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睡眠と夢.4

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睡眠と夢.4

魚も睡眠中に夢を見るか?

昆虫から鳥類まで
睡眠の役割を理解しようとするとき、進化の系統樹をさかのぼり、哺乳類だけでなく、さまざまな生物の睡眠を調べるというアプローチが考えられる。ところが、異なる生物どうしを比較検討しようとすると、根本的な問題に直面せざるをえない。それは、睡眠の定義の問題である。
人間の場合、覚醒状態から睡眠状態へ移行するにつれ、脳に特徴的な変化が生じる。この現象が発見されて以来、人間の睡眠は、非常に明確かつ厳密なかたちで定義されるようになった。覚醒と睡眠のあいだに境界線をひくための基準が規格化されたのである。私も睡眠の科学的な定義についてたずねられることは多いが、そういうときも、行動上の変化ではなく、たいていまず脳波の変化について説明する。見かけだけ眠っているふりをするのは簡単だが、電気生理学的な原理にもとづいた計測機器をあざむくことはできない。そこで睡眠時の動物の脳波を測ってみると、動物の種類によっては、人間とよく似た変化を認めることができる。
とはいえ、昆虫や魚類のように神経システムが比較的原始的な動物の場合、人間に見られるような脳波の変化を観察することができない。両生類や奥虫類においても、事情はさほど変わらない。では、脳波にたよることなく、昆虫や魚類の睡眠を定義するにはどうしたらよいのだろう? あるいは、彼らには睡眠はないと考えてしまえばよいのだろうか?
長期にわたる観察によって、少なくとも一部の魚類では、「活動レヴェル」が一日の中で変化することが知られるようになった。たとえば、泳ぎ続けているときもあれば、水槽の底に沈んでほとんど動かないときもある。明らかに活動レヴェルに変化がある。実際、じっと動かない魚に刺激を与えてみても、ふだんより反応がにぶい。水槽の底でじっとしているサメの尾をつかんでも襲われないのだから、サメは眠っているとしか考えられない、と主張する人さえいる。だからといって、サメの尾をつかむ実験をくわしく行なってみようという研究者がいるとは思えないが。
睡眠を行動という点からとらえれぱ、昆虫、魚類、両生類、罠虫類にも睡眠があるといってよい。すなわち、活動レヴェルの低下、種特有の睡眠姿勢、刺激に対する反応のにぶり、刺激が一定値を超えると突然行動を開始する、といった事実からすれば、これらの動物にも睡眠があるといえる。
たとえば、ハチ、ハエ、トンボ、バッタ、チョウ、ガの仲間などの昆虫には、休息期を認めることができる。したがって、彼らには「行動睡眠」?見かけ上の行動から判断した睡眠?があるといってよい。しかも、ゴキブリやサソリなどの場合、刺激を与えて休息できない状態におくと、その埋め合わせとして、いつもより長い休息期が続くことが知られている。これは、人間の睡眠を奪うと、後で睡眠時間が増えるという現象によく似ている。とはいえ、これらの節足動物の場合、神経系に生じる電気生理学的変化を記録しても、休息期と活動期のあいだでさしたる変化が見られない。哺乳類のようなはっきりとした脳波の変化が観察されるわけではないのである。
罠虫類になると、脳波が認められるようになる。哺乳類ほど特徴的な変化を見せるわけではなく、その原始的な段階とも考えられる。たとえば、休息期にあるカイマン〔ワニの1グループ〕の脳波を調べたところ、振幅が大きく鋭いスパイク波(鯨波)が観察されたという。興味深いのは、実験的にカイマンの休息をさまたげると、後でスパイク波の発生が活発になる点である。したがって、このスパイク波は行動睡眠の特徴と考えられる。これはまさに、哺乳類で観察されるデルタ波と深睡眠との関係を思わせる。同様の高振幅スパイク波は、水生・陸生を問わず、カメ類においても観察される。ただし、スパイク波と行動睡眠は、別個の現象だと考える研究者もいる。たとえば、休息期の戻虫類は体温が低下するが、その体温の低下がスパイク波を発生させているのではないかという説もある。
