進させて調節することになる。つまり東向きに移動すると、極端な「早寝早起き」がせまられる。逆に西向きにヨーロ。パヘ飛んだとする。コペンハーゲンは時差8時間の位置にあるが、時計は8時間遅らせるように調整する。日本が朝7時のとき、現地はまだ前の日の23時である。
生物リズムの同調には、位相を8時間後退させて調節することになる。西向き飛行は極端な「宵っぱりの朝寝坊」をせまられる。現地の時刻に生物時計の時刻をあわせる作業は、すすめるほうがつらく、手間もかかる。遅らせるのも極端になればそれなりにやっかいであるが、すすめるときにくらべると比較的軽く、期間も短い。
われわれは本来早寝早起きが苦手であり、夜ふかし朝寝坊は得意である。これはもともとわれわれの生物リズムの周期が、24時間よりすこし長い25時間ていどであることと関係しているようである。周期が25時間ということは、ほうっておけば毎日1時間ずつ朝寝坊し、夜ふかしするので、一週間もすれば昼夜が逆転した生活になってしまう。そうならないのは毎朝、朝日を浴びて時計のねじを巻き上げ、24時間にセットしているからである。
生物時計の時刻あわせは、太陽の光がもっとも強い力をもっているので、現地の朝にできるだけ光を浴びるようにすることである。逆に、現地の夜は部屋を暗くする。夜に明るい光を浴びると脳はまだ昼間であると認識して、なかなか眠るだんどりに入らなくなってしまう。移動した一日目は、極端な時差にさらされているので、あまり無謀な行動はしないほうがいい。東向き飛行では、太平洋の上空で夜は明けてしまう。ロサンゼルスの空港に現地時間で朝7時に着いたとしよう。日本時間では(日付はっぎの日だが)まだ真夜中の0時である。とうぜん眠い。このまま現地の生活にあわせて起きつづけるのは、なかなか骨である。そこでホテルに
到着したら、部屋のカーテンを引いて仮眠をとる。これは機内での睡眠不足を補うための仮眠(補償仮眠)であるから、長くても2時間は超えないようにしたい。30分ていどの短い仮眠で十分にリフレッシュできるが、休を伸ばし筋肉を休めるためには、すこし長めでもかまわない。
また寝る前に温かいシャワーをあびるのも、寝つきをよくする効果がある。ここで大切なことは、現地の時刻で昼になったら、無理にでも起きて食事をとり、戸外に出て太陽光にあたることである。生物時計の位相前進に必要な光の強さは、2500ルクス以上であればいい。薄曇りでも日中は1万ルクスくらいの照度はあるので、軽い散歩に出たいものである。ひどく疲れているときは、無理をせず、プールサイドで休んだり、光のさしこむ窓際で日光浴をするのでも、効果は変わらない。この状態では、仮眠で1時しのぎしているだけなので、早起きによる睡眠不足の状態がつづいている。そこで、現地の夜はその人にとってはまだ夕方にすぎないのだが、なんとか寝つくことができる。

時差ぼけに効く薬、メラトニン

寝つきをよくするために、短時間作用型の睡眠薬を用いると、とくに東向きの時差症状には効果的といわれている。位相差がもっともはげしいはじめの4日間では、睡眠薬の助けを借りると、睡眠の内容も使わないときよりもよく、回復力も高い。そこで最近では、出発前に医師に相談して睡眠薬を処方してもらい、時差ぼけ対策に服用する旅行者が増えている。
しかし、短時間作用型のものでも、人によって作用が比較的長めに残ることもあるので、あらかじめ作用のていどを試しておかないと、日中の眠気を助長することになりかねない。また、睡眠薬を連用すると、服用中止後に反跳現象(リバウンド)として不眠を引きおこすことがある。
時差症状による不眠とリバウンドの不眠が重なると、症状はいっそう強くなると考えられる。また、睡眠薬とアルコールをあわせて用いた旅行者に一過性の健忘がおこったという報告もあり、慎重な配慮が必要である。
これらのことを考えあわせると、睡眠薬は少量を短期間慎重に使うべきである。また呼吸器疾患などがある場合には、睡眠薬が持病を悪化させるため使えない場合もあるので、かならず出発前にホームドクターと相談し、正しい知識のもとで使いたいものである。メラトニンは、アメリカでは健康食品として入手できるところから、時差ぼけ防止薬として旅行者に人気が高い。メラトニンは脳内の松果体から分泌され、性腺の発達抑制ホルモンとしてはたらき、その分泌は睡眠の直前二、3時間前から血中濃度が上昇し、朝方に低下する。寝る前に飲むと軽い眠気がおこるので睡眠促進剤のように考えられがちであるが、生物リズムの位相を移動させるはたらきがあり、その作用は単純ではない。夕方から深夜にかけて服用すると位相前進(早起き早寝)がおこり、早朝から正午にかけて服用すると位相後退(遅起き遅寝)がおこる。時差症状の治療薬としては日本でもアメリカでも認可されていないが、現在メラトニンを用いた生物リズム障害治療法の開発がすすめられているところである。
メラトニンの副作用は、下痢や吐き気、頭痛などの自律神経系の不調がおこることが報告されている。性腺発達抑制ホルモンであり、かんたんに手に入るからといって、生理的レベル以上に長期間服用して安全といえるのかなど、未解決の課題が多いことは知っておくべきことであろう。また、ウシの小腸などに多く含まれるので、製剤によっては、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の原因と考えられる異常プリオンタンパク質が混入する恐れがあるという警告も出されている。
不気味な話はこのていどにして、話をもとにもどそう。睡眠の確保とともに、日中の眠気をコントロールすることも大切な時差症状対策である。眠気をとりのぞき、気分を高揚させるはたらきは、コーヒー、紅茶、緑茶に含まれるカフェインももっている。チョコレートにもカフェインが含まれているが、このほかにティオブロミンという興奮物質も含まれ、これらをあわせた効果がチョコレートの覚醒効果ということになる。朝食にコーヒーや紅茶を飲むのは覚醒を高め、生物リズムの位相を前進させるのに効果がある。逆に寝る前に飲めば、ココアでも寝つきを遅らせ、位相後退を引きおこす。嗜好品や食品をうまく使うと、時差症状をやわらげる効果を引きだすことができる。
位相調整には一週間から10日
到着後、第一夜を無事すごした翌日は、現地の朝に起きて、カーテンを開け朝日をしっかり浴びて活動開始である。位相調整は光だけでなく、食事や人の話し声、交通騒音など社会生活のリズムにも強い効果がある。いつまでも日本時間を思い浮かべたりせず、現地の時計にあわせ、昼は昼、夜は夜と、その気になりきることである。
時差症状が消えるのは、東向きであると時差1時間につき1・5日ほどかかる。つまり、時差7時間のロサンゼルスに飛んだ人が、現地の生活リズムに完全になじむのに約10日かかる。これはせいぜい30代の若い人を対象にした目安であり、年齢や体力にあわせてその一割増、二割増を考えておきたい。
逆に、西向きでは、時差1時間につき約一日で調整がすすむ。時差8時間のコペンハーゲンに飛んだ人は約一週間で調整が完了する。ところがこの人が日本に帰ってくると、ヨーロッパから日本に飛ぶのは「東行き」であるから、時差症状も強く、時計あわせも10日以上かかる。
ヨーロッパヘの旅は帰ってきてからがつらい。
たいていの旅行者は、行った先の時刻に同調がすすみはじめたころに帰国するので、時差ぼけ状態は旅行中に引きつづいて帰国後もしばらくつづく。ぼけた状態は外国でも国内でも変わることなくやっかいであるが、海外旅行というものはそのようなものだと割り切れば、それなりに乗り切ることができる。
ところが、スポーツ選手ではそのようなわけにはいかないので、時差症状を克服したうえで試合にのぞむことが大前提となる。国際試合などで選手が移動する場合には、はじめの6日間をリズムの乱れ期として、調整期にあてる。7〜9日を同調開始(そろそろ時差症状が消える)として、本格的な練習をはじめる。10〜12日は同調進行(日本にいるときに近い状態)で、競技が可能である。13〜16日で同調完了期に入るので、ここで絶好調にもちこみ、いい成績を上げるようにする。17日以上になると、遠征疲れが出るので競技を終了させ、帰国するか休養に入る。
このメニューは、航空医学実験隊の横堀栄氏が1979年に提案したもので、標準的なものと考えることができる。これに西行きか東行きか、年齢などを勘案し、最終目標の試合日が絶好調となるように、日程を組むのがコーチやマネージャーの腕ということになる。

