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さまざまな睡眠障害

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さまざまな睡眠障害

時差ボケ・交代勤務の睡眠障害

パイロットにみられる時差ボケ、昼夜交代勤務者などの
不眠・過眠症状など、スケジュールの変化によって一過
性に経過する概日リズム性睡眠障害について概説する。
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睡眠覚醒スケジュール障害(sleep wake schedule disorders)とは、その人個人の睡眠パター
ンが二四時間社会で望ましいとされている睡眠・覚醒の時間帯と合わなくなることをいう。そ
の結果、通常眠るべき時間に不眠を、目覚めていなければならない時間帯に過眠を経験する。
この診断名は一九七九年睡眠障害国際分類で提唱された。しかしこの概念は一九九〇年に改訂
された国際分類では包括的な概日リズム性睡眠障害(circadian rhythm sleep disorders)という
分類に変更されている。
概日リズム性睡眠障害のなかには発症が一過性のものと持続性に経過するものがある。とくに一過性のものとしては、時間帯域変化(ジェット時差)症候群と昼夜交代勤務による睡眠障
害があげられている。いずれも外界の時間的手がかりの不規則化や急激な変化(睡眠覚醒スケ
ジュールの変化)による睡眠障害である。これらの障害は外在因つまり社会環境的な要因で起
こり、一過性に経過し環境の変化がなくなると症状が消失するという特徴をもつ。
以上のことから、現在では睡眠覚醒スケジュール障害という分類は概日リズム性睡眠障害に
変わっているが、ここではいわゆる睡眠覚醒スケジュールの変化によって生じる時間帯域変化
(ジェット時差)症候群(以下、時差症状と略)と昼夜交代勤務性睡眠障害(以下、交代性勤務と
略)による睡眠覚醒リズム障害について述べることとする。
時差症状とは
五時間以上の時差のある地域をジェット機で急激に移動したさいにみられる、一過性(とき
に持続性)の心身の不調状態を時差症状(Jet Lag)という。

航空乗務員における時差症状群の発生状況

航空乗務員における時差症状群の発生状況


時差症状は多くの運航
乗務員にみられ、パイロットたちが睡眠覚醒
障害に悩まされていることがわかる。時差症
状は、もちろん睡眠覚醒障害のほかにも、だ
るさや疲労感も強く、集中困難や能率低下な
どの訴えも多い。さらに胃腸症状もみられ、
便秘や下痢、食欲不振なども目立つ。
時差症状の成因として、
⑴生体リズムと到着地の生活時間との間
に大きなずれができること
⑵ずれた体内リズムはしだいに現地の生活時間に再同調していくが、リズム間に同調速度の差があり、そのためリズム間の協調性が乱
れ、説同調を起こすことが考えられる。
さらに、高度約三万フィートの、減圧、低酸素という機内環境や車行夜間飛行などの睡眠不
足、疲労感が重なり、時差ボケに影響する。以上のような状況で生体リズムが再同調していく
過程が時差ポケとして体験されるのである。
それでは実際の時差症状を起こした例について述べてみよう。
時差症状の実例
症例はニハ歳の女子客室乗務員、経験年数は六年である。三年くらい前より国際線の乗務と
なったが、最近、フライト中の睡眠不足がひどくなってきた。寝つきはいいが入眠後、平均二、
三時間で目が覚めてしまい以後眠れない。そのため、頭がボンヤリするし、食欲低下、心身と
もにだるく、仕事に余裕がなく、追いかけられるようで不快な疲れが残ってしまう。そのせい
か、目の周りや口の周辺に皮膚炎が起こりその治療中である。睡眠障害は帰国後も回復せず、
やっと五、六時間眠れるという日々が続き、十分回復しないまま次の常務につくという状況で
あった。この傾向は、アメリカや、北回りのような時差の大きい長大路線の時にひどい。時差
がないフライトの後では八時間くらい眠ってしまう。シカゴ便のフライトがあったが、乗務直
前に極度の緊張と手足がしびれて力が入らないという状態で相談にきた。
面接時、他の精神科的な問題所見は認められない。いろいろと眠れるような試みをしたり、
安定剤なども服用したがあまり変わらないのでやめてしまったという。ただ、睡眠障害が続く
ため、どこかおかしくなっているのではないか不安だと訴える。性格的には神経質できちょう
めん、対人配慮性の高い傾向がみられ、これらの症状が勤務に影響することをひどく心配する。
心理テスト(MMPI)では脚町などの神経症スコアが高い。
本例は、本人の希望もあり、国内線乗務に変えて、一ヵ月で回復した。この例では、時差に
より睡眠覚醒スケジュールの障害が繰り返し起こったために生じたものと考えられる。このよ
うな例では、訴えの中心が時差による自覚症状に集中し、時差だけが解消されれば、時差ボケ
とそれによって二次的に派生している心身症状は減少すると思っている点が特徴的である。

東方飛行のほうが時差症状がひどい

最近の時差研究の結果、時差による睡眠障害は飛行の方行に差が認められることが明らかに
なってきた。たとえば、日本より束へ向かうほうが西よりも睡眠が障害されやすいといわれて
いる。日本より東に向かう場合(サンフランシスコ)には、到着地の夜の睡眠は日本の基準夜
に比べて、総睡眠時間の短縮、中途覚醒が多く、とくに早朝覚醒後眠れない傾向や、それにと
もなう睡眠内周期の乱れ、レム睡眠出現率の減少などがみられている。これらの所見は、われ
われが通常サンフランシスコで経験する主観的睡眠評価と一致しているように思われる。 日本より西へ向かう場合(コペンハーゲン)には、基準夜に比してレム睡眠の出現率が増加
し、レム潜時の短縮や、睡眠前半のレム睡眠持続時間(REM‐sequence)が長くなる傾向がみ
られた。しかし、東方飛行のさいにみられた睡眠時間の短縮や周期性の乱れはない。
一方、時差が三時間というニュージーフンドでは睡眠は基準夜と同様に保たれ、睡眠内周期
も規則的であり、東西のような睡眠障害は認められなかった。
東西飛行で差がある理由として、理論的には一日が短くなってしまう東方飛行では(サンフ
ランシスコの夜の睡眠は日本の午後からの睡眠に相当する)、リズムを前進させて現地に同調する
ことが要求されるのに、われわれの本来の生体リズム周期が二四時間より長いということがあ
げられる。つまり二四時間より長くなりがちな生体リズム周期を、短くさせようとしなければ
ならないからである。さらに時差により時間の手がかりが失われるような状況では、生体リズ
ムはフリーラン(自由継続)のような位相後退を起こしているため、その力にさからって位相
を前進させなければならないと困難が加わるものと考えられている。
時差による睡眠覚醒障害の対策
高照度光を使う
まず現地の自然な同調因子として利用できるものとしては強力な太陽光線による明るさである。近年になり、本間らはヒトのリズムがフリーランしている状況で、その主観的な活動期の
早期、つまり睡眠から目覚めた直後の高照度光照射が睡眠覚醒リズムや体温リズム位相を前進
させることを認め、ヒトのサーカディアンリズムにも光に対する位相反応性のあることを示し
た。
それでは以上の成績をもとに、実際の到着後、光の浴び方を具体的に述ぺてみよう。
まず時差ポケの強い東行飛行(成田?サンフランシスコ)を例にとると、到着第一日は、午前
中はホテルの部屋でカーテンを引いて二、三時間くらい仮眠し、機内での寝不足解消につとめ
る。しかし、生物時計の位相前進相に当たる現地の午後には、無理にでも起きて戸外で高照度
光(自然光)に当たるようにする(起きられない場合にはそのままホテルで眠ってしまい、その夜
はまったく眠れなくなってしまう)。できれば海岸や、プールサイドでふりそそぐ陽を浴びよう。
この自然光が生体リズムの位相前進をさせ、同調を早くすることになる。翌日もなるべく午後
に高照度光に当たるようにする。その結果、睡眠相を前進させて再同調させなければならない
東行の時差ボケ解消を早めることになる。
睡眠薬をうまく使う
生体リズムの再同調を促進するのには、上述の光によって位相を変えることのほか、リズム
周期を変化させて同調しやすくする方法が考えられる。東方飛行では周期を短くし、西方飛行では長くするようにする。そのためは超短時間作用型の睡眠剤(ゾピクロン、ブロチゾラム、トリアゾラムなど)を使用し、現地の夜に合わせて眠れるようにする。とくに到着第二日、第四
日は不眠が強いので睡眠剤の使用は効果がある。
ただし、時差調整用にトリアゾラムとアルコールを併用した旅行者が一過性の健忘を起こし
たという報告もあり、睡眠剤の使用にあたっては慎重な配慮が必要である。
昼夜交代勤務性睡眠障害
交代性勤務睡眠障害の主要症状は、勤務スケジュールに関連して起こる一過性の不眠や過眠
である。とくに深夜勤務後の日中の睡眠は正常な睡眠をとりにくい。睡眠環境に十分配慮して
も睡眠短縮が起こり、主観的にも睡眠は不満足でリフレツシュしないという。
クナウト、ルーテンフランツによって行なわれた1230名の交代性勤務者の昼間睡眠と夜
間睡眠のアンケート調査による結果では、夜勤明けの昼間睡眠がいちじるしく短く、次に朝早
い勤務がある前夜と勤務後の睡眠が短くなっている。そこで、いつも問題となる夜勤後の昼間
睡眠の内容はどのようになっているのかをみてみよう。
深夜勤務明けの昼の睡眠は、①持続時間が短く、②レム睡眠が早く出現し、③最初の睡眠サ
イクルが短く、④目覚めやすく、⑤自律神経系の不安定さをともなっているという特徴がある。このような睡眠の特徴が覚醒後の眠気、疲労感、
身体的違和感と関連をもつものと考えられてい
る。
それでは交代性勤務者の望ましい睡眠のとり
方を考えてみよう。

