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睡眠と夢.3

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睡眠と夢.3

睡眠中に夢が私たちに語るもの

インスピレーションとしての夢
夢について語るとき、どうしても避けて通ることのできない問題がある。それは、夢と現実の関係である。
たとえば、夢が正夢になったという体験談は、講演会などで、かならずといっていいほど聞かされる話題の一つである。「海外旅行に行った兄が交通事故に遭い、順に怪我をするという夢を見ました。その2週間後、まったく同じことが現実に起こったのです」といった話を聞かされることは多い。たいてい彼らは、夢と現実がいかに一致していたかについて、こと細かに説明してくれる。たとえば、今の事故の夢なら、
「夢の中に出てきた車の色と、実際に事故に遭ったときの車の色が同じでした」などという説明がさらに続くわけだ。
あるいは、次のような体験談を聞かされることもある。「仕事上の悩みをずっとかかえていた頃のことです。ある日、夢の中ですぱらしい解決策を思いつきました」。この種の夢を見た人は、やはり話の信憑性を高めるために、細かい部分まで説明をしてくれる。
授業中に学生から似たような話を聞くこともある。つまり、見た夢がそのまま現実になったり、日常の悩みを解決するヒントが夢に現れたりしたというのである。その内容は、死、病気、金儲け、科学上の発見、旅行、結婚、離婚など多岐にわたっている。
そういう意味で、現代文明も、バビロニア、アッシリア、エジプト、ギリシャなどの古代文明も、さほど変わるところはない。つまり、積極的に夢で将来を占ったり、夢を日々の行動の指針としたりする古代人の態度は、私たち現代人の心にも生きているといえる。実際、古代エジプト人は膨大な数の夢を記録・分類した。その集大成が、現在大英博物館に保存されている「チェスター・ビーティー・パピルス」である。このパピルス文書は、エジプトのテーベで発見されたもので、紀元前1350年頃に書かれたと考えられている。
この記録を読むと、すでに「よい夢」と「悪い夢」が区分されていたことがわかる。また、夢の中でのできごとを象徴としてとらえ、それをどう解釈するかということについても、パピルスの上に細かな記録が残されている。
実際、夢は現実的な問題解決の糸口となりうる。たとえば、夢が科学的な発見につながることもあるし、芸術家にとって創作上のヒントとなることもある。この点に関して、いくつか有名なエピソードを紹介しよう。
もっとも有名なのは、ドイツの化学者アウグスト・ケクレによる「ベンゼン環」発見のエピソードである。
19世紀、ベンゼンの分子構造を解明することは、有機化学者にとって難問の一つであった。有機化合物における分子構造は、各原子の物理化学的な特性によって決まっていく。その際、原子は開かれた鎖として結びつくと考えられていた。だがケクレは、ベンゼンを構成する原子は、閉じた鎖として「環状」に結びついていることを発見した。ケクレによれば、彼はそのアイデアを夢の中で得たのだという。1890年のある学会で、彼は発見にまつわるエピソードを次のように語った(「科学の歴史」第19巻、H・E・グルーパーの記述による)。
「……ふたたび私の目の前で、数々の原子が渦を巻き始めました・・・・。どれも似たようなかたちをした無数のイメージが渦巻く中、奇妙なかたちをした大きな物体、そして長い鎖が現れました。見ると、ヘビのように体をよじらせています。そのとき、突然一匹のヘビが自分の尾を自分でくわえ、輪のようなかたちになって、ぐるぐると回転し始めたのです。私は雷に打たれたような思いで目ざめました」。そしてケクレは、次のような言葉で講演をしめくくっている。「みなさん、夢を見ましょう。夢は真理に通じる道なのです」
夢は科学上の発見をもたらすだけではない。文学や音楽における創作上のインスピレーションともなりうる。たとえば、ロバート・ルイス・スティーヴンソンは、夢を手がかりに数々の作品を書いた。子どもの頃、彼は恐怖に満ちた夢ばかり見ていたが、大人になるにつれて夢の内容も変化し、旅行の夢や美しい景色の夢など、楽しい夢を見るようになった。そしてついには、夢の中で一編のストーリーを創り上げるまでにいたったのである。ときには、前の晩に見た夢の続きを見ることもあった。実際、「ジキル博士とハイド氏』の基本的なプロットは、彼の夢の中で完成したのである。スティーヴンソンは次のように語っている。