夜勤病

公共性や緊急性をもつ職種では、24時間の勤務体制がしかれている。こういう事業所では2交代か3交代制がとられている。3交代制を例にとれば、勤務時間は日勤が午前8時から午後4時までとすると、準夜勤は午後4時からはじまり午前0時に終わる。このあとを深夜勤が引きついで、朝の8時まで作業に従事する。ふつうは1つの時間帯を何回かつづけると、休日をはさんでつぎの時間帯に移る。移動の方向は日勤、準夜勤、深夜勤の順が一般で、これを正循環という。職種によってこれと逆に、勤務の時間帯を前倒しにする逆循環がとられることもある。
正循環のほうが順応しやすいという作業者が多いが、いずれの場合も準夜勤、深夜勤では時差症状に近い訴えが多い。

表4.2 日勤(始業午前8時),早朝勤(午 前6時),夜勤(午後11時)における睡眠 障害の訴え率と睡眠時間

表4.2 日勤(始業午前8時),早朝勤(午
前6時),夜勤(午後11時)における睡眠
障害の訴え率と睡眠時間


 
表4・2は、1000人の交代制勤務者から得られた睡眠障害の訴え率である1日勤は午前8時始業であるが、この事業所ではこれより2時間早い早朝勤というのがあり、午前6時に勤務につく。それと午後11時に勤務につく夜勤の3つがある。夜勤では、睡眠障害の訴えがどれも日勤の5〜6倍に増加する。
夜勤の後の睡眠は日中にとることになる。とうぜんのことだが、周囲の騒音はかなり高いので、騒音が気になるという割合は、夜に眠る日勤の10倍、早朝勤の2倍になっている。タクシー乗務員についてしらべた別の調査でも同様の傾向がみとめられており、夜勤あけの睡眠を妨害する騒音は、交通騒音など外の騒音よりも、子どもの声、電話、テレビの音が気になるものの上位を占めている。日中は生活騒音のほうが妨害効果が強い。
夜勤の睡眠時間は日勤の57%に減少する。夜勤ほどではないが、早朝勤にも睡眠短縮がおこり、75%に減少する。睡眠障害の訴えも日勤の4〜5倍に達している。たった2時間勤務の時間帯を前進させただけで、これだけはげしい形容が出てくる。6時に仕事をはじめるためには、洗顔、食事、用意、通勤などに必要な時間を計算すれば、午前4時とか5時に起きることになる。もっとも眠いときに目をさますのであるから、慣れていても不満は強い。早朝4時に起きるためには午後8時半から9時には眠らなければならない。この時間はテレビなどのゴールデンタイムである。家族は起きていることのほうが多いから、生活騒音が気になるというのもうなずける。
夜勤の睡眠時間が極端に短くなるのは、体温と睡眠時間の関係によっている。睡眠は低体温期に安定して持続し、高体温期には持続が不安定になり、短くなる。夜勤あけの日中は体温が上昇期に入っているので、午前中に寝ても昼すぎには目がさめてしまう。午後3〜4時の最高体温期では持続も1、2時間足らずで、しばしば中途覚醒で中断する。どのように寝室条件をととのえても、夜勤あけの睡眠は夜間睡眠にくらべて短く不安定になり、およそ4〜6時間の範囲にとどまることになる。
夜勤のストレスは、慣れるとだいぶ軽減されるように感じられる。たしかにむだな緊張や不安がなくなり、睡眠もかなり上手にとれるようになったと感じるようになる。ところが、これまでの実験研究では、昼夜逆転生活をしても生物リズムが逆転することはなく、長期にわたってつづけると、レム睡眠の出現が減少し、中途覚醒が増加してくる。また、体温リズムが平坦化しご両温期と低温期のピーク差が減少する。やがて夜勤病とよばれる各種の失調や障害の兆候があらわれる。
夜勤病は急性でもおこるが、多くは長期間にわたって、逆転生活によるストレスにさらされることでおこる。時差症状にくらべると、胃腸障害と呼吸器疾患が多く、とくに胃・十二指腸潰瘍、胃炎、便秘や下痢といった消化器疾患がおこりやすい。睡眠障害や覚醒中に強い眠気を感じることは時差症状と同じであるが、強い眠気や作業能率の低下は、夜勤者が仕事をするために起きているのであるから、深刻な問題である。居眠りやうっかりミスが大事故になることはすでに述べた。こうした作業不安が新たなストレスとなって、その他の障害や症状を悪化させる悪循環にすすむことにもなる。
人の生物リズムは明暗周期や社会の標準的な生活サイクルに同調している。時差症状ではすべての環境サイクルがそろってずれており、本人の生物リズムをそこにあわせるように調整することが要求されている。このような状況では、人はせいぜい10日もあれば標準サイクルに同調して、現地の生活にとけこむことができる。ところが夜勤では、周囲の自然環境や社会環境はそのままで、個人の生活時間だけを変えなければならない。標準サイクルにさからって独自の活動1休止リズムをつくりだし、維持しなければならない。
ところが、人はこのような標準サイクルからはずれて、勝手なサイクルをつづけるようにはできていない。どんなにがんばっても、生物リズムはその人の住む環境の標準サイクルにセットされ、夜勤型の生活リズムに適応することはできない。夜勤は、逆転生活が引きおこす身体的なストレスと、家庭生活や社会生活とのズレからおこる二次性の心理的ストレスが複合して、複雑な構造をしめしやすい。夜勤回数の制限や勤務編成の改善、十分な休養の必要性が強く要望されるのは、夜勤が反生理的なものだからである。