図1 交代制勤務者の睡眠時刻と睡眠継続時間

図1 交代制勤務者の睡眠時刻と睡眠継続時間


交代制勤務者を対象として睡眠開始時刻と睡眠持続時間の関係を調べたもの。日中の睡眠とくに正午から夕刻にかけての睡眠は持続しにくいことがわかる
上手な睡眠のとり方
 図1は、クナウト、ルーテンフランツによる
交代性勤務者の睡眠時刻と睡眠時間の持続をみ
たものである。二二時から翌日の一時頃にかけ
て就眠した場合にはその眠りは八時間くらい続
いているが、正午過ぎ頃から一九時頃に眠ると
二〜四時間の睡眠で終わっている。このことは、
われわれに睡眠覚醒リズムが備わっていること
を示唆するもので、とくに眠気が少なくなる夕
方から二〇時頃にかけては睡眠が中断する傾向
がみられている。 したがって、深夜勤務明けの睡眠は、なるべく朝早い時刻に就眠することが望ましいという
ことになる。正午過ぎになると、寝つきはよいが、数時間で目が覚め、結果として睡眠不足が
蓄積されることになってしまう。深夜勤務や早朝勤務での睡眠不足を補うためには適当な仮眠
が必要となる。従来の報告では深夜勤務に入る前の仮眠は夜勤中の眠気を少なくし、反応時間、
認知機能や作業能力低下を防ぐ予防効果があるという。
さらに睡眠環境を考えれば、とくに昼間睡眠の場合、寝室の条件を整えることが必要である。
部屋の騒音を防ぐように工夫し、モニターつきの湿湿度計をつけ、自分に合った適切な睡眠環
境を作るようにつとめる。よい睡眠をとるためには、環境因のほかにも交代性勤務者の個人差
や耐性ということも考慮されなければならない。
活動型によって朝型、夜型タイプに分けると、一般に夜型は夕方の勤務に合っていることも
あり交代性勤務に強い。他方、朝型の人は朝早い勤務に合っているが、深夜勤務後の睡眠が障
害されやすく、典型的な朝型は深夜勤務中にうとうとすることが多い。このため、交代性勤務
にドロップアウトする人は朝型に多いといわれる。
また、体温リズム振幅の高低は交代性勤務への耐性と関連するという。体温の振幅の高い人
は、外的同調因子が変化してもそれにすぐは再同調しにくい。それに反して、体温サーカディ
アンリズムの振幅が低い人は交代制耐性が弱く、症状を呈しやすい。またふだんから眠りへの
不全感やこだわりをもち疲労を訴える人は、交代性勤務への耐性が低い。さらに加齢は耐性を低下させる因子としてはたらく。七〇〇人の交代性勤務者での調査では、年齢が睡眠の質や覚
醒度の重要な因子であり、四〇代では睡眠の量も質も若い人に比べて低下するという報告もあ
る。
勤務耐性の見直し
生体リズムの性質を考えれば、交代性勤務者はなるべく昼中心(day‐oriented)の社会生活
から大きくずれないようにするほうがよい。そのためには、
⑴深夜勤務を少なくするか深夜勤務後の休日や夕勤務を多くすること
⑵勤務体制のローテーションは時計回りにし、一〜二日でローテートすること
が望まれる。

睡眠覚醒リズム障害とはなにか

約一日を周期とするヒトの生体リズム。このリズムが乱れると睡
眠時間帯が慢性的に異常に遅れたりする。「宵っ張りの朝寝坊」
の極端な場合であり、通常の社会生活が営めなくなることもある。
眠れなくて困った経験は多くの人がもつ。これは「不眠症」と言われてきた。逆に、起きら
れなくて失敗した経験も、ない人はめずらしいだろう。これは、「不起症」とは言われず、「朝
寝坊」と言われてきた。また、「寝ぼけ」という言葉はあるが「起きぼけ」とは言わない。こ
れらの日常語が端的に示すように、ヒトは睡眠という現象を注目したが、起きているというこ
とは当たり前と思ってきたと言えるだろう。医学の世界でも、ある種の睡眠障害を睡眠覚醒の
リズムの障害ととらえだしたのは新しく、ここ二〇年くらいのことである。
ヒトの生体のはたらきは約一日を周期として変化している。これを概日リズムというが、このリズムは外界の刺激をすべて遮断しても自発的に続いてい
く。時刻はもちろん、昼か夜かもまったくわからなくした洞
窟や隔離実験室(アイソレーション・ユニット:isolation unit)
のなかで自由に生活させると、睡眠と覚醒が約二五時間の周
期で繰り返すようになり、これをフリーフンニング・リズム
(free‐running rhythm)という。ふつう人間は、この体内リ
ズムを明暗など自然界の刺激や社会的制約に「合わせて(同
調させて)」二四時間周期の生活を送っているのである。こ
の体内リズムが乱れたり、同調がうまくいかなくなったのが
睡眠覚醒リズム障害である。
表1 睡眠覚醒リズム障害の種類
1.一過性
時差症候群
交代制勤務による睡眠覚醒障害
2.持続性
睡眠相後退症候群
睡眠相前進症候群
非24時間睡眠覚醒症候群
不規則型睡眠覚醒パターン
その他
リズム障害にもいろいろある
上の表1に種類をあげた。外界のリズムが急激に変わってしまうことにより同調できなくなるの
が、時差症候群(いわゆる時差ぼけ)と、交代制勤務による睡眠覚醒障害である。両者とも現
代の生活様式が、外界の急激なリズム変化を強引に人間に押しつけてくるためと言える。これ
らは、個人差があるとはいえ、状況により誰にでも起こりうるものであり、一過性である。 一方、表中の他のものは、生体側の原因でリズムが乱れたり同調ができなくなってしまうも
のであり、慢性に持続した場合に障害となる。この中で睡眠相後退症候群、非二四時間睡眠覚
醒症候群、不規則型睡眠覚醒障害の三者が頻度、社会生活への影響度からいって重要なもので
ある。

