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睡眠と夢

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睡眠と夢

夢は脳が作り出す世界

古くからの関心事
人はなぜ夢を見るのか。夢にはどのような意味があるのか?太古の昔より、夢は人間にとって強い関心事であった。
原始的な心性の支配する社会において、夢は現実の延長線上に存在し、現実から切り離されるものではなかった。たとえば、北米に古くから住む民族社会では、ヘビに噛まれた夢を見たときは、起きてすぐ手当てをしなければならないと考えられていた。
また、ある民族においては、夢は霊魂の体験ととらえられていた。すなわち、睡眠中の肉体から説出した霊魂は、さまざまな場所へ移動し、さまざまな体験をする。そして、霊魂が肉体に戻ってくれば、眠っていた人間は目が覚めるというのである。したがって、眠っている人を急に起こすことは戒められていた。魂が肉体へ帰ってこられなくなるからである。シュメール、バビロニア、ギリシャなど、宗教的世界観の支配する古代文明社会において、夢は、神に話しかけ、神の言葉を受け取る場だと考えられていた。神意を解釈し、その意味を明らかにする?それが夢の役割であった。旧約聖書をひもとくと、イスラエルの王、サウルの次のような言葉がある。「神はわたしを離れ去り、もはや預言者によっても、夢によってもお答えにならない」(サムエル記上ニハ章15節)。これは、ペリシテ人との戦いを前にしたサウル王が、預言者サムエルに投げかけた言葉である。
また、古代社会においては、夢による神託も行なわれていた。これは、特定の聖的な空間に身を置いて、神のお告げを得ようとするものである。当時の有名な神託所としては、ギリシャのデルポイやエジプトのメンフィスなどがある。かつて中東の人々は、こうした場所へこぞって巡礼に訪れた。人々は神託を得ようとして神殿内で夜を過ごし、神や死者の姿が夢に現れるのを待つ。そして翌朝、巫女による夢解釈が行なわれ、しかるべきお告げがもたらされるのである。
さらに時代を下ると、夢は、睡眠中に体内で起こる変化や、体が外部から受ける刺激によって引き起こされると考えられるようになった。つまり、睡眠中、体内の状況や外部刺激が脳に伝わり、それが夢として現れるというのである。この考えにもとづき、夢は体の健康状態を判断する手がかりの1つとみなされていた。
19世紀になると、精神状態との関連という文脈で夢に注目する人が増える。つまり、正常な精神状態と、錯乱や狂気とを結びつけるものとして、夢をとらえようという態度である。さらに、ジグムント・フロイトが精神分析理論における夢の重要性を強調して以来、夢に対する関心は一挙に高まった。フロイトは1900年に「夢解釈」を著し、その中で、夢の探究を「無意識にいたる王道」と形容している。
20世紀の人々の夢に対する観念や態度は、フロイトに始まる精神分析理論に大きな影響を受けている。その結果、「ソファに横になって、精神分析医に夢を語る」という状況は、ジョークのネタにされたり、戯画化されたりすることも多い。だが、フロイトによれば、夢をそのまま記録するだけでは不十分である。というのは、患者が語る夢の背後には、夢の本来の意味や意図(潜在内容)が隠されているからである。精神分析という手続きを通じて初めて夢の潜在内容が明らかになる?これが夢に対するフロイトの考え方であった。

夢の採取法

1953年、アセリンスキーとクライトマンは、「レム睡眠」を発見した。しかも、レム睡眠の研究を通じて、彼らの研究は興味深い事実を明らかにしている。すなわち、レム睡眠時に被験者を起こすと、そのときに見ていた夢を鮮明に憶えているというのである。こうして、眠っている人間がいつ「夢」を見ているのか、客観的に知ることが可能となった。つまり、夢はけっしてランダムなタイミングで生じるのではなく、
