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眠らない子どもたち

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眠らない子どもたち

子どもを寝かしつけるには

睡眠研究を専門にしていると、自分の子どもが通う学校から講演依頼を受けることがある。「睡眠」について何か話をしてほしいというわけだ。
私も娘がお世話になっている幼稚園で、集まった保護者の方々を前に話をしたことがある。講演の最後に、私はこんな質問を受けた–「うちの子どもは、寝かせようとしてもいやがるぱかりで、ぜんぜんいうことを聞いてくれないんです。どうしたらいいでしょうか」。彼女は6歳の男の子の母親で、子どもの聞き分けのない態度にほとほと手を焼いているようすであった。くわしく聞くと、毎晩7時には息子を寝かせる準備を始めるという。「8時までに寝てもらわないと困りますからね」という彼女に対し、私はわざと驚いた顔をして、「なぜお子さんが8時に寝ないと困るんです?」とたずねてみた。すると彼女はこう答えた。
「子どもが起きていると、夫といっしょにテレビを見る時間がなくなってしまいますでしょう?」。
子どもが8時に寝ようとしないのにはちやんとした理由があるはずだし、眠たくないところへいろいろうるさくいっても、しょせん無理に寝かしつけることはできない–私はそう説明したつもりだったが、彼女には通じなかったようだ。しかも、「お母さん自身はどうですか? 8時にベッドに入って寝られますか?」
とたずねると、彼女は気分を害したのか、強い口調でこう答えた。「私は大人ですけどね、息子はまだ小さいんですよ!」
子どもに見られる睡眠障害の多くは、子どもの睡眠そのものに問題があるわけではない。むしろ、子どもに対する親の態度の方に問題がある。たとえば、多くの親は自分たちの生活に合わせて子どもを寝かしつけようとする。ところが、その際、子どもが眠たいかどうかという点はまったく無視されている。これは、睡眠に関する無知が引き起こす誤った態度であり、間違った知識が何の裏づけもなく受け継がれている一例である。
こういった親は、子どもは眠ろうと思えば眠れるはずだと信じこんでいる。子どもが夜の7時や8時をすぎてまだ起きていたりすると、しつけが足りないとか、親に反抗してるだけだ、などと勝手な想像をしてし
まうのである。だが、子どもがなかなか寝ようとしないのは、体内時計がまだ体に睡眠を命じていないからにすぎない。つまり、子どもが自然に眠たくなるまで、さらに1〜2時間は待たねばならない。
一方、子どもが朝早く起きすぎるとこぼす親もいる。とくに休日の朝、親がせっかく朝寝坊を楽しんでいるところへ、子どもがすぐ邪魔をしにきて困るという。しかし、早く寝かしつけられた子どもが朝早く起きてしまうのは当然であろう。それは睡眠障害でも何でもない。ところが、この理屈がなかなか理解されない。
子どもにとって、睡眠時間は9〜10時間あれば十分である。だから、夜の8時に寝かしつけられれば、翌朝の5時か6時に起きてしまうのはあたりまえではないだろうか。
要するに、子どもの睡眠習慣に何か問題があるというのであれば、親の都合を押しつけるのではなく、子どもにとっていちばんよい就眠時間・起床時間を考えてやらねばならない。親の苦労を増やすような発言で恐縮だが、子どもの睡眠習慣と親の生活習慣がうまくかみ合わないとき、親の方から歩み寄り、自分の都合を犠牲にすることも、場合によっては必要となる。
ここでつけ加えておかなければならないのは、親だけでなく、託児所のような施設にも問題があるということだ。以前、ある託児所の所長が、私たちの研究所に相談にやってきた。間くと、寝つきの悪い子どもがいて困っているという。この施設は、家庭の事情で親と離れぱなれに暮らさねばならない子どもをあずかっているのだが、相談にやってきた所長は、その心理的ストレスが子どもの睡眠に悪影響を与えているのではないかと考えていた。そこで私たちはまず、施設にあずけられている子どもの睡眠状況を調べてみたのだが、その結果にはいささか驚かざるをえなかった。何と施設で決められた就寝時刻が午後8時だったのである。