睡眠相後退症候群

睡眠時間帯が異常に遅れていて、社会生活上必要あるいは望ましい時間帯に睡眠をとること
ができず、通常の社会生活が困難となる状態をいう。いわゆる「宵っ張りの朝寝坊」の極端な
場合で、早く寝たくとも眠れず、学校や仕事に間に合うように起きられない。もともと夜型の
人に多く、ふつうはI〇〜二〇代前半に発症する。勉強、アルバイトや遊びなどの夜ふかしが
契機となり、それが元に戻らなくなったり、胃潰瘍やぜんそくなどの病気が引き金になったり
することもあるが、約半数ではとくに誘因がない。早く床についても眠れず、多くは午前二時
〜四時頃にやっと寝つく。朝起きることが非常に困難で、昼過ぎまで寝てしまうこともしばし
ばで、日中はあまり頭がはたらかず夕方頃からやっとさえはじめ、夜には眼がパッチリとして
くる。
学校や仕事には遅刻が多く、周囲は病気とは思ってくれず肩身の狭い思いをし、社会人では
退職に追い込まれることも少なくない。その結果、夜間の仕事や、作家、コピーライターなど比較的自由にスケジュールを組める仕事に従事する人が多い。
ふつうの不眠症と異なるのは、休眠などで時間的な制限がないときには、睡眠はおだやかで、
睡眠の質と持続時間がおおむね正常である点である。また後述の非二四時間睡眠覚醒症候群と
の違いは、睡眠覚醒の周期そのものは二四時間を保っている点である。診断基準を下の表2に示した。
表2 代表的な睡眠覚醒リズム障害の国際診断基準
睡眠相後退症候群
A.望ましい時刻に入眠または覚醒することができない
B.睡眠時間が望ましい時刻に比べ遅れている
C.このような症状が少なくとも1ヵ月以上も続く
D.休暇などで時間的な制限がないときには,患者の睡眠には次
のような特徴がみられる
1.睡眠は静穏で,睡眠の質と持続時間は正常である
2.患者は自発的に覚醒する
3.睡眠時間は遅れたままで24時間の周期性を保っている
E.2週間以上の睡眠日誌で睡眠時間帯の遅れが確認されること
F.睡眠時間帯の遅れが次のような検査で確認されること
1.24時間睡眠ポリグラフィまたは2夜連続の睡眠ポリグラ
フィとこの間の日中のMSLT検査・
2.連続体温検査で,最低体温が睡眠後半にあること
3.入眠困難や過眠を引き起こすような他の睡眠障害がない
こと
最低基準:A十B十C十D十E
゛マルチプル・スリープ・レイテンシィ・テスト(Multiple旦leep latency
Test):日中の眠りやすさを調ぺる特殊な脳波検査
非24時間睡眠覚醒症候群
A.原発性の入眠または覚醒困難
B.入眠と覚醒時刻が24時間の睡眠覚醒パターンの安定した同調
を示さずにしだいに後退していく
C.上記の睡眠パターンが6週間以上続く
D.睡眠時間帯の連続的な後退が以下の検査で示されること
1.24時間に固定された睡眠覚醒スケジュールのもとで連続
して数日間記録されたポリグラフィ
2.5日以上にわたる体温の連続記録でその最低点の出現時
刻がしだいに後退する
E.入眠困難や過眠を引き起こすような他の睡眠障害がないこと
最低基準:A十B十C

睡眠相後退症候群

睡眠相後退症候群


非二四時間睡眠覚醒症候群
入眠と覚醒時刻が二四時間より長い周期で繰り返し、通常の社会生活が困難となる状態をい
う。多くは周期が約二五時間くらい、すなわち毎日寝る時刻が一時間くらいずつ遅れていく。
外界の刺激があるにもかかわらずフリーランニング・リズムになっている状態である。睡眠の
質と持続時間には大きな異常はなく、一度起きてしまえば眠気はなく元気に過ごせる。ある時
期には社会生活にちょうどよい入眠時刻と覚醒時刻であるが、しだいにずれていき、ある時期
には朝方眠り夕方起きるといった、まったくの昼夜逆転生活となってしまう。
この症候群は、視力障害をもつ人によく見られ、また不登校の小児、自閉症、うつ病などで
も見られる。もちろん健康だった人にも発症してくる。もともと夜型の人に多く、ふつう10〜20代前半に発症するのは睡眠相後退症候群と同様である。症例を図2に、診断基準を表2に示した。
非24時間睡眠覚醒症候群