「かねてより私は、人間の心に潜む善悪の2面性について書こうと考えていました。人間にとって、このテーマはときに重大な『道徳的問題」となります。(中略)何かプロットを考えなくてはと思い、まる2日にわたって苦しんでいたときのことです。2日目の夜、夢の中でとうとうプロットを思いつきました。すなわち、犯罪者として当局に追われるハイド氏が、追手の目の前で薬を飲み、ジキル博士に変身するというプロットです。夢から覚めた私は、明晰な意識のもとでこのプロットを発展させ、一編の物語を完成させたのです」
また、一ハ世紀に活躍したヴァイオリン奏者兼作曲者ジュゼツペ・タルティーニに関して、次のようなエピソードが残されている。ある晩のこと、彼は夢の中で悪魔と盟約を結び、悪魔に対して命令する権利を得た。タルティーニは悪魔の楽才をためそうと、ヴァイオリンを渡して演奏を命ずる。悪魔は超絶的な技巧による演奏を開始する……。タルティーニはその演奏に興奮し、目ざめるやいなや、ヴァイオリンを手に取り、悪魔の演奏を再現しようとこころみた。結局タルティーニは、夢の中で聞いた超絶的な演奏を完全に復元することはできなかったが、そこから得た霊感をもとに作品を完成した。この作品は、タルティーニの全作品中、もっともよく知られる曲となった。タイトルはもちろん、「悪魔のトリル」である。
だが、以上のような話をそのまま額面どおり受け取ってよいものだろうか。こうした他人のエピソードを後々まで好んで語り継ぐ人というのは、夢に積極的な興味をもち、夢の力を信ずる人々であろう。したがって、話が人から人へと語り継がれるにつれ、引用の正確さは薄れていく。つまり、本当に夢に現れたできごとだったのか、それとも、睡眠にともなって生じる何かほかの心的現象だったのか、という点が曖昧になり、話の信憑性を見きわめるのは容易ではない。
たとえば、今紹介したエピソードに関しても、少なくともケクレの夢とスティーヴンソンの夢は、レム睡眠時に生じた夢ではなく、人眠時の空想が生んだ夢と考えられる。たとえば、ケクレがベンゼン環の「夢」を見たのは、少しだけ眠ろうと思って、机の上に頭をのせたときのことである。ナルコレプシー患者ならば、入眠とレム睡眠が同時に始まるのだが、ケクレがナルコレプシーに苦しんでいたという証拠がない以上、「ベンゼン環発見の啓示」がレム睡眠時のものだと考える理由もない。それどころか、ケクレのベンゼン環のアイデアは、フランスの研究者のアイデアを盗んだのだという説もある。これが本当だとすれば、夢の力を信じる人は失望せざるをえないであろう。また、スティーヴンソンのエピソードもいささか問題である。というのは、彼は長年慢性的な不眠症に悩まされており、しばしば、眠りたくても眠れない状態、いわば意識が豚脂とした状態にあったという。こうした状態の中で、スティーヴンソンはさまざまな幻覚を体験したらしい。実際、彼は自分の幻覚体験を詳細に書き残している。したがって、ジキル博士とハイド氏がスティーヴンソンの目の前に姿を現したのも、夢の中ではなく、眠れない夜を悶々と過ごしているときのことだったのではないか。
とはいえ、すぐ後で紹介するR氏のように、物語のような夢を頻繁に見る人がいないわけではない。そうした特殊な人々の夢は、まさにプロットの宝庫であり、一貫した起承転結を備えている。
また、夢の中で科学上の新発見をするのは簡単なことではなさそうだが、夢の中のできごとがヒントとなって、日常生活の悩みに解決がもたらされることはありうる。科学や芸術においても、「手がかりを得る」というレヴェルなら、夢は何らかの参考になるだろう。実際、夢は私たちの日常の関心事を素材としている。夢の発生メカニズムは、その日常の素材を加工し、新しい姿に変形させて私たちに見せてくれる。そういう意味で、私たちは夢から新鮮な発想を得ることもあるし、場合によっては、次に紹介するように、現実問題の解決策ともなりうる。
それは、ある大きな工場の1セクションで課長をつとめていた男の話である。彼は、自分のセクションに配属された一人の部下の職業適性について悩んでいた。「今の仕事は彼には向いていないのではないか」
彼はそう考え、ずっと頭を悩ませていた。この部下にどう対処すべきだろうか? 解雇すべきだろうか? 他の課に異動させるべきだろうか? もし異動させるにしても、どの課が適任だろうか? 考えるべき問題はほかにもあって、彼はなかなか決断を下すことができず、よく眠れない日々が続いた。ところがある日、彼は夢を見た。そして、朝目ざめた彼は、部下の処遇について解決策を見いだしたのである。彼の見た夢というのは、仮装パーティーの夢であった。参加者は彼が管理する課の全員で、会場には問題の部下の姿も見えた。しかも、パーティーでいちばん注目を集めたのが、その部下の仮装姿だったのである。その格好は、郵便局員の制服を思わせるようなものであった。この夢から目ざめた彼は、問題の部下にとって工場内の郵便物係が、まさに適任の職種なのではないかということに思い至ったのである!