サマータイム制度は省エネ運動か

サマータイム制度は「デイライト・セービング・タイム」ともよばれており、4月から10月までのあいだ、時計を1時間早めて、明るい時間を有効利用しようという制度である。
アメリカの政治家ベンジャミン・フランクリンが「夏に店を1時間早く開けて、閉めるのも1時間早くすれば、何千万本ものロウソクが節約できる」と言ったのがはじまりといわれている。そうだとすると、200年以上も前にはじまる省エネ運動の元祖といえるかもしれない。
第一次世界大戦ではランプに使う石油を節約する目的で、第二次世界大戦では武器工場の稼働時間を増やすためになど、さまざまな動機でヨーロ。パ各国に導入された。
わが国でも、戦後の石炭や電力不足などエネルギー問題を背景に、サマータイム制が1948年に導入された。国民の健康福祉の増進、資源の節約などをかかげてはじまったが、3年後の世論調査では反対53%、賛成30%でたいへん評判が悪く、1952年にGHQが廃止されると、同じ年にこの制度も廃止された。導入後5年のことである。
現在、サマータイム制度は、世界70カ国以上で導入されており、いわゆる先進国グループが加盟する経済協力開発機構(OECD)では、日本と韓国とアイスランドをのぞく26カ国すべてで実施されている。「先進国はみんなやっているのだから、日本もやろう」という意見もあって、「地球環境と夏時間を考える国民会議」が組織されている。生活時間を国民的規模で1時間前にずらそうというのだから、重大な睡眠問題であり、導入するとどのようなことがおこるか、あらかじめ考えておかなければならないことはたくさんある。
サマータイム(夏時間)は、4月第一日曜日にはじまり、時計を1時間すすめる。ときまさに「春眠暁を覚えず」である。早起きのつらいこの時期に、さらに1時間早起きを重ねるのは、それなりに覚悟が必要である。夏時間から標準時間にもどすのは、10月の最終日曜日におこなわれる。どちらも第一日目の混乱を考慮して、日曜日の深夜0時に切りかえることになっている。つまり日曜の朝に、春は1時間の早起き、秋は1時間の朝寝坊ができることになる。
すでにサマータイム制度を実施している国々での実態調査によれば、春シフト(夏時間の開始)のほうが秋シフト(夏時間の終了)よりも睡眠‐覚醒リズムにおよぼす影響が強いようである。
時計を1時間すすめるほうが、1時間もどすよりつらいのは、すでに何度もふれてきたことであるが、早寝早起きが苦手というごくふつうの人にとって、しごくとうぜんのことと受けとめることができる。

春シフトは眠くてつらい

イギリス・サセックス大学の睡眠プロジェクトが、1976〜78年の3年間について、春シフトと秋シフトの直後におこる睡眠問題について調査している。対象は18歳から79歳までの学生、大学秘書、教員、聖職者、技工士などで、サセ″クス地区で69人、ロンドン地区で70人がモニターとして参加し、シフトの前後一週間にわたって睡眠生活日誌をつけた。
その結果、春シフトはシフト直後に45分間におよぶ朝寝坊がおこる。時計を1時間すすめているのであるから、シフト前よりも15分は早起きしているのだが、60分には遠くおよんでいない。この朝寝坊は3日目には一度解消し、定刻に目ざめることができるようになるが、5日目になるとふたたび20分の寝すごしがおこる。その後も不安定な変動がつづき、週末まで10〜15分の遅れが残る。
調査チームも、位相前進蒔間帯の移動)が1時間ていどであれば、せいぜい一週間で同調は完了すると判断していたようである。結局、調査期間はシフト前後一週間であったので、この遅れと動揺がその後何日つづくのかはたしかめられていない。新しい時間に慣れるのは、それほどかんたんなことではないようである。とくに、時刻を1時間早める春シフトは、週の途中で大きなリバウンド(反跳現象)がおこるなど、不安定な状態が一週間以上つづくことがわかる。
すでに見たように、2時間早く6時に出勤する早朝動でも、夜勤病の徴候は色濃くあらわれている。早朝は生物リズムの制御システムがもっとも敏感になっており、変化も急激である。
だから、2時間前に問題になったことが、その1時間後にはまったく問題とならないということは、曲線をえがいて変動する現象には多く見られる。そのことを考慮しても、春シフトの寝すごし現象は、問題とならない時間範囲であるとするには、かなりの無理が感じられる。
一方、秋シフトではどうであろうか。シフト直後に約15分の早起きがおこる。秋シフトでは1時間の朝寝坊ができるのであるから、睡眠時間はしっかり1時間長くなってよさそうであるが、45分しか延びておらず、早めに目がさめてしまっている。これは夏時間の習慣が残っていたためで、早寝の翌日は目ざめが早くなるからである。1時間遅く寝つけば、翌日はその分遅い目ざめになる。このような早起き現象は3日目には消えて、シフト後の起床時刻にあわせて目がさめるようになっている。
自覚的な覚酸度や計算能力をしらべると、眠気が残るあいだは計算能力も下がる。春シフトでは朝、目がさめても眠気が残り、そのようなときは計算能力も低い。秋シフトでは眠気が残ることは少ないが、覚醒度は水曜から木曜にかけて高くなり、この日は計算能力も高い成績をしめしている。
目ざまし時計にたよって起きる人の割合は、ふだん37%である。春シフトの直後はこれが50%に増える。これとは逆に、目ざまし時計が鳴る前に目がさめるという人は、ふだん34%であるが、秋シフトには44%に増える。春シフトの直後ではむりやりに目をさましている人が多く、秋シフトには無理がないことがわかる。
たった1時間のくりあげでも、新しい時間システムに適応するには一週間以上もかかっており、けっして軽微な影響とはみなせない。すでに述べたように、海外旅行で経験する時差症状では、1時間の位相前進(東行き)の影響を解消するには、およそ1.5日でいい。これにくらべると、春シフトの影響は予想外に長期間持続している。夏時間を導入することで生じる生活ストレスは時差症状のモデルで予測するよりもヽ早朝勤のモデルで予測するほうが妥当のように思われる。その人の住む環境の時間要因はすこしも変わらないのに、生活時間帯だけを急に変更することによって生じる歪みが「夜勤病」モデルである。海外旅行を例に引いて、シフト後の影響を軽微とする判断は、適切とはいえない。