非24時間睡眠覚醒症候群


 
不規則型睡眠覚醒障害
文字どおり、入眠覚醒時刻がばらぱらで不規則な場合である。一日に三回以上睡眠をとるこ
ともある。

リズム障害の実態

リズム障害は近年、マスコミの紹介などにより少しずつ知られてきているが、いまだ一般的
には理解されていないため、リズム障害に悩む人ぴと自身が病気とは思わずあきらめてしまっ
ている場合も多いと思われる。医療機関を受診した場合でも、ふつうの不眠症やうつ病と考え
られ、適切でない治療を受ける可能性がある。また必死の努力にもかかわらず状態が好転せず、
ともすれば周囲から怠けあるいは性格の問題として冷たく扱われるため、本人は自責的、抑う
つ的になり、そのためにさらに睡眠覚醒リズムが乱れるといった悪循環に陥りやすいことも考
えられる。
睡眠覚醒リズム障害の実態を調べるために、九〇年代はじめ、日本で、マスメディアを用い
た全国規模の多施設共同研究が行なわれた。これは、全国の新聞に睡眠覚醒リズム障害に関す
る啓蒙記事を掲載し、思い当たる個人から葉書で問い合わせを受け、睡眠状況に関するアンケ
ート用紙と1カ月分の睡眠記録用紙を送付し、返送された資料から睡眠覚醒リズム障害の疑いがあるものを最寄りの施設に紹介し受診してもらったものである。
四二九五名から問い合わせがあり、そのうち実際に受診したものが二〇二名(四・七%)、
診察の結果最終的に睡眠覚醒リズム障害と診断されたものがこ一八名(三・〇%)だった。こ
のうち三六名が診断当時精神障害を有していて、これら基礎疾患を除いた九二名でみると、睡
眠相後退症候群が五八・七%と最多で、不規則型二〇・七%、非二四時間睡眠覚醒症候群が一
五・二%であった。その後の経験でも、リズム障害のうち睡眠相後退症候群が六〜ハ割と最も
多いことが明らかになっている。
睡眠相後退症候群については一般人口での有病率が調べられていて、ノルウェーの厳密な調
査で、一八〜二二歳人口の〇・二五%と報告されている。名古屋大学の調査でも、高校生の
〇・四%が睡眠相後退症候群であろうと推定されている。
診断の実際
睡眠覚醒リズム障害の診断の基本は、睡眠時間帯の記録、すなわち床についた時刻、寝入っ
た時刻、目覚めた時刻、床を離れた時刻、昼寝をしたらその時間を、専用の記録紙につけてい
くことで、これを睡眠日誌という。この睡眠日誌を四週間くらいつけてもらうことにより、睡
眠時間帯の遅れや周期の長さ、規則性が一目瞭然となる(上にある図1、2参照)。また、睡眠覚醒以外のリズム、とくに体温の日内変動のリズムを調べることは重要で、そのため携帯型の体温連続
測定装置により、日常生活をしながら1〜数週間くらいの体温連続記録を行なう。さらに一夜
の睡眠の量および質を知るうえで、睡眠中の脳波、眼球の動き、筋肉の緊張度などの変化を測
定する睡眠ポリグラフ検査を行なうこともある。
これらの検査によりリズム障害の有無、種類、程度を調べるT万で、基礎疾患の有無も検討
する。とくに精神分裂病、うつ病、神経症などの精神疾患で睡眠が乱れ、睡眠相後退症候群や
不規則型睡眠覚醒障害を呈することがある。このように基礎疾患がある場合には、二次性の睡
眠覚醒リズム障害といい、基礎疾患の治療が優先される。
リズム障害の治療
リズム障害の原因が解明されていない現在、絶対的な治療法はないのが現状である。しかし
以下にあげる治療法を単独で、あるいは種々組み合わせることにより、頑固なリズム障害が劇
的に改善する例が少なくない。
時間療法
睡眠相後退症候群で用いられる方法で、患者によっては自分で試みている場合もある。遅れた入眠時刻を前に戻していくのはむずかしいが、より後ろに遅らせていくのは比較的容易なの
で、入眠時刻をわざと一日三時間くらいずつ遅らせていき、望ましい入眠時刻になったら今度
はその時刻に入眠する努力をする(固定化という)。一時的には効果が見られることが多いが、
それを長期に維持することは困難で、不規則な生活などを契機に再び元に戻ってしまいやすい。
この方法で望ましい入眠時刻をまず導入しておいて、他のさまざまな治療を開始することも多
い。
高照度光療法
睡眠覚醒のリズムは、体温の日内変動のリズムから強い影響を受けている。人間の体温のリ
ズムは、明るい光を朝浴ぴると前進(短縮)し、夜中に浴びると後退(延長)することが明ら
かにされている。この性質を利用し、高照度の光を朝の一定時間浴びて体温のリズムを整え、
睡眠覚醒のリズムを整えるのがこの治療の原理である。
ふつうに家庭で用いる程度の照明では効果がないため、その五〜一〇倍以上の照度、すなわ
ち二五〇〇ルクス以上が得られるような特殊な照明器(医療用として貸し出しや販売がされてい
る)を用い、起床後一〜二時間くらい浴びる。この間、照明器の前に座っていて一分間に一回、
数秒程度光源の方を見ればよく、読書、手作業、食事などをしてかまわない。望ましい起床時
刻から治療を開始するために、前述の時間療法を併用したり、数日間強制的に起こして治療したりする。
光療法の効果は比較的早期、二週間以内に見られるので、三週間以上たっても効果がない場
合には中止するか、他の治療法と併用する。
薬物療法
⑴ビタミンB12
ビタミンB12は、めまい、しびれその他のさまざまな症状に効果がある物質で、リズム障害に
効果があることが偶然発見された。その作用機序については、睡眠覚醒リズムのフリーラン周
期を短縮すること、光などの外界の刺激への感受性を高めてリズムを同調しやすくすることそ
の他が報告されているが、現在のところ十分には解明されていない。ふつう一日量一・五〜三
暉を内服する。
前述の多施設共同研究では、ビタミンB12により中等以上の効果があった例が、非二四時間睡
眠覚醒症候群の三分の二に、また睡眠相後退症候群の三分の一に見られた。また、ビタミンB12
が無効であった例にビタミン恥と光療法の併用を試み、四分の一で有効との結果であった。
その後、恥の効果が心理的な効果によるものかについて明確にするため、偽薬と効果を比べ
る二重盲検試験が行なわれた。その結果、B12は偽薬と比べて統計的には効果が高いとはいえな
いと結論づけられた。しかしながら、臨床の場では、試みられてよい薬と考えられる。
⑵睡眠薬
望ましい入眠時刻の二〜三時間前に睡眠薬、とくに作用時間の短い薬(トリアゾラムなど)
を内服することで、入眠しやすくし、リズムを整える方法である。
⑶メラトニン
近年ブームになっている松果体ホルモンのメラトニンにより、睡眠覚醒リズムが改善する場
合がある。メラトニンは大量に服用すると催眠作用をもつが、催眠作用を出さない少量のメラ
トニンで、リズムを改善(同調を促進)する効果がある。〇・三〜一・〇mgのメラトニンを夕
方〜夜に服用する方法が効果的といわれている。しかしまだ一般的な治療ではなく、長期に服
用したときの副作用は未知である。自己判断による安易な服用は慎むべきで、専門の医療機関
と相談しながら服用する必要がある。
現代生活はますます夜間の活動性が高まり、人ぴとは夜ふかしをしがちであるが、これは決
して好ましいことではなく、素因のある者は容易に睡眠相後退症候群に陥ってしまい、睡眠覚
醒リズム障害はますます増加するものと思われる。この疾患の理解が広まり、周囲の偏見が減
り、適切な治療を受ける機会が増え、それらによりさらに新しい治療、予防法が見出されてい
くことを期待している。

ねぼけ、はぎしり、いびきを科学する

ねぼけ、はぎしり、いびきはしばしば日常的に遭遇する現象で
あるが、いずれも「睡眠障害」である。どれも周囲に迷惑をか
けるだけでなく、健康上重大な危機をもたらす可能性がある。
ねぼけ、はぎしり、いびきは睡眠中に生じる現象で、とりわけ、はぎしりといびきはわれわ
れが日常的にしぱしば遭遇するものである。したがって、それらが睡眠科学の分野では睡眠時
随伴症(パラソムニア)と呼ばれる睡眠障害の一種に分類されているといわれても、一般の方
にはピンとこないだろう。ただし、なにごとも程度というものがある。ねぼけ、はぎしり、い
ぴきによって、愛すべき夫や妻、同居する家族や隣家の住人にまで不快な思いをつのらせたと
したら、これはただのねぼけ、はぎしり、いびきではすまされない。ここでは、そのようなた
だごとではないねぼけ、はぎしり、いびきに科学のメスをいれてみよう。
ねぼけの特徴
ねぼけとは、起きても完全に目を覚ましきらず、ぼんやりしていること、また、変な行動を
することをいい、小児期によくみられるものである。医学的には、これまでは夢遊病あるいは
夢中遊行といわれてきたものに相当する。しかし、睡眠研究の進歩により、小児期に主にみら
れるねぼけは、夢をみている状態からではなく、徐波睡眠期(段階3や4)、とくに段階4から
生じていることが明らかとなった。最も新しい睡眠障害の国際分類では、ねぼけは睡眠遊行
(症)と呼ばれている。
ねぼけのエピソードは単にベッドの上に座ることから、歩くこと、そして、明らかに大慌て
で「逃亡」を試みるものまである。ねぼけ者をその場で覚醒させることは困難なことが多いが、
覚醒した際にはしばしば精神的に錯乱している。通常は、エピソードについて記憶していない。
ねぼけは徐波睡眠期から始まるので、夜間の最初の3分の1、あるいは断眠などで徐波睡眠が
増加している時間帯に最も頻回に起こる。ねぼけのエピソードは自発的に終了するか、ねぼけ
者がベッドに戻ったり、横になったりして、結局はしっかりと覚醒しないままに眠り続ける。
ねぼけエピソード中に、とくに小児で、押し入れに排尿するといった不適切な行動を起こす
ことがある。ねぼけの結果、転落したり、けがをすることもある。また、ねぼけ者を覚醒しよ
うとした人に殴りかかることもある。夜驚(夜泣き)など、他の睡眠時随伴症を併発していることもある。
発症年齢としては、歩行可能になればねぼけは起こりうるが、四〜ハ歳が最も起こりやすい。
通常は、ねぼけは青年期以降になると自然に消失する。
ねぼけの発現機序
ねぼけは徐波睡眠から覚醒する過程の機序になんらかの障害があり、本来ならば睡眠中でも
脳の活動水準が上がると行動覚醒が起こるのに、ねぼけ者では不完全な覚醒しか起こらず、意
識が混濁したような状態が生じると考えられている。ねぼけのエピソード中の脳波検査ができ
た場合には、起き上がったり、動き回ったりしている時にも脳波には高振幅の徐波が引き続き
出現しているのがわかる。小児期にねぼけが多いのは徐波睡眠期が最も多く、しかも勢いよく
出現する年代であるとともに、外部あるいは内部刺激による眠りからの覚醒機構の発達が、ま
だ未熟なことが関係していると考えられる。
ねぼけとまぎらわしいレム睡眠時行動障害
レム睡眠時行動障害は、レム睡眠時の骨格筋の筋活動抑制の欠如、および夢内容と関連した複雑な行動の出現によって特微づけられる睡眠時随伴症の一つである。夢の内容を演じている
最中に、激しい寝言、殴る、蹴る、飛び跳ねる、そしてベッドから走り出すことが頻繁に出現
する。通常は、エピソード直後に報告された夢のイメージと関連しているので、睡眠遊行とは
区別できるが、行動だけでは困難な場合もある。このレム睡眠時行動障害の発症年齢は睡眠遊
行よりも一般的に年齢が高い。とりわけ、脳神経系に明らかな器質障害の認められない特発性
レム睡眠時行動障害の場合は、大部分が中年以降であり、発症やエピソードの増悪に心理的・
社会的な要因によるストレスが関与している例がかなり多くみられる。壮年期に発症する例は、
脳幹部を中心とした神経障害が原因となって生じるケースの比率が高い。
そのほか、前述した夜驚は睡眠遊行としばしば合併して、恐怖刺激から「逃亡」しようとし
ている夜驚エピソードでは睡眠遊行エピソードとは区別がつかない。後述する閉塞性睡眠時無
呼吸症候群の患者も睡眠遊行のエピソードを示しうる。
はぎしりの特徴
はぎしりとは、睡眠中に歯をすり合わせたり歯を食いしばったりするという特徴をもつ、型
にはまった運動を指す。歯の摩擦による音は同じ部屋で眠っている者に不快な思いをさせるも
のである。はぎしりの初期の徴候は歯科医によって見つけられるが、医療機関を訪れる主な目的はその不快な音を取り除いてほしいというものである。はぎしりは歯の磨耗、歯周組織の損
傷あるいは顎関節痛や顔面痛を生じさせる。はぎしりの自然経過についてはほとんど知られて
いない。
一生の間には八五〜九〇%の人が多少のはぎしりはするといわれている。その内の約五%が
医学的に問題になる状況までにいたる。子どもは大人と同頻度ではぎしりが起こると思われる
が、詳細はよくわかっていない。大人のはぎしりは通常、10〜20歳に始まる。正常発育の
小児の半分以上にはぎしりが見られ、平均発症年齢が10・5歳で、乳歯が抜けた直後の時期
にあたる。
はぎしりは、ときに家族性に生じると報告されている。はぎしりをする親の子どもは、はぎ
しりをしない親の子どもよりもはぎしりをする確率が高いようである。合併症としては、歯の
異常な磨耗をともなう歯の損傷が最も頻度の高い徴候であり、歯周囲構造への損傷も起こる。
咀嚼筋の肥大が起こり、そしてしばしば顔面痛をともなう側頭上顎関節障害が生じる。
はぎしりの発現機序
歯の微小な解剖学的異常が素因になっているかもしれないが、そうした異常を改善してもは
ぎしりが解消することはない。また、はぎしりと心理的・社会的な要因によるストレスとの関連についてはしばしば報告されている(図1)。