要するに、施設の命ずる就寝時刻があまりに早く、子どもたちはとうてい寝つくことができなかった、というわけだ。そこで、所長に就寝時刻を一時間か一時間半遅くするようアドヴァイスしたところ、子どもたちの寝つきはすっかりよくなった。
では、まだ言葉を理解しない小さな子どもの場合はどうすべきだろうか。もう寝なさいと口でいっても、言葉がわからなければ通じない。細切れ状態だった新生児の睡眠は、生後一年も経つと安定し、睡眠と覚醒のリズムが昼夜のサイクルに一致するようになる。だが、このプロセスは個人差が大きく、生後数カ月で大人の睡眠に近づく子どももいれば、2歳になって、あいかわらず細切れの睡眠を繰り返す子どももいる。早めに大人の睡眠に近づいて朝までぐっすり眠ってくれた方が、親にとっては非常に楽ができる。赤ちゃんの夜泣きは、親にとってまさに頭痛の種だ。子どもを寝かしつけるために、親はあらゆる手を尽くす。ゆりかごを一晩中揺すったり、夜中に車に乗せて近所を一周したり、抱き上げてあやしてやったり……。夜泣きをめぐる親の苦労話は数え切れない。エピソードだけで一冊の本になるだろう。心身ともに疲れ果てた両親は、夜泣きのおさまらぬ子どもを誰かにあずけ、何週間かに一度、ホテルにしぱらく避難して寝不足の体を充電する。さもないと、親の「睡眠バッテリー」は空になってしまうだろう。
夜泣きについての相談を受けたとき、私たちはまず、子どもに対する親の態度をチェックする。むずかる子どもを親がどうあつかっているか–それさえわかれば、夜泣きの原因も判断しやすい。たとえば、泣いてぐずり続ける子どもを放っておくことができず、とにかく何とかあやして寝かしつけようとする親がいる。
夜中に目を覚ました子どもにすぐ哺乳ぴんでミルクを与えたり、それでもだめなら、抱き上げてあやしたり、親のベッドヘ連れていって寝かしつけたりする。親がこうした態度を続けていると、子どももいずれ学習して、親の気を引くために泣いたり、ぐずり続けたりするようになる。毎晩遅くまで起きていたり、あるいは夜半に起きて泣き叫んだりすれば、それだけで親が飛んできてくれるのだ。中には、思い切って、子どもが静かになるまで放っておこうとする親もいる。だが、たいていの親は我慢が続かず、すぐ子どものそばへ駆け寄って、寝つくまでかまい続けることになる。
子どもの睡眠リズムを親の希望どおりに変えていくためには、しつけをきちんとすることと、眠るときの環境をととのえてやることが大切である。条件づけのトレーニングを繰り返せば、ネコはベルの音刺激に反応して睡眠込むようになる。人間の場合も、寝る前に一連の刺激、一定の「儀式的」行動が繰り返されれば、それが引き金となって眠る習慣がつく。その際大切なことは、一度決めた習慣を変えないこと、そして長期にわたって継続することである。子どもは、一連の「就眠儀式」によって一日の終わりを体で知る。ベッドに入る時間を決めておいてやれば、その時間に寝つくようになるはずだ。子どもの寝場所が毎晩変わるのもよくない。親の腕の中で眠ったり、ソファに座ってテレビを眺める親の隣で眠ったり、親のベッドで寝たりしていれば、自分のベッドが本来何をするところか、いつまでたっても学習することはないだろう。就眠儀式が大切なのは乳児だけではない。子どもがもう少し大きくなって、寝るときは親から何かお話をしてもらうにしても、ベッドに入る前にいつもすることが決まっていれば、それをきっかけに睡眠やすくなるだろう。また、毛布の切れ端や、こわれた人形、おしゃぶりなどを持って眠る子もいるが、これらもすべて眠るための準備として重要な存在なのである。つまり、これらの就眠儀式によって、睡眠と覚醒、夜と昼の区切りが明確になり、スムーズに睡眠の世界へ入っていくことができるようになる。
では、子どもがむずかって、どうしても寝ようとしない場合、親はどうしたらよいだろうか。じつは、この問題はごく単純な方法で解決することができる。あまりに単純すぎて、たいていの親は試してみようともしないのだが、その効果はすでに証明ずみである。