シフト直後に交通事故が増える

ブリティッシュ・コロンビア大学のコレンは、カナダの運輸省のデータベースから、1991年と1992年の春と秋のシフト直後の月曜日と、その一週間前と後の月曜日の3日について、交通事故の発生件数をしらべている。
交通事故の総件数は、春が9593件、秋が1万2010件であった。春シフトでは確実に事故が増加し、シフト前にくらべて8%増となっている。逆に、秋シフトでは事故が減少し、シフト直前にたいして6%減となっている。
コレンは、事故が春に増加したのはシフト直後に睡眠時間が1時間削られたからであり、減少したのは秋に1時間の睡眠がプラスされたからで、これが安全率の向上につながったとしている。つまり、事故の発生が減少したのは、早すぎた睡眠時間帯が、適正なタイミングにもどされたからというわけではない。たった1時間の睡眠を削るか加えるかで、200件から250件におよぶ交通事故の成否が左右されたと主張している。現代社会が慢性的な睡眠不足社会であることを考えると、この解釈は警句をなしているといえそうである。
ところが、コレンの報告に異議をとなえる研究者も多く、シフト直後に特別変わったことはおこらないとする報告もある。アメリカ・高速交通保険研究所のファーガソンは、環境照度や交通量などに注目して、1987〜91年の交通事故を分析し、交通事故は春シフトよりも秋シフト直後に増えるという、まったく逆の結果を報告している。この報告によれば、人身事故も車どうしの事故も、道路の照度が下がると増えるという関係があり、日照時間が短くなった秋に時刻をさらに遅らせることは、薄明かりで運転する時間を引き延ばすことになる。その結果、薄暮に目が慣れていない秋シフトで事故が増えるのだという。
また、交代制勤務の面から分析した報告では、各勤務の開始時刻を1時間遅らせると、日勤者は睡眠時間が増え、勤務中の疲労感も下がる。ところが、夕勤や夜勤の人たちの睡眠時間は逆に減少し、勤務中の疲れにくわえて眠気も強くなる。日勤者に喜ばれる始業時刻の後退は、夕勤、夜勤の人々には不満の原因になる。夜勤あけの人が車で帰宅することを考えると、秋シフトのほうが疲れて眠い状態であり、高危険状態といえるかもしれない。
サマータイムの切りかえ直後におこる交通事故の増加がヽどのような理由でおこっているのか、その理由をつきとめるのはなかなかむずかしそうである。しかし、いずれにしてもシフト直後に交通事故が増える可能性があることは、頭においておく必要があるだろう。バスや電車、旅客機、客船など、1つの事故が多くの人命を危うくする場合から、大型タンカーの座礁など居眠り事故が原因の海洋汚染など、甚大な損害を未然に防ぐための危機管理体制が、十分に整備されていることが実施の大前提でなければならないだろう。

夜型社会の睡眠不足とサマータイム

NHK放送文化研究所の資料から、睡眠生活習慣の変化について1960年から1995年まで5年ごとに追ってみると、われわれの社会が急激に夜型化していることがわかる。国民の50%が就床または起床する時刻を平均時刻とみなして、平日、土曜、日曜を比較すると、60年では曜日にかかわらず6時に起床し、夜の22時には就床している。65年になると起床時刻はそのままであるが、就床時刻は土曜と日曜で15分から30分遅くなる。起床時刻はその後90年まで、平日は6時30分、日曜は7時で一定である。土曜が休日になったのは89年以降であるから、このあいだの起床時刻は土曜と平日はほとんど変わらない。
就床時刻のほうは日曜が一番早く、平日、土曜の順に遅くなり、70年に入るとまず平日と土曜が30分遅れ、22時30分になる。つづいて75年から日曜も22時30分に遅れると、平日と土曜はさらに15分から30分遅れ、90年では曜日にかかわらず23時になる。95年では平日の起床は6時30分で変わらないが、土曜が15分遅れて6時45分、日曜が7時となっている。これにたいし、就床時刻は95年になると日曜と平日が23時、土曜が23時30分になっている。
70年代までは22時は深夜の開始であり、放送のあいまに「夜もふけてまいりました。ラジオ、テレビの音量は周囲のご迷惑にならない大きさで、お楽しみください」という呼びかけがはじまるのも、22時ごろからであった。その15年後の85年ではこれが23時になり、放送時間も延長され、番組の数も増えた。そのことと歩調をあわせ、夜の10時が深夜という考えも完全に消滅した。
この35年間で、起床も就床も30分から1時間遅くなり、夜型が進行している。この先がどのように展開するのかは、2000年の調査結果を待たねばならないが、これまでの傾向からはさらに夜型が強まるように思われる。睡眠時間は60年代では8時間13分であった。日曜に寝だめをしても8時間31分であるから18分ていどの増加にすぎなかった。ところが70年に7時間57分と8時間を切り、その分日曜の寝だめが目立つようになる。8時間40分で、平日との差は43分である。これは60年代の2・4倍に相当する。95年では7時間32分で、60年代より41分短くなっている。日曜は8時間29分で平日よりも57分長いが、70年の8時間40分にくらべれば11分短く、平日も休日も短くなっている。
日本人は短眠民族として世界的にきわだった特性をしめしているが、この短眠は起床時刻をそのままにして、就床時刻をおよそ1時間遅らせることで実現している。
つまり、とほうもない速さで夜型化か進行し、大人も子どももすべてを巻きこんだ国民的規模で、夜ふかしが日常化している。これは、世界に類がない現象であるが、このことを危ぶむ声は残念ながらひじょうに弱い。
このような時代性を考えると、サマータイムは早寝早起きを励行し、国民的規模で生活時間の枠組みをただし、国民の健康と福祉に貢献するものといえる。そうはいうものの、70年以降30年をかけて浸透してきた夜型文化が、そうやすやすと朝型文化に席を明け渡すとは思われない。無理にサマータイム制度を導入したときに、どのようなことがおこるかを、具体的に時間や時刻をあてはめて検討してみよう。夏時間を導入すると、起床時刻は現在より1時間早くなる。春シフト開始日の日の出をしらべると、標準時刻で5時23分である。現在の起床時刻(6時30分)を1時間くりあげても、日の出を追い越すことはない。ところが、9州以西ではこれより30分から1時間遅い。たとえば長崎の日の出は6時4分、那覇は6時17分である。現在の起床時刻と日の出がほぼ同時刻なので、夏時間で1時間すすめると、日の出より30〜50分前に起きることになる。生物リズムを再セットする朝日の効果は、数時間の幅があるから覚屋後30分してから上がる太陽でも、それほど深刻な問題はおこらないと考えられる。
しかし、南西地域では日の出の季節差は小さい。春も夏もそれほど変化しない。このため、朝のラジオ体操も、番組の時刻をそのまま1時間すすめると、まだ薄暗いなかですることになりかねない。暗いなかで起きる負担感は、省エネ努力という前向きのライフスタイルで乗り越えることになるのであろうが、覚醒時の爽快感がそこなわれることを配慮すべきであろう。
日本は北緯20〜45度、東経122〜154度に位置している。この弧状列島は案外縦にも横にも長く、緯度経度のちがいによる時差と季節差があることが考慮されるべきだろう。ちなみに、ヨーロッパは北緯35〜60度に大半の国々が入る。35度線は本州をちょうど2分する位置であるから、ヨーロッパはかなり北に位置している。北緯35度のジブラルタルは、かなり温暖な地というイメージがあるが、緯度は東京や京都とほとんど変わらない。
日の出と日の人の季節差は、高緯度地域にいっそう顕著にあらわれる。極地の夏にはほとんど夜がない。白夜の現象はその典型である。ヨーロッパのサマータイム制をそのまま移植可能な範囲を探すとすれば、それは日本では東京以北にあてはまることで、これより南の地域についてはあらためて検討しなければならない。
つぎに、就床時刻について見てみよう。夏時間の導入前夜は標準時刻で就床する。翌朝の日曜日は夏時間で目ざめるので、1時間の睡眠短縮がおこる。現在の平均睡眠時間は、日曜では寝だめの日にあたり8・5時間であるから、いつもの時刻に目ざめると7・5時間で、数字のうえではそれほど問題ではないように見える。
ところが春シフトの影響はI週間ていどつづくので、就床時刻の前進が完了するまで、睡眠時間の短縮は避けられない。平日の平均睡眠時間は7・5時間であるから、かりに1時間の前進がそのまま短縮につながると、睡眠時間は6・5時間となる。短眠型でないかぎり、寝すごしによる遅刻や、日中に居眠りがひんぱんにおこることが予測される。
春シフトで睡眠不足が問題となったイギリスやカナダの平均睡眠時間は、8・5時間と8・2時間である。いずれも日本より1時間近く睡眠時間が長い。十分な睡眠時間を確保している国々でも、シフト時の睡眠短縮が話題となっている。わが国では、夜型化による無理な睡眠短縮がすすんでいるので、この問題はいっそう真剣に検討されるべきであろう。春シフトにそなえて平日の睡眠時間を、せめて60年代の8時間まで引きもどしておけば、シフト直後に予想される睡眠障害や、それにともなう居眠り事故の発生を緩和できると思われる。
50年前にサマータイムが導入されたときは、夜の10時は深夜であった。ところが、いまの社会で10時はほんの宵の口である。それほどに夜型化かすすんでおり、睡眠がさんざんに痛めつけられている。就床時刻の前進には、国家的な取り組みがなければ、夏時間はいっそう深刻な睡眠障害を誘発し、混乱をまねくと危惧される。
子どもの生活をしらべると、深刻な夜型化の弊害がおきている。省エネ戦略で早起き運動をおこす前に、わが国は子どもの健康のために、早起き早寝をしなければ、いまにとんでもないことになるということを、つぎに述べたい。