図1 情動ストレス,夜間の筋活動(はぎしり)と顔面痛の関連性6ヵ月以上にわたり観察した若い成人女性の例

図1 情動ストレス,夜間の筋活動(はぎしり)と顔面痛の関連性6ヵ月以上にわたり観察した若い成人女性の例


睡眠ポリグラフ検査で咬筋や側頭筋の律動的な活動が睡眠中にみられる。はぎしりはどの睡
眠段階からも生じうるが、最も多く出現するのは段階2からである。レム睡眠に優位に出現す
る者もいる。はぎしりが出現するときには、その直前や直後にK複合波や″波が出現し、睡眠
が浅くなったり、覚醒反応が生じたりすることが多い。また、はぎしりの出現と一致して指先
の血管の血流量減少や心拍数の増加などが一過性に認められるなどの交感神経活動の高まりは、
自律神経系の覚醒反応の徴候である。人工的に覚醒刺激を与えることによって、はぎしりを誘
発することが可能であることから、覚醒刺激がはぎしりを起こす咬筋や咀嚼筋を制御している
脳領域に対してその制御を開放させるようにはたらいていると考えられる。
心理的・社会的要因によるストレスによってはぎしりが強まるのは、ストレスが交感神経系
の活動水準を亢進させて覚醒しやすくするとともに、日中に抑えられていた情動が睡眠中に脱
抑制により開放されることで内的な刺激となり、覚醒反応が頻回に起こるためではないかと考
えられる。
いびきの特徴
いびきとは呼吸によって睡眠中に上部気道から騒々しい音が生じることをいい、通常、当人と同じ部屋に寝ている人や周囲にいる人の眠りを妨害するのに十分な音量をもつものをいう。
いびきは、一般的に①連続性いびきと、②間敵性いびきとに分けられる。前者は、基本的に
換気が低下せず、程度の差はあるが努力性呼吸があって、吸気時に優勢に生じる。後者は、換
気が低下した状態や上気道が閉塞して換気が停止した状態から、脳波に覚醒反応が生じた直後
に急激に大きな呼吸をしたとき、通常は吸気時に生じるものである。このタイプでは、無呼
吸・低換気の頻度が睡眠一時間につき五回以上になれば閉塞性睡眠時無呼吸症候群と診断され
ることになる。
無呼吸や低換気の出現頻度が高い場合は、しばしば、日中に強い眠気を訴え、じっとしてい
るとすぐに居眠りをするようになる。重症例では、赤血球の増加や、覚醒時にも動脈血中の酸
素の減少・二酸化炭素の増加が起こり、心不全に陥る。夜間に不整脈が生じ、突然死すること
もある。
身体へのいびきの影響には、両者間には非常に大きな違いがあるので注意が必要である。本
章では、主に前者の連続性のいびきについて述べ、後者については症例をあげるにとどめる。
〔症例〕
九歳の男児で、激しいいびき、夜尿を主訴として来院した。病歴としては、六歳頃より睡眠
中にいびきをかくようになり、その程度がしだいに増悪した。しばしば座った姿勢で眠り、その際には楽に呼吸をしているが、横になって寝ると苦しそうな呼吸になっていることを両親が
観察していた。
九歳頃より、いぴきはますます激しくなるとともに昼間によく居眠りをするようになった。
また、同じ頃より夜尿がときどき出現し、受診前にはほぼ毎日となっていたため、大阪大学医
学部附属病院耳鼻咽喉科を受診した。
両側性の口蓋扁桃肥大にもとづく睡眠時無呼吸症候群が疑われたので、夜間の睡眠ポリグラ
フ検査を行なったところ、頻回の睡眠時無呼吸と低換気がみられ、同年齢の小児の睡眠と比較
して、徐波睡眠が少なく、不安定な睡眠経過であった。両側の口蓋扁桃摘除術を施行したとこ
ろ、激しいいびきは完全に消失し、睡眠中の呼吸障害もほとんどなくなり、安定した睡眠経過
となった。夜尿は術後三週で完全に消失した。
いびきをかく人は、ごく短い中途覚醒のあとや寝つく直前ではいびきに気づいていることが
ある。いぴきは典型的には仰臥位のときに起こり、通常は連続性で、呼吸のたびに生じ、中途
覚醒や他の睡眠障害をともなわない。不眠や過眠といった訴えもない。
いびきをかく人は高血圧、虚血性心疾患や脳血管障害を発症しやすいが、それらの障害が上
気道閉塞、肥満あるいは他の原因によるのか明らかではない。
表1 いぴき者への助言
午後6時以降のアルコール摂取の中止
抗不安剤や睡眠剤の服用中止
体重減少
禁煙
側臥位での睡眠
鼻の通気の改善
一緒に寝る人に対して耳栓
いびきの発現機序
いずれにしても、いびきの音は咽頭組織(舌根部、軟口蓋、口
蓋垂、後咽頭壁)が吸気時に狭い口咽頭や鼻咽頭を通る騒々しい
気流によって振動することによって生じるものである。
いぴき者のなかには閉塞性睡眠時無呼吸症候群に発展する人が
いて、とくに体重増加やアルコール、抗不安薬や睡眠薬といった
中枢神経抑制剤の服用の際に可能性がある。また、口蓋扁桃の肥
大、下顎後退症、仰臥位での睡眠、鼻粘膜のうっ血や鼻閉、肥満
がいびきの素因となる(表1を参照)。
睡眠ポリグラフ検査では非周期性・連続性のいびきのエピソードがあり、通常は吸気時で、頻
度は少ないが呼気時もいびきが生じることが示される。胸廓や腹部の呼吸運動のある程度の乱
れは観察されるが、いびきは通常、覚醒反応を生じず、動脈血酸素飽和度低下や心臓の不整脈を
ともなわない。いびきはレム睡眠期や仰臥位の際により騒々しく、高頻度に起こる傾向がある。
しかし、最近になって、激しいいぴきは呈するものの、睡眠時無呼吸や動脈血酸素飽和度の
低下がなく日中の眠気を訴える患者群がいることが報告された。これらの患者のいびきは音が
大きいこと、吸気・呼気時にいぴき音が発生し、周期的に上気道抵抗が上昇するため呼吸努力も増大し、頻回の覚醒反応を起こすという特徴をもつので、上気道抵抗症候群(upper airway
resistance syndrome)と呼ぶことが提唱されている。日中の眠気の発現には頻回の覚醒反応が
関与している。これは、経鼻持続陽圧呼吸(nasal CPAP)という閉塞性睡眠時無呼吸症候群
に用いる治療法によって、上気道抵抗の上昇を抑えると睡眠が安定し、日中の眠気も消失する
ことが知られている。
睡眠時随伴症のなかで、一般によくみられるねぼけ、はぎしり、いぴきについて最近の知見
を盛り込んで解説を行なった。いずれの現象も程度の強いものは周囲に多大な迷惑をかけるだ
けでなく、健康上・身体上に重大な損害や危機をもたらす可能性があることを理解できたであ
ろう。これらの現象を周囲の人から指摘されたような場合には、睡眠の専門家に一度相談し、
正しい評価を受けることを勧めておきたい。