動物の睡眠を研究した人々のあいだでは、過去の動物の進化を振り返ると、「真睡眠」=一定の行動変化に一定の脳波の変化がともなうような休息状態=が登場したのは、前脳〔脊椎動物の発生初期に認められる脳の一区分〕が発達し始めてからのことだということで、ほぼ意見が一致している。また、恒温動物の出現にともない、真睡眠は完成度を高めたと考えられる。

逆説睡眠

鳥類の脳波を調べると、「逆説睡眠」と「それ以外の睡眠」がはっきりと区別できる(ただし、鳥が夢を見るかどうかについて、はっきりした証拠は提出されていない。人間のレム睡眠と区別する意味でも、レム睡眠にあたる動物の睡眠段階を「逆説睡眠」と呼ぶことにする)。ニワトリを例にとろう。ニワトリが覚醒状態から睡眠状態へ入ると、脳波の振幅の増大、頚筋のわずかな弛緩、心拍数の低下が観察される。一方、逆説睡眠が始まると、達い脳波が現れるとともに、その振幅も小さくなる。また、頚筋の緊張はかなり失われ、同時に眼球運動が始まる(ニワトリ以外の鳥類では、頚筋はさほど弛緩しない)。
ニワトリの睡眠を哺乳類の睡眠と比較すると、各睡眠段階を通じて、脳波の描く波形パターンそのものは似ているのだが、各睡眠段階の持続時間は大いに異なる。たとえば、哺乳類の場合、逆説睡眠の持続時間は分単位のレヴェルであり、人間におけるレム睡眠(=逆説睡眠)は30分近くも続くことがある。ところが、ニワトリをふくめ、鳥類一般では、逆説睡眠は10〜15秒程度しか続かないのが普通である。したがって、ニワトリの場合、総睡眠量に対する逆説睡眠の割合は、3〜12パーセントを超えることはない。一日の逆説睡眠を合計しても、ほんの数分程度である。
睡眠覚醒リズムに関しても、鳥類には独特のパターンが観察される。多くの場合、鳥類の各睡眠段階は不安定で短い。この短い睡眠段階が連続することで睡眠が構成されていくのだが、そのあいだには「警戒睡眠」と呼ばれる特殊な段階が組み込まれている。警戒睡眠に入ると、鳥は目を開き、脳波も覚醒時と変わらぬパターンを示す。ただし、姿勢に変化はない。つまり、睡眠時に特有な姿勢は保たれたままである。要するに、睡眠状態を保ったまま、警戒態勢をとることができる。ただし、この特異な睡眠行動について、くわしいことはまだわかっていない。
さらに、ほんの短時間ではあるが、片目だけをつぶって眠る鳥もいる。実験報告によると、そのときの鳥の脳波は、左右いずれかの半球が睡眠、もう一方の半球が覚醒のパターンを示すという。おそらく、この睡眠状態は、鳥が「渡り」という行動を獲得した、その適応過程でそなわったと考えられる。たとえば、ヨーロッパアマツバメの行動をレーダーで追跡調査した結果、この鳥は夜間に渡りを行なうことが明らかになった。この事実から、一部の研究者は次のように推論している?ヨーロッパアマツバメは飛翔しながら眠ることができるのではないか。はっきりと証明されたわけではないが、睡眠ながらも片目を開けていることができるからこそ、渡り鳥は目的のコースをはずれることなく、飛翔を続けることができるのではないだろうか。もちろん睡眠状態も維持されているので、脳にとって必要な睡眠は確保されているといえる。
警戒睡眠の存在、片目を開けたまま眠るという特殊な行動、不安定で短い睡眠時間、独特なパターンを示す逆説睡眠ーー鳥類に観察されるこれらの行動はすべて、特殊な生活環境への適応の結果だと考えられる。
動物が見せる種々の形質は、それぞれの種において、生活環境に適応し、独自の行動様式を獲得するプロセスの中で生まれてきた。「睡眠」という行動も例外ではない。