テクニオン睡眠研究所でも、乳児の睡眠について、データが蓄積されつつある。その経験からいうと、むずかる子どもへの有効な対処法として、「定期チェック法」と「添い寝法」の2つをあげることができる。
この2つの方法は、イギリスの小児精神科医ネイオーミ・リッチマンが提唱したもので、いずれも同程度の効果をもつことが確認されている。
「定期チェック法」の場合、まず子どもを寝室に連れて行き、やさしく声をかけながら、そっと抱いてあげて、それからベッドに寝かせる。子どもがぐずる場合もあるだろうが、親はそのまま寝室を後にする。10分経ったら、寝室に戻って子どものようすをチェックする。もしベッドの中で立ちあがったり起きあがったりして、眠れそうにないようすを見せていたら、ちゃんと寝かせてやらなければならない。それから、背中をやさしく叩いてやり、ふたたび子どもを一人にする〔日本では赤ちゃんを仰向けに寝かせることが多いが、欧米などではうつぶせに寝かせるのが普通である〕。子どもが寝つくまで、この手順を正確に10分おきに繰り返す。
子どもが夜中に起き出した場合も同様である。
私の研究室で子どもの睡眠について研究し、博士論文を執筆したアヴィ・サデーは、「定期チェック法」の効果を実験的に調べてみた。その結果、「定期チェック法」を開始して3〜4日も経つと、子どもの寝つきがよくなったという。中には驚くほどの変化を見せた子どももいた。たとえば、ベッドに入るとすぐ眠るようになったし、夜中に目を覚ます回数も劇的に減ったのである。もし目を覚ましたとしても、以前とは違って、泣いて親を呼ぼうとしたりせず、誰の助けも借りずにふたたび睡眠につくようになった。
次に「添い寝法」だが、これは実際に添い寝をするのではなく、子どもの寝室にソファなどを置いて、母親か父親がそのそばでいっしょに寝るという方法である。場合によっては、床の上にマットレスをしき、そこで眠ってもよい。これを何日か続けるのだが、やはり3〜4日もすると、子どもの態度に大きな変化が現れ、おとなしく眠りにつくようになる。
「定期チェック法」も「添い寝法」も、親の側がしっかりと意志を固め、決められた手続きを毎晩きちんと守らなければならない。もちろん相応の努力が必要だが、その努力はかならず報われる。私たちテクニオン睡眠研究所の小児クリニックでもこれらの方法を紹介し、大きな成果をあげている。実際、相談を受けにきた親たち80〜90パーセントが、一週間で子どもの寝つきがすっかりよくなったと報告している。ただし、そういう彼らも、初めて「定期チェック法」や「添い寝法」の説明を受けたときは、本当にそれで効果があるのか、といいたげな目つきであった!

睡眠時随伴症のいろいろ

小さな子どもは、寝つきが悪かったり、夜中に目を覚ましたりして、親をわずらわせる。だが、その睡眠パターンもやがては親の望む方向に変わっていく。2歳にもなれば、たいていの子どもは朝までぐっすり眠るようになるだろう。その頃を境に、子どもの睡眠は、ほぼ大人の睡眠と変わらぬかたちにまで成長するのである。だが、子どもの睡眠には、大人にはあまり見られない現象がいくつか知られている。たとえば、夢遊症、夜驚症、夜尿症、寝言といった症状や、ベツドの上で体を揺するといった行動などが代表的な例である。こうした現象は、眠っている本人には意識されぬまま、ときとして奇妙な行動をともなう。何百年もの昔から、医師はこうした不思議な現象に頭を悩ませてきた。ただし、原因不明とはいえ、睡眠時の随伴現象そのものについては、医師もある程度の知識をもっていた。その具体的な例を、シェイクスピアの「マクベス」に見ることができる。次の引用では、マクベス夫人の夢遊症が描かれている。
侍女 王様が戦に発ってからのことです。夜中になると、王妃様はベッドを抜け出し、部屋着を羽織って、戸棚の鍵を開け、紙切れを取り出し、折りたたんでから何か書きつけ、最後に目を通してから封印し、ふたたびベッドに戻るのです。–・‐ところがこの何もかもが、王妃様ご自身、眠っているあいだのできごとなのです。
医師 なんと不可思議な! 眠ると同時に起きている、というわけか。睡眠ながら歩き、体を動かしていたとなると、言葉も発していたのではないか? 何か口にしなかったか?