このエピソードにおいて、夢が現実問題を解く手がかりとなったことは疑いをいれない。ただし、夢そのものは、ごく普通のありふれた内容である。私たちは夢を見てもたいてい中身を忘れてしまうものだが、もし見た夢がすべて記憶に残るとすると、その中に日常生活が再3にわたって現れ、そこに現実問題を解くヒントがふんだんに見いだされることに驚くだろう。ただし、夢にヒントが現れるまでじっと待つというのは良策ではない。というのも、夢で解決策に出合うチャンスは、実際には非常に少ないからである。
では、もし夢の内容やストーリーを自在にコントロールすることが可能であれば、夢の力を積極的に利用し、現実問題への回答を夢から引き出すこともできるのだろうか? 世界的に見ると、この種の信念をもつ文化は少なくない。たとえば、人類学者としてすぐれた研究を行なったカルロス・カスタネダは、著書「イクストランヘの道」の中で、次のようなエピソードを紹介している。カスタネダは、ドン・ホァンと名のる年老いたヤーキ・インディアン〔メキシコ北西部の先住民〕と出会う。呪術師であるドン・ホァンは、「夢見の技術」の大切さを戦士に語って聞かせる。「戦士とは力を求める人間だ。そして、力を身につけようとするの
なら「夢見」は重要な技術の一つだ。(中略)ただし、戦士にとって「夢見」の体験は、けっして単なる
「夢」などではない。それはリアルな体験なのだ」。また、「夢見が戦士にとってリアルだというのは、夢の中での行動が自分の思いどおりになるということだ。受け入れることも拒むことも本人の意志であり、
その意志が「力」へとつながる。数々の選択肢の中から自分が思いどおりのものを選択し、加工し、利用する。それが遥日通の夢〃とは違うところだ」。そこで、カスタネダはドン・ホァンに問う「夢見の体験がリアルだというのですか?」「もちろんだとも」「今ここにこうしている私たちよりも、ですか?」「そうだ。今の私たちよりも、ずっとリアルだといっていい。夢見のもとでは、すべてが自分のコントロール下にある」。
ドン・ホァンが「夢見」の技術について語った、このいささかとらえどころのない言葉は、インディアンのあいだに伝わる、古い神話にもとづくものと考えられる。たしかに、夢の中で、自分が夢に意識的になる事態は、けっしてまれなできごとではない。場合によっては、夢のストーリーを自分の思う方向へもっていくことも可能である。
また、非常にまれなケースだが、1月に何度も「明晰夢」を体験する人々の例が文献に報告されている。
スタンフオード大学の睡眠研究所で博士号を取得したろァィーヴン・ラバージュも、明晰夢を見る能力に恵まれた幸運な人間の一人であった。なにしろ彼は、自分の体験に照らしあわせながら、被験者の明析夢を分析することができたのである。

明晰夢

ラバージュは、明晰夢について次のような事実を発見した。明晰夢はレム睡眠時に起こる現象であり、普通、非常に活発なアルファ波と細かくて素早い眼球運動が観察される。これは意識レヴェルがかなり高い状態にあることを示している。明晰夢という状態は、夢の中のできごとに驚いたり、脅えたりしたとき、「これは夢なんだ」と自覚することによって、恐怖を軽減しようとするために起こるケースが多い〔つまり明晰夢とは、夢そのものが明晰なのではなく、夢を自覚するほど明晰な意識がともなう夢をさす〕。