レム睡眠という特定の睡眠段階で生じる現象だということが明らかにされたのだ。しかも、レム睡眠の出現のタイミングを判断するのは、けっしてむずかしい技術を要するわけではない。この発見は、睡眠現象に興味をもっていた当時の人々に対し、非常に強いインパクトを与えた。
レム睡眠の発見により、精神分析や心理学にたずさわる人々は、夢研究への具体的な足がかりを得た。同時に、レム睡眠の解明に取り組む研究者の数も急増したわけだが、その大半が、夢に対する興味から実験を始めたことは驚くべきことではない。もはや、夢を「採取」する際、被験者が朝目ざめるまで待つ必要はなくなった。一定の手続きにしたがってレム睡眠の出現をつきとめさえすれば、被験者の体験する夢を「その場で」記録することができるようになったのである。
レム睡眠時の「夢の採取法」は、いたって簡単である。まず、被験者の脳波・眼球運動・筋緊張を記録紙上に残すべく、実験機器をセットする。測定データに特定の変化が生じるまで、実験担当者は測定機器から
目を離さず、夜通し起きていなければならない。記録紙上にレム睡眠の出現を告げる波形が現れたら、被験者を起こす準備をする。すでに説明したとおり、レム睡眠時の脳波や眼球運動は非常にユニークな特徴を示すので、他の睡眠段階と取り違えることはほとんどない。レム睡眠が始まって数分後、実験者は寝室のドアを開けて中に入り、被験者にそっと声をかける。そして、被験者が目ざめたところで、「何か夢を見でいましたか?」と質問するのである。
ただし、この質問のしかたは数年後に修正され、「眠っているあいだに、何か心に浮かんだことはありますか?」というかたちに変わった。質問のしかたを修正したのには理由があるのだが、これについては後述する。
いずれにせよ、レム睡眠の出現までじっと待ち、それで何も得られないケースは少ない。実験データによると、80〜85パーセントの割合で、被験者は鮮明な夢の記憶を報告するという。しかし、レム睡眠から目ざめたというのに、まったく何も憶えていないことがある。夢がレム睡眠時に現れるものだとすれば、この現象はどう説明するのか?これは、レム睡眠から目ざめたときの「夢の記憶」が、つかまえ損ねればたちまち消えてしまう記憶だからだと考えられている。つまり、レム睡眠から目ざめてしばらくのあいだ、夢の記憶はすぐアクセスできる「記憶領域」に蓄えられているが、この記憶は短時間で消えてしまう、と考えるのである。たとえば、被験者が夢の内容を報告しているときに、何らかの方法で被験者の注意をそらしたり、あるいは夢の報告を無理に中断させたりすると、夢の記憶領域へのアクセスがさまたげられ、内容を明確に思い出すことができなくなってしまう。「何か夢を見たはずなのに、内容をぜんぜん憶えていない」などということがよく起こるのも、以上のような夢のしくみから説明できよう。また、急に起こされたときは夢の想起率が高いという事実も、同じ観点から説明することができる。逆に時間をかけてゆっくりと目ざめたときは、意識がさまざまに撹乱され、夢の記憶もたちまちどこか手の届かないところへまぎれてしまうと考えられる。
1960年代、睡眠実験の大半は、レム睡眠時の夢を採取し、記録することが主眼であった。ところが、夢に聞するデータが蓄積されるにつれ、実験室で採取される夢と、精神科医が治療のために患者から聞き取る夢とでは、内容に大きな差があることが明らかになった。実験室によって採取される夢と、心理学や精神科学の文献で紹介されている夢をくらべると、前者の方が短く、夢に「奇妙な」ところが少ない上、その内容も「貧弱」だといえる。実験によって得られた夢は、たいてい日常生活を題材としており、覚醒時の論理的な思考から逸脱するような「奇妙な夢」が現れることはまれである。結局、被験者の睡眠時の夢の分析を通じてわかったことは、起きているあいだの日常的なイメージやできごとが夢の中で反復されているということであった。