子どもの夜型生活と問題行動

図4・2は、小学生から大学生まで4つのグループについて、NHKの国民生活時間調査から平日の平均睡眠時間を抜粋してグラフにしたものである。

図4.2 学生の平均睡眠時間(NHK)

図4.2 学生の平均睡眠時間(NHK)


 
1995年は土曜休日制が実施されたり、調査方法もすこし変わっているので、厳密には同じグラフにしめすことはできないのだが、参考までにしめしてある。
中学生の睡眠時間は、1965年から75年の10年間で52分も短くなったため、ひじょうに目立って、社会が注目した。この急激な睡眠短縮は、80年にはいちおうの落ちつきを見せるが、95年にはふたたび短縮して7時間50分台から7時間36分となり、約15分の短縮化がすすんでいる。
75年の短縮では、なぜ中学生に睡眠短縮がすすんでいるのか、閣議でも問題にされ、夜型化と睡眠短縮がすでに話題になっている。当時は、受験産業が小・中学生を対象に本格的に乗りだしてきた時期で、受験過熱と結びつけられて考えられることも多かった。ところが、少子化かすすんで受験過熱が冷めてきても、睡眠短縮はいっこうにもどる気配をしめしていない。大人の社会の夜型化か、子どもの社会に浸透しはじめたのがこの時期と考えていいだろう。
高校生の睡眠時間は、70年以降、短いがほぼ一定の水準を保ってきた。ところが95年でついに7時間を割ってしまった。
小学生については、6年間という幅広い年齢層を1つの数値で表現するのはかなり無理なことであるが、この年齢層にも確実に短縮化がすすんでおり、65年の9時間22分にくらべて95年では8時間43分になっている。この30年間で、小学生の睡眠時間はおよそ40分も短くなったことになる。
この短縮がもしも不健康な背景をもつ現象であるなら、子どもたちの心身の発達やその状態に歪みがあらわれるはずである。東京都教育委員会の調査報告には、
その歪みがはっきりとあらわれている。この調査は東京都の小・中・高校生1万3471人が対象になっており、規模から見ても十分な信頼性をもっていると考えることができる。
寝不足を感じている子どもの割合は、小学生が40%、中学生が60%、高校生では70%に達する。学年がすすむにつれて、割合が増加している。理由として「何となく」が37%、「テレビを見ていて」が33%で、3人に1人の割合でもっとも多い。「なかなか寝つけない」は27%、「勉強」を理由にあげたものは19%であった。夜ふかしと寝不足がさしたる目的や理由もなく、学年を超えて広くいきわたっていることがわかる。
その前1ヵ月ほどの体調や心の状態として目立つことをグラフにしめすと、図4・3のようになる。
図4.3 子どもが感じる体や心の状態(東京都教育委員会調査)

図4.3 子どもが感じる体や心の状態(東京都教育委員会調査)


 
「眠い」「横になって休みたい」が半数以上の児童生徒にみとめられる。つぎに「目が疲れる」「休がだるい」「急に立ったときめまい」「肩が凝る」「腰や手足が痛い」が30%の児童生徒にみられる。ここまでの訴えを見ると、まるで徹夜明けの成人か、睡眠不足を嘆く中高年をイメージさせるが、これが小・中学生の
悩みとなっている。
グラフの下のほうを拾っていくと、「大声、暴れたい」「いらいらする」などの精神症状も訴えにのぼってくる。衝動的で感情のコントロールができない「切れやすい子」が話題になっているが、その背後に夜型社会と睡眠不足が深くかかわっていることがわかるだろう。かなり刺激的な項目のあとにくると、「頭が重い、ぼんやり」は、おだやかな睡眠不足の表現のようにも受けとめられるが、およそ25%つまり4人に1人の割合で授業に集中できない、やる気がしないということである。それが学習意欲を削ぎ、学級の雰囲気を左右することも十分に考えられる。
これまでの研究報告で指摘されている、夜型の子どもの「行動特徴」をまとめてみる。
遅刻が多く、1時間目の授業中にあくびをすることが多い。
姿勢が崩れやすく机に伏せたり、頬づえをつく。
体を斜めによじって寄りかかる(斜め座り)。
しょっちゅう体を動かしたり体位を変える。
授業に身が入らず、学習態度はいいとはいえない。
わからなくなると寝てしまうか、腹を立てたり、やつあたりをする。
めったにないことではあるが、授業中に大声を出したり立ち歩くということも引きおこす。
このような行動特徴は注意欠陥・多動性障害(ADHD)を連想させるが、まったく別のものと考えていい。
睡眠不足が慢性化し、生活リズムがずれたことによる歪みは、健康な生活にもどせば症状も消失する。問題は、クラスの20〜30%の子どもが寝ぼけ眼で学校にきていることである。
そのような状況では、相当に力量のある教師でも午前の授業を無事に乗り切ることはむずかしい。上級学年になれば学習ストレスは相当に高くなる。これに午後のけだるさと眠気がくわわると、教師も生徒も相当悲惨な精神状態にさらされていることは、容易に想像できる。