明晰夢に関心をよせる研究者は多かったが、ラバージュが論文を発表すると、内容を問題視する人が少なくなかった。すなわち、被験者の意識レヴェルが高いということは、結局、夢を見ているのではなくて、半分目ざめているのではないかという批判であった。そこでラバージュらは、被験者が本当に夢を見ているのだということを証明しようとした。彼らは被験者に対し、夢が始まったら合図をして教えてほしいと伝えてから、睡眠実験を行なった。その結果、明晰夢をよく見る被験者は、レム睡眠が観察されると同時にまばたきで合図を送ってきた。つまり、被験者はたしかにレム睡眠の状態で夢を見ているのである。まばたきではなく、もっと複雑な合図でもよい。たとえば、夢が始まったら、指を一本立てて、目の前で左右に動かしてください、と被験者にあらかじめ頼んでおく。すると、レム睡眠に入るとともに、ゆっくりとした眼球運動が観察される。もちろん眼球運動は、眼筋に発生する電位変化を計測することで確認することができる。観察された眼球運動は、起きている被験者が実際に指を目の前で左右に動かし、それを目で追ったときの動きと区別することができない。要するに、眠っている被験者が夢と同時に体験しているもう一つの「現実」は、起きているときに体験する「現実」と区別することができないといえる。もちろん、眠っている被験者が実際に指を動かしているわけではない。にもかかわらず、夢の中の被験者は、自分の指の動きを「意識している」のである。
すでに述べたように、夢を憶えておこうとするのであれば、動機づけと自己暗示が重要になるわけだが、明晰夢についても同じことがいえる。すなわち、これまでの調査によると、明晰夢を見ようという強い「意志」さえあれば、実際に明晰夢を見るようになるという。
では、明晰夢を見たときに、その夢を自分の都合のよいように変えてしまうことはできるだろうか? つまり、夢に手を加え、日常の悩みを解決する一手段として活用することができるだろうか? この疑問に対し、夢を見ながら夢を変えることはできると主張する人々がいる。たとえば、ロザリンド・カートライトもその一人だ。彼女は非常に精力的な夢の研究者であり、自分の精神療法の中に夢のコントロール法を取り入れている。カートライトは、人間は眠っているときでも悪い夢を見分けることができると考える。そして、悪い夢が現れたときには、自分の意志でその夢を中断させることができると主張する。しかも彼女は、夢のよしあしを見分ける能力が身についてさえいれば、悪い夢を中断させるだけでなく、ストーリーをよい方向にもっていくことができるというのである。

R氏の奇妙な夢

自分の夢を長年にわたって記録し続ける?夢に関する文献をひもとくと、有名な「夢の記録者」の事例が豊富に紹介されている。すでに述べたように、ミシェル・ジュヴェも、長年自分の夢を記録し続けている。
また、19世紀、東洋の言語を研究するフランスの大学教授、エルヴェ・ドゥ・サン・ドゥニ侯爵も、夢の記録者であった。彼は13歳のときから夢を記録し続けた。その記録は、のちにフロイトから高い評価を受けることとなる。明晰夢を見る能力に長けていた侯爵は、自分が夢を見ていることをはっきり意識しつつ、夢を自在にコントロールすることができた。しかも、夢が終わったら自分の意志で目を覚まし、すぐに内容を記録することもできたのである。
近年、私たちは、非常に奇妙な夢を見る人物を研究所に招き、睡眠実験を行なった。彼の名は、ここではR氏とする。先に紹介した侯爵と同様、R氏もまた、夢が終わった時点で目を覚まし、その内容を正確に記録するという特異な才能をもつ人物である。彼が見る夢は、ときに驚くべき風変わりなかたちで現れる。すなわち、ストーリーにR氏本人が参加せず、しかも、R氏の知っている人間さえ一人として登場しないような夢である。その夢は完成した一編の物語といってよく、内容に無理がない上、たいてい全体が一つのテーマで統一されている。だが、夢を見ているR氏本人がストーリーに加わることはなく、夢から喜怒哀楽を感じることもない。彼はただただ超然と夢を眺める第3者にすぎないのだ。こうしてR氏はさまざまなストーリーの夢を見る。中には非常に独創的でユーモアにあふれた夢もある。たとえば、1981年9月20日、