実際、夢の内容は、夢を見る人の職業や日常生活と深い関係にある。たとえば、弁護士の夢には、法廷、裁判官、犯罪者などが登場する。医者の場合は、手術室や病院の廊下、白衣の看護婦などが夢の素材となることも多い。学生であれば、夢に教師が現れたり、試験の夢を見たりする。内外の社会的問題に関する夢を見る人間は、きっと政治家だと考えてかまわない。
長年睡眠研究にたずさわってきたアメリカのフレッド・スナイダーは、自分の研究を次のような言葉でまとめている「これまで夢の内容について研究を続けてきたが、夢は覚醒時の記憶の忠実な反復だといってよい」。
実験室で採取された夢は、さほど日常生活と変わるところのない「現実的な」ものであった?だが、この結果に対し、実験方法を疑問視する声もあった。つまり、レム睡眠のさなかにあわてて被験者を起こしてしまえば、それは上映中の映画を中途退席するようなもので、夢自体のストーリーを途中で断ち切ってしまうことになるのではないかというのである。
また、次のような意見もあった。つまり、一晩に何度か夢を見るとすると、朝目ざめたときに憶えている夢は、通常、いちぱん最後の夢であろう。そして、人眠後すぐ見る夢と、眠りの最後に見る夢をくらぺると、いちぱん最後の夢の方が「非現実性」が強いのではないか、というのである。
となると、一晩に何度か訪れるレム睡眠を追っていくと、夢の内容にも変化が見られるのだろうか・・・ この点はすでに実験によって確認されている。通常、第一回のレム睡眠時には、ごく簡潔な内容で、現在にかかわりのある夢を見ることが多い。とくにストーリーが展開していくということもないし、物語の中心となる人物が登場するわけでもない。ところが、第2、第3とレム睡眠が繰り返されるにつれ、被験者の夢は、細部やプロツトに富んだ内容を示すようになる。とくに、起床直前の時間帯に見る夢は、細部の明確さ、登場人物のイメージ、夢に付随する感情のヴァリエーションなどの点で、非常に豊かな内容を示す。この時間帯になると、子どもの頃の思い出が夢の素材になることも増える。そして、一晩に見る夢のうちいちばん最後の夢、つまり起床直前の夢が、目ざめた直後の夢の印象として残ることとなる。夢・思考・幻覚
睡眠中に目が急速に動き出すーーこの現象を発見したのはアセリンスキーとクライトマンである。彼らは急速眼球運動の原因を夢に求めたが、これはごく自然な発想といってよいだろう。この仮説を検証するために、デメントは次のような実験を行なった。実験の手続きはごくシンプルである。すなわち、眼球運動が始
まったら被験者を起こし、夢を見ていたかどうかたずねるという直接的なものであった。そして1957年、デメントとクライトマンは、急速眼球運動と夢の関係について論文を発表した。このテーマで論文が書かれたのは、これが初めてのことである。彼らの報告によれば、被験者をレム睡眠の途中で起こすと、191例中152例において、細部まで明確な夢が報告されたという。一方、レム睡眠以外の睡眠段階の場合、夢が報告されたのは160例中ほんの11例にすぎなかった。つまり、レム睡眠時に起こされた場合、約80パーセントの割合で、被験者は夢を記憶し、想起することができる。
このパーセンテージはデメント以外の研究者によっても確認されている。
これらの実験結果から、夢はレム睡眠特有の現象だと主張する研究者も現れた。彼らは、レム睡眠以外の睡眠段階で夢が多少とも報告されるのは、レム睡眠時の夢の「名残」だという。つまり、レム睡眠時の断片的な夢の記憶が、次の睡眠段階にまで持ちこされ、遅れたかたちで夢として現れるというのである。
だが、すべての研究者がこの考えにくみしたわけではない。中には、実験方法そのものを問題視するものもいた。たとえば、被験者を睡眠中に起こして「夢を見ていましたか?」と問くとき、それに対する答えは被験者自身がいだいている「夢の定義」に左右されてしまうのではないか、というのである。つまり、「夢」とは一般に睡眠中の知覚体験であると考えられているが、「睡眠中の知覚体験」といっても具体的にどこまでを夢にふくめるかということになると、その線引きのしかたは人によってまちまちである。たとえば、内容にかかわらず、睡眠中の感覚的な心像をすべて夢と考える人もいれば、日常生活と関係のある具体的な体験でなければ夢として認めない人もいる。「夢を見ていましたか?」とたずねられると、レム睡眠でない睡眠段階の場合、「いいえ」と答えるケースが増えてしまうのではないか。