夜型の子どもは朝食を抜くことが多い

学級崩壊は、教師と児童生徒の関係が、地域社会をはじめ学校を取り巻く社会的な圧力によって揺さぶられた結果おこるものであるから、睡眠不足がすべての学級崩壊の原因であるなどという気は毛頭ない。しかし、子どもの夜ふかしは、家庭のしつけが適正におこなわれていればおこることはない。子どもの夜ふかしに何の疑問ももたない価値観は、睡眠にかぎらず基本的生活習慣の形成や年齢相応の発達課題に挑戦し、克服させようという意欲にもあらわれる。
私たちは、1995〜97年にかけて睡眠生活習慣の実態調査を実施したことがある。広島、岡山、東京、千葉、福島の大学や研究所の共同研究で幼稚園・保育園児が441人、小学生291人、中学生446人、高校生484人、大学生(首都圏2052人、(地方都市2837人を調査した。
生活の規則性を見る指標として「朝食」をしらべると、大学生の半数は「とらないこともある」と「とらないことが多い」が占め、首都圏は28%と20%で合計48%でもっとも多い。
地方都市でも23%と18%で合計41%であるから、大学生の朝食抜きはそれほど地域差をもっているとはいえないようである。高校生以下ではとうぜんながらもうすこし健全な数値が出ているが、14%と9%で合計23%である。4人に1人は朝食抜きを経験している。
中学生では3年生か11%と9%で合計20%であるが、1年生は16%と7%で合計23%となり、3年生よりむしろ多い。中学生全体にならせば高校生と同様に4人に1人は朝食抜きで登校したことがあるということになる。小学生でもこの数値はあまり変わらない。6年生では21%と9%で合計30%と突出しているが、4年生では14%と8%で合計22%である。
最初に大学生の数値を見たので、これらの数字がなにやら健全なものに映りやすいが、育ちざかりの子どもたちが20〜30%のはんいで朝食を抜いていることは、きわめて不健康な生活態度である。幼稚園児や保育園児には、まさかこのようなことはあるまいと思うのだが、ほとんど変わらない割合で朝食を抜いた子どもたちがいる・幼稚園児では一2%と2%で合計14%がときどき朝食抜きになっている。さらに保育園児では23%と3%で合計26%となり、幼稚園児のおよそ2倍になっている。保育園児のほうが高い数値をしめすのには、保育園の長すぎる昼寝と、それによってもたらされた夜間睡眠の寝つきの悪さ、そこからおこる夜ふかし朝寝坊という、負の連鎖反応があるので、このことはあらためて話題にしなければならない。
ここでは、母親が働くと育児が手抜きになるというような、短絡的な解釈があてはまらないことだけははっきりしておきたい。ちなみに、母親の就床時刻と起床時刻は保育園児の母親が23時25分と6時44分であり、幼稚園児の母親が23時28分と6時41分で5分と変わらない。理由は何であれ、エネルギーの備蓄ができない幼児にとって、朝食が抜けることは危機的な状況であり、もっと深刻に受けとめられていいことである。
朝食を抜く理由としては、「食欲がない」ことと「朝寝坊したために時間がない」が大部分を占める。睡眠不足で消化器系の障害がおこりやすいことはすでに述べた。夜型の人に朝食を抜く人が多いのも、同じ理由である。夜型生活で夜食などをとると、その分翌朝の食欲が下がる。同じことは子どもにもおこる。大学生の不摂生は、もはやしつけの問題ではないように思われるが、小学校から高校までに見られる欠食は、夜型社会の歪みが子どもたちの生活をむしばんでいることのあらわれである。
学校給食に関する研究会や栄養学会の事例報告では、朝給食をおこなったところ、子どもたちの元気がたちまちよみがえり、表情も明るくなり、授業中の態度も大幅に改善したという例が多い。残念ながらこれらの報告は個別的な試みであり、朝食の威力だったのか、先生のやさしさに感激したのかなど、いろいろな理由がからんでいるようで、結論を出すところまでいっていないようである。
目がさめた後、体温を上昇させたり、脳が活性化するためにはエネルギーが必要である。朝は長い断食の直後であるから、エネルギーの蓄えはほぼ底をつきそうなほど下がっている。だから、朝食はエネルギー補給として欠くことができない重要な役割を担っているわけである。脳はブドウ糖を大量に消費する器官である。成人の脳は一日120グラムのブドウ糖を消費し、これは全エネルギーの3分の一にあたる。エネルギー源はグリコーゲンとして肝臓に蓄えられ、必要におうじてブドウ糖に変換され、脳やその他の器官に送られる。一度に肝臓に備蓄できるグリコーゲンは60グラムていどである。グリコーゲンからブドウ糖に変える仕事にもエネルギーがいるので、120グラムのブドウ糖をつくるためにグリコーゲンは40グラム追加して全部で160グラム必要になる。肝臓に備蓄されているグリコーゲンは夜中もはたらく器官に供給されているから、残量は乏しい。
ところが目がさめると、筋肉を動かし、体温を上げなくてはならないから、どんどんグリコーゲンは消費されてしまう。脳にまわるエネルギー源は極端に乏しくなるので、朝は脳にとってもっとも危機的な状態である。
朝食をとることなく、つまりブドウ糖の補給が十分でないまま学校に出かけていくと、体はだるいし、頭はぼんやりする。先生の声だけでは刺激不足で満足できない。そこで体を揺すったり、人にちょっかいを出すなど刺激をつくりだしては、脳を刺激することになる。1時的な効果はあっても、むだにエネルギーを消費してしまうので、よけい体がだるくなるし、先生ににらまれることも多くなる。
じっと先生の話を聞くことは、じつは大きなエネルギーのいる仕事である。ところが、低血糖の頭ではこれがうまくいかない。おなかがすいた分、頭もこらえ性がなくなっているので、すぐに「切れる」ことになる。具体的な事例は、こんなかんたんな「飢餓モデル」でかたづけられるものではないが、朝給食の威力は、愛情分を差し引いても、十分証明できると考えていい。問題はそれを学校がすることなのか、親がすることなのかが問われるべきである。つくっても食べないのが問題だということで議論することでなく、なぜ食欲がないのかを根本から問いなおすことが大切である。