多くの鳥類は樹上で眠る。高い場所につくった巣で寝たり、枝に留まったりして眠るのである。その状態を考えれば、鳥類に逆説睡眠の量が少ないのもうなずける。しかも、たとえ逆説時間がごく短時間だとはいえ、そのときに体から筋肉の緊張が消えてしまうことはない。これも彼らの眠る場所を考えれば、当然の現象ではないだろうか。鳥以外の動物だと、筋肉の弛緩は逆説睡眠の特徴なのだが、木の上で眠る鳥が筋肉の弛緩した状態を長く続けるわけにはいかない。この点は、地上で眠る鳥と比較してみればおもしろいだろう。
たとえば、エミューやキーウィ、ダチョウなどの鳥は地面にうずくまって眠る。したがって、その逆説睡眠を調べれば、逆説睡眠に与える生活環境の影響がわかるのではないだろうか。
 

アンテロープとクマの睡眠

さて、次に哺乳類の睡眠について見てみよう。彼らの睡眠は、基本的にどの種も共通した特徴を示す。ただし、一日の総睡眠量や、逆説睡眠をふくむ各睡眠段階の構成比に関しては、種によって大きな違いがある。
哺乳類に関しては、これまで150以上の種について科学的な観察が行なわれ、各睡眠段階の持続時間についても詳細なデータが蓄積されている。また、動物の体サイズ、出生児の脳重、妊娠期間といった特徴に注目し、それらと睡眠との関連についても研究が進んでいる。また、逆説睡眠や、徐波睡眠〔動物におけるノンレム睡眠〕に関して、さまざまな要因がからんでいることが明らかとなりつつある。まず、総睡眠量に関しては、動物の体サイズとの関連が指摘されている。すなわち、体の大きい動物ほど、眠る時間が短いのである。近年、動物の睡眠についてすばらしい研究を行なっているイレーネ・トプラー(チューリッヒ大学)によれば、ゾウは一晩に3〜6時間しか眠らない。しかも、そのうち2時間は立ったまま眠っているのだという。ゾウだけではなく、大型哺乳類の多くは立ったまま眠る時間が長い。そして、逆説睡眠が訪れてからようやく横たわって眠ることになる。
では、大型獣の睡眠はなぜ短いのか? その理由の1つとして、一日に食べる餌の量が考えられる。体の大きい動物は、生きていくために当然多2:の餌を摂取しなければならない。とくに草食獣の場合、餌の単位重量あたりのカロリーが低いので、かなりの量を食べる必要がある。その結果、餌の探索に費やす時間も長くなり、おのずと睡眠時間が削られてしまう。ただし、体サイズが異なれば、体重あたりの代謝量が異なることに注意しなければならない。たとえば、体重が10倍になっても、代謝量〔エネルギー消費量〕がそのまま10倍になるわけではない。体が大きくなれば、体重あたりの代謝量は、相対的に低くおさえこまれるのが普通である。したがって、餌の探索といった行動学的な観点ではなく、体重あたりの代謝の面から睡眠を説明することができるかもしれない。
さて、哺乳類の逆説睡眠については、次のように考えられている。動物は、「食う/食われる」という食物連鎖の中で生きている。つまり、たえず捕食の危険にさらされて生きているわけだが、その危険度に応じて、逆説睡眠の量も変化するのではないか。つまり、天敵の多い動物ほど、基本的に逆説睡眠の継続時間は短くなると考えられる。逆説睡眠が「無防備」な状態だというのは、外からの刺激に対して反応がにぶくなるからである。環境にすばやく反応できなければ、天敵に襲われる可能性も高くなる。ただし、睡眠時の個体がいちぱん危険な状態にあるのかといえば、そうではない。もっとも天敵に襲われやすいのは、未成熟の個体、体の弱った個体、年老いた個体である。興味深いことに、逆説睡眠は、出生時の成熟度ともかかわってくる。たとえば、モルモットやヒツジのように、かなり成熟した状態で生まれてくる動物の場合、生まれたばかりの個体であっても、逆説睡眠の量はさほど多くなく、成獣とさほど変わらない。一方、ネズミ類、ネコ類、人間など、未成熟な状態で生まれてくる動物の場合、出生直後の逆説睡眠の割合はかなり高いレヴェルにある。たとえば、生後10日までのネコの睡眠を調べると、総睡眠量に対する逆説睡眠の割合は90パーセントにもおよぶという。この事実にも