睡眠薬の上手な使い方

治療効果や持続時間の異なる睡眠薬の開発により、不眠のタイプに
応じた使い分けが可能となった。しかし睡眠薬の使用は、不眠対策
の一部にすぎず、こころの健康の保持・増進を離れてはありえない。
不眠症の治療には、まず、環境の改善、疼痛などの不眠の直接の原因に対する対策が重要で
ある。T万、各種の精神・身体疾患で不眠が生ずるので、不眠がなにによって生じているのか、
その原因を明らかにする必要がある。うつ病であればうつ病の治療が、神経症であれば神経症
に対する治療が優先されることは言うまでもない。
しかし、原疾患に対する治療と同時に不眠症状に対して睡眠薬を併用することは少なくない。
また不眠症状以外の症状がなく、不眠の原因もとくに見当たらない、いわゆる不眠症も少なく
なく、高齢者ではとくに増加してくる。
ここでは、睡眠薬にはどのような種類のものがあり、どのような治療効果・副作用があるの
か、治療効果を最大にし、副作用を最小にとどめる、すなわちどのようにすれば上手に睡眠薬
を使用できるか、とくに高齢者の場合にはどのような留意が必要なのかなどについて述べたい。
睡眠薬の種類と治療効果

図1 主な睡眠薬の消失半減期

図1 主な睡眠薬の消失半減期


睡眠薬を化学構造から分類すると、図1に示すごとく、バルビツール酸系睡眠薬、非バルビ
ツール酸系睡眠薬、ベンゾジアゼピン系睡眠薬、その他の睡眠薬の四群に大別できる。この中
でベンゾジアゼピン系睡眠薬が現在のところ睡眠薬の主流となっている。
各種ベンゾジアゼピン系睡眠薬のうち、薬理作用の中で最も目立つ差は、効果発現時間、と
くに効果持続時間である。これらに関する指標のうち睡眠薬の選択に有用なのは、睡眠薬の消
失半減期である。消失半減期の短い薬物ほど治療効果の出現が早く、それと同時に効果の消失
も早い。一方、半減期の長い薬物は、効果の発現は遅いが、持続時間が長いことになる。
理想的な睡眠薬とは、不眠症の患者に睡眠をもたらすだけでなく、すなわち短い睡眠時間を
ただ延長させるのみならず、より自然な睡眠に近い睡眠をもたらす睡眠薬ということになる。
その評価は、終夜睡眠ポリグラフィの方法を用い、睡眠の質と量に及ぼす睡眠薬の影響を厳密
に調べることにより可能となる。 ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、レム睡眠、ノンレム睡眠のどちらかに、あるいは両睡眠に多
少とも量的な変化を及ぼすことが明らかにされている。このように量的変化を及ぼさない睡眠
薬が理想的な睡眠薬といえるが、現在のところまったく影響のない睡眠薬はない。今後の研究
が期待されている領域である。
睡眠薬の副作用
表1 睡眠薬の副作用・有害反応
1.大量服用時における急性中毒
2.自覚的副作用
眠気,全身倦怠感,説力感,頭痛,頭重感,
めまい,発疹,夢(悪夢),いらいら感
3.翌日における持ち越し効果,残遺効果
2.の自覚的副作用の持ち越し
4.薬物依存,耐性
5.反跳不眠(rebound insomnia)
6.その他
記憶障害
睡眠薬の副作用を上の表1に示した。
自殺などの目的で使用した場合には急性中毒が起こる。とくにバルビツール酸系睡眠薬では量により呼吸抑制が起こり、死に至る場合もある。ベンゾジアゼピン系睡眠薬の場合、他の薬物やアルコール飲料と併用しない限り相当な量を一時に服用しても自殺の目的には使えない。
自覚的副作用として眠気、全身倦怠感などがある。これは、睡眠薬を服用後、薬理作用が現われているにもかかわらず、就床していない、入眠していない場合に自覚される。排尿などのために夜中に離床したときなどにも生ずる。これは睡眠薬の薬理作用として当然でもある。
これらの自覚的副作用が、翌日の日中、とくに午前中に生じた場合、これを持ち越し効果、残遺効果と称している。睡眠薬の消失半減期の長い薬物ではこの持ち越し効果が生じやすい。
薬物依存は、バルビツール酸系ならびに非バルビツール酸系睡眠薬で形成されやすい。一方ベンゾジアゼピン系薬物の場合、依存形成は他の系統の薬物に比較してはるかに少ないが、大量が長期間にわたって与薬された場合、とくに未熟で不安定な人格の患者では、依存が生じやすいので注意が必要である。
耐性は、非ベンゾジアゼピン系薬物の場合、ベンゾジアゼピン系薬物に比較して耐性が現われやすい。連用すると効果が減弱するので、与薬量を漸増しなければならない。ベンゾジアゼピン系薬物は、他の睡眠薬に比べ耐性が生じにくい。
その中でも消失半減期の長い薬物は、短い薬物に比較して耐性が生じにくいとされている。
反跳不眠とは、消失半減期の短い睡眠薬の服用を急に中止したとき、一〜三夜にわたって一過性の不眠が生ずることをいう。反跳不眠を防ぐためには、離脱を試みる前に、消失半減期の長いベンゾジアゼピン系睡眠薬を数夜にわたり服用する、すなわち半減期の短い薬物から長い薬物に切り換えることである。
記憶障害は、頻度は高くないが知られている。ベンゾジアゼピン系薬物の中でも消失半減期の短いトリアゾラムなどで生じやすい。記憶障害は、服薬後の一時期の記憶が消失する前進性健忘である。
半減期の長い睡眠薬は、翌日の日中まで薬理作用が持続するので、持ち越し効果に対する注
意が必要となる。
しかし、この持ち越された薬物の効果は、抗不安作用としてもはたらくので、神経症ならび
に近縁の精神疾患の患者、過度に緊張しやすい者などにはプラスの効果ともなる。
高齢者で注意すべきこと
高齢者に睡眠薬を与えるさい最も重要なことは、非高齢者に比較して副作用が現われやすいことである。高齢者では薬物の代謝、排泄などの機能が低下しているため、睡眠薬の作用が増
強されるからである。
とくに表1に示した自覚的副作用と翌日における持ち越し効果が目立つ。過度の鎮静が起こ
りやすく、一見して抑うつ状態に見えることもある。また夜間の中途覚醒時に離床し転倒する
危険性もある。したがって高齢者では、少量から、すなわち非高齢者の常用量の二分のIから
三分の一程度より開始し、治療効果、副作用を注意深く観察しながら、必要に応じて漸増する
のがよい。
高齢者では、不眠症のほかに、各種の精神・身体疾患を合併しやすい。そのため睡眠薬以外
の治療薬を睡眠薬と併用して使用していることが少なくない。その結果、薬物の相互作用が生
じ、睡眠薬の副作用が重篤となりやすい。関係者は、併用薬物の種類と量を把握しておく必要
がある。