侍女 先生、それを申し上げるわけにはいきません。
医師 私は医者だ。むしろ報告するのがお前のつとめであろう。
侍女 いいえ。先生であろうと、どなたであろうと、私一人だけの見聞きしたこと。不確かなことをお
伝えするわけにはいきません。
(マクベス夫人が蝋燭を手に入ってくる)ほら、いらっしやった! いつもと変わらぬご様子だけど、ぐっすり眠っているのです。まちがいありません。先生、こちらに隠れて、よくご覧になって。
医師 なぜ明かりを?
侍女 お側に置いてあった明かりですわ。明かりを絶やさぬようにとのお申しつけですもの。
医師 目は開いたままだね。
侍女 ええ。何も見えてはいらっしやらないようです。
医師 あれは何だね? 手をこすり合わせておいでだが。
侍女 いつものことです。手を洗われているご様子。あのまま、一5分も手をこすり合わせていたこともありました。
(中略)
医師 私の理解を超えているな。だが、睡眠ながら歩き回る人間が、かならず嫌な死に方をするというわけでもない。(「マクベス」第5幕、第一場より)
ここには、夢遊症の特徴がじつにみごとに描かれている。しかも、症例を解説しているのは侍女であり、医者はむしろ教えを乞う側にまわっている。つまり、シェイクスピアは、医者と素人の立場を逆転させているのである。
大人の場合、夢遊症はストレスによって引き起こされることが多い。しかし、他の睡眠時随伴症と同様、夢遊症がとくに多いのは小児である。
この現象は、睡眠が深くなる第3〜第4段階で現れる。具体的には、睡眠中に突然起きあがり、ベッドから抜け出して、歩きまわる。マクベス夫人の侍女が指摘するように、目は見開かれているが、何も見えてはいない。つまり、頭の中の記憶だけに頼って歩きまわるのである。したがって、いつもは何もないところへ物が置かれていたりすると、つまづいて転倒する危険がある。また、夢遊時の人間を覚醒させるのは困難であり、話しかけても反応はない。
マクベス夫人は睡眠中に手を洗うような素振りを見せたが、こうした行動もけっして珍しいものではない。
以前、私たちの研究所で、6歳の男の子が寝ぼけて歩きまわったことがある。じつは、睡眠研究所のような人工的な環境下では、夢遊症患者の行動を観察できるチャンスはあまりないのだ。このかわいい男の子は、ベッドの上で起きあがると、床に足をおろし、体に取りつけられたコードが届くぎりぎりのところまで歩いて行って、それから両手を何か妙な具合にひらひらと動かし始めたのである。翌朝、このようすを撮影したヴィデオテープを両親に見せたところ、理由がわかった。学芸会の振りつけだったのである。芝居の中で、この男の子は太陽の役をすることになっていた。とくに何か深い意味があったわけではなかったのだ。要するに、夢遊時の人間は、覚醒時に記憶された行動を再現する傾向があるといえる。
また、マクベス夫人の侍医がいうとおり、「睡眠ながら歩きまわる人間が、かならず嫌な死に方をするというわけでもない」。夢遊症は心身へ直接の悪影響をおよぼすわけではないし、治療を必要とするような病気でもない–そう私たちは考えている。5〜13歳の頃に観察される夢遊症も、子どもの成長につれて消失し、やがては家族のあいだの笑い話となる。子どもの夢遊症が心配で相談に訪れる親は多いが、特別な治療は不要である。その具体的な対処法について説明し、何年か経てば自然に治るので問題はないと伝えれば、たいていの場合、それで十分だろう。具体的には、夢遊行動は入眠後2〜3時間以内の深い睡眠時(第3〜第4段階)に起こるので、それまで子どものようすをうかがっておいて、ベッドから出て歩き出すようだったら、そっとベッドに連れ帰る。子どもを起こす必要はない(起こそうとしても反応はない)。素直にベッドに入った子どもは、何事もなかったかのようにたちまち睡眠につくだろう。朝目ざめても、何も憶えていないはずだ。