高齢者の不眠とリズム障害

中高年で朝型が増えることはすでに述べたが、かならずしも早寝早起きになったわけではない。図4・4は、就床時刻と起床時刻を年代別に集計し、比較したものである。

図4.4年代別就床・起床時刻

図4.4年代別就床・起床時刻


20代から10年きざみで80歳以上までの7グループを比較してみると、就床時刻は年齢がすすむにつれて早くなっている。この前倒し現象は50代からいっそう強くなり、60代では20代より1時間ほど早く床につく。80代では小学生とほぼ並ぶ時間になっている。一方、起床時刻を見ると大学生が目立って遅いが、有職20代以降は就床時刻のような大幅な世代間ギャップは見られない。
起床時刻は社会的な制約を強く受けるので、強制覚醒が実行され、その結果世代間ギャップが小さくなる。一方、就床時刻は個人の自由裁量のはんいなので、ライフスタイルの多様化を反映して、世代間ギャップが明瞭にあらわれたと解釈することもできる。ところが、高齢者の就床時刻が早くなっていくのは、かならずしもライフスタイルが早寝早起き型に変わったためではない。睡眠の老化現象のために、①深く眠れない、②途中で何度も目がさめる、③夜中の2時や3時に目がさめて二度寝をする癖がつく、などによって慢性的な睡眠不足に悩まされていることのほうが多い。このようなケースでは、睡眠効率が悪くなった分、時間を長くすることで収支バランスをとることになる。こうして、歳をとるにしたがって睡眠時間が延びることになる。
ところが、起床時刻のほうは、朝日がまぶしかったり、家族関係や社会的制約から、後ろにずらすことはむずかしい。そこで、睡眠時間の延長は就床時刻を前に押し出すことで実現する。夜間睡眠か十分であれば、日中の覚醒は高い水準を維持し、いつもの就床時刻より早く眠くなるということはない。加齢による睡眠の質の低下を量で補うようになると、夜間睡眠の不足のほうが先にあらわれ、不足分を補うようにその日の夜の眠気が早くやってくることになる。
高齢者の就床時刻が前進しやすいもう1つの理由は、生物リズムの制御機構に老化があらわれ、体温のリズムと活動性のリズムがずれやすくなることである。
体温のリズムは、タイプーリズム発振機構によって24時間リズムが調節されている。この時計あわせをするもの(同調因子)は、光や食事である。体温のリズムは朝日を浴びると位相が前進し、夜中に強い光環境にさらされると位相が後退する。動物界に広くみとめられ、もっとも強い24時間リズム機構である。睡眠ではレム睡眠がこのリズム機構に支配されている。
もう1つのリズム機構は、タイプ2リズム発振機構とよばれ、社会的接触や運動などの環境サイクルの情報(非光同調因子)に生物リズムを同調させるはたらきをもっている。タイプ2リズム機構は、昼夜の24時間リズムに時計あわせをする力はあまり強くないが、ヒトではこのリズム機構のはたらきも重要な位置を占めている。睡眠ではノンレム睡眠がこのリズム機構に支配されている。ふつうの夜間睡眠はノンレム睡眠からはじまるので、睡眠ト覚醒サイクルはこのタイプ2のリズム機構の影響を強く受けている。健康でごくふつうの生活をしている人は、タイプーの時計にタイプ2の時計がうまくかみあうように結合しているので、1つの生物時計でリズムが制御されているのとほとんど変わらない。ところが、2つの時計が受けとめる環境情報はそれぞれ異なるので、受信の感度が落ちたり、調整の弾力性が落ちるとリズムが乱れやすくなる。加齢によりリズムの発振機構や結合機能が弱まると、2つのリズムにずれ(内部脱同調)がおこり、睡眠や覚醒に不調がおこる。
図4.5 若年者と高齢者のリズム機能比較

図4.5 若年者と高齢者のリズム機能比較


図4・5は、体温リズムと活動リズムの関係を若年者(大学生)と高齢者でくらべたものである。同じ20代でも、仕事に就いている人では社会的規制からほとんど昼寝がない。そこで昼寝が自由にとれる高齢者とくらべるには、大学生がちょうどいいということになる。5日間にわたって深部体温(直腸温)とアクチグラム(活動計)を連続的に記録し、グループごとに平均したものをしめしている。夜間睡眠との関係を見るためには、就床と起床が2日にまたがるので、2日間を連続してしめすとグラフが読みやすい。このようなグラフの書き方をダブルプロット法というが、図はこの書き方でつくられている。
まず体温リズムを比較すると、高齢者のリズムは大学生よりもおよそ2時間前進している。
活動リズムと睡眠期の開始時刻を比較すると、その差はさらに広がり、高齢者では大学生よりも3〜4時間早くなっている。つまり、高齢者では体温リズムよりも睡眠‐覚醒リズムが前進しており、2つのリズムのかみあわせが悪くなっていることがわかる。
このことは、体温リズムの状態(位相)と睡眠の開始時刻の関係にも影響しており、大学生では低体温期になって睡眠がとられているが、高齢者では平均水準以下になるとすぐに睡眠がはじまる。覚醒機構による眠気の抑制がうまくはたらいていないことをしめしている。
また、昼寝による活動リズムの日中の落ちこみは、大学生ではほとんどみとめられないが、高齢者では午後1〜2時にみとめられる。日中の眠気や居眠りは大学生の場合、午後2〜3時にピークがくるが、高齢者では日中の眠気も1時間ていど前進しており、その落ちこみのていども大きく、期間も長い。
大学生も授業中にしばしば居眠りをする。しかし、よく見るとその眠りは小きざみで、平均活動曲線に陥没をつくるほどの強さはない。高齢者の眠気は大学生よりもずっと強いことがわかる。ところが、主観的な眠気を調査すると、眠気を訴える人の割合は高齢者のほうが小さい。世代的にがまん強いということもあるが、眠気にたいする感受性の低下も見逃すことはできない。
高齢者に多い居眠りは、眠気に気づかずにうっかり寝ついてしまうためにおこる。まったくの無防備状態のまま眠りにつくので、たいへん危険である。高齢者ほど、規則正しい生活や日光浴、社会的刺激を取りこんで、タイプーとタイプ2のリズムがうまくかみあうように、積極的な自己管理をすることが必要である。

夜型の生活リズムを調整する

夜型の人は生活が不規則になり、リズムが乱れやすい。このタイプの悩みは、多くの場合が朝起きられないということであろう。では、夜型の人が生活リズムを調整するにはどうすればいいのだろうか。
逆説的に聞こえるかもしれないが、無理をしても決めた時間に起きてしまうことである。その日はとうぜん睡眠不足なので、日中はかなりの眠気がくりかえし襲ってくるが、がんばって夜まで覚醒を保つ。いつもより早起きした分、早めに眠気がくるから、夕食や入浴、就寝準備も早めにして、予定の時間がきたらふとんに入ればいい。1、2時間の早起きであれば、たいていの場合これで調整ができる。はじめの3日間くらいはひじょうに眠いが、1週間くらいで眠気も消え、生活リズムの位相が前進した状態で安定する。
ところが、早起きが4、5時間におよぶ大幅な位相前進を必要とするときには、この方法では歯が立たない。このような大幅な生活時間の移動には、時間療法が適用される。この治療法は睡眠相後退症候群の治療に用いられるもので、就床時刻を一日数時間ずつ後退させ、望ましい入眠、覚醒時刻になったら、そこで後退を止めて生活リズムを固定するというものである。
睡眠相後退症候群と診断される人は、ふつうの人より4、5時間以上も寝つくのが遅いがんこな宵っぱりで、しかも早起きが大の苦手である。そのため早起き早寝(位相前進)でなおすことがきわめて困難である。それなら逆に、宵っぱりの特性に合わせて、いつもよりも2、3時間入眠時刻を遅らせ、一週間ていどかけてふつうの時刻にまで生活リズムを移動させてみようというものである。これは1人ではできないので、専門医の指導のもとにおこなうのが原則である。