この問題を実験によって初めて科学的に検討したのは、シカゴ大学を経て、ワイオミング大学で研究を続けたデイヴィッド・フオウクスである。彼は被験者に対して、「夢を見ましたか?」と問うのではなく、「眠っているあいだに何か心に浮かんだことはありますか?」とたずねることにした。こうしておけば、被験者は「夢」にこだわる必要はなくなる。質問を変えた結果、レム睡眠以外の睡眠段階においても、数多くの「知覚体験」が報告されるようになった。かつては、睡眠実験で報告される夢といえば、何か明確な視覚イメージをともなうものがほとんどであったが、質問のしかたを変えることによって、視覚的な夢に限定する必要がなくなったのである。フオウクス以降も他の研究者が類似した実験を行ない、同じような結果を報告している。
また、被験者が報告する夢の内容には、レム睡眠とそれ以外の睡眠段階とで、明らかな違いが見られる。
たとえば、レム睡眠以外の睡眠段階で起こされたとき、被験者が語る内容は、頭によぎった思考の破片、まとまりのない思いつきなど、ぱらばらな観念的内容を特徴とする。ところが、レム睡眠時に起こされた被験者が報告する内容にはストーリーがあり、細部も明確な上、感情の記憶をともなうことが少なくない。テクニオン睡眠研究所での具体例をあげよう。実験室で数夜にわたって寝泊まりを続けたある学生は、次のように語った?「昨日の数学の試験のことを思い出しました」。ただしこれは、まだ眠りについたばかりの、睡眠第2段階の時点で報告された「夢」である。一方、べつの学生も同じ数学の試験を夢に見た。ただし、こちらはレム睡眠時の夢であり、ディテールに富む内容であった?「夢を見ていました。私はウルマン校舎の教室で数学の授業を受けています。講師は見覚えのある顔なのですが、まわりの学生に一人とし
て知った顔がないのです。机の上には自分の電卓が置いてあって、なぜだかよくわからないのですが、私はその電卓にマヨネーズとケチャップをかけているのです?というところで起こされて目が覚めました」。
結局、レム睡眠時だけでなく、それ以外の睡眠段階であっても、人はさまざまな知覚現象を体験していることが明らかとなった。この事実をもとに、睡眠中の「意識の流れ」はけっして中断しないのだと主張する研究者もいた。つまり、眠っているときであろうと、起きているときであろうと、脳はつねに知覚・認知作用を働かせているというのである。彼らの考えによれば、睡眠中の記憶の質は、大脳皮質の興奮レヴェルに左右される。つまり、睡眠第2段階よりもレム睡眠時にストーリー性のある明確な記憶が残るのは、大脳皮質の興奮レヴェルが高いためだと考えたのである。 睡眠中に生じる知覚・認知現象として、睡眠第一段階、すなわち「睡眠移行期」に見られる「入眠時幻覚」も知られている。というのは、入眠というプロセスは数分にわたって徐々に進んでいくものだが、この間、思考の状態に大きな変化が生じるためだ。初めはまとまりのある思考を保ってはいるのだが、その手綱は徐々にゆるみ、やがてイメージ中心の連想作用が優勢となる。種々のイメージが脈絡もなく飛び交い、次々と現れては消える。たいていの場合、入眠時幻覚の内容は、眠りに入る直前に体験した具体的な知覚記憶と密接に結びついている。したがって、後述するとおり、入眠直前の被験者に対して、その環境を実験的に変化させてやれば、それにつれて入眠時幻覚の内容も変化することが報告されている。

夢に現れる日々の体験

いったい何が夢を作り出すのか。夢の素材は何なのか。レム睡眠のさなかに被験者を起こし、実験的に夢の報告を得ることはできるようになったわけだが、実験を通じて夢の原因を探ることは結局できたのだろうか。