中には、きちんとした対策を必要とするケースもある。以前、イスラエル北部に位置するイズレエル谷のキブツ〔イスラエルの農業共同体〕から、4歳になる女の子が私たちの研究所へ連れられてきた。この女の子は毎晩一一時になると寝室を抜け出し、キブツ内の牛小屋まで歩いていくのだという。こうなると怪我をする可能性も高いので、事故を未然に防ぐためにも、部屋に鍵をかけるなど、具体的な方法をとらざるをえなかった。また、違う子どもの症例だが、寝室のドアがすぐ戸外へ通じていたため、夜中に家を出て、車の多い道路を横切ろうとするケースもあった。私たちは、まず第一に、夜のあいだはドアに鍵をかけるか、ドア・ノブをはずしておくようにアドヴァイスした〔西洋式のドアには、ノブを取りはずすことができる構造のものがある〕。
テクニオン睡眠研究所では、夜間のてんかん発作が疑われるのでなければ、子どもの夢遊行動について睡眠記録をとることはあまりない。これは、実験室で眠ると夢遊行動が起こりづらいというのが理由の一つである。ふだんと違う睡眠環境だし、体に電極をいろいろ貼りつけられれば、睡眠中の随伴現象もおさえこまれてしまうと考えられる。ただし、兵役を前にした若者の睡眠記録をとることは多い。つまり、兵役中に夢遊行動が生じると困るので、チェックのために睡眠記録をとるのである。もし夢遊症の疑いが生じた場合は、医学的な処置を行なうにせよ、他の対処法を考えるにせよ、とにかく十分な検査が必要となる。
睡眠中の自動症の種類は多い〔自動症とは、本人の意識とは無関係に生じる行動のことである〕。夢遊症は中でもいちばん「派手な」症状だが、睡眠中に突然上体を起こして毛布を引き寄せるとか、目を見開いたまま起きあがるといった程度の行動も一種の自動症である。また、寝言、律動性の運動、夜尿症、歯ぎしり、夜驚症
なども自動症にふくまれる。これらの現象は、専門的には「睡眠時随伴症」と呼ぱれている。睡眠時随伴症は、一生に一度しか起こらないまれなケースもあるし、一週間に数回という高い頻度で生じる場合もある。各症状の共通点としては、深い睡眠のときに生じること、睡眠から覚醒への急激な移行によって症状が終了すること、成長とともに症状が自然消失すること、体の運動が意識とは無関係に行なわれていること、などがあげられる。睡眠時随伴症をくわしく研究したオタワ大学のロジャー・ブロートンは、睡眠時の自動症を、その特徴にしたがって「睡眠覚醒移行障害」と名づけている。
夢遊症と同じく、子どもの睡眠時随伴症は、特別な治療を必要としない場合が多い。心配する親に対しては、症状の特徴と具体的な対処法を説明し、安心させればそれで十分である。とくに夜驚症のあつかいについては、親によく説明しておく必要があるだろう。
子どもの夜驚症に初めて接する親にとって、その発作はじつに恐ろしい体験となる。まず、子どもの寝室から突然血も凍るような叫び声が聞こえてくる。驚いて駆けつけると、子どもはベッドの上に起きあがり、焦点の合わぬ視線で空を見つめながら震えている。心臓の鼓動が聞こえてきそうなようすだが、話しかけても答えない。まったく別の世界にいるようで、反応がないのである。そのうち本当に目が覚める。しかし、子どもが憶えていることといえば、何だか怖い動物だか怪獣が茂みに隠れていて飛びかかってきた、というような内容だけだ。発作時の記憶内容がほとんどないというのは夜驚症の特徴で、レム睡眠時に生じる「悪夢」とは異なる点である。悪夢の場合は、恐ろしい夢の記憶が起床後もはっきりとしたかたちで残る。
夜驚症の発作に襲われた子どもに対しては、夢遊症と同じく、やさしい態度で落ちつかせ、そっとベッドに寝かせてやればよい。けっして、翌朝になってから夢のことをたずねたりしてはいけない。何も憶えていないところへむりに聞き出そうとすれば、寝ているあいだに何か変なことが起こったのではないかと、子どもは不安がるばかりである。夜驚症は普通一ヵ月に1〜2回しか起こらず、その回数も成長とともに減って、やがて消えていく。