睡眠薬の上手なやめ方

睡眠薬を使用し始めると、習慣化し、中止できなくなったり、肝障害を生じやすいなどの副
作用があったりして、「睡眠薬はこわいもの」と考える人たちが、患者・家族の一部にいる。
そのため、不眠に苦しみながらも、服薬しないでいる患者がいる。ベンゾジアゼピン系睡眠薬が睡眠薬の中心となっている現在においては、睡眠薬はそれほど危険なものではない。睡眠薬
についての正しい知識を患者に与えて、合理的に睡眠薬を使用するのがよい。
睡眠薬は、服用せずに睡眠がとれるなら、用いないにこしたことはない。不眠の原因が除去
されれば、不眠の原因となった疾患が軽快、治癒すれば不眠は消失する。したがって原因の解
決が最も重要となる。原因がはっきりしないいわゆる不眠症の場合、服薬量を徐々に減らしな
がらの中止、漸減中止が基本である。その場合、さきにも述べたごとく反跳不眠の出現を防ぐ
意味から、半減期の長い薬物に切り換えるとよい。不眠症対策として薬物以外の方法があり、これらの方法をうまく組み合わせることである。とくに精神療法が重要である。
漸減中止を決め、実施を開始する時期の選定も重要である。家庭、職場などの環境、身体状態
などを十分に勘案し、精神的に余裕のある時期が望ましかろう。
市販睡眠薬についての注意
薬局・薬店では、今まで述べた睡眠薬は入手できない。しかし、睡眠効果がある程度期待で
きる薬はある。ふだんは不眠がなく、旅行などに出かけて、いわゆる「枕が変わったら眠れな
い」といった場合には、利用できるかもしれない。薬を飲んだから眠れるであろうとの心理効果もある。
ただ不眠症が持続していて睡眠薬を連用しなければならない場合、市販睡眠薬は避け、病
院・医院を受診し、当該者に最も適した薬を選んで処方してもらうべきである。
近年になり、安全でしかも確実な治療効果の得られる睡眠薬が使用しうるようになった。そ
してさらに、治療効果の出現・持続時間の異なる薬物を選ぶことが可能なので、不眠のタイプ、
日中の業務などによって睡眠薬を使い分けることができる。それだけに睡眠薬を上手に使いこ
なすには十分な知識が要求されることになる。
このような観点から睡眠薬の種類、効果、副作用、使い分け方、高齢者の場合の注意、上手
なやめ方などについて述べた。睡眠薬の使用は不眠対策の一部であり、さらにこころの健康の
保持、増進対策を離れてはありえない。