フロイトによれば、夢は日常生活の「残滓」だという。つまり、日常生活の中でほとんど無意識のうちに知覚した、取るに足らない記憶の断片が夢の素材になるというのである。
では、その日のうちに体験したことが、夜になるとすぐ夢に現れるのだろうか。もちろん、そういうケースもある。だが、以下に述べるように、日常の記憶と夢の内容とのあいだには「時間差」が報告されている。
この点に最初に注目したのは、フランスの偉大な神経生理学者、ミシェル・ジュヴェである。彼は、第2次大戦中、フランス・レジスタンスに参加し、戦争が終わってからは、リヨン大学で医学生となった。彼は外科を専門に学び、神経外科医としてしばらく働いた後、睡眠の研究にたずさわることとなる。のちに
彼は動物を使った睡眠研究も行なっているが、その緻密な実験手法は他の研究者を驚かせた。1991年、テクニオン大学はジュヅエに名誉博士号を授与した。これは、睡眠の神経生理学的研究におけるジュヴエの功績に対して与えられたものである。
ところでジュヴエは、毎朝自分の夢を克明に記録しているという。この長年の習慣により蓄積された夢の数は、すでに2500を超えた。だが、毎朝夢を思い出すなどということが、自分の意志だけで可能なのだろうか?たいていの人は、そう不思議がるにちがいない。睡眠実験の被験者でもないのに夢を自分で思い出して毎日記録するという作業は、普
通の人間には不可能事のように思える。だが、記憶力というものは自己暗示によって強化しうるものだ。
そして何よりも、意志の力が大いにものをいう。つまり、夢を憶えておこうというはっきりした意志をもち、堅い決意をもってのぞめば、朝起きてからの夢の想起率もかなり高くなると考えられる。
自分の夢を分析したジュヅエは、一つの事実を発見した。それは、夢の内容に日常体験が影響するときの、具体的な「時間差」についてである。つまり、
日常生活の記憶が夢に現れるとき、それは前日のできごとであるか、さもなくば一週間ほど前のできごとであることが多いというのだ。とくに外国旅行の際、この現象が顕著だったという。実際、ジュヴエは講演を頼まれることも多く、科学関係の学会から招聘されて世界中を旅している。そこで彼は旅行中の自分の夢を分析してみた。その結果、訪問先で体験したあらたなできごとが即座に夢に登場することは比較的少なく、現地到着後一週間経ってからようやく夢に現れることが多かった。たとえば、フランスからアメリカヘ旅行したとき、彼はあいかわらずリヨンやフランスに関係した夢を見た。ところが、到着後一週間経つと、アメリカに関するできごとが夢に現れるようになったの
である。
ジュヴエによるこの報告は、のちに他の2種類の調査によって確認されている。いずれの調査も多数の人間を対象として行なわれた。その結果、夢には前日のできごとが影響するだけでなく、数日のプランクを置いて、6〜8日前の体験がふたたび現れることが多いことが明らかとなった。
1991年、機会を得て私もこの現象について調査を行なった。この年、湾岸戦争が激化し、イスラエルはスカッド・ミサイルによる攻撃を受けた。じつは、この戦争によって私はジュヴエの報告を間接的ではあるが確認することができたのである。そういう意味で、湾岸戦争はじつにユニークな機会を与えてくれたといえる。
当時私はテクニオン大学医学部で約70人の学生を相手に講義を行なっていた。そして、テル・アヴィヴとハイファに初めてミサイルが撃ちこまれたとき、さっそく教室でアンケート用紙を配り、睡眠に関する調査をすることにしたのである。アンケートには、よく眠れたかどうかといった「睡眠の質」とともに、爆撃後一週間の夢の内容を書き込んでもらうようにした。アンケート用紙を配ったのはイスラエルが初めてミサイルの攻撃を受けてから2〜3日目のことだったが、結局、戦争の夢を見たという学生はほとんどいなかった。そして、戦争が始まって5週間後、ふたたび同様のアンケート調査を行なったところ、今度はほぼ半数の学生が、多かれ少なかれ戦争と関係のある夢を報告したのである。