マクベス夫人の例が示すように、大人にも睡眠時随伴症が生じる。大人の場合は、たいていストレスの強い状況下で起こることが多いため、ストレスを引き起こす原因そのものがなくなれば、症状も消えることが多い。ただし、症状が長引く場合には、睡眠検査によって正しい原因をつきとめる必要がある。
睡眠時随伴症のうち、大人だけに生じる症状として、「レム睡眠行動障害」がある。本人は夢を見ているわけだが、実際に体を激しく動かし、何かに殴りかかったり、物を蹴ったり、ベッドから出て走り出したりする。それが原因で怪我をすることもあるし、場合によってはいっしょに寝ている人に危害がおよぶ可能性もある。事故や怪我を避けるためにも、医師による診断が必要であろう。

睡眠の老化

乳児期の睡眠と老人の睡眠には共通性がある。これから人生を歩み出そうとする乳児と、やがて人生の終わりをむかえる老人。人生の始点と終点にあって、その体と心には特徴的な変化が生じる。幼児と老人の眠りがともに乱れがちだとすれば、それは平均的な大人の睡眠との差が大きいからである。要するに、睡眠の質は年齢とともに変化する。
親が子どもの睡眠をよく理解せず、間違った生活リズムで育てていると、子どもの睡眠リズムはいつまでたっても成熟しない。つまり、大人の睡眠に近づかない。同様に、年をとって睡眠の質が変化したときには、それが自然な老化現象であることを理解すべきである。老化現象に対して、へたに不自然な態度で接すれば、結局、重大な問題を引き起こすことになる。
加齢とともに、睡眠の質に変化が生じ、睡眠に関する悩みが増える。たとえば、朝の鳥のさえずりや、近くを走る車の音など、ちょっとした物音で目が覚めやすくなる。ときには、ブラインドの隙間から射しこむ光でも目ざめてしまう。だが、静かな場所ならぐっすり眠れるかというと、そうもいかない。たとえば、睡眠研究所の実験室でも自宅の寝室でもよいが、完全な防音室を準備したとしても、老人はやはり夜中に何度も目が覚める。したがって、年をとるとどうもうまく眠れないという声が間かれるのも、けっして身体疾患や精神疾患のせいではなく、ごく自然な老化現象、つまり睡眠の質が低下した結果なのである。
以前、アンディ・ルーニー〔アメリカのコラムニスト〕は、「子守歌から遠く離れて」という示唆的なタイトルのエッセイを新聞に書いた。ルーニーは「昔のように眠ることができなくなった」というのである。「昔なら、何も考えずにぐっすり眠ることができた。朝起きれば、体も心もすっかり回復していたのだ。ところが、もうそんな気分で睡眠を楽しむことはできない。(中略)昔のことだから記憶もあいまいだが、たしか、ベッドに入ったらもう目をつぷっていて、そのままぐっすり8時間睡眠続けていたはずだ。この記憶が正確だとしても、それは過ぎ去った日々、もはや思い出でしかない。最近の私は寝つきはよい。だが、一度目ざめると眠れなくなってしまうのである」
実際、老人にとって睡眠の維持は容易ではなく、たいてい夜中に何度も起きることになる。これはまわりの物音に目ざめやすくなるせいもあるが、加齢にともなう身体状態の変化も原因となる。たとえば、睡眠検査を行なうと、高齢者の20〜30パーセントに、睡眠時の呼吸困難や下肢の異常運動が認められる。これは一種の老化現象であり、体の機能の衰えを示している。そして、これらの身体症状によって睡眠が阻害され、結果として短時間の中途覚醒が頻繁に生じることになる。
