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睡眠

睡眠の雑学.2

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睡眠の雑学.2

ナタニエル・クライトマン(レム睡眠の発見者)

革命的な発見
ナタニエル・クライトマンは、今日の睡眠研究の「父」である。そのことは疑いをいれない。そして、クライトマンの人生は、まさに「さまよえるユダヤ人」そのものだった。彼について書かれた文献、人から伝え聞いた話?そのすべてが、彼の放浪の人生を物語っている。
クライトマンは、1895年、黒海に近いロシアのキシニョフに生まれた。彼はロシアにおけるポグロム〔ュダヤ人に対する集団暴力事件〕を目のあたりにし、さらにユダヤ人社会に対する多くの迫害行為を知るにつれ、17歳のときにはすでに、当時のパレスチナ〔現在のイスラエルを中心にョルダン、エジプトを含む地域〕への移住を考えていた。私がクライトマンと直接言葉をかわしたとき、クライトマンは95歳の高齢に達していたが、それでも元気なようすで、しっかりした口調で昔の思い出を語ってくれた。
クライトマンは、17歳の頃、すでに医学の道へ進もうと考えていた。そのために、彼はまずベイルートに渡り、現地のアメリカン・カレッジで医学を学び始めた。卒業後、パレスチナで医者として働くつもりだったのである。
ところが、第一次世界大戦が勃発し、彼は予定より早くベイルートを離れることになる。クライトマンはロシア人であり、オスマン・トルコ軍にとっては敵国の人間である。彼はトルコ軍に見つかることを恐れて、ロードス島へ避難した。そしてそこから、アメリカ行きの船に乗りこんだのである。クライトマンは、アメリカに渡ることとなった具体的な事情を、やや弁解めいた口調で説明してくれた。つまり、ロードス島の港に停泊していた船は一隻しかなく、それ以外の船舶は見あたらなかった。そして、たまたま乗りこんだその船がアメリカ行きだったのだそうだ。数週間後、船はニューヨークヘ到着し、クライトマンはアメリカの土を踏むことになった。
彼はコロンビア大学で生理学の修士課程を修了し、ジョージア大学でしばらく学んだ後、シカゴ大学のアシスタント・プロフェッサーのポストについた。彼はシカゴ大学に世界初の睡眠研究所を設立し、1939年、著書『睡眠と覚醒」を発表した。この書物は短期間のうちに高い評価を獲得し、世界各地で睡眠研究のバイブルとみなされるようになった。
当時、睡眠研究だけに仕事を絞りこんでいる研究者は、クライトマンを除けば皆無であった。クライトマンが私に語ってくれたところによると、当時、睡眠の研究がアカデミズムから評価されることはほとんどなかったそうである。睡眠という現象が当時の研究者の興味を集めなかったのは、何よりもまず、睡眠に対する誤解が原因だったと考えられる。つまり、睡眠時にはほとんど何も特筆すべき事態は起こらないし、もし何か特別な現象が観察されるにしても、その現象が覚醒時の行動や健康状態に何か影響をおよぼすとは考えられない?これが当時の一般的な睡眠観だったのである。
すでに見たように、睡眠という現象は、脳が体の他の部分から切り離されて孤立し、その結果、神経システムが受動的な状態におちいるために生
じると考えられていた。20世紀初頭、睡眠学者たちの大半は、睡眠という現象について、そうした認識しかもちあわせていなかったのだ。かつてのクライトマンも、その例にもれなかった。そうした中で、やがて彼は睡眠という現象に魅せられ、睡眠研究に専心するようになった。クライトマン以前に、睡眠研究の専門家といえる研究者は皆無だった。だが睡眠研究におけるクライトマンの研究対象は幅広く、睡眠時の呼吸運動をはじめ、新生児や幼児の睡眠にいたるまで、その対象は多岐にわたるものであった。しかも、彼の仕事は、大胆な発想と独創的なアプローチに貫かれていた。
たとえばクライトマンは、「睡眠覚醒リズム」は環境によって変化する、という仮説を証明するために、若い助手とともにケンタッキー州のマンモス・ケーヴ〔現在、国立公園の一部となっている大鍾乳洞〕にこもった。彼らは、凍えそうな低温環境に身を置くのもいとわず、外界からの環境刺激をいっさい遮断した上で、自分たちの睡眠覚醒リズムを21時間、あるいは28時間に適応させようと、みずから実験台となって研究を進めたのである。その結果、クライトマンの助手は睡眠のリズムをあらたなサイクルに適応させることができたのだが、クライトマン自身は24時間周期から逃れることができなかった。助手よりもずっと年上だったクライトマンは、自分があらたな睡眠覚醒リズムに適応できなかったのは、おそらく年齢のせいだろうと考えた。
だが、睡眠学に真の革命をもたらしたのは、レム睡眠の発見である(REMは「急速眼球運動rapid eye movement」の略)。この発見が論文として報告されたのは1953年、直接の発見者はユージン・アセリンスキーという若い学生であった。当時、アセリンスキーはクライトマンの研究室で博士号のための研究を続けていた。科学における発見は往々にして偶然の産物なのだが、レム睡眠の発見も例外ではなかった。ただし、レム睡眠発見の経緯については、いくつか異なる報告がなされており、細部に異同がある。そこでここでは、クライトマンの弟子であり後継者でもある、ウィリアム・デメントに依拠することにしよう。レム睡眠が発見されたちょうどその頃、デメントはクライトマンの研究室に所属していたので、その言葉は伝聞や推定ではない。
デメントにとって睡眠研究をこころざすきっかけとなったのは、1951年、シカゴ大学のメディカル・スクールで受けたクライトマンの講義であった。当初、デメントは精神医学の道に進もうと考えていた。ところが彼は、神経生理学講座の一環として睡眠学を教えていたクライトマンに決定的な影響を受け、睡眠研究への道を歩み始めたのである。自分の進路についてクライトマンに相談したデメントは、結局、クライトマンの睡眠研究室に所属することとなった。一方、アセリンスキーは生理学専攻の学生であり、クライトマンの指導のもと、博士論文のための研究に取り組んでいた。こうして、デメント、アセリンスキー、クライトマンの3人によって、世界初の睡眠研究チームが誕生したのである。クライトマンは、入眠時に見られるゆっくりとした眼球運動に強い関心をいだいていた。眼球運動には大脳皮質のかなりの部分が関与していることから、クライトマンは、目が動くスピードと睡眠の深さとは何か密接な関係があるのではないか、と考えていた。そこで彼は、人眠時以外の睡眠段階についても眼球運動を観察することにした。観察が始まったのは1951年春、デメントが研究室に所属する以前のことである。
クライトマンはアセリンスキーに命じて、実験の指揮をとらせた。
アセリンスキーは、まず幼児の睡眠を観察することから始めた。幼児は昼間もよく眠るので、観察者は幾晩も徹夜をしたりせずにすむ。ところが、観察を始めてすぐ明らかとなったのは、入眠時にはゆっくりとした眼球運動が見られるのに、一度睡眠につくと、今度は素早い眼球運動に置き換わってしまうという事実であった。しかも、この急速な目の動きは、覚醒時の目の動きにそっくりだったのである。ところがアセリンスキーとクライトマンは、幼児だけでなく、成人にも急速眼球運動が認められることを知って、記録装置そのものを疑い出した。彼らは、記録計にノイズが混入したか、あるいは何か故障が生じているのではないか、と考えたのである。そこで、装置が正しく目の動きを記録しているかどうか、アセリンスキーは自分の目で確認することにした。記録計に急速眼球運動が現れたら、被験者の目の動きを至近距離で確認する?これが、アセリンスキーがとった観察方法である。彼は、睡眠中の眼球運動を直接観察することで、装置の故障などといった可能性を完全に排除しようと考えたのである。この実験にはアセリンスキー以外の協力者も参加して、同様の方法で眼球運動を確認している。被験者が目を閉じていても、瞼の下の目の動きは容易に見てとれる。結局、実際に観察を開始してみると、睡眠中に急速眼球運動が生じていることは、たちまち疑いのない事実となった。 デメントがクライトマンのもとにやってきたのは、この頃のことである。デメントによれば、自分にもう少し積極性があれば、もっと早く睡眠研究室への参加を申し出ていたはずだった、という。つまり、レム睡眠という歴史的な発見も、アセリンスキーでなく、自分の名とともに記憶されていたのではないか、というのである。
さらに、急速眼球運動は夢と密接な関係があることが発見された。デメントによれば、この点について、発見者を特定することはむずかしいという。しかも、アセリンスキーとクライトマンの2人が、同じ時期に、それぞれ独自に同じ着想を得たということも十分考えられるようだ。だが、デメント個人は、この発見はクライトマンのアイデアにもとづくものではなかったかと推測している。クライトマンの研究室におけるデメントの最初の仕事は、眠っている被験者を観察し、急速眼球運動が現れた時点で被験者を起こして、夢を見ていたかどうか確認することであった。実験の結果、まさに驚くべき事実が発見された。しかも、その結果は、あいまいなところなどない明確なものであった。すなわち、急速眼球運動が観察された時点で起こされた被験者は、見ていた夢をことこまかに憶えていたのである。これは、ノンレム睡眠(レム睡眠以外の睡眠段階)ではほとんど見られない、非常に特徴的な現象である。
1953年、科学雑誌「サイエンス」にアセリンスキーとクライトマンの論文が掲載された。現代睡眠科学の幕開けを宣言したともいえるこの論文の申で、彼らは急速眼球運動が観察される睡眠状態を「レム睡眠」と名づけた。レム睡眠は、「夢見睡眠」「逆説睡眠」「動睡眠」などと呼ばれることもある。だが本書では、便宜上、「レム睡眠」というときは人間の睡眠、「逆説睡眠」というときは、その他の動物の睡眠をさすことにする。
ところで、レム睡眠はなぜ1953年まで発見されなかったのだろうか? 睡眠研究の歴史を振り返ると、
もっと早く発見されてもよかったのではないかと思いたくなる。たとえば、1930年代には、すでに睡眠時の脳波記録が行なわれていたわけだし、レム睡眠の脳波と深睡眠の脳波をくらべると、かなりの差があるのは明白ではないか。だが、レム睡眠がなかなか発見されなかったのは、じつはごく単純かつ現実的な理由による。クライトマンの語ってくれたところでは、「1953年まで、一晩中ずっと睡眠記録をとろうなどという発想そのものがなかった」そうだ。そのためにレム睡眠の発見にはいたらなかった、というわけだ。なぜ連続して記録をとらなかったかというと、まず第一に経費上の問題がある。記録用紙を無駄にしないためにも、記録装置を動かすのは2〜3時間に数分だけだったり、初めの一時間だけだったりしたのである。レム睡眠は入眠後90分ほど経ってからようやく現れる現象であり、しかも、最初のレム睡眠は5〜10分程度で終わってしまう。したがって、連続して記録しなければ、見逃してしまうのも無理はない。
このように、レム睡眠がなかなか発見されなかったいきさつを知ると、間違った先入観というものが科学研究におよぼす影響力はけっして小さくないことがよくわかる。つまり、昔の学者は、睡眠という身体状態に積極的な意味はなく、睡眠は単なる受動的な状態にすぎないと考えていた。そのため、実際の研究に際しても、十分経費をかけて取り組もうという姿勢がなかなか確立されなかったのである。

レム睡眠と目の動き

睡眠について約90分後、一回目のレム睡眠が現れ、それに付随して生理的な変化が生じる。脳波も特徴的な波形を描き始める。すなわち、シータ波(ただし、K複合波と睡眠紡錘波をともなうことはない)を主調とし、ときおりアルファ波が短く現れるというパターンである。睡眠中にアルファ波が現れるということ
は、意識レヴェルが上昇していることを示す。実際、レム睡眠時の脳波は、第一睡眠段階の脳波とほとんど変わらない。となると、レム睡眠は「浅い睡眠」であり、そこから覚醒に移るのはさほどむずかしいことではないのではないかと考えたくなる。たしかに、レム睡眠に入ると、体の中では目ざめるための準備が始まる。ところが、外界刺激に対する反応という観点から見ると、レム睡眠時の体はむしろ目ざめにくい状態にある。そういう意味で、レム睡眠は「深い睡眠」でもある。脳波は浅い睡眠を示しているのに、本人の睡眠は深く、外界刺激に対してなかなか目ざめようとしない?レム睡眠が「逆説睡眠」とも呼ばれるゆえんはここにある。
そしてさらに、脳波の変化に加え、眼球が急速な運動を開始する。アセリンスキーが注目し、レム睡眠発見の糸口となったのは、この現象である。
私が大学で睡眠研究に取り組み始めた頃、レム睡眠時の眼球運動と、覚醒時の眼球運動があまりにも似ているため、失敗したことがあった。1969年のことである。当時私はテル・アヴィヴ大学で心理学を専攻し、学士論文に取り組んでいた。この年、私たちの研究室は、レム睡眠時の脳波を記録すべく、睡眠実験を開始したばかりであった。私はこの実験に参加し、夜間の睡眠記録を担当した。この仕事には若干の報酬も用意されていた。夜間記録を担当することになったのは、まったくの偶然なのだが、その体験は私にとって非常に貴重なものとなった。

睡眠麻痺とは何か

レム睡眠にともなう体の変化は、脳波や眼球運動だけに現れるのではない。ほかにも奇妙な現象が随伴して生じる。たとえば骨格筋は、すでに述べたように入眠の時点で弛緩を始め、深い睡眠に向かって徐々に緊張を解いていく。いちばん深い睡眠である第4段階においては、骨格筋はかなりの弛緩状態にある。そしてレム睡眠に入ると、骨格筋はほぼ完全に弛緩する。実際、レム睡眠時におけるわれわれの体は、ほぼ全身が運動麻揮の状態(運動抑制状態)にあるといってよい。その原因は、やはりレム睡眠時の脳内変化にある。
睡眠時の神経調節メカニズムは、感覚器から大脳皮質へと向かう神経インパルスを抑制する働きをもつが、レム睡眠に入ると、その逆の抑制メカニズムが同時に働く。すなわち、脳から筋肉へと向かう命令が抑制されてしまうのである。骨格筋の運動は、基本的に大脳皮質の運動野によって支配されているのだが、レム睡眠時には、運動野から脊髄を介して末梢へと伝わる神経インパルスが中途で抑制されるため、体の筋肉が弛緩状態(麻痺状態)におちいることになる。具体的には、脳幹〔脊髄と大脳半球を連絡する部位〕から発せられる特殊な神経信号が脊髄へ働きかける結果、脊髄は運動野からの指令を末梢へ伝達しなくなる。こうして、骨格筋の運動抑制が引き起こされるのである。
では、いったいなぜ、レム睡眠の際に、眼球だけが急激な運動を見せたりするのだろうか? じつは、眼筋に対する脳からの指令は、脊髄経由ではなく、脳幹から出ている特殊な神経繊維を介して伝わるからである。つまり、レム睡眠中であっても、眼筋につながるこの神経繊維は抑制されることがない。
人によっては、レム睡眠時の運動麻痺が目ざめた後も続き、意識は覚醒状態にあるものの、体が自由にならないことがある。これはかなりの不安を呼び起こす体験である。たとえば、寝ている最中、突然、麻痺に気づいて目ざめることがある。手足はいうことをきかないし、自分が息をしているかどうかさえ定かではなく、呼吸が止まっているのではないかと不安になる。窒息して死んでしまうのではないか、という思いにとらわれることさえある。こうしてパニックにおちいった人間にとって、自分の意志で動くのは目しかなく、視線は助けを求めるかのように寝室の中をさまよう。このような状態を「睡眠麻痺」と呼ぶ〔日本語では俗に「金縛り」とも呼ばれる〕。睡眠麻鐸の体験は、たいてい恐怖の感情とともに記憶される。助けを呼ぼうにも声が出ず、窒息するのではないかという恐怖が体を走る。体験した本人にとって、まさに「死の恐怖」以外の何ものでもない。
睡眠麻痺はそうしばしば起こる現象ではない。一度体験したものの、2度と起こらないというケースも多い。しかし、中にはかなり頻繁に体験する人もいて、場合によっては週に何度も睡眠麻捧に見舞われることがある。そういう人の睡眠を記録してみると、睡眠麻捧が起こるのはレム睡眠時だけだということがわかる。
つまり、目ざめた後も、大脳皮質の運動野から脊髄へと発せられる神経信号が抑制されたままの状態にあるため、意識があっても脳からの指令が筋肉まで届かないのである。睡眠麻捧は、何の刺激を与えなくとも、数分もすれば自然に消える。また、他人が体に触ったり、名前を呼んだりすれば、睡眠麻痺は即座に消失する。
これ以外にも、睡眠中に運動麻痺の生じる特殊なケースがある。すなわち、睡眠第1〜第4段階を経由せず、突然レム睡眠が始まってしまう現象である。こうした唐突な睡眠を見せる人々は、立ったまま、あるいは座ったまま突然レム睡眠に入ったり、車を運転している最中にレム睡眠におちいったりする。この発作が起こると、自分の体を自由に動かすことができなくなり、状況によっては非常に危険である。この睡眠障害は「ナルコレプシー」と呼ばれている。
科学の世界では、研究が進むにつれ、あらたな事実が発見され、少しずつ全体像が見えてくる。睡眠研究の歴史も、まさに発見の連続である。最初はばらばらだった新知見も、徐々に全体の中での意味が明らかに
なっていく。この歩みを、ジグソーパズルのピースを組み合わせるプロセスにたとえることもできるだろう。
つまり、現代の睡眠研究とは、徐々に絵柄が現れてくる巨大なジグソーパズルのようなものだ。その上、比較的最近になって解明された知見も少なくない。レム睡眠における呼吸数と心拍数の変化もその一つだ。つまり、深い睡眠に入って安定していた呼吸数や心拍数が、レム睡眠に入ると突然乱れ始めるのである。その変化は劇的で、何か精神的なショックを受けたかのような印象を与える。
レム睡眠をめぐって、次のような現象も知られている。レム睡眠が発見されるよりも4年ほど前のことだが、ドイツの研究者によって、睡眠時における男性のペニスは、90分間隔で勃起することが報告されていた。まだレム睡眠の存在を知らなかった研究者たちは、この生理現象は夢を引き起こす要素の1つなのではないかと考えたりもした。だが、ペニスの勃起がレム睡眠に随伴して生じる現象だということが明らかになったのは、1960年代に入ってからのことにすぎない。結局、あらたな事実が発見されても、他の事実との関連が見えてくるまでに、約10年を要したのである。レム睡眠というジグソーパズルも、こうして新しいピースが登場するにつれ、徐々にその姿を明らかにしつつある。

睡眠のリズム

睡眠は段階的に変化する
睡眠は多彩な姿を見せる。しかし、各睡眠段階の出現のしかたには一定のパターンがあり、秩序がある。
けっしてランダムに継起するわけではない。おかげで、睡眠研究者の仕事も少しは楽になる。睡眠の時間経過を見るには、脳波を含めた総合的な睡眠記録データにもとづき、各睡眠段階の推移を視覚化した「ヒプノグラム」を参照するのがよい。
2015年09月16日16時01分43秒_Fotor
実際には、各睡眠段階が現れる順序や継続時間には、年齢によって大きな差が観察される。そこでまず、20歳代の成人の睡眠がどのような経過をたどるか、その典型的な
例を紹介しよう。
夜、部屋を暗くしてベッドに入る。ここから睡眠の世界が始まる。横になって目を閉じ、睡眠態勢がととのうと、さっそくアルファ波が現れる。これは、心身がリラックスしている証拠である。数分後、おだやかな覚醒状態は睡眠第一段階へと移行する。この段階では安定したシータ波が基調となるが、睡眠障害に悩んでいる人でなければ、それから2〜5分も経てば、散発的にK複合波や睡眠紡錘波が観察されるようになる。
これが第2段階である。このとき、第2段階はさほど長くは続かず、約10分後にはゆっくりとした振幅の大きい脳波(高振幅徐波)、すなわちデルタ波が姿を見せ始める。
デルタ波の登場とともに第3段階が始まるのだが、デルタ波の出現率が50パーセント未満の状態を第3段階、50パーセント以上を第4段階として区分する。第3段階は、浅い睡眠(第2段階)と深い睡眠(第4段階)のあいだにあって、両者をつなぐ中間的な存在である。覚醒から睡眠へと橋渡しをする第1段階と同様、第3段階の持続時間も長くはない。第4段階に入るとほどなく、デルタ波以外の波は観察されなくなってしまう。ここにいたって、脳波は安定した活動を見せるようになり、30〜40分間、それ以上の変化
は生じず、大きな姿勢の変化も観察されなくなる。第4段階に入ると、外界の刺激を受けても簡単には目ざめない。記録装置につきっきりだった研究者も、第4段階の始まりを確認した後、短い休憩をとることが多い。
やがて、眠っている人間は寝返りをうったり、仰向けからうつぶせに姿勢を変えたりし始める。休がちょっと動くだけのこともあれば、大きく寝返りをうつこともある。このような体動は、第4段階が終了し、あらたな睡眠段階に移りつつあることを物語っている。眠っている人間が大きく姿勢を変化させると、記録中のデータにも乱れが生じる。その乱れがおさまると、睡眠は浅い方向へ、つまり第3段階、あるいは第2段階へと戻る。さらに5〜6分経つと、眠っている人間にふたたぴ休動が現れる。この体動がおさまれぱ、今度はまったく質の異なる睡眠状態、すなわちレム睡眠に移行する。レム睡眠は、前章でも述べたように、多くの睡眠研究者の関心を集める特殊な睡眠段階である。 レム睡眠に入ると、睡眠紡錘波もK複合波も姿を消し、筋緊張はすっかり失われる。眼球がきょろきょろとせわしなく動き始め、眼球運動の記録波形は急激に乱れる。入眠後初めて現れるレム睡眠の継続時間は、せいぜい数分、長くてもI0分程度で、比較的短時間で終了する。レム睡眠の終了時には、第4段階の終了時と同様、大きな体動が観察される。ある睡眠段階からべつの睡眠段階へ移行するときに生じる体動は、いわぱ「句読点」のようなものだ。あるいは「感嘆符」といった方が正確かもしれない。要するに、睡眠の各段階が「文章」だとすれば、その文章の最後に現れる体動は、いわぱ脳によって挿入された句読点とみなすことができる。
体動をきっかけとして、レム睡眠は終わりを告げる。そして、睡眠はふたたび第一段階?すなわち睡眠プロセス開始直後の睡眠段階と同じ状態?に復帰するのである。
ただし、この状態も長くは続かず、1〜2分で第2段階へと進む。つまり、浅い睡眠の状態に入る。このように睡眠プロセスはあらたな「睡眠周期」を開始し、第2段階、第
3段階、第4段階を経て、ふたたびレム睡眠へと続いていくのである。ただし、第一のサイクルと第2のサイクルは、まったく同じプロセスの繰り返しというわけではない。第1サイクルから第2サイクル、さらに次の睡眠サイクルヘ進むにつれ、睡眠の内容には変化が生じる。たとえば、浅い睡眠である第2段階の持続時間が長くなり、一方で深い睡眠である第3段階と第4段階は減少する。また、2回目に現れるレム睡眠は、1回目のレム睡眠よりも長時間持続する。すなわち、最初のレム睡眠が5〜7分程度しか続かないのに対し、2回目のレム睡眠は12〜15分間持続する。このように、第1の睡眠サイクルと第2の睡眠サイクルでは、各睡眠段階の継続時間が異なる。‘ただし、脳波や体動といった点に関しては、とくに大きな違いはない。
入眠してから最初のレム睡眠が始まる直前までの時間を「レム睡眠潜時(レム潜時)」と呼ぶ。平均的なレム潜時は約90分であり、それ以降も、やはり約90分間隔でレム睡眠が繰り返し現れる。これは、睡眠障害の診断という意味からも、非常に重要な現象だ。たとえば、ある種の睡眠障害ではレム潜時が短くなることが知られているので、その計測は診断の重要な手がかりとなる。
3回目の睡眠周期に入ると、深い睡眠の持続時間はさらに短くなり、浅い睡眠の量が増える。レム睡眠も20〜25分の長さに伸びる。この傾向は、次の4回目のサイクルでも同様で、深い睡眠はさらに減り、浅い睡眠である第2段階の睡眠が増えていく。ただし、4回目のレム睡眠の持続時間は3回目のレム睡眠とさほど変わらず、20分前後である。睡眠の一単位となる各サイクルの長さは約90分なので、一晩に体験する睡眠単位の数は、眠ってから起きるまでの時間によって決まる。若い成人の場合、一晩に4〜5回のサイ
クルを体験するのが普通だが、年齢とともにサイクル数は減少する傾向にある。

幼児の睡眠、老人の睡眠

年齢とともに睡眠は変化する。これは誰もが直感的に理解していることだと思う。生まれたばかりの子どもは、一日のほとんどを眠って過ごす。一方、年をとるとぐっすり眠ることができなくなり、そのせいで昼間に居眠りをしたりする。では、睡眠のリズムは、一生を通じて、具体的にどのような変化を見せるのだろうか?
睡眠が科学的な手法によって研究されるにつれ、驚くべき発見が次々と報告されるようになった。乳幼児期に観察される睡眠リズムもその一つである。たとえば、私たちは「赤ん坊のような睡眠」などという表現を間くと、すやすやと健康に眠る姿を思い浮かべてしまうが、幼児の睡眠はそれほど変化のない、安定した睡眠なのだろうか?
実際に幼児の睡眠、とくに生まれて間もない新生児の睡眠を調べると、まったく異なる2種類の睡眠が観察される。1953年、アセリンスキーとクライトマンは幼児の睡眠について報告したが、彼らが観察したのは、この2種類の睡眠のうち、一方の睡眠状態であった。すなわち、「急速眼球運動が観察されると同時に体動が認められる」状態である。成人であれば、急速眼球運動の開始とともに、体は運動麻痺におちいるはずだ。ところが、幼児の場合、むしろこの時期に体動が増える。大きく寝返りをうつというわけではないのだが、指先や手足がこきざみに動いたり、ときには痙早するような運動を見せる。顔の筋肉(表情筋)が動くこともあり、場合によっては、泣いているような顔を見せたり、怒りや拒絶の表情を示したりする。実際、子どもが生まれて初めて「笑いの表情」を見せるのは、この特殊な睡眠状態のさなかである。そうした意味で幼児のレム睡眠は「動睡眠」とも呼ばれる。動睡眠時の脳波に関しては、成人のレム睡眠と変わるところはなく、その成分はシータ波がほとんどである。
動睡眠時以外の幼児の睡眠は、非常におだやかな安定した状態にある。体動はすっかり消え、まさに「子どもの睡眠」として私たちがイメージする状態そのものとなる。ただし、デルタ波や睡眠紡錘波がはっきりと認められるようになるまでには、生後、数日〜数週間を要する。それまで、幼児の脳波は不安定でランダムな状態にある。 新生児が見せる2種類の睡眠のうち、動睡眠の状態は、成人におけるレム睡眠にたしかによく似ている。
ただし、成人のレム睡眠においては、脳から骨格筋へと伝わる神経インパルスを抑制するメカニズムが働いているのに対し、新生児の動睡眠の場合、抑制メカニズムがまだ未発達の段階にあり、結果的に細かな手足の動きが観察されるのである。ところが生後1年も経つと、神経インパルスを抑制するためのメカニズムも発達をとげるため、動睡眠時の体動は消えてしまい、急速眼球運動だけが残ることとなる。一方、おだやかな「非こ勁睡眠」は、やがて、睡眠第2段階、第3段階、第4段階へと分化する。しかし、幼児の睡眠を研究した学者たちが驚いたのは動睡眠だけではない。その持続時間も成人のレム睡眠とは異なっていた。新生児の睡眠を観察すると、生後何週間かのあいだは、睡眠時間の半分近くを動睡眠が占めていることがわかる。そして、動睡眠が全睡眠時間に占める割合は徐々に減少を続け、満一歳の頃、
25〜30パーセントの割合で安定する。また、幼児における睡眠周期(一サイクル)の持続時間は、成人のサイクルよりも短いことがわかっている。成人の睡眠は、一つのレム睡眠が終わってから、次のレム睡眠が終了するまで約90分かかるわけだが、幼児の動睡眠の出現サイクルは、約60分なのである。
では、睡眠サイクルを決定する「時計」が脳内にセットされているとすると、その時計が一定のリズムをきざんで動き出すのは、発生・成長のどの段階のことだろうか? 胎児の動きを観察した研究者によれば、妊娠第6ヵ月以降の段階に入ると、胎児にも動睡眠が認められるという。この点については、私たちテクニオン睡眠研究所でも胎児の睡眠を観察し、やはり動睡眠を確認している。私たちは、妊娠第6〜7ヵ月の女性を対象とし、胎児の動きを数時間にわたって連続的に記録した。その結果、胎児の活動リズムには一定のサイクルがあることが明らかになった。すなわち、約60分のサイクルが観察されたのである。これはまさに、新生児が見せる動睡眠の周期に一致している。
新生児や幼児の睡眠に関しては謎につつまれた部分も多い。たとえば、なぜ動睡眠が総睡眠量に占める割合がこれほど大きいのか? 動睡眠は幼児期において何か特別に重要な役割を果たしているのか? 動睡眠と、それ以外のおだやかな睡眠を比較したとき、どちらが大切な睡眠なのだろうか?
満10〜20歳の年齢に達すると、成人型の睡眠リズムが完成する。すなわち、総睡眠量のうち、およそレム睡眠が20〜25パーセント、深睡眠(第3段階と第4段階)も同じく20〜25パーセントを占め、残りの約半分が浅い睡眠(第2段階)となる〔第一段階を睡眠にふくめるとしても、その割合はごくわずかである〕。
また、睡眠中にごく短い覚醒状態が生じることもある。これは、一つの睡眠段階から次の睡眠段階へと移行する際、体動とともに観察されることが多い。
人の睡眠は、年齢とともに大きく変化する。たとえば、年をとると一晩に何度も目が覚める。あるいは朝早く起きてしまう。また、日中に居睡眠をする。こうした悩みをかかえる高齢者は多い。だが、生理学的に見て、これは自然な変化なのだ。電気生理学的な手法で高齢者の睡眠を記録すると、彼らが訴える不満を客観的に裏づけることができる。とくに注目すべき現象としては、深い睡眠の減少があげられる。たとえば、30代の成人における深睡眠の割合は20〜25パーセントなのだが、70〜80代の高齢者の場合、深睡眠の割合はほんの5〜10パーセントにすぎない。したがって、高齢者の睡眠は、10〜20パーセントのレム睡眠を除けば、あとはほとんど第2段階の浅い睡眠ぱかりになってしまう。
このように、加齢とともに各睡眠段階の構成比が変化するわけだが、それ以上に問題なのは、一晩に何度も目が覚めてしまうことだ。後述するとおり、睡眠が浅くなって目が覚めやすくなるのは、顔の皺や白髪と同じく、老化のサインの1つといえよう。

睡眠と成長のかかわり

人間の体の状態は、体内を流れる特別な「液体」に大きな影響を受けている?この考えは、過去何百年ものあいだ常識として受け継がれてきた。体内でこの「体液」のバランスがくずれると、人は病気におちいる。したがって、病気の原因として、何よりもまず体液の状態に注目するのが当然の考え方であった。また、体液は、体の状態だけではなく、性格や気質など、人間のさまざまな特性にかかわると考えられていた。すなわち、特定の体液の量が多ければ、その体液が支配する性格が表に現れると信じられていたのである。この考え方は今でも生きていて、感情の起伏が少なく、不活発で表情に乏しいような人間を「粘液質」などと形容したりする。「粘液質phlegmatic」という言葉は、ギリシャ語由来の「粘液phlegm」にもとづく。
ここでいう「粘液」とは、古代ギリシャ医学における「4体液」〔血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁〕の一つに相当する。
体教説を唱えたのはヒポクラテスやガレノスだが、もちろん彼らは、現代医学でいう「ホルモン」の存在を知っていたわけではない。ホルモンとは、体内でつくられ、おもに血液によって運ばれる物質のことである。ホルモンを研究対象とする分野を「内分泌学」というが、この分野は20世紀に入って大きく発展をとげ、結果として古代ギリシャの体液説を復活させることとなった。すなわち、体内に存在する液体、すなわちホルモンが、人間の体の状態に影響を与えるという考え方である。
体が覚醒から睡眠へと移行するにつれ、神経システムにはさまざまな変化が生じる。となると、ホルモン分泌に関しても、何か体内で変化が起こるのではないかーー研究者がそう考えたのも当然のなりゆきであろう。神経システムと同様、体内の特定の腺(分泌腺)から放出されるホルモンは、さまざまな生理学的プロセスを通じて機能する。種々のホルモンの中には、性ホルモンのように特定の器官に対して働きかけるものもあれば、脳をふくめ、体全体に働きかけるものもある。後者の例として、「成長ホ
ルモン」があげられる。成長ホルモンは、体内の代謝を調節し、動物の成長をコントロールする。
睡眠との関連で最初に研究されたホルモンは成長ホルモンである。研究の結果、成長ホルモンは脳下垂体から分泌されることがつきとめられた。1945年のことである。また、それからほどなくして、成長ホルモンは、筋肉や骨など、体組織の成長に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。当時の説によると、成長ホルモンの分泌は日中に高まると考えられていた。
具体的には、食後や運動時、あるいは精神的ストレスを受けているときに分泌されると信じられていた。したがって、1968年に日本の高橋康郎らが新説を発表したとき、学界の驚きは大きかった。高橋らによると、一日のうち、成長ホルモンの分泌量がピークに達するのは、睡眠中、つまり睡眠第3段階と第4段階に達した頃だというのである。

成長ホルモンとコルチゾール

成長ホルモンとコルチゾール


 
この現象に関して年齢差は観察されなかった。成長ホルモンの分泌と睡眠の状態のあいだには、どのような関係があるのか。これを調べるために、高橋らは被験者の睡眠をコントロールし、ホルモン分泌量を計測した。たとえば、被験者の就眠時間を12時間遅らせたところ、成長ホルモンの分泌パターンも12時間遅くなった。眠っている被験者を起こして、2〜3時間、あるいはそれ以上の時間覚醒させておき、それから眠らせると、眠った後でふたたびホルモン分泌がピークに達することが観察された。これらの実験から、脳下垂体から成長ホルモンが分泌されるためには、まず睡眠につくこと、そして、第3段階〜第4段階の深い睡眠に達することが必要だと考えられる。
一方、べつの実験結果によれば、成長ホルモンの分泌にとって、覚醒から睡眠へというプロセス自体は必要ではなく、深い睡眠に入ること、デルタ波(高振幅徐波)が現れることこそが重要なのだという報告もある。だがこの仮説に対し、睡眠中の成長ホルモン分泌と深睡眠のあいだに直接の関係はなく、それぞれべつのメカニズムによってコントロールされているという主張もある。というのは、実験的に薬物投与を行なうことで、成長ホルモン分泌と深睡眠を分離することができるからだ。つまり、通常の深睡眠の状態にまったく影響を与えることなく、成長ホルモンの分泌だけを完全におさえることもできるし、逆に、成長ホルモンの分泌を通常のレヴェルに保ったまま、深睡眠だけを抑制してしまうことも可能なのである。要するに、成長ホルモンの分泌と深睡眠という2つの現象は、それぞれ独立した別個のメカニズムによって制御されてはいるが、たがいに密接な関係にあるのだと考えられる。
他のホルモンを調べてみると、成長ホルモンほど睡眠リズムに同調したホルモンは見あたらない。たとえば、コルチゾールと呼ばれるホルモンは、副腎から分泌され、代謝促進作用をもつ。このホルモンは、生体の受けるストレスに応じて分泌量が増大する。その主な働きは、環境の急激な変化などといった緊急事態に対し、利用できるエネルギーを体内に準備することである。私たちの体内では、覚醒直前にコルチゾールの分泌が非常に盛んになるのだが、これも、覚醒後の肉体的・物理的なストレスに対し、「体の準備をととのえている」のだと考えれば納得できる。コルチゾールの分泌量は、一晩の睡眠がおよそ中ほどをすぎたあたりで増え始め、小さな増減を繰り返しながら覚醒直前にピークを迎える。このように、入眠時と覚醒時のコルチゾールの血中濃度には非常に大きな差があるので、睡眠中のコルチゾール検査を行なう場合は、「いつ」血液採取をしたかということを重視しなければならない。
睡眠時のコルチゾール分泌量は、なめらかな曲線を描いて増えていくというよりも、小さなピークを繰り返しながら、断続的に増えていく。このことから、コルチゾールの分泌をレム睡眠と結びつけて考える研究者もいる。各レム睡眠の継続時間は、一晩の睡眠の後半に向けて1つまり睡眠サイクルを繰り返すにつれて長くなる傾向にあるわけだが、このレム睡眠がコルチゾール分泌をうながす上で重要なきっかけを果たしているという主張である。
ところが、入眠時刻を実験的に数時間遅らせたとしても、コルチゾール分泌量はそれにすぐ同調するわけではない。数日間同じ実験状態を続けて、やっとコルチゾールの分泌パターンにも変化が現れる。すなわち、コルチゾールの分泌は、成長ホルモンの分泌と異なり、睡眠リズムに直接同調しているわけではなく、別個の体内時計によってコントロールされていると考えられる。
ただし、成長ホルモンと同様、睡眠リズムに同調した分泌パターンを見せるホルモンも存在する。たとえば、思春期における性腺刺激ホルモンがその一例だ。性腺刺激ホルモンは、成長ホルモンと同じく脳下垂体から分泌され、性腺(生殖腺)が生産する性ホルモンの分泌をコントロールする。したがって、生殖器の成長や、思春期における第2次性徴の出現なども、この性腺刺激ホルモンに依存している。そして、思春期における性腺刺激ホルモンの分泌は、おもに睡眠中に観察されるのである。一方、思春期以前、あるいは思春期後の性腺刺激ホルモンの分泌量を調べると、睡眠時と覚醒時でとくに量の差は見られない。
コルチゾールと同様、性腺刺激ホルモンはたえず体内で一定量が分泌されているわけではなく、周期的に増減を繰り返している。具体的にいうと、脳下垂体は90分おきに性腺刺激ホルモンを放出しているのである。しかも、さらに研究が進むにつれ、性腺刺激ホルモンが生殖器に作用をおよぼすためには、この周期的
な分泌パターンが非常に大切だということが明らかになった。すなわち、脳下垂体からのホルモン放出が「90分周期」という一定のパターンからはずれてしまうと、生殖器は脳下垂体からのメッセージを「解読」できず、ホルモンに対して正しい反応をしなくなるのである。いいかえれば、もし性腺刺激ホルモンがたえず一定量だけ分泌されたとすると、性腺に対して「刺激」を与えるどころか、むしろ「抑制」を加えてしまう結果となる。
以上のように、体内のホルモン分泌をコントロールする上で、「眠る」という身体現象は非常に重要な役割を果たしている。生体が睡眠始めると、特定の内分泌器官が活動を開始し、放出されたホルモンは血流を介して生体の各部位に働きかけるのである。

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