彼らの夢の報告の中で興味深いのは、戦時体制のもとで日々暮らしていくときのいちばんの不安材料、いちばんの心配の種が、夢の中に再3登場することだ。たとえば、イラク大統領サダム・フセインの威嚇行為により、イスラエルではガスマスクが日用品となった。そして、当時もっとも恐ろしいことといえば、化学兵器によるミサイル攻撃を受けたとき、ガスマスクを持ち合わせていないという事態であった。その結果、湾岸戦争中に報告された夢の中には、ガスマスクがじつに頻繁に登場する。たとえば、「空襲警報が聞こえたとき、シャワーを浴びていました。濡れたまま、急いでシャワー室から飛び出すのですが、私は体を乾かすべきか、それとも先にガスマスクをつけるべきか、決めかねているのです」などといった夢が報告されている。私も湾岸戦争中に似たような夢を見た。夢の中で私はバスに乗っていて、すぐそぱの床にガスマスクを置いている。ところがバスから降りたとき、ガスマスクを車内に忘れてしまったことに気づく。私は発車したバスの後を追いかけようと走り出すのだが、その途端、空襲警報が唐突に鳴り響く?という夢である。
日常の体験が夢の中に登場するまでにはタイム・ラグがあるーーこの点について納得のいく説明はまだない。何か夢を発生させる「装置」のようなものがあって、その装置が、記憶の貯蔵庫である「メモリー・バンク」の中から「一定条件」に見合った素材を選び出しているのかもしれない。あるいは、日々の体験がメモリー・バンクに「登録」されるまでに数日を要するのかもしれない。
それとも、同じ体験が一定期間反復されると、初めて夢として現れるのかもしれない。つまり、芝居でいえば、場面が転換し、登場人物が出入りする中で、最初から終わりまでステージ上の同じ場所に置かれている舞台装置のようなものだ。つまり、日常生活の中でも同じ体験が繰り返されれば、それが記憶に残って夢に現れるのではないか、とも考えられる。いずれにせよ、この問題を明らかにするためには、さらなる研究が必要であろう。

「羊の夢」

日常の体験が夢として現れるまでにタイム・ラグがあると述べたが、もちろん例外も存在する。たとえば、入眠直前に体験したこと、眠る寸前に環境から受けた刺激などが、夢に現れたりする。とくに、睡眠実験に参加した人間は、初日の夜、実験にまつわる夢を見たりすることも多い。これは、実験室で寝泊まりするという行為が、本来的に非日常的な体験だからだ。顔や順には電極が貼りつけられ、実験機器につながれる。被験者側からは見えないが、隣室には研究者がひかえている。研究者たちは、被験者の脳波を見つめながら、レム睡眠が現れるのをじっと待っているのだ。しかも、レム睡眠が始まれぱ、被験者の眠りは中断されることになっている。要するに、実験室での宿泊は、ホテルやサマー・キャンプでの寝泊まりとはまったく異なる体験だ。単に自宅ではない場所で夜を過ごす、というようなことではないのである。こんな環境に置かれ
れば、多かれ少なかれ不安と緊張に襲われる。とくに実験初日には、かなりの緊張を強いられることとなる。その結果、実験第一日目であっても、レム睡眠時の夢の中には、多少なりとも睡眠実験にまつわる要素がまぎれこんでいることが多い。たとえば、電極や計測機器に関する夢を見たり、夢の中で研究者と言葉を交わしたりする。睡眠実験との関連で、他の科学実験の要素が夢に登場することもある。ときには、次の例が示すように、研究者自身も予期せぬような、驚くべき夢が報告されることもある。
数年前、私たちはテレビ番組のために一連の実験を準備した。テーマは「夢とレム睡眠」である。番組では、睡眠中の体の変化を測定機器で詳細に追跡することとなった。また、レム睡眠に入った被験者を起こして夢を報告させ、そのようすをそのままカメラにおさめることになった。撮影スタッフは機材をととのえ、私たちの睡眠研究室にやってきた。ここで一晩かけて撮影しようというのである。撮影には、実験台となる人間が必要となるわけだが、Z・N君がその役を買って出てくれた(研究室には実験を手伝う「技師」が何人かいるのだが、Z・N君もその一人であった)。実験の準備が始まると、カメラはさっそく撮影を開始した。インタヴュアーは、Z・N君に対し、「実験室でちゃんと眠れると思いますか?」「どんな夢を見ると思いますか?」「何か心配なことはありませんか?」などといった質問を浴ぴせた。Z・N君はすべての質問にウィットに富んだ答えを返し、インタヴュアーを喜ばせた。もし眠れなければ、「朝まで羊を数えてますよ」などと答えたりもした。
さて、すべて準備がととのって、Z・N君は睡眠室に向かうことになった。もちろんカメラもいっしょである。移動の途中、廊下の壁に大きな絵がかかっていた。イスラエルの著名な画家メナシエ・カディシュマンによる「ピンクの羊」と題する作品だ。Z・N君はこの絵を見て、冗談をいった。「羊を数えるとしたら、きっとピンクの羊でしょうね」
ところで、睡眠実験を行なう際、実験スタッフは被験者のようすをうかがいながら、何もせずにじっと待機していることが多い。撮影スタッフはそんな事情をもとより知らなかったのだが、幸いなことに、Z・N君は羊を数えるまでもなく、すぐ眠りについた。そして、入眠後およそ90分経つと、予想どおり第一回目のレム睡眠が現れた。私たちは彼の夢を採取すべく、ベッドに近づいた。カメラはすぐ後ろで撮影を開始している。Z・N君はすぐ目を覚ましたが、ベッドを取り囲む人間の妙な顔つきを見回すとともに、カメラのレンズが向けられていることにも驚いたようすを見せた。彼の語るところによると、夢の中で彼は病院の緊急治療室にいて、ベッド上の患者を診察していたところだったという。そこまで語ってから、Z・N君はしばしいいよどんだ。そして、頭をかきながら、こうつけ加えた。「患者といっても、普通の患者じゃないんです。蝶ネクタイをした白い羊でした・・・・憶えているのはそこまでです」
私は睡眠実験室から外へ出た。廊下へ出ると、カディシュマンのピンクの羊が私を見おろしていた。そして、ようやくZ・N君の夢の出所に気づいたのである。当時、Z・N君は医学部の学生で、医学課程の修了間近だった。つまり彼は、実験開始直前に見た羊の絵に影響されて羊の夢を見たのであり、同時に、医学生だったがゆえに緊急治療室の夢を見たと思われる。実際、彼は実験に先立つIカ月前から、研修の一環としてかなりの時間を緊急治療室で過ごしていた。羊が蝶ネクタイをしていたという点に関しては、Z・N君のユーモア感覚の表れではないかと私は考えている。ただし、Z・N君がこんな夢を見てしまったため、「テレビ用の″やらせ〃ではないのか、本当に普通に見た夢なのか」という視聴者からの反応があり、その誤解を解くのに私は一苦労せねばならなかった。
すでに述べたように、日常的に体験した記憶が夢に現れるまで、およそ一週間のタイム・ラグが観察されることが多い。にもかかわらず、睡眠実験を行なうと、入眠直前の記憶が即座に夢の中に登場するのはなぜだろう?
この現象は、朝起きて自分で夢を思い出すという行為と、実験室でレム睡眠中にむりやり起こされて、夢を報告させられるという状況を比較してみればわかりやすい。つまり、人は通常一晩に何回かレム睡眠を体験するわけだが、朝起きたときに憶えている夢は、多くの場合、いちばん最後のレム睡眠時の夢である。そして、すでに説明したとおり、一晩に何度か訪れるレム睡眠を順次追っていくと、朝に近づくにつれ、遠い過去を反映した内容の夢が増えることが報告されている。したがって、朝起きたときに憶えている夢の中には、ごく最近体験したできごとが登場する可能性は比較的少ない。
ところが睡眠実験の場合、第一回目のレム睡眠が現れたところで被験者を起こし、夢を報告してもらうのが基本である。すると、その夢には被験者の最近の体験が反映されることが多い。こう考えると、睡眠実験の際、当日の体験がすぐ夢に現れるという現象も理解することができるだろう。

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