近年、私たちは「夜のホルモン」として注目を集めているメラトニンについて研究を進め、加齢にともなうメラトニン分泌量の減少が老人の睡眠に影響を与えているのではないかという仮説を発表した。私の研究室で博士号を取得したイリス・ハイモーヴは、健康な睡眠を得ている高齢者と、不眠症に悩む高齢者を対象として、そのメラトニン分泌量を調査した。とくに不眠症のグループに関しては、他人の世話にならずに生活している高齢者と、何らかの施設で生活する高齢者のニグループを対象とした。その結果、健康な高齢者のメラトニン分泌量は、若い成人と同レヴェルであったが、不眠症に悩む高齢者のメラトニン分泌量は非常に少量であった。とくに施設で暮らす老人の場合、ほとんどメラトニンが検知できなかったのである。したがって、メラトニン分泌量の低下は、高齢者に不眠症を引き起こす原因の1つと予想される。
私たちは仮説をテストするため、メラトニン分泌量の低下した高齢の不眠症患者に、メラトニン錠剤を服用してもらった。その結果は予想どおりで、老人たちの寝つきはよくなり、中途覚醒の回数も減少したのである。
年をとると、体や心の機能が衰え、重い睡眠障害を引き起こしやすくなる。とくに老人ホームのような養護施設では、その傾向が顕著である。たとえば、毎日何もすることがなく、刺激の少ない環境に置かれれば、夜は早めに寝るしかないだろう。そうなると、睡眠のリズムがくずれ、睡眠の質が悪くなる。また、あまり外へ出ることが許されない状況では、屋外の自然な明暗リズムとも無縁の生活を送ることになる。そうなると、メラトニンの分泌リズムに乱れが生じ、ハイモーヴが示したとおり、睡眠障害を引き起こすことも考えられる。
夜中に何度も目ざめるのは自然な老化の結果なのだが、そのせいで昼間の居眠りも多くなる。たとえば、公園のベンチ、バスの中、病院の待合室などでうたた寝をする老人の姿は、見慣れた街の風景ともいえる。
こうした居眠りは睡眠不足を解消するための反応と考えられるが、昼間眠ってしまうと夜の睡眠欲求が低下するため、十分な睡眠をまとめてとることができなくなる。一種の悪循環である。
以上のように見てくると、睡眠薬を利用する老人の割合が非常に高いのも当然と思われる。とくに老人ホームなどの施設では睡眠薬の利用率が高い。その場合、正しい利用法を守らないと体に悪影響をおよぼす。
もちろん、睡眠薬の乱用は高齢者だけに見られる現象ではないが、老人の場合、使用法を誤ると心身への影響が大きい。たとえば、年をとると体内に入った薬物を分解するスピードが遅くなり、分解物を体外に排出する機能も衰える。また、複数の薬を使用していることが多いので、薬物どうしが反応して悪影響をおよぼすことも考えられる。したがって、老人が薬物を使用した場合、中毒を引き起こすリスクが大きい。実際、高齢者の入院理由のうち、薬物中毒はかなりの上位を占めている。
また、年をとるとともに薬物が体内に残留する時間が長くなる結果、体内に蓄積された睡眠薬が翌日の昼間に強い副作用を引き起こす可能性がある。たとえば、精神的興奮、協調運動の失調〔身体各部の運動が調和を失い、ぱらぱらに機能してしまう状態〕、錯乱状態、記憶障害、さらには幻覚にいたるまで、さまざまな症状
を呈することになる。高齢者における睡眠薬の乱用は非常に深刻な結果を招く可能性があるので、医師は処方の必要性を十分検討しなければならない。たとえば、本当に治療の必要があるのは、老人の世話をするまわりの人間であることも多い。つまり、老人が夜中に何度も目を覚ますせいで、家族や施設スタッフの方が
心身ともに参っていることもけっして少なくはない。
以上のように、人生の始点と終点で睡眠は非常にもろくなる。生まれたばかりの子どもの睡眠は細切れであり、時間をかけて徐々に昼夜リズムヘの同調が進んでいく。一方、年をとると各睡眠段階どうしの結びつきが弱まり、やはり睡眠は細切れとなる。要するに、幼児期と高齢期に睡眠パターンは大きく変化する。私たちはその変化に十分注意し、正しくつきあう必要がある。

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