とづき、逆説睡眠は胎児期からもちこされた睡眠ではないかと考える研究者もいる。
一般的にいって、動物の睡眠活動は、睡眠を除くさまざまな行動や生活様式と密接な関係を示す。たとえば、捕食関係という視点からクマとアンテロープ〔偶蹄目の一種。おもにアフリカに生息する〕をくらべてみよう。クマは基本的に捕食者であり、アンテロープは天敵による捕食の危険にさらされることの多い動物である。クマは、捕食関係という点からすると、自然界では最上位に位置する動物である。その「生活・成長のテンポ」は非常にゆったりとしており、アンテロープとは対照的である。
クマの子どもの成長は、アンテロープにくらべるとずっと遅い。生まれた子どもが自分の力で立ち上がり、母親のそばを離れるようになるのは、生後ずいぶん時間が経ってからのことだ。出産にも準備が必要で、母親は生まれてくる子どものために、きちんとした寝ぐらを準備してやらなければならない。また、成獣の場合も、その摂食行動は比較的のんびりしている。交尾行動が数時間にわたって続くこともある。まさにクマが見せる長くて深い睡眠は、彼らの生活や行動をそのまま反映しているかのように思われる。
一方、アンテロープは、たえず捕食の危険にさらされており、かすかな物音でも敏感に反応するような生活を送っている。アンテロープの出産はごく短時間で終了する。あらかじめ出産のための準備が念入りに行なわれることもなく、地面の上に直接産み落とされるにすぎない。生まれたばかりの子どもはすぐに立ち上がり、あたりを駆け回るようになる。また、アンテロープの摂食行動は非常にすばやく、交尾行動も数秒で終わる。こうした生活を送るアンテロープの睡眠は比較的短く、細切れの状態にある。睡眠中であっても彼らはすぐに目ざめ、まとまった睡眠といっても数分程度で終わったりする。
逆説睡眠をふくむその睡眠構造が、クマやアンテロープの生活様式を反映しているかどうか?この点を確認するためには、今後、脳波測定などの実験が必要になるだろう。
以上のように、動物たちは、それぞれ独自の生活様式をもち、さまざまな生活環境の中で暮らしている。
そうした環境に合わせて、「活動n休息リズム」も変化をとげたと考えられるわけだが、その代表例の1つが「冬眠」だ。冬眠は、極地に住む動物に多く見られる現象である。長い冬が訪れると、彼らは穴を掘って身を隠し、休眠状態に入る。長年、冬眠は睡眠の一形態と考えられていたが、現在では、冬眠は睡眠とはまったく別個の現象であることが判明している。すなわち、冬眠は、エネルギー消費を最小限におさえるための生体現象であり、生命維持に関するあらゆる活動を極端なかたちで縮小する〔たとえば、体温や呼吸数・心拍数を大幅に下げる〕。冬になって餌が乏しくなり、採餌行動がむずかしい時期には、生体の活動をおさえることは大きな適応的意味がある。ただし、冬眠と睡眠が別個の現象だとはいえ、両者は密接な関係をもっている。なぜなら、冬眠はまず通常の睡眠状態から始まるからである。

半分だけ眠る脳

動物の睡眠に逆説睡眠がそなわったのはいつ頃のことだろうか? 動物学的な研究から判断すると、それは今からおよそ一億8000年前のことではないかと考えられている。というのも、その頃からずっと同じ生活を続け、「生きた化石」とさえいわれるオポッサムの睡眠には、逆説睡眠が観察されるからである(とくに北米のオポッサムがよく研究されている)。
一方、逆説睡眠の観察されない哺乳類が、今日2つのグループで知られている。すなわち、イルカ類とハリモグラ類である。イルカ類は高度な知能をもつとみなされている動物であり、ハリモグラ類は「産卵する哺乳類」として知られている。彼らには、他の哺乳類に観察されるようなかたちでの逆説睡眠は存在しない。