R氏は次のような夢を見た。記録をそのまま引用しよう。そのエスキモー部族の社会では、村のお荷物となってしまった老人を、遠くへ捨ててしまう習慣であった。村から追い出されるということは、老人にとっては死刑の宣告に等しい。この村の中に、追い出されるにはまだ若く、村の社会活動にも積極的に参加していた男がいた。ところが、彼には恥ずべき一つの悩みがあった?じつは寒さに弱かったのである。エスキモーに生まれたりしなければ、べつに寒さに弱くても、たいした問題ではなかったにちがいない。ところが彼は、村の共同倉庫から魚油を盗んだかどで、すでに何度か捕まっていたのである。そこで彼は、村全体に行きわたっているセントラル・ヒーティングの設定温度を最高値まで上げてほしいと願い出た。だが、村としてはそんな費用を負担することなどできず、結局この男をずっと北の雪原へと追放することにした。つまり彼に死を申しわたしたのである。これまで、村から追い出された老人は、氷山の上でただ死が訪れるのを待つことしかできなかった。だが、この男は違っていた。何とか生き延びようという執念で、村から遠ざかる方角へとどんどん歩き始めたのである。2日後、彼は探検隊の一行に出くわした。その探検隊は、犬ぞりを使って北極を目指しているのだという。エスキモーの男から身の上話を聞き、いたく感じ入った探検隊のメンバーは、男に贈り物をすることにした。それは防寒用の特製スーツで、バッテリーによる電気保温装置
がついている。これで寒さをしのいでくれというわけだ。エスキモーの男は喜んで、来た道を村へ向かって引き返した。村にたどりつく寸前、歩き疲れた彼は、雪原の中にちょうどよい大きさのくぼみを見つけ、そこに体を横たえた。ところが、もらった電気防寒スーツの威力に気づかぬまま、彼は眠りについてしまったのである。防寒スーツの熱は氷を溶かし、男は氷にあいた穴にはまって水に落ち、そこで溺死した。後日、仲間のエスキモーたちがこの現場にやってきた。彼らには、なぜこんなところに人間のかたちをした穴があいているのか、見当もつかなかった。しかも、穴の底の水は温かい。不思議に思った彼らは、いろいろと考えをめぐらしたが、結局村の長に説明を求めることにした。長の説明によると、この穴は、あの寒さに弱い男が落ちた穴なのだという。あの男は、自分の罪が原因で、ここで溺れて死んだ。そして、地獄へ堕ちたのだというのである。こんな事件があった現場に人々は今でもやってきて、穴の中から湯をくみ上げては、それでお茶を楽しむのであった。
このR氏の見た夢が、じつは夢ではなく、起きているあいだに考えた「創作」だったとしても、その独創性と内容の豊かさ自体は感嘆に値する。
ただし、彼の夢はこの例ほど長く続かないこともあるし、ほんの2〜3行の記録で終わることもある。その場合、夢が一種の「成句」あるいは「キャッチ・フレーズ」のような表現をとることが多い。たとえば、
「パリで最高級の食料品街はリヴォリ通りだ」などという報告が、夢の記録として残されている。
R氏の母語はドイツ語であり、私は彼の夢の記録を英語の翻訳で読んだ。だが、本当に夢の中でこれほど豊かなストーリーが展開されるものかどうか、初めは疑問をもたざるをえなかった。そこで、私はR氏をテクニオン睡眠研究所に招待することにした。数日間ここに宿泊してもらい、客観的な条件下でR氏の夢を調
べてみようと思ったのである。私たちはレム睡眠時のR氏を起こして、夢の記録をとった。だが、実際に実験を行なってみると、やはりR氏の夢はユニークであった。レム睡眠時に起こされたのは15回で、そのうち夢を憶えていたのが13回。その13の夢のうち、9つは「普通」の夢だった。ここで「普通」といっているのは、R氏がストーリーの主人公の役割をつとめているとか、知人がストーリー中に登場しているといった意味である。残りの4つの夢は「物語性」の強い夢であり、しかも、そのうち2つは、エスキモーの夢と同様、物語として完成した構成をもっていた。また、起きる直前に、「イスラエルの蚊よりも、アメリカの蚊にかまれる方がかゆみがひどい。なぜなら、アメリカはイスラエルより大きいからだ」と書かれた文章を「見た」という報告もあった。