朝日による調整

ヒトの生物リズムを適正な状態に保つのに、太陽光が重要なことはすでに述べた。光情報は生体時計にはたらきかけるとともに、昼夜のリズムを松果体に伝える。入力された光の強さが2500ルクス以上であれば、松果体はメラトニンの分泌を止める。照度が500ルクス以下になれば、メラトニンを分泌する。つまり、昼になるとメラトニンの分泌が止まり、夜になると分泌を再開するので、昼夜のリズムはメラトニンの血中濃度の変化として、タイプーリズム発振機構に伝えられる。
したがって、生体時計が朝または昼を認識するためには、環境照度は2500ルクス以上の強さが必要である。明るい光は、リズムの位相を前進させたり後退させたりする力をもっており、朝日を浴びることによって1時間の位相前進がおこる。この時計あわせは毎朝おこなわれ、ヒト固有の25時間周期の生物リズムを24時間周期のサーカディアンリズムに短縮させる。
朝日のリズム調整効果には、時刻の制限があり、ふつうの社会生活をする人では、時計をすすめる時間帯は最低体温の時刻から後ろに5、6時間である。ふつう、最低休温から2時間後くらいに目ざめるので、目がさめてから3〜4時間のあいだに光を浴びればいいことになる。
朝、目がさめたら、雨戸やカーテンを開けてしっかりと朝日を浴びることである。こうすれば25時間周期でゆっくりと上昇してきた覚醒水準を、24時間周期の上昇勾配に切りかえて、午前中の能率を高めることができる。
日本では、曇天でも1万ルクスくらいあるので、自然光を浴びることで十分効果がある。室内でも窓際に立てば雨の日でも5000ルクスはある。ところが、窓から1〜2メートル離れると、天候や季節によって1000ルクス以下になることもあるので、午前中ずっと室内にとどまるときには注意が必要である。地下街ばかりでなく、高層ビル群に勤務する人たちは、朝起きると近くのバス停や駅までは光を浴びるが、その後は勤務先までほとんど高照度光を浴びることがなく、そのまま昼休みまですごしてしまうことが多くなってきている。現代社会では知らず知らずのうちに、深刻な日光不足を生みだし、はたらきざかりの生物リズムがおびやかされていることは注目していいであろう。
光を使ってリズム障害を治療する方法が高照度光療法である。自然光ではいつも同じ条件を保つことがむずかしいので、2500ルクス以上の照度をもつ高照度光照射器が使われる。治療目的では一回2時間を目安として、照射器の前に座ってもらい、1分に1回ていど、光源のほうを見るように指示するだけで、あとは読書や編み物などの手仕事、あるいは食事など自由にすごせばいい。時間療法と組み合わせて用いられることも多い。

日中の光の作用

昼の光はどんな効果をもつのだろうか。
生物リズムの調整という点でみれば、朝日よりも影響力は小さい。ところが活動性や気分感情に与える効果は強く、日中に日光浴をするとたいへん気持ちがいい。高緯度地方に住む人々は冬に日照時間が短くなり、それが原因でうつ病がおこる。季節性うつ病あるいは冬期うつ病とよばれており、高照度光療法でいちじるしい改善がみられている。
日中に十分な照度の光を浴びることは、気分や感情を良好に保つばかりでなく、覚醒水準を高い状態に保つのに効果があり、その結果、睡眠と覚醒の力関係に適度なバランスが生まれる。
光不足になると、覚醒の力が下がるので睡眠とのバランスが崩れ、睡眠時間の延長や入眠時刻の前進がおこりやすくなる。
地下街や、窓から離れた席で仕事をする人には、休憩時間に不足分を捕えるように光照射器をおくなど、きめこまかい配慮が必要である。一度、照度計で自分の机の上が何ルクスあるか測ってみるといい。明るいように見えて、せいぜい400〜500ルクスである。あるいは昼休みなどに一度室内照明を切ってみると、窓からの明かりはごくわずかで、自分の机にはほとんど当たっていないのにがくぜんとするだろう。照度を問題にするときには、窓が大きいことと自然光の恵みはほとんど関係ないといっていい。
夕方から夜の光の作用
夕方から夜にかけて強い光を浴びると、睡眠の時間帯が後ろにずれる。覚醒を高めるには2500ルクス以上が必要であるが、眠れないあるいは眠らないという条件だけであるなら、もうすこし低い照度でも効果があるといわれている。光の効果は強度と持続時間の2つで変化するので、1000ルクス以下でも2時間、3時間と長時間浴びていれば、入眠時刻を後退させる可能性があるという報告もある。
北海道大学の本間研一教授のグループによると、メラトニンの分泌抑制は200ルクス以下ではほとんど見られないが、500ルクスでは3時間照射すると抑制率は50%に達するという。これまで500ルクス以下であれば、メラトニンの抑制はまずないであろうとされてきたが、明るさと時間、さらに受光効率を総合すると、ふつうの家庭の照明でもタイプーリズム発振機構に影響をおよぼす可能性が出てきたといっていいだろう。具体的にどのあたりが下限な
のかはまだはっきりしていないが、夜の10時以降では150ルクスていどに照明を落として、あまり明るい光を浴びないほうが、リズムの安定には好ましい。放送局のスタジオの明るさはほとんどが2500ルクスを超えており、深夜にわたる録画撮りは確実に位相後退を引きおこす。
精密作業をするには、手もとで1000〜1500ルクスの照度が必要である。このあたりの照度になると、作業時間によってはリズムを勤かす可能性が出てくる。交代制夜勤の作業場では、眠気をおさえ覚醒水準を高める目的で高照度照射がおこなわれることも多い。ハーバード大学のザイスラーのグループは、1万ルクスで照明すると、夜間作業がはかどり、眠気もおさえることができたという。この場合は睡眠の位相と体温リズムの位相がいっしょになって後退するので、夜勤に適応しやすい生活リズムになったからだという。夜勤の効率だけを考えると、このような評価もできるであろうが、夜勤病の発生などを考えると、覚醒を高めるがリズムは勤かないという照度が好ましいように思われる。現在も、1000〜2000ルクスでぐあいのいい照度範囲がないか、慎重な検討がつづけられている。

メラトニンとビタミンB12による調整

メラトニンについては、すでに時差症状のところでふれたが、メラトニンにはリズム調整作用があり、夜間に服用すると位相前進、朝方に服用すれば位相後退がおこる。治療薬としては認可されておらず、現在はリズム障害の治療をめざして研究がすすめられている。時差症状や交代制夜勤による夜勤病のほか、広く生活リズム障害の治療法として薬量と投与のタイミングなど具体的な検討段階に入っている。最近では、夜間の睡眠障害とメラトニン分泌低下の関係に注目し、メラトニン補充療法も試みられている。とくに中途覚醒型の不眠を訴える高齢者では、メラトニンの分泌量が減少していることがたしかめられており、中・長時間作用型のメラトニン製剤で睡眠が改善したという報告もなされている。
ビタミンB12がリズム障害に効果があることは、甲状腺機能低下症の治療で偶然発見された。
ビタミンB12は水溶性ビタミンB群に属し、ヒトや多くの生物に不可欠のものであるが、細菌や放線菌に属する一部の微生物しかつくることができない。ふつうは末梢神経炎や悪性貧血の治療に用いられる。これらの病気はB12の欠乏によっておこり、これを補充することで改善がみられる。ところが、睡眠‐覚醒リズムに障害がある人は、とくにビタミンB12が欠乏しているわけではない。ビタミンB12の効果は、通常よりも高い血中濃度のときにあらわれてくる。メチル型のビタミンB12はメチルコバラミンとよばれるが、このタイプがリズム障害にもっとも効果的で、24時間以上に延びていた生物リズムの周期を、正常な24時間に短縮させる作用がたしかめられている。また、朝の時計あわせができず、がんこな朝寝坊(睡眠相後退症候群)をしめす人にためすと、高照度光療法だけでは動かなかった睡眠相を前進させることができた。また別の例では、ビタミンB12だけではほとんど効果が見られない人に、対人的なはたらきかけを強めると、24時間周期のリズムが見られるようになった。
これらのことから、ビタミンB12は、光(タイプーリズム発振機構)や対人関係(タイプ2リズム発振機構)といった、生物時計の時刻あわせに必要な情報(同調因子)にたいする感受性を高め、周期の短縮や位相同調を促進しているのだろうと考えられている。
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