卵生の哺乳類は現在3種しか知られておらず、ハリモグラの産卵習性は、戻虫類の祖先から受け継いだ古い進化形質の名残と考えられる。ハリモグラの一日の睡眠総量はこ一時間である。その睡眠は非常におだやかで、周波数の低い脳波を特徴とする(近年の研究成果によれば、ハリモグラにも逆説睡眠はあるという。
しかし、この報告に関しては反論も提出されており、事実として確認されたわけではない)。
一方、イルカ類には、逆説睡眠が欠けているという以外に、もう一点、じつに風変わりな特徴がある。それは、眠るときの脳の状態である。
今日、海生哺乳類の睡眠について報告されている研究論文は、そのほとんどすべてが、レフ・ムハメトフ教授らによるものである。ムハメトフ教授らは、モスクワで実験を進め、長い試行錯誤の結果、さまざまな技術上の問題を克服し、眠っているイルカの脳波を記録することに成功した。その結果、驚くべきことに、イルカの脳は左半球と右半球が交互に眠るという事実が判明した。つまり、脳の半分が眠っているのに、残りの半分は完全に覚醒状態にあるというわけだ。
イルカ類の睡眠脳波を観察すると、波形自体は陸生哺乳類と変わるところはない。すなわち、振幅が大きく、ゆっくりした波(高振幅徐波)である。ただし、この睡眠波形が脳の一方の半球にしか現れない点が、
他の哺乳類とは異なっている。つまり、左右どちらかの脳半球が睡眠状態にあるとき、もう一方の半球には低振幅速波が現れる。要するに、眠るといっても、脳の半分は目ざめていることになる。睡眠時、左右それぞれの脳半球はI〜3時間おきに役割を交代する。すなわち、両半球が同時に睡眠状態におちいることはなく、どちらか一方の脳半球だけが睡眠につく。たとえば、飼育下で睡眠中のイルカを観察すると、プールの中を輪を描きながら回遊しているようすを確認することができる。その姿は、イルカの意志とは無関係な、自動的な運動の結果とも見える。
ところで、動物の睡眠を何らかの方法でさまたげると、その不足分を埋め合わせようとして後で「はねかえり現象」が生じるが、イルカの場合、この現象は左右の脳半球にそれぞれ独立して観察される。つまり、左半球の睡眠をさまたげれば、埋め合わせは左半球にのみ起こる。右半球の睡眠パターンに影響を与えることはない。
すでに述べたように、鳥類の睡眠はその生活にふさわしいかたちで進化してきた。ここで紹介したイルカのユニークな睡眠も、呼吸維持ということを考えると、じつにみごとな適応の結果だといえる。つまり、イルカが左右の脳を交互に眠らせるのは、呼吸をコントロールするためなのである。
哺乳類の呼吸運動には随意運動と不随意運動があって、それぞれ、脳幹に位置する別個の中枢によって支配されている。つまり、これら2種類の中枢は、呼吸運動をつうじて、体内に酸素を供給し、体外へ二酸化炭素を排出する役割を担っている。随意的な呼吸運動をつかさどる中枢が機能するのは、基本的に動物が起きているあいだだけであり、この中枢の働きによって、私たちは息をとめたり、深呼吸をしたりすることができる。とくに人間の場合、言葉を話すときは、発声のための運動と呼吸のための運動をうまくリンクさせる必要があるわけだが、これも随意的な呼吸運動によって実現される。
さて、この随意呼吸運動をつかさどる中枢は、生体が睡眠状態に入ると機能を停止し、かわりに不随意呼吸運動をコントロールする中枢が全面的に活躍し始める。この中枢は、血中の酸素濃度や2酸化炭素濃度に応じて、呼吸の深さやリズムを変化させる。そのしくみは、一種のフィードバック・システムであり、飛行機の自動操縦運転に比することもできるだろう。つまり、ある特殊なセンサーが体内の血中ガス濃度をたえず見張り、その変化を中枢に伝える。そして中枢は、届いた情報に応じて呼吸数を調節するのである。つまり、すべてが自動的に行なわれ、そこに「意志的な」コントロールは関与しない。睡眠時に不随意呼吸をつかさどる中枢がうまく機能しなくなると、ある種の睡眠障害を引き起こす。人間においても、この種の睡眠障害はかなり頻繁に見られる疾患であると同時に、もっとも重い症状を引き起こす疾患として知られている。
要するに、人間をふくむ哺乳類は、2種類の呼吸中枢をもつ。ところが、イルカ類には、不随意呼吸運動をつかさどる中枢がない。となると、水中で生活し、肺呼吸のために水面に浮上するイルカ類は、随意呼吸運動にかかわる中枢をつねに覚醒状態に保たねばならない。したがって、イルカにとって左右両方の脳半球
を同時に深く眠らせてしまうわけにはいかないのである。ムハメトフらがイルカに睡眠薬を与えてみたところ、両方の脳半球が同時に睡眠状態に入り、その結果、呼吸困難におちいったという。
イルカに逆説睡眠がない事実も、泳ぎながら眠るというその生態と関連しているのかもしれない。つまり、すでに述べたとおり、イルカは眠っているあいだも、たえず泳ぎ続ける。だが逆説睡眠は筋肉を弛緩させてしまう睡眠なので、もしイルカが逆説睡眠におちいると、当然、泳ぎながら眠ることが不可能になってしまうはずだ。
また、イルカ以外にも、左右の脳を交互に眠らせる海生哺乳類が発見されている。たとえば、アザラシ類の一部の種は、イルカと同様の睡眠技術をもっているらしい〔ただし、イルカと違ってアザラシには逆説睡眠が確認されている。これは、岩場で寝そべることができるためとも考えられる〕。

睡眠ながら歩くネコ

すでに見たとおり、レム睡眠は人間だけの特徴ではない。同様の現象は、ほとんどすべての哺乳類、そして大半の鳥類において、はっきりと認められる。ただし、動物における「レム睡眠」を本章では「逆説睡眠」と呼んで区別している。哺乳類の中で例外的なのは、イルカとハリモグラである。彼らの睡眠には、逆説睡眠が存在しない。存在するにしても、まったくべつのかたちで現れると考えられている。
一方、逆説睡眠が観察されるだけでなく、イヌやネコのように、人間のレム睡眠よりもさらに明瞭なかたちで逆説睡眠が認められる種類もある。たとえば、イヌの場合、脳波計などの記録装置にたよらなくても逆説睡眠を見分けることができる。というのも、逆説睡眠時のイヌは、レム睡眠時の人間にくらべ、体がずっ
と活発に動くからである。すなわち、足や耳やヒゲを動かしたり、しっぽを振ったりするし、ときには吠えたり、鼻を鳴らしたりする。その姿を見れば、イヌが睡眠ながら何かを体験していることは容易にうなずけるだろう。
では、イヌが見せるこの活発な体の動きは、彼らが夢を見ている証拠なのだろうか? この疑問に対して、決定的な答えはまだ見つかっていない。しかし、動物が逆説睡眠時に体験する世界と、人間が夢の中で体験する世界の類似点を間接的に示唆する報告は存在する。
動物も夢を見るか?この問題に初めて科学的・客観的なアプローチを試みた研究者たちは、非常にユニークで独創的な実験を計画した。?にもかかわらず、その実験結果は、ごく目立たないかたちで報告されたにすぎない。その理由は不明である。
彼らは一頭のサルを訓練して、逆説睡眠時の「夢体験」について実験を行なった。まず、サルから見えるような場所にスクリーンを設置し、そこに映画を繰り返し上映する。そして、映画が始まるたぴにサルがそばにあるハンドルを引っ張るよう、何度も訓練した。サルがこの手続きをマスターしたら、今度は睡眠記録をとる。つまり、脳波などを測定して、「夢」が現れるタイミングを把握するのである。実験の結果、逆説睡眠に入ったサルは、反射的にハンドルを引こうとすることが明らかとなった。要するにこのサルは、眠りながらも、映画を見るのと同じような体験をしているのだろうと推論される。
だが、すでに述べたとおり、この実験はごく短い論文として発表されただけであった。その理由は私にはわからない。おそらく、その後も実験を続けたが、当初の発見を裏づけるようなデータが得られなかったか、あるいは、実験用の個体に何か問題が生じて、実験の続行を断念しなければならなくなったのではないだろうか。実際、この種の実験を成功させるためには、動物に対して何カ月も訓練を続ける必要がある。その手間を考えれば、最終的に研究を中断せざるをえない状況におちいることも、十分考えられる。
動物も「夢」を見るのではないかという仮説を裏づける証拠はほかにもある。その1つが、ミシェル・ジュヴェによるネコを使った実験である。ネコは一日のうち、かなりの時間を眠って過ごす。しかも、逆説睡眠の占める割合が非常に高い。まさに、ネコは「睡眠の王者」なのである。
ふだんネコの脳は、体を動かすために脊髄を介して末梢へと指令を発している。ところが逆説睡眠に入ると、脳が脊髄に特殊な命令を発する。その結果、末梢へと伝わるべき指令が途中で抑制されてしまう。そのせいで体の筋肉はぐったりしてしまうのだが、ジュヴェは、脳と脊髄をつなぐこの特定の神経経路を、じつ
に高度な外科手術を駆使して、切断することに成功した。手術の結果、逆説睡眠に入っても、体の筋肉から緊張が失われることはなくなった。しかも、それに付随して、驚くべき現象が観察された。つまり、手術を受けたネコは、逆説睡眠に入ると立ち上がって、非常に複雑な行動パターンを示したのである。とはいえ、
べつに周囲の状況に反応したわけではない。ジュヴェは何匹ものネコに対して、同じ実験を繰り返した。その結果、手術をほどこしたネコは、逆説睡眠に入ると、かならず一定のパターンの行動を示すことが判明した。すなわち、攻撃・防御・探索といった行動パターンが繰り返し観察されたのである。たとえば、立ち上がって背中を丸め、威嚇するように低いうなり声をあげたりするのだが、背中の毛を逆立てたその姿は、あたかも、すぐそばに迫った敵に向かって飛びかかろうとしているかのように見える! そうかと思うと、その数秒後には、おびえた表情を浮かべて、突然あとずさりを始める。今度は、見えない敵に威嚇されているかのようである。またときには、急に立ち上がり、あたりをかぎまわるような動きを見せる。まるで、初めて訪れた場所を探索しているかのようだ。
こうした状態にあるネコは、外界からの刺激に反応しない。フラッシュ光をあてても反応がなかったし、すぐそばに餌を置いてやっても興味を示すようすはなかった。つまり、逆説睡眠時のネコの行動は、完全に「自動的な」行動だといえる。こうしたネコの行動に関して、人間の夢遊症との類似点を指摘するものもい
る。夢遊症は、おもに幼児や思春期までの子どもに多く見られる現象で、やはり周囲の刺激に反応を示さず、行動は定型的で融通がきかない。ただし、人間の夢遊症が起こるのはレム睡眠(逆説睡眠)時ではなく、眠りが深くなる第3段階や第4段階のときである。したがって、人間の夢遊症の場合、筋肉を弛緩させるメカニズムが抑制されているために体が動いてしまう、という仮説は受け入れにくい。
ジュヴェの実験結果から、逆説睡眠時のネコの脳について一つの仮説を立てることができる。すなわち、逆説睡眠に入ると、大脳皮質の運動野が強い興奮状態に入るのではないかという考え方である。この仮説は、のちにペンシルヴェニア大学のエイドリアン・モリソンの研究室で実証された。
大脳皮質の運動野が自発的な興奮状態を開始するという観点から見ると、逆説睡眠における筋弛緩は、一種の生体防御メカニズムとも考えられる。もし筋肉を弛緩させるメカニズムがなかったとすると、眠っている体は、脳が自発的に発する行動指令にしたがわざるをえなくなってしまうだろう。たとえば、先に述べたように、人間の夢遊症はレム睡眠時に起こるわけではないが、その夢遊症の危険性を考えれば、逆説睡眠時の筋弛緩が生体防御の役割を果たしていることがわかる。たとえば、夢遊症の子どもは睡眠ながら動きまわるので、物にぶつかったり、つまづいたり、転んだりしてしまう。そのため、怪我をする危険も大きい。逆説睡眠の際に筋肉が弛緩しなければ、やはり同じ危険に直面するだろう。最近、ジュヴェの観察したネコとよく似た行動を示す症例が、人間の世界でも報告されている。その奇妙な現象を初めて報告したのは、ミネソタ大学のカルロス・シェンクとマーク・マホウオルドを中心とする研究者たちである。シェンクらの研究室には、さまざまな睡眠障害を訴える患者がやってくる。その中に、奇妙な症状を示す患者が何人かいた。そのほとんどは男性だったが、彼らの悩みは、「眠ったまま」あばれ出してしまうという、不思議な発作であった。この奇妙な行動を実際に目撃することになるのは、そばで眠るパートナーたちである。その目軍談によると、となりで寝ていたはずの人間が突然起きあがり、あたりを歩きまわっては、手あたりしだいに物をなぐったり、こわしたりするのだという。
シェンクはこの「睡眠時における発作的破壊行動」をヴィデオテープに録画し、睡眠学会で発表した。ヴィデオテープにおさめられた患者のあばれ方はすさまじく、その激しさに誰もが目を見張った。だいたい、何かに反応してあばれているのではなく、一人で勝手に動きまわっているのである。
この激しい発作に襲われたときの患者の睡眠を調べてみると、まさにそのタイミングはレム睡眠に一致していた。つまり、レム睡眠期に入ると、彼らはふと目ざめたような素振りを見せ、その直後、突然あばれ出すのである。レム睡眠時になぜこうした異常な現象が生じるのか、その理由は明らかではない。しかし、脳に何らかの病変が疑われるケースも報告されている。
さて、ではいったいなぜ、逆説睡眠(=レム睡眠)期に入ると、大脳皮質の運動野に激しい興奮が生じるのであろうか? ジュヴェが報告したように、脊髄にある特定の神経回路を切断したネコは、逆説睡眠時に一定の行動パターンを示す。このことを手がかりに、ジュヴェは次のように推論した。すなわち、生物に生得的にそなわった「本能的」行動を、神経回路上で「模擬演習」するIそれが、逆説睡眠の役割の1つなのではないか、というわけだ。
生物に生得的にそなわった行動は「本能」とも呼ばれるわけだが、その行動パターンは個体が生まれる前
から神経システムに書きこまれており、「学習」によって身につける必要はない。つまり、生物には攻撃・防御・交尾など、さまざまな基本的行動パターンが生まれつきそなわっており、そうした行動は、誰に教えてもらうでもなく、生まれてすぐ実行にうつすことができる。人間の子どもが生まれて初めて笑顔を見せるのも、一種の「本能的な」行動の現れと考えられる。実際、「生まれて初めての笑顔」はレム睡眠の最中に現れるという。何か夢を見ているような笑顔?その正真正銘の笑顔は「学習」や「訓練」によって身につけたものではない。
そしてジュヴェによれば、逆説睡眠に脳の運動野が興奮するのは、こうした本能的な行動にかかわる神経回路をチェックするためだという。ただし、脳幹における抑制メカニズムの働きにより、運動野の興奮がそのまま筋肉へ指令として伝わることはない。末梢につながる連絡路が遮断されたかたちで、中枢側の神経回路だけが興奮するのである。
このジュヴェの仮説は、コンピューターにおけるプログラムの「試運転」になぞらえることもできるだろう。つまり、本格的な使用に先立って、プログラムを試験的に走らせるのである。こうしたテストを繰り返すことによって、プログラマーは予期せぬバグを見つけ出し、隠れていた不具合を調整することができる。
生物にそなわる本能的な行動が個体の生存のために体内に書きこまれたプログラムだとすれば、その重要性から考えても、関連する神経回路のメンテナンスをはかることが必要になってくる。つまり、レム睡眠は、神経回路チェックのための役割を果たしているのではないか?ジュヴェはそう推論した。
レム睡眠の役割については、近年さまざまな仮説が提出されている。ジュヴェの仮説もその一つにすぎない。
 

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