だが、私たちがいちばん驚いたのは、1984年11月28日から29日にかけての実験記録である。入眠後5回目のレム睡眠時にR氏を起こしたところ、彼は夢を憶えていないという。ただし、一言だけ、「頭の片隅から離れようとしない単語」があった。それは「カーバイド」〔炭化カルシウム〕という単語である。
その夜、実験を担当していたのは、レム睡眠時の夢採取法に熟練したスタッフであった。彼はR氏からもっとくわしい内容を引き出そうとねばったが、徒労に終わった。結局、R氏が憶えていたのは「カーバイド」という単語だけだったのである。ただしR氏は、カーバイドのことを「何か臭いの強い気体ですね」とつけ加えている。たしかにカーバイドは特異な刺激臭をもつ。金属に対し酸素アセチレン溶接などを行なった後では、とくによく臭う。R氏は、これまで溶接関連の仕事についたことはない、と断言した。彼はカーバイドという気体について知ってはいたが、こんな特殊な言葉がなぜレム睡眠時に浮かんできたのか、皆目見当がつかなかった。
R氏がカーバイドの夢を見た直後、すなわちこ1月3日にインドのボパールで史上最悪の事故が発生した。
化学工場の爆発である。死者4000人以上、中毒者は約2万人を超えた。この化学工場のオーナー会社はアメリカ企業で、その名は「ユニオン・カーバイド」であった。ラジオでこの事故のニュースを耳にしたときの衝撃を、私は今でもありありと思い出す。夢と現実の奇妙な一致に、私は耳を疑った。事故の起こった工場のオーナー会社の名前と、いつも不思議で奇妙な夢を見る男の夢に現れた単語?この2つが一致する確率は、いったいどれくらいだろう? 私は事故のニュースを知って、すぐR氏に電話をかけた。R氏もすでにニュースを耳にしていた。そのとき彼はまずこういった?「単なる偶然です。私は予知現象など信じていません」。
ときに科学者は、不用意な発言を恐れて、発見した事実を公表しない場合がある。せっかくのデータを「解釈不能」という名のもとに封印してしまう。R氏の奇妙な夢もその一つであろう。もしR氏が、私の直接観察しうる被験者ではなかったとしたら、私がその夢の記録を信じるなどということもありえなかったと思う。
R氏の見たカーバイドの夢の経緯については右に紹介したとおりであり、そこに粉飾はいっさいない。私としては、R氏の夢については、何も解釈などほどこさぬのがよいと思う。私はけっして、夢が将来を予測するとか、未来を知るヒントになるなどと主張するつもりはないし、その可能性をほのめかすつもりもない。
たしかにR氏の夢とインドの事故は、非常にユニークなかたちで符合した。それを否定することはできない。
しかし、この事実をどう受けとめるのか?その解釈については、読者の方々の判断にゆだねたいと思う。帰国したR氏は、数カ月おきに奇妙な夢の記録をまとめて送ってくれている。すでに、その数は400を超えた。しかし、彼の説明によれば、奇妙な夢を見る回数は年々減っているという。しかも、夢が終わった時点ですぐさま目ざめるという離れ業も、数週間に一回程度しかできなくなった。
私は、R氏の夢体験をどう説明すれぱよいのかわからない。説明のつけられぬまま、R氏の夢体験は、文献にその名をとどめるにちがいない。これまでに記録された数々の「奇妙な夢」。R氏の夢体験は、解釈のつけられぬ現象として、あらたに「奇妙な夢」の1ページに書きこまれるだろう。
毎夜、私たちの脳の中では、かぎりなく豊かな世界が繰り広げられているーーその世界がじつに多面的で多様な性格をもつことを、R氏の夢は教えてくれているのではないだろうか。
 

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