薬物によらない治療法

不眠患者の中には、「また眠れないのでは」といった予期不安のため
緊張してしまう「不眠恐怖症」に悩む人がいる。こうした人たちの
不安やこだわりをとるには、自律訓練法や行動療法が有効である。
不眠症の治療は現在薬物療法が主流を占めているが、睡眠薬に対して多少の抵抗や偏見を示
す患者が少なくないことがいくつかの意識調査で明らかにされている。また、近年みずからの
健康状態に強い関心をもち、薬物以外の健康法を求める人も増えつつあり、不眠を主訴に病院
を訪れる患者の中にも、非薬物療法をみずから希望する人も出てきている。
一般に、慢性の不眠症患者、あるいは薬物治療のみでは自覚的な不眠症状がとれない患者な
どには、薬物以外の治療法や睡眠薬とそれらの方法を併用することが必要になってくることが多い。
不眠症患者の治療にあたっては、まず不眠の原因や実態を明らかにし、環境・生活様式を調
査し、適切な生活指導を行なったうえで、どのような治療が必要かを決定しなければならない。
たとえば、不眠を主訴に精神科または心療内科に受診する患者の中には、ベッドに就いたと
き、「いったいいつ寝つけるだろうか」、「今夜もまた眠れないのではないか」という予期不安
のために緊張し、かえって寝つけなくなっている人がいる。これは「不眠恐怖症」といわれる
ものである。このような患者には薬物治療のほかに、不安・緊張をやわらげ、リラクセーショ
ンを得る方法や、不眠へのこだわりをとる心理療法を行なうなどの非薬物的治療が有効である
ことが多い。
以下に私どもが日ごろ診療中に行なう非薬物治療をあげてみよう。
リラクセーションを得る方法
自律訓練法
自律訓練法はフオークト(vogt, o・)の催眠の研究に端を発し、その研究を引き継いだシュ
ルツ(Schultz,J.H.)によって一九三二年に創始された治療法である。
本法は公式化された語句を頭の中で繰り返しながら、その内容に関連した身体部位に受動的
に注意の集中を行なうことによって、段階的に反ホメオスターシス状態からホメオスターシス状態へと生体機能の回復変換を図る心理生理学的治療法である。現在では、心身症や神経症の
治療法として用いられるばかりでなく、さまざまな領域でメンタルヘルス活動や教育効果促進
などにも応用されている。
本法には、いくつかの特殊練習が考案されているが、不眠症患者の治療のさい用いられるの
は最も基本となる標準練習であろう(入眠の目的で行なうなら第1公式、第2公式だけでもよい)。
次に標準練習の実際的な方法を述べる。
⑴ 標準練習の実際
標準練習は背景公式と第1公式〜第6公式からなる。
背景公式(安静練習)「気持ちが(とても)落ち着いている」
第1公式(重感練習)「両腕両脚が重たい」
第2公式(温感練習)「両腕両脚が温かい」
第3公式(心臓調整)「心臓が静かに規則正しく打っている」
第4公式(呼吸調整)「楽に呼吸をしている(あるいは、呼吸が楽だ)」
第5公式(腹部温感練習)「太陽神経叢(あるいはお腹)が温かい」
第6公式(額涼感練習)「額が(こころよく)涼しい」
本法を練習するさいには、静かな場所で、仰臥姿勢、安楽椅子姿勢(ソフアなど、背もたれがあり頭を支えられる椅子に腰掛ける)、単純椅子姿勢(椅子に深く腰掛けるが、首も背骨も垂直に
のばす)のいずれかをとり、閉眼して頭の中で前記の公式言語を繰り返す。なお、背景公式は、
各公式のベースになるもので、練習の途中で随時挿入していく。
また、第1公式、第2公式では右腕↓左腕↓右脚↓左脚の順にすすめていくのがよい。最後
に消去動作(両手を握り、力をいれて腕の屈伸を五〜六回繰り返し、続いて大きく背伸びするように二〜三度深呼吸し、最後に目を開ける)を行なう。
⑵ 練習のすすめ方
まず、練習を始める前に既往歴・現病歴や合併症から、適応か否かをチェックする必要があ
る(心疾患、糖尿病、訓練中に血圧が大きく変動する場合、ある種の精神病などでは禁忌とされてい
るものもあり、医師の指導のもとに行なったほうがよい)。一回の練習時間は最初のうちは三〇
〜九〇秒と短めから始め、だんだん延ばしていく方法もあるが、施設によっては最初から三
〜五分で指導することもある。できれば一日に二〜四回(起床後、昼食後、夕食後、就寝前な
ど)行なったほうがよい。
練習の経過を把握するために訓練の記録をつけることが望ましい。また、同時に練習中に起
こってくるさまざまな心身の反応の内容を記録しておくとよい。これらの中には、自己発見的
な内容のものもあれば、練習の仕方の誤りから起こるものもあり、後で検討するさい役に立つ。
本法の練習をすすめていく過程で、練習には直接関係のない反応が起こることがある。たと
えば、身体の一部がピクピクけいれんを起こしたり、身体の一部が熱く感じたり、しぴれたり
するような反応から、忘れ去っていた過去の体験が生き生きと思い出され、涙があふれてくる
ことなどである。これは自律性解放現象と呼ばれているが、練習をすすめていくうちにやがて
起こらなくなることが多い。
このような方法を習得することによって、みずからの不安・緊張を軽減させ、リラクセーシ
ョンが得られ、入眠できるようになる。
α波フィードバック光駆動装置
人の脳波のうちα波(8〜13Hz)と心身のリラクセーションとの関連については、従来か
らさまざまな研究がなされてきた。すなわち、ヨーガや座禅を実行している時や心地よい音楽
を聞いてゆったりとくつろいでいる時などに脳波を記録すると、α波の増強した状態が認め
られることが明らかにされている。
一方、バイオフィードバック療法のように、人為的にα波を増強させ、リラックスした状
態を意図的につくり出す方法も試みられてきた。
α波フィードバック光駆動装置(パイオニア社製)は患者の脳波からα波を抽出し、その周
波数と振幅に合わせて輝度を変調した光刺激信号を、閉眼眼前にリアルタイムでフィードバックすることにより光駆動反応を引き起こし、その結果α波が増強されるというものである。
このため、従来のバイオフィードバック療法と比較すると、本人の意識的な努力なしにかなり
一定のリラクセーション効果を得ることができる。
また、同じ光駆動反応でも、画一的な光刺激により引き起こされた場合は、たとえα波が
増強されたとしても心身のリラクセーションは得られないことが多いのに比べ、患者脳波の自
然なゆらぎも保持されるため効果的なリラクセーションをもたらし、生体リズムを正常化する
可能性も示唆されている。
この装置を使って、心身症や神経症への治療が試みられ治療効果をあげているほか、健常者
にもリラクセーションをもたらす装置として利用されている。治療スケジュールは、治療時間
一五〜三〇分(最初の三〜六分は閉眼安静、その後光刺激を加える)で、一週間隔で治療してい
く。本法は、不眠症の治療にも適用され、約半数の症例に中等度以上の改善をみたとの報告が
ある。
不眠に対する受けとめ方を変える方法
認知療法的アプローチ
認知療法の目標は、患者が自分だけの非機能的かつ非論理的な思考(認知の歪み)に気づき、それを現実検討し、適応的に対応できるような方法を身につけるのを援助することである。
不眠症患者の訴えの中に多くみられる認知の歪みには、次のようなものがある。
「ぜんぜん眠れない」(全か無か思考)
「夜中に一度目が醒めると、いつもその後は眠れない」(過度の一般化)
「六時間は眠れるが、それでは足りない」(すべし表現、独断的推論)
「眠れないとクヨクヨいろんなことを考えてしまう」(肯定的側面の否認)
「眠れないと次の日なにもできない」(過度の一般化)
「眠れないといろんなことを考えてしまうから、夜になると苦しい」(肯定的側面の否認)
認知療法ではこのような思考をモニターし、患者がそれに気づき、適応的な解釈に切り換え、
さらにはその思考の根底にあるスキーマ(個人の中にある、かなり一貫した知覚・認知の構え)
までさぐっていく。このスキーマは、たとえば、「私はなんでも完全でなければならない」、
「人間の価値はすべて業績で決まる」などで、病的な場合には、特定のスキーマが極端に活性
化されて、非適応的な反応を起こすので、修正の必要がでてくる。
不眠症患者の多くは、認知の歪みの修正だけでも、ある程度不眠へのこだわりをゆるめ、自
覚症状の改善をみることがある。たとえば、「その考えは少し極端すぎますね。そういった考
え方を少し変えてみませんか」ということで話をすすめることもできる。また、睡眠の記録を
つけさせ、その思考の根拠となる事実があるのかどうかを確認する方法も有用である。 「昨日も五時間しか眠れなかった。私は八時間以上眠らないと、調子が悪いんです。熟睡し
てないから翌日に仕事がなにもすすまない」。このような訴えをする患者は睡眠時間や、熟眠
感に必要以上のこだわりをみせている。
この場合、まず、毎日の睡眠時間と、朝起きたときの熟眠感の程度を記録した睡眠日記
(誌)をつけてもらう。熟眠感の程度を五段階法やできるだけ患者が自分の主観を表現しやす
い方法で評価させる。その記録を患者とともに検討し、「睡眠時間が長くても熟眠感が少ない
こともあり、また逆に睡眠時間が短くても熟眠感がある程度得られることもあって、睡眠時間
と熟眠感とは必ずしも直接の関連はなさそうですね」と伝える。このような指摘を機に睡眠時
間に対するこだわりがとれることがある。
森田療法的アプローチ
不眠に対し、かたくなにこだわっているような患者には、就床・起床時間をあらかじめ定め、
たとえ自覚的には十分な睡眠がとれなかったとしても、あるがままに健康人と同じように規則
正しく生活するよう指導する。
そのさい、「不眠のために日中ボーツとしてしまう」あるいは「眠ろう、眠ろうと努力をし
てもだめなんです」といったような訴えをする患者には、「睡眠には身体の休息とこころの休
息と二つの目的があり、眠れないと感じる場合でも暗い部屋で静かに身体を横たえ目を閉じているだけで、睡眠の目的の半分は遂げられたことになります」と伝え、就床する習慣をこころ
がけるよう促す。
また、「眠ろう」とする努力が無駄なものであることを暗に伝えておくことが必要である。
なお、「眠ろうとするから眠れないんですよ、だからあまり気にしないように」と言うのは、
患者に「気にしないようにしよう」というこだわりが生じ、かえって逆効果になる。
睡眠習慣の強化
行動療法的アプローチ
これは、就寝前に入眠を促進するような習慣を強化し、逆に睡眠に桔抗するような行動を抑
制するようにはたらきかけるものである。たとえば、眠りに就く時のみベッドに横たわる習慣
を身につけさせる。つまり、眠る時以外はベッドに横たわったまま、テレビを観たり、読書を
したり、食べたり、心配事にふけるような行動を中止させる。次に、毎朝同じ時刻に起きるよ
うにする。たとえ、十分な睡眠がとれなかった夜の翌朝でも、あらかじめ定めた時間に目覚ま
し時計をセットし、その時間に目覚めるようにする。よく眠れなかった時でも決めた時間より
寝すごさないよう指示する。
また、日中の居眠りも禁止する。ドアの鍵をかける、歯をみがく、寝間着に着替える、など就寝前の当たり前の行動に引き続いて睡眠が起こることを利用する。
不眠の薬物によらない治療として、自律訓練法、α波フィードバック光駆動装置、認知療
法的アプローチ、森田療法的アプローチ、行動療法的アプローチについて述べた。この他に、
海外では認知・行動療法的な要素と教育的な要素を組み合わせた集団精神療法を行ない、効果
をあげているとの報告もある。
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睡眠障害の鑑別診断

目次1 不眠が主訴の場合1.1 不眠の訴えのとらえ方1.2 入眠障害を示す睡眠障害1.3 中途覚醒を示す睡眠障害1.4 早朝覚醒を示す睡眠障害2 過眠が主訴の場合3 睡眠時間帯の異常が主訴の場合4 睡 …

睡眠障害の原因は生活リズム

目次1 どんな概日リズム睡眠障害があるか2 交代勤務も睡眠障害を伴うことがある3 夜型人間の睡眠障害4 早寝早起きから抜けられない 睡眠障害の原因は生活リズム どんな概日リズム睡眠障害があるか このペ …

睡眠の質を改善する方法

目次1 不眠症のカテゴリー2 生活習慣を見直す3 眠りの環境を見直す4 寝具を見直す5 眠りのためのカラーセラピー6 運動と眠りの相関関係7 睡眠と瞑想8 眠りを導くサウンド9 深い眠りのNG要素10 …

レム睡眠という不思議な眠り.2

目次1 レム睡眠をもたない人間、Y・H氏2 レム睡眠の柔軟性2.1 レム睡眠は、目ざめるための態勢をととのえる眠り? レム睡眠という不思議な眠り.2 レム睡眠をもたない人間、Y・H氏 すでに